National Theater Live「フリーバッグ」
<2023年7月29日(土)夕>
仕事の面接に来た女性が語り始める自分の話。セックスについての奔放な話、亡くなった友人の話とその友人と一緒に始めて経営している喫茶店の話、再婚してから仲が良くない父と羨ましい姉の話、あれやこれや。
NTLiveアンコール夏祭りの1本。随分と露骨なセックスの話が初めから終わりまでふんだんに出てきて、ノリだけなら日本の小劇場のような(といってそこまで露骨なのはなかなか見かけない)雰囲気の芝居でしたが、そこで描かれているのは半分病気のような主人公、あるいは上手くいかない人生を好転させるきっかけがつかめないで少しずつ少しずつ悪い方向に押し流されていく主人公です。
多少は録音した声も使う一人芝居ですけど、練られた脚本と、絶妙の間合いで進めていく演技。脚本と出演の両方をやったフィービー・ウォーラー=ブリッジはべらぼうに頭がいい人ですね。最後にきれいにつなげたかと思ったら落ちも用意して、これがイギリス流かという一本でした。
ただひとつ惜しいのは撮影された当日の客の反応で、なんか全体に笑いを待ち構えているようなところがありました。調べたら、これはもともと2013年のエジンバラ演劇祭で上演した10分の一人芝居が元になっていて、そこから2016年と2019年のBBCのテレビドラマがあって(この脚本と主演も同じ)、そのうえで2019年の今回の一人芝居になったようです。だからテレビドラマでお下品なノリを知っていた観客がそれを期待して、そらきた、と笑っていたみたいです。笑いだすのが早すぎるんですよね。
たしか柄本明だったと思いますが、売れてしまって何をやっても観客が笑うようになってしまったら終わりだ、と言っているのを読んだことがあります。それを読んだときはよくわかりませんでしたが、はからずも実例を見て、なるほど、これでは考えつくされた脚本と演技がもったいないというのがわかりました。
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