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2022年12月29日 (木)

2022年下半期決算

恒例の決算、下半期分です。

(1)野田地図「Q」東京芸術劇場プレイハウス

(2)新国立劇場主催「レオポルトシュタット」新国立劇場中劇場

(3)まつもと市民芸術館企画制作「スカパン」神奈川芸術劇場大スタジオ

(4)松竹主催「平成中村座 十一月大歌舞伎」平成中村座

(5)シス・カンパニー企画製作「ショウ・マスト・ゴー・オン」世田谷パブリックシアター

以上5本、他に隠し観劇なし、すべて公式ルートで入手した結果

  • チケット総額は45100円
  • 1本あたりの単価は9020円

となりました。上半期の9本10公演と合せると

  • チケット総額は126850円
  • 1本あたりの単価は8457円

です。なお各種手数料は含まれていません。

単価が高いのは有名どころに偏っているからです。なぜ偏ったかというと本数が少ない中で優先度の高いものを選んだからです。なぜ本数が少なくなったかというと新型コロナウィルス第7波の時期に控えていたのもあるのですが、体調不良が酷かった。時間だけならもう少しあったのですが、観に行かないで静養していました。ニュースもあまり見ないようにしていたので世の中の動向に疎くなっています。「元気があれば何でもできる」という言葉の裏の意味をかみしめる半年でした。

そんな中で下半期に観に行ったのは初演を観たけど再演も観とけの(1)、有名な芝居の再演だから観とけの(3)(5)、好きな演出家の芝居だから押さえとけの(2)(4)でした。体調不良もあったので辛い評価が続いてしまいましたが、そんな中でも(3)はいいものを観た感じが得られてよかったです。ただし通年なら想い出補正込みで上半期の「ドライブイン カリフォルニア」になります。次点はほぼ同率で「美しきものの伝説」です。長年見逃し続けていた有名演目をばっちりの座組で観られた満足感は高いです。

ただ半年たって思い返すと違いもわかって、「ドライブイン カリフォルニア」は脚本だけでなく役者と演出までハマったうえでの総合力、「美しきものの伝説」は圧倒的な出来の脚本を土台に立ちあげた感じですね。「美しきものの伝説」は突詰めると同じ芝居が出来上がりそうなかっちりとした脚本でしたが、「ドライブイン カリフォルニア」は松尾スズキ以外が演出してここまできれいに立ちあがる脚本なのかわかりません。そういう意味では(3)も串田和美に負うところの多い芝居でした。

本数が2年連続で15本なのは偶然ですが、このくらいのペースもいいですね。やっぱり60本は観すぎです。年間50本を超えてくるとスタッフ含めて個別賞を選べるくらいになるのですけど、お金以上に時間と体力の重要性が高くなっています。

本数が少ないので芝居の話はこのくらいとして周辺の話題。

最初は何と言っても新型コロナウィルス。こと芝居に限っては、客側の対応は落ちつくことになりました。マスク着用と手指消毒が必須。発熱確認と来場者連絡先記載は省くところも出てきました。座席も最前列を開放する通常編成になってきているようです。劇場の換気能力に客席側の行儀のよさ、さらに上演側の予防が重なって、安全性が実証されてきました。

ただし上演側の予防が大変で、公演中に何ステージか中止になることは珍しくなく、公演期間の短い小劇場だとそのまま公演中止になることもありました。公演の大小に関係なく中止は起きていましたが、それはつまり公演の大小に関係なく対応している証拠です。損を覚悟で誠実に対応している関係者には感謝あるのみです。

新型コロナウィルス以外だと、半年前なら表現の自由で政治家が当選するか気にしていたところ、当選したらいっきに注目が減ってしまいました。代わりに、ここ数年いろいろあったセクハラパワハラの告発がさらに派手に吹き荒れました。年末にYahoo!ニュースのトップ記事で見かけて、これを書いていたら追加でもう1件見るとは思いませんでした。

この手の話は1本だけ、訃報をとっかかりに「人格より前に能力と魅力が求められる業界の話」を書きました。念のために何度でも書きますけど、私は自分が被害にあったら逃げるのでセクハラパワハラ反対です。が、客が対価を払っている価値が、能力や魅力という値付けの根拠がよくわからない業界であることを考えると、そんな素直な話になるものではないとも考えます。大げさに言えば芸能ビジネスの何たるかを問う話です。これに関連して本当はもう1本書きたい話があったのですが、先送りします。

最後に一般情勢の話。サル痘の話は立ち消えました。食料品事情は値上げが厳しいですが、もうどうにもならないということでおおむね受入れられている気配です。ロシアとウクライナは続いていますが、これを長引いていると表現してはいけません。戦争は月単位ではなく年単位で考える必要があるからです。そして防衛費増の話が年末に出てきましたが、明らかに中国警戒ですね。何事もなく済んでほしいです。

来年の目標は元気を回復させつつ厳選した芝居を観ることです。引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

2022年12月26日 (月)

2023年1月2月のメモ

わりとここで観られるといいなあ、という芝居が多いので悩みます。

・松竹主催「十六夜清心」2023/01/02-01/27@歌舞伎座:第三部で幸四郎七之助なので勉強するならいい機会

・パルコ企画製作「志の輔らくご in PARCO」2023/01/05-01/31@PARCO劇場:年始恒例企画が恒例通りに回るようになってきました

・ホリプロ企画製作「キングアーサー」2023/01/12-02/05@新国立劇場中劇場:アーサー王は名前だけ知っていて話を知らないので観て覚える機会

・風姿花伝プロデュース企画製作「おやすみ、お母さん」2023/01/18-02/06@シアター風姿花伝:小川絵梨子の翻訳演出で本物の母娘で2人芝居

・果てとチーク「はやくぜんぶおわってしまえ」2023/01/19-01/22@アトリエ春風舎:ミスコン中止という面白そうな題材とは別に、性差別や性加害に言及していますので云々と事前にアナウンスが必要な時代になったのかとおもってピックアップ

・東京演劇道場「わが町」2023/01/25-02/08@東京芸術劇場シアターイースト:好きな演目ですけど柴幸男が素直に演出するかひねってくるか

・木ノ下歌舞伎「桜姫東文章」2023/02/02-02/12@あうるすぽっと:成河が出ているってところでピックアップ

・松竹主催「霊験亀山鉾」2023/02/02-02/25@歌舞伎座:「うぇーぁっはっはっはっ」で仁左衛門贔屓になった演目を歌舞伎座でも

・国立劇場主催「近松名作集」2023/02/04-02/21@国立劇場:「心中天網島」「国性爺合戦」「女殺油地獄」と有名どころを上演してくれるので勉強するならいい機会

・パルコ企画製作「笑の大学」2023/02/08-03/05@PARCO劇場:三谷幸喜の有名2人芝居が久しぶりに上演

・新国立劇場オペラ研修所「コジ・ファン・トゥッテ」2023/02/17-02/19@新国立劇場中劇場:モーツァルトだし値段抑えめだし勉強するならいい機会

・まつもと市民芸術館企画制作「博士の愛した数式」2023/02/19-02/26@東京芸術劇場シアターウエスト:串田和美を筆頭に期待できる役者陣なのでわりと有名な小説の舞台化を勉強するのにいい機会

・Bunkamura企画製作「アンナ・カレーニナ」2023/02/24-03/19@Bunkamuraシアターコクーン:宮沢りえ主演でトルストイの有名小説を勉強するのにいい機会

・新国立劇場演劇研修所「ブルーストッキングの女たち」2023/02/24-03/02@新国立劇場小劇場:「美しきものの伝説」と並んで有名な宮本研の芝居を観るいい機会

・神奈川芸術劇場プロデュース「蜘蛛巣城」2023/02/25-03/12@神奈川芸術劇場ホール:実は黒澤明の映画をほとんど観たことがないので舞台でもいいから観るならいい機会

他にナショナル・シアター・ライブで「レオポルトシュタット」が2023/01/06からあります。

調べていたら世田谷パブリックシアターとシアタートラムが1月は演目なしだったんですけど、メンテナンスでもやるのか予定していた公演が発表前に丸ごと飛んだのか、どうなんでしょう。

<2023年1月22日(日)追記>

劇場情報が欠落していたり間違っていたりしたところを修正。

2022年12月18日 (日)

シス・カンパニー企画製作「ショウ・マスト・ゴー・オン」世田谷パブリックシアター

<2022年12月17日(土)昼>

「マクベス」を上演する劇場の舞台袖。客入りは好調なものの酒癖の悪い主演は連日の飲みすぎで体調不良、演奏担当の一人も体調不良、叱ったスタッフは劇場に来ない、と頭の痛い舞台監督。プロデューサーの社長の判断で開演することにしたものの、関係者しかいるはずのない舞台袖に次々と人がやってくる。ようやく開演したもののトラブルがトラブルを呼ぶ。果たして無事終演できるかどうか。

三谷幸喜お得意の、固定された場所とトラブルが起きやすいシチュエーションを設定したウェルメイドコメディ。東京サンシャインボーイズ時代の脚本で初演1991年、再演1994年のものを、現代設定に合うように大幅に書換えたらしいです。設定がおいしいのでいくらでも書換えられるでしょう。すごくよくできた脚本です。

よくできた証拠に、前半に出てきた話題と大道具と小道具が、後半で全部使われる。後半を書いてから前半を書いたんじゃないかというくらいの繋がりです。名前だけで劇場に来ない登場人物と何故か劇場に来る登場人物が、普通に考えたらはちゃめちゃな設定ですが、それがどうした、面白ければ正義、という勢いがあります。やや客席の勢いが弱い回でしたけど、それでも笑いました。

で、笑っておいてなんですけど、微妙に乗りきれないところのある芝居でもありました。

ひとつは劇場設定。役者が2人、舞台袖スタッフが舞台監督を入れて3人だけで回しているわりに、劇場は半分ネタでシアターポクーン(シアターコクーンのもじりですよね)って台詞があるとか、いつかは大きな劇場で働けるようにならないとって台詞があるとか、観ていて劇中の劇場の規模感が一定しなくてもやもやしました。今回の会場の世田谷パブリックシアターって椅子で612席、立見を入れたら700人が入る中規模な劇場なんですけど、それ以上に構えが立派で天井も高いので大劇場っぽいんですよ。それを今回3階席から観ていたので、無意識に大劇場を想定していました。今回のチケット代がS席だと11000円だったのも無意識を後押ししていました。

初演が下北沢本多劇場、再演が(東京だと)紀伊国屋ホールで、当時ならチケット代は数千円だったでしょうから、そのころだとぴったりハマったのだと思います。ここらへんは脚本と興行のすれ違いです。

もうひとつは上演中の芝居(マクベス)の理解度が登場人物と一致していないところがある。理解度が高い側だと脚本家役の今井朋彦とか演奏時に舞台を覗く仕草を入れる(本当に演奏役の)荻野清子とか、理解度が乏しい側だと当日に代打で演奏を引受けたから演奏タイミングを忘れていて慌てて戻る峯村リエとか、このあたりの人たちは正しい。釈然としなかったのは詳しくてしかるべきはずの舞台袖スタッフの3人は、演技はよくても脚本(ショウ・マスト・ゴー・オン)の役のマクベス知識に届いていなかった。ここは突っ込みたい。

はちゃめちゃな設定でもよくできた脚本ですけど、見えないところに求められるリアリティが多い脚本でもあります。上演を中止した損害を計算して払戻し手続を把握したうえでの上演途中中止の提案とか、難しい(すでにチケットをもぎったあとだから現場で払戻しが最善だけど夜の回だったはずで払戻金を手元に用意できるのか、みたいな)。これだけ芸達者を揃えても上演するには手強い、面白い脚本を面白く立ちあげるのは難しいというのを久しぶりに観た芝居でした。

あとは配役表がないのと舞台が遠かったのとで、観なれない役者は誰が誰だかわからなかったのが客としてつらい。載っているサイトがあったら誰か教えてください。

<2022年12月23日(金)追記>

怪我と新型コロナウィルスとで役者が休演すると三谷幸喜が代打を続けてきましたが、ついに主役の舞台監督まで代打で登場することになりました。このまま完走した場合の代役メモを残しておきます。

福岡公演
全公演で小林隆(万城目充役)が三谷幸喜
11/07 昼
11/08  夜
11/09 昼夜
11/10 休
11/11 昼
11/12 昼夜
11/13 昼

京都公演
全公演で小林隆(万城目充役)が三谷幸喜
11/17 昼夜
11/18 昼
11/19 昼夜
11/20 昼

東京公演
小林隆復帰
シルビア・グラブ(あずさ役)が三谷幸喜
11/25 昼
シルビア・グラブ復帰
11/26 昼夜
11/27 昼
11/28 休
11/29  夜
11/30 昼夜
12/01 昼
12/02 昼
浅野和之(鱧瀬医師役)が三谷幸喜
12/03 昼夜 中止
12/04 昼  中止
12/05 休
12/06  夜
12/07 昼夜 昼のみ中止
12/08 昼
12/09 昼
12/10 昼夜
12/11 昼
12/12 休
浅野和之復帰
12/13 夜
12/14 昼夜
12/15 昼
12/16 昼
12/17 昼夜
12/18 昼
12/19 休
12/20  夜
鈴木京香(進藤役)が三谷幸喜
12/21 昼夜 中止
12/22 昼  中止
12/23 昼  中止
12/24 昼夜 昼のみ中止
12/25 昼
12/26 昼夜 昼は追加公演
12/27 昼

52ステージ(追加公演を入れたら53ステージ)中、フルメンバーで上演されたのは11/26-12/02と12/13-12/20の17ステージ、三谷幸喜が代打を務めたのが27ステージ、中止になったのが9ステージという、代打ステージのほうが多い結果となりました。自分が観たのは数少ないフルメンバー公演だったので、その点はついていました。

普段は役者の三谷幸喜にあまり好印象がないのですが、今回ばかりは「ショウ・マスト・ゴー・オン」を体現した三谷幸喜に拍手を送ります。

そしてこれを書いていて気がついたのですが、これだけのメンバーを揃えた鉄板公演であるにも関わらず、昼公演のほうが夜公演より回数が多いです。平日夜公演って今はそこまで駄目なのでしょうか。

2022年12月 2日 (金)

Bunkamuraがアクターズスタジオを開校(ただし1年限り)

こんなのが発表されていました。公式より

【速報】シアターコクーンがつくる演劇の学び場、準備スタート。
COCOON PRODUCTION 『コクーン アクターズ スタジオ』

(2022.11.23)

渋谷に、演劇の未来を拓く若者たちのためのアクターズスタジオが誕生!!
主任を務めるシアターコクーン芸術監督・松尾スズキをはじめ、第一線で活躍するBunkamuraシアターコクーンゆかりの講師陣が指導を担当します。
レッスンは演技のほかに、歌やダンス、パントマイム、時代劇の所作など。実践も交えながら1年間のカリキュラムを経て、演劇で求められる様々なスキルの習得を目指します。
さらに、シアターコクーンのプロデュース公演へ出演のチャンスがあります!

続報は、2023年2月までお待ちください!!

COCOON PRODUCTION
『コクーン アクターズ スタジオ』

主任:松尾スズキ(シアターコクーン芸術監督)

レッスン期間:2024年4月~2025年3月の1年間
レッスン場:Bunkamura館内 他

募集資格:18歳~26歳くらい
※演劇経験の有無は問いません。
※プロダクションや劇団に所属している方もご応募いただけます。
募集期間:2023年4月~7月 予定

※講師、応募方法など詳細は後日発表します。

主催/企画・製作=Bunkamura

■Twitterアカウント:https://twitter.com/cocoon_a_s (@cocoon_a_s)

コクーンの名前が入っていますが、シアターコクーンは2023年4月から2027年度中まで休館です。これも公式より

このたび、「Shibuya Upper West Project」の開始に伴い、オーチャードホールを除き2023年4月10日(月)から2027年度中(時期未定)まで休館することとなりました。この間併せてBunkamuraも経年使用による施設の補修や設備の更新などを行うとともに、新築される施設との一体化に向けた改修工事を実施する予定です。
なお、当社はBunkamuraの休館中も渋谷を含め東急線沿線の周辺施設や東急グループ各施設などで文化事業を継続してまいります。また、オーチャードホールにつきましては日曜・祝日を中心に営業を継続いたします。

つまりぱっと見、暇な時期を有効活用する話です。なので継続事業でないのです。今のところは1年で終わる単発企画です。

そう、期間が1年です。これどうなんでしょう。突然思いついて以前調べたことがありますが、どこもカリキュラムは最低2年が相場です。演技重視の実践寄りだと毎日授業を詰込むのにも限界があります。

何となく、プロデュース公演のスカウトがメインで、それをアクターズスタジオと銘打ったんじゃないかと邪推してしまいます。それはそれで機会だとありがたがる人もいるでしょう。ただなんとなく、スタジオとか研修所とか銘打ったからには毎年募集して毎年卒業させる継続事業であってほしいと願ってしまいます。

邪推に思い込みを重ねて悶々とするのはよくないので、素直に来年2月の発表を待ちます。

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