松竹主催「四月大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座
<2023年4月14日(金)夜>
弟に遠慮して実家に近づかない大店の若旦那与三郎は、見物に来た木更津の浜辺で地元の顔役の妾となっているお富と互いに一目ぼれをして密会するも、顔役に知られることとなり与三郎は全身を切られて海に投げ込まれてお富は身投げをする、それから3年後「与話情浮名横櫛」。獅子は子を千尋の谷に突き落とすというアレ「連獅子」。
仁左衛門玉三郎の与話情浮名横櫛。話自体はどうってことはない。とにかく与三郎演じる仁左衛門が色っぽい。優男の前半は、お富と出会って互いに意識する場面から、遠ざかるお富を見送ってふらふらする場面までが最高です。その後でお富と密会するもお富のほうが積極的で覚悟を決めるまではやや腰が引けているあたりも実に優男。それが後半、破落戸風情で変わるところも見事。
颯爽と現れる冒頭に、一階席をぐるりと一周するサービス演出まで含めて、仁左衛門ったら仁左衛門の芝居。これは仁左衛門が休演したら代役を建てずに夜の部丸ごと休演するのもわかる。なまなかな役者では金返せになる。
ただ二月も思ったけど仁左衛門は声が少し落ちている。もう少し張った声が出せると後半の破落戸は良かった。お富役の玉三郎が海を背景にした仁左衛門に「ほんに、いい景色」という場面とか、密会している2人を襲う顔役役の片岡亀蔵がすごむ場面とか、助かったお富をかくまっていた和泉屋多左衛門役の河原崎権十郎がきっちり応対する場面とか、声でも魅せてくれる役者が多かったからなおさら気になった。あと後半のお富についていた女中も気になったんだけど、誰だったんだろう。
なおこの芝居で和泉屋多左衛門役を務める予定だった市川左團次は出られずに亡くなった。合掌。
連獅子。今回は尾上松緑と左近の親子による連獅子。お囃子がきっちりリズムを刻んでいたのもあるけど、左近の踊りがそのリズムに乗ってきっちり決まっていた。しっかり止まるキレのある動きと合せて、歌舞伎の舞踊としていいか悪いかはわからないけど、観ていて気持ちがいい若獅子。最後の毛振りこそ円にすこし足りなかったけど、客席の拍手は本物。時間の都合か観ずに帰ってしまった客もちらほらいたけど、もったいない。左近はちょっと気にしておきたい。
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