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2022年6月29日 (水)

劇場によって全然違う芝居宣伝文

隔月で芝居情報を調べるのにチラシと劇場サイトを見るという古臭い手法を取っています。そのうちの劇場サイトの話です。

劇場がどこまで芝居の宣伝をするかはいろいろな条件に左右されます。貸公演だと書かないことのほうが多いですね。主催公演は真面目に宣伝文を書くことが多いようです。で、書くときの文章が劇場によって全然違います。実例を見てもらったほうが早いので4本集めてみました。見出しが太字なのはだいたい共通なので再現しましたが、フォントの色やサイズなどは無視しました。そのほうが文章の違いがわかります。

最初は世田谷パブリックシアターの「毛皮のヴィーナス」です。

新鋭の演出家・五戸真理枝がシアタートラムで初演出
人間が持つ根源的な欲望を描いたスリリングな二人芝居に、高岡早紀と溝端淳平が挑む

世田谷パブリックシアターでは8月~9月、シアタートラムにて二人芝居『毛皮のヴィーナス』を上演いたします。本作は、「トラム、二人芝居」と称し、新進の演出家を起用し、実力派キャストによる二人芝居を上演する企画のうちの一作です。

『毛皮のヴィーナス』は、“マゾヒズム” の語源にもなったオーストリアの小説家L・ザッヘル=マゾッホの小説から想を得て、米劇作家デヴィッド・アイヴズが舞台用に戯曲を執筆し、2010 年にオフ・ブロードウェイにて初演された作品です。その後ブロードウェイでも上演、さらに2013年にはロマン・ポランスキー監督により映画化もされました。オーディションを受けに来た女優と演出家、さらに戯曲の登場人物も交錯するという二重構造を駆使しつつ、人間が持つ根源的な性的欲望をスリリングに描き出していく、ライブ感あふれる舞台です。

本作『毛皮のヴィーナス』の演出を手掛けるのは文学座所属の五戸真理枝。上村聡史らのもとで演出助手として研鑽を積んだ後、2016年に文学座アトリエの会『かどで/舵』の『舵』で、初演出を果たしました。また、新国立劇場等の外部公演でもゴーリキーやチェーホフといった古典の名作を瑞々しい感性で演出し、脚光を浴びています。さらに、元々は劇作家志望だったということもあり、戯曲や小説からの脚色、童話の執筆にも積極的に取り組むなど、多彩な才能の持ち主です。そしていよいよ本作で世田谷パブリックシアター主催公演の演出デビューを飾ることになりました。

女優ヴァンダ役を演じるのは高岡早紀です。世田谷パブリックシアター主催公演へは3年連続の出演となります。三部構成の『愛するとき 死するとき』(21年、演出:小山ゆうな)では複数女性像を巧みに演じ分け、世田谷パブリックシアター×東京グローブ座『エレファント・マン』(20年、演出:森新太郎)ケンダル夫人役では知的な演技と優美な姿で観客を魅了しました。その確かな演技力と美貌で、謎多き女優・ヴァンダをいかに演じるか大きな期待がかかります。

ヴァンダに翻弄されながらも惹かれていく演出家・トーマス役は溝端淳平が演じます。シアタートラムへは、繊細な演技が好評を博した『管理人』(17年、森新太郎演出)以来の登場です。相手役の高岡とは舞台では3回目となる共演で、互いに信頼を寄せ合う「同志」のような二人のタッグが、本作の世界観をさらにパワーアップさせていくに間違いありません。

シアタートラムという限られた空間での、刺激的でライブ感あふれる二人芝居『毛皮のヴィーナス』、どうぞご期待下さい。

ストーリー
演出家のトーマスは、彼が脚色した戯曲『毛皮のヴィーナス』のヒロイン役のオーディションをするも、これぞ!という女優は見つからなかった。帰ろうとしたところに、オーディションに遅刻したという無名の女優ヴァンダが現れる。トーマスが求めるヒロイン像とは何もかもが違っていたが、強引なヴァンダに押し切られ、しぶしぶオーディションをすることになった。しかし相手役を務めるトーマスは、次第にヴァンダの演技に惹かれ出し、3ページで切り上げるはずだった読み合わせは、いつしか……。

次はBunkamura公演ですがシス・カンパニー製作の「ザ・ウェルキン」です。

12人の女性の手に委ねられた少女の命。
大胆かつスリリングに!残酷なほど正直に!
女性たちは自分自身と少女に向き合っていく。

英国の若手劇作家ルーシー・カークウッドの新作として、
コロナ禍直前の2020年1月末に英国ナショナルシアターにて開幕。
ロックダウンで中止になるまでの限られた上演でしたが、
サスペンスフルに展開する物語は大喝采を浴びました。
一人の殺人犯の少女と、陪審員となった市井の12人の女性たち。
猥雑で力強いエネルギーと笑いにも彩られながら、
男性支配社会に生きた18世紀半ばの女性たちの姿が浮き彫りに…。
気鋭の加藤拓也が初の翻訳戯曲演出に挑み、卓越した力を誇る俳優陣が激突!
演劇ならではの魅力に溢れた時間をお届けします!

あらすじ
1759年、英国の東部サフォークの田舎町。
人々が75年に一度天空に舞い戻ってくるという彗星を待ちわびる中、
一人の少女サリー(大原櫻子)が殺人罪で絞首刑を宣告される。
しかし、彼女は妊娠を主張。妊娠している罪人は死刑だけは免れることができるのだ。
その真偽を判定するため、妊娠経験のある12人の女性たちが陪審員として集められた。
これまで21人の出産を経験した者、流産ばかりで子供がいない者、早く結論を出して家事に戻りたい者、生死を決める審議への参加に戸惑う者など、その顔ぶれはさまざま。
その中に、なんとかサリーに公正な扱いを受けさせようと心を砕く助産婦エリザベス(吉田羊)の姿があった。
サリーは本当に妊娠しているのか? それとも死刑から逃れようと嘘をついているのか?
なぜエリザベスは、殺人犯サリーを助けようとしているのか…。
法廷の外では、血に飢えた暴徒が処刑を求める雄叫びを上げ、そして…。

同じBunkamuraでも特設サイトの「世界は笑う」です。

ケラリーノ・サンドロヴィッチが描く、
昭和30年代新宿、笑いに魅せられ、笑いに取り憑かれた人々の奇想天外な人間ドラマ。
5年ぶりのBunkamuraシアターコクーンで、
豪華キャストを迎え、新作書き下ろし!!

劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、2017年『陥没』以来5年ぶりに、Bunkamura シアターコクーンで新作公演を行うことが決定しました。

舞台は、昭和30年代初頭の東京・新宿。敗戦から10年強の月日が流れ、巷に「もはや戦後ではない」というフレーズが飛び交い、“太陽族”と呼ばれる若者の出現など解放感に活気づく人々の一方で、戦争の傷跡から立ち上がれぬ人間がそこかしこに蠢く…。そんな殺伐と喧騒を背景にKERAが描くのは、笑いに取り憑かれた人々の決して喜劇とは言い切れない人間ドラマ。

戦前から舞台や映画で人気を博しながらも、時代の流れによる世相の変化と自身の衰え、そして若手の台頭に、内心不安を抱えるベテラン喜劇俳優たち。新しい笑いを求めながらもままならぬ若手コメディアンたちなど、混沌とした時代を生きる喜劇人と、彼らを取り巻く人々が、高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす、哀しくて可笑しい群像劇。

出演には、KERAとの3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目となる松雪泰子をはじめ、KERA作品に初出演となる千葉雄大、勝地 涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶など、勢いのある若手から存在感が際立つベテランまで多彩な実力派キャストが顔を揃えました。 2009年より昭和の東京をモチーフに発表してきた「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から “昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、“昭和の喜劇人”を作品の題材とするのは今回が初めて。その挑戦に期待が高まります。

最後にパルコの「VAMP SHOW」です。あらすじ紹介が過去作紹介と合体しているのですがそこは目をつぶって引用。

三谷幸喜 作、幻のホラー・コメディ!
新たな血を求めて、21年ぶりに復活!!
全国を旅して暮らす、陽気な五人の男たち。
みんな揃って歌好きで、何故だか全員、夜行性。趣味は襲撃、献血カー。
苦手なものは、十字架で、大好きなのは―チュウチュウチュウ!?

本作は、1992年、サードステージのプロデュース公演として初めて上演された伝説の舞台。2001年にはパルコ&サードステージ提携プロデュースとしてPARCO劇場にてキャストを一新し、池田成志の演出で上演された、三谷幸喜作、異色のホラー・コメディです。
楽しく旅する5人組の吸血鬼。うっそうとした森に囲まれたさびれた山間の駅にたどり着く。駅には駅長と、電車を待つ女性が一人・・・。
西村雅彦、古田新太、池田成志(1992年)、佐々木蔵之介、堺雅人、河原雅彦、橋本じゅん、伊藤俊人(2001年)と、当時の若手実力派俳優が出演し、上演してきた幻の作品がついにPARCO劇場へ帰ってきます!

2001年版で出演していた河原雅彦が演出のバトンを受け継ぎ、キャストにはドラマ『最愛』や『ミステリと言う勿れ』などに出演し癖のある役も難なくこなす高い演技力で評価されながら、現在放送中の「恋なんて、本気でやってどうするの?」で不器用ながらも主人公の親友にアプローチする不思議男子・克巳を演じ普段の役とのギャップでTwitterトレンド入りも果たした岡山天音、映画『今日から俺は!!』や連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に出演し、『インビジブル』では主人公の刑事人生を大きく揺るがせた事件で殉職した安野慎吾を演じたことも記憶に新しい平埜生成、映画『銀魂』やドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』に出演し、2022年春放送の『ユーチューバーに娘はやらん!』ではユーチューバーの不安定だが冒険家なタックタックを演じるなど多くの作品で抜群のコメディーセンスを発揮している戸塚純貴。獣電戦隊キョウリュウジャーで注目を集め、バンド女王蜂のMV(『KING BITCH』)出演や現在放送中の連続ドラマ『探偵が早すぎる?春のトリック返し祭り?』では、主人公に熱心にアプローチする会社の同僚・大谷和馬を演じ話題を呼んだ塩野瑛久、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』での頼もしい兄から、NHK連続テレビ小説『カーネーション』では不憫な次男、ドラマ『アンナチュラル』『シグナル』の連続殺人犯役と演技の幅が広く、どんな役柄でも自分のものにしてしまう個性派俳優尾上寛之と今後益々期待される若手演技派俳優たちが結集!
さらに、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』やドラマ『過保護のカホコ』『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』など話題作への出演が続いており、7月にはドラマ『雪女と蟹を食う』の出演も控えている注目の若手俳優久保田紗友。また、数々の舞台に出演し、連続テレビ小説『エール』や、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』など映像作品でも活躍、2022年には映画『20歳のソウル』の公開も控えている菅原永二の2人が加わり、全キャストが決定いたしました。

2022年版、新たな「VAMP SHOW」にご期待ください!

これまでのVAMP SHOW

山間の寂れた駅で、5人の青年がある女性と出会うことで始まる物語。
明るく楽しい旅行者の青年たちは実は吸血鬼で・・・。

初演は1992年。俳優・池田成志の「怖くてびっくりするホラーな芝居がやりたい」、から始まった本企画。中心に流れる話は魅力的でないと成立しない、と脚本を三谷幸喜に依頼。
三谷幸喜作品らしい笑いはもちろん、ゾクっとするホラー要素が加わり、若手俳優たちの演技合戦も魅力的な、見どころ満載の傑作ホラー・コメディが誕生した。

2001年版では、それぞれ演劇界を中心に実績を重ね、映像にも活躍の場を広げ注目されていた、堺雅人、佐々木蔵之介、橋本じゅん、河原雅彦、伊藤俊人らが演じ、舞台俳優の魅力と演劇の面白さを存分に発揮した。

そして、2022年。様々な作品で欠かせない存在となっている実力俳優が集まり、新たな「VAMP SHOW」が誕生する。

どうでしょう。

「毛皮のヴィーナス」は好ましいですね。芝居のあらすじがわかって、関係者紹介文も芝居関係の経歴で紹介しているところがよいです。可能な限り自劇場に出演した時の経歴で紹介するところは、長くやっている劇場ならではです。

「ザ・ウェルキン」の宣伝文も好ましいです。あらすじはきっちりわかります。そのうえで、多すぎる出演者の紹介はあらすじに混ぜて控えめにしつつ、脚本の評判を推していくというスタイルです。

「世界は笑う」は、KERA新作なので脚本が出来上がっていないでしょうからあらすじ紹介がないのは割引きます。とはいえ、KERAであることが一推し、さらに紹介不要な有名出演者で推していく、という姿勢は見て取れます。

「VAMP SHOW」の異質さがひときわ際立ちます。ホラーコメディだからあまりネタバレしてはいけないのはわかるのですが、出演者の紹介をすべて映像で揃えているのが他3サイトと明らかに違います。

この「VAMP SHOW」の文章に違和感を感じすぎてこのエントリーを書いています。出演者の舞台経験が少ないからしょうがないと言われればその通りですが、もう少し書きようがないものか。

と考え出すと、そもそも劇場サイトは誰に向けて情報発信しているんだとなります。劇場サイトを見て観に行こうと考える客がどれだけいるか。

出演者目当ての人は、出演者の公式サイトを見て決めるでしょう。その場合、劇場サイトに望むことは日程やチケットの公演情報であり、宣伝文は読まないと思います。

私みたいな人間だと、劇場と脚本演出出演者で最初のフィルターが働きます。そのうえであらすじを見て判断します。あらすじ以外の宣伝文は補足です。読んでも観に行く行かないの判断には影響しません。

芝居見物の大ベテランだとチラシで判断していると思います。劇場サイトに望むことは日程やチケットの公演情報であり、宣伝文は読んでいないでしょう。

芝居初心者はどうかというと、そもそも劇場サイトを見ません。たまたまチラシを手に取って興味が湧くか、テレビその他で紹介されていて気になって、人によっては劇場サイトで調べるのが導線だと思います。でも、調べて満足するのが大半、観に行くつもりの人は公演情報を確認したいのが目的です。宣伝文で観に行くことを決める人はごくごく少数と推測します。

そうなると誰向けの情報なのか。おそらく「VAMP SHOW」は、芝居を知らないマスコミ関係者に記事を書いてもらうための宣伝資料なのではないでしょうか。

ならば一般観客向けに宣伝文は不要か。そう言い切れないのが難しいところです。劇場サイトを読んだ側に与える印象というものがあるからです。売りになるものがあるかないかとはちょっと違います。宣伝文のひとつも書けない芝居では、制作の本気度が疑われます。そのうえで、何を宣伝に選ぶかで制作の趣味を無意識に訴えかけています。観客側は、宣伝文を見て決めるというより、宣伝文を含めた劇場サイト全体の雰囲気で制作の趣味と信頼度と本気度を測っています。

野田地図の「Q」を載せた東京芸術劇場のサイトを追加引用します。

野田秀樹×QUEENの衝撃作品、世界ツアー決定!
松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳らが奇跡の再集結!

イギリスを誇る世界的ロックバンド、クイーンが1975年に発表した傑作『オペラ座の夜』の世界観と、シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』の “その後の物語” =もしも2人が生きていたら…。という野田秀樹の着想が結び付き、2019年に東京で初演。舞台を14世紀のイタリアから12世紀末の日本に移し、両家の対立を源平合戦に見立てたこの奇想天外な構想は、初演時には7万人を超える観客を魅了し、第27回読売演劇大賞・最優秀作品賞を受賞した。

今回の再演では、松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳らの初演時のオリジナルキャスト全10名が奇跡の再集結。
このワールド・ツアーの企画は、初演の東京公演を来日観劇したクイーンの伝説的マネージャーのジム・ビーチ氏が絶賛しことを契機にクイーンのお膝元であるロンドン公演の計画が動き始めた。
東京・大阪公演に加え、ロンドン、台北を巡り、国内外4都市を巡るワールド・ツアーが実現。
日本の演劇史のみならず世界のエンタテインメント史に新たな1ページを刻む2022年版『Q』:A Night At The Kabuki。是非ともご期待ください!

ずいぶんと端的にまとまった宣伝文です。が、これでまとまるのは初演の実績、紹介無用の豪華出演陣、海外ツアーがあればこそで、例外中の例外中の例外です。東京芸術劇場は公演特設ページを作ったりしないので、サイトで読んだら同じ文章でもそっけないことこの上ありません。芸術監督の芝居をえこひいきにするわけにもいかないでしょうし、野田地図の本家サイトが本来の役目を果たすのかもしれませんが、それにしたってさすがにもうちょっと派手にしろよと言いたくなる劇場サイトです。普通の人はこんなそっけないサイトを見ても観に行く気にはなりません。

そう考えると、東京芸術劇場は最初から劇場サイトに求められる役割を公演情報提供と割りきったサイト、他の劇場は劇場サイトによる集客能力を信じているサイト、と言えなくもありません。どの程度意図されているかは別として。

書き終わって読み返したら我ながら何書いてるんだかと思いましたが、宣伝文ひとつとっても考え出したら悩ましい、という暇文でした。

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