御園座主催「東海道四谷怪談/神田祭」御園座
<2023年10月8日(日)昼>
民谷伊右衛門は浪人して貧乏生活に甘んじている。妻のお岩は男の子を産んだが産後の肥立ちが悪く、邪険にしている。そこに隣家の伊藤家から薬の差入が届き、お礼に訪ねたら一目ぼれした孫娘と一緒になってくれないかと頼まれて出世のために承諾してしまう。一方、夫の留守に薬を飲んだお岩は顔が崩れてしまう。実は伊藤家が伊右衛門の妻を陥れたものだった。
要らない了見抜きで芝居を観るために初遠征。妻を邪険にして悪い男ぶりの仁左衛門の伊右衛門と、恨めしやと恨みがエスカレートする玉三郎のお岩が見どころです。ただ、玉三郎は思ったよりも背が高いのですね。一人で演じる場面で思ったよりも背が伸びて、そこだけ驚きました。登場人物ではもうひとり、按摩宅悦を演じた片岡松之助がお岩に同情する役どころを上手く演じていたのがよかったです
役者の演技には満足しても、どうも足りない気がすると思って調べたら、通しではお岩の妹の話があったんですね。それは足りないわけだ。全体にモノトーンの舞台や衣装ですが、恨めしやというくらいだからそれは合っている。けど、なかなか悲惨な場面が続くので、拍手のしどころに欠けるのが困りました。
それを補うのが神田祭で、鳶の頭と芸者の設定を、派手な背景と派手な衣装でぱあっと明るく踊ります。こっちの玉三郎は仁左衛門とじゃれ合って実に上手で、芸者なのに初々しい。仁左衛門もそこにいるだけで格好いい。周りもとんぼを見事に決めたりして、拍手も遠慮なく何度も出ました。
観られた場面にはすべて満足しましたが、できれば四谷怪談は通しで上演してほしかった。名古屋だと出張公演になるから費用がかさむにしても、やっぱり歌舞伎座より高いチケット代になるからにはねえ、という点には不満の残る公演でした。