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2023年5月29日 (月)

木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2023年5月27日(土)夜>

俊徳丸はそのあたり一帯を治める高安の息子。正室だった産みの母は亡くなり、ほとんど歳の変わらない継母の玉手御前と、高安の妾の子である兄の次郎丸と暮らす。高安が病がちになり、家督が俊徳丸に譲られること納得いかずまた俊徳丸の婚約者に横恋慕している次郎丸は俊徳丸を亡き者にしようとし、玉手御前は俊徳丸に懸想したと迫ろうとする。

話だけなら古典で、いろいろあって実は、という話だけれども、いろいろなフォーマットを混ぜこぜにしているのに一本の芝居になっている、なんとも不思議な、だけど本筋の芝居は楽しめた、よくできた芝居でした。

日本の小劇場はいろいろなことをやるものですけど、今回はまたいろいろだらけでした。古典を現代の服で上演するのはまあ観たことはある。オリジナルと思しき場面はオリジナルの言葉で上演するのは木ノ下歌舞伎がそういうものだと聞いていたから知っていたけど、現地イントネーションで進めるのは想定外。そこに物語の補足で後から現代語の場面を足すのは想定外だったし、さらに物語の補足と言えるような言えないような場面まで足してくるのも想定外。それを現代風の歌詞を使った妙ージカルで振付付きで演出するのはやっぱり想定外(よく読めば糸井版って書いてあるから思いつきそうなものですが)。そして太夫とバイオリンとトランペットで語りまで入れて、てんこ盛りです。

これだけごった煮にしたら普通は訳が分からなくなりそうなものですけど、3演目のためか役者が馴染んで当たり前のようにこなしていることで、完成形が見られました。おおむね成功していました。いまある都会の昔の場所が舞台の話ですよという導入と、神代の昔から現代に至るまで続く夫婦親子の情という背景の補強を通して、極端な物語に思えるかもしれないけどそんなこともないよと言えるラインまで芝居側に歩み寄らせることを目指したのだという理解です。

成功でなくおおむね成功と言っているのは音楽のところです。全般に一曲当たりの歌が長すぎた(特にオープニング)のと、後半に場面の割りに緩い音楽が流れたのと、字幕があってわからないことはなかったものの字幕に頼らないとわからない歌詞(特にパートごとに違う歌詞を歌う歌)は、妙ージカルとはいえ改善の余地ありです。でも後半の冒頭は歌も含めて好きでしたから、直しゃあいいってもんでもないのが、難しいです。

役者はなんて芸達者ばかりそろえたんだと思います。玉手御前でたまに大竹しのぶもかくやみたいな顔を見せたりした内田慈、オープニングで歌っているときから誰だと思った合邦道心の武谷公雄は挙げておきます。羽曳野の伊東沙保とか、合邦道心の妻の西田夏奈子とか、まあ見どころの多い役者陣でしたが、全員水準が高くてでこぼこを感じさせませんでした。

スタッフだと、美術は島次郎のクレジットが(角浜有香と合同で)残っていました。柱の組合せで抽象的に場面を切替えるのは小劇場らしい発想です。以前の木ノ下歌舞伎を当日券で見逃したから今回は観られてよかったです。

ただ客入りですが、惨憺たるものでした。土曜日とはいえ夜の公演が嫌われたか、次の日のアフタートーク付きの回に客が集中したか、3演目なので客側が落着いたか、横浜で9時終演というのが敬遠されたか。もったいないの一言です。興味がある人はこの機会に観ておきましょう。

あとは余談。この芝居は歌舞伎にもなっていますが、文楽がオリジナルです(それも、能とかいろいろな元ネタがあって作られましたが、「摂州合邦辻」のオリジナルが、という意味で)。ちょうどこの前に文楽を観て「ただでさえ耳で聞き取るのは難しい言葉をうなられるともっとわかりません」と書いたばかりなのですが、期せずして文楽の現代版アレンジを観ることになりました。

今回は極端なアレンジではありますが、これならいいかというと、文楽にとっては駄目ですね。脚本は生き残っていますが、これで役者を人形に替えても文楽らしさは残りません。ただ、武谷公雄が太夫相当の語りをつとめる場面が少しだけありますが、やっぱりはっきり語る余地はあるんじゃないかと思います。全部をはっきりとは言わなくとも、主なところだけでも。

あと、三味線以外にも楽器を足して、語りから音色要素の負担を分担する方法がないかと思います。和物の楽器を足すなら、笛だと音色が高すぎるから尺八かなと想像しますが、文楽規模の劇場だと太夫と三味線と管楽器とで音量のバランスをとるのが難しいですね。悩ましいです。

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