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2023年12月24日 (日)

松竹主催「十二月大歌舞伎 第一部」歌舞伎座

<2023年12月17日(日)昼>

生まれた子供を妻の母に見せようとやってきた夫婦だったが、母はすでに病気で亡くなっていた。旅の途中、近所の娘の世話で寺に一夜の宿を求めることになったが、寺を預かる老婆は亡くなった妻の母とそっくりだった。甦ったのだというのだが「旅噂岡崎猫」。千本桜の咲く神代の時代に、異国からの青龍の精の襲撃を受ける。千本桜の守護である白狐や美玖姫は辛くも難を逃れるが、千本桜は花を散らした。それから千年後に再開した白狐と美玖姫は「今昔饗宴千本桜」。

旅噂岡崎猫は坂東巳之助が始めからわかりやすい格好で出てきてやっぱり悪い化け猫という話。その坂東巳之助もよかったのだけど、夫婦に寺の宿を世話する近所の娘のおくらを演じた坂東やゑ亮が本当によかった。怪しげな術に操られて飛んで跳ねての大忙しだった後半も見どころたっぷりでよかったけど、それより前の普通の役のところであまり女形女形せずに快活に演じていて、だけどこういう女性は今でも周りに見かけるし昔もいただろうというモダンな女形、生きた娘役だった。ずるかったり親切だったり怖がったりと忙しい変化も納得できた。大立ち回りに影を使ったり障子が血でべっとりしたりと外連味たっぷり。初歌舞伎でも満足できること間違いなしでしょう。

で、本命の今昔饗宴千本桜。初めに挨拶で獅童が出てきて説明からお約束からペンライトの使い方から屋号の声掛け練習までしてくれる親切仕様。初音ミクまで出して準備万端といったところで開始。おとなしく観るつもりだったけど休憩時間にロビーを歩いていたら安いペンライトも売っていて、人生で一度くらいスチャッ! とやってみてもいいかなと思い直して買っておいたのがよかった。この日はうっかり良席で観られたのだけど、屋号は呼ばなくてもペンライトくらい持っていないと格好がつかない。隣の真面目そうなお姉様が気が付いたらペンライトを持って待機していたし、立派な着物をお召の奥様が終盤の場面でまっ先に立上がってペンライトを振っていたし、人は見た目だけではわからないものです。

それで派手な映像あり宙乗りあり桜吹雪砲もあり小川夏幹陽喜ありと会場が一体になって盛上がって終わったあとの感想ですけど、残念ながら出来がよくなくて気に入りませんでした。

ひとつは初音ミクの間の悪さ。録っておいた声をオペで流したのか、裏方がいてボイスチェンジャーでリアルタイムで台詞を言っていたのかはわかりませんけど、もたつきます。音が出るまでに時間差があるならそれも含めてここはこの間だろうと突き詰めてほしい。

ひとつはスクリーン頼みの映像。そりゃあ二次元の映像をどこかに映さないといけないのですけど、ちかごろのプロジェクションマッピングの進歩は目覚ましいのにスクリーンだけしか使わないのは古い。たまたま今年はミュージカルを多く観ていて「アナスタシア」とか「アナと雪の女王」とか観ていますけど、後ろのスクリーン+サイドの美術+たまにセンターの美術で話に合せた映像の使い方はあちらさんのほうが上手です。なんなら野田秀樹ですら「兎、波を走る」で高橋一生を飛ばしていた。

初音ミクが二次元文化から出てきたものだからパソコンやスマホを考えてスクリーンに引っ張られるのかもしれませんけど、スクリーン以外も使えればもっと自由度を広げて初音ミクを左右だけでなく前後にも動かせます。スクリーンを使うなというのではなく、スクリーン以外も活用したものを観たいなという希望です。

そして最後は脚本の薄さ。説明やら会場を巻込んだ一体感やらのために1時間25分の短さからさらに20分は削られていると思いますけど、スーパー歌舞伎は言うに及ばず、昔話にもなっていなかった。桃太郎が桃から生まれたら次にはもう鬼が島で鬼退治くらい、起承転結ではなく起結くらいの薄さだった。その分だけ派手な映像や立回りが多かったのですけど、それが芝居かと言われると自分の考える芝居ではない。

凱旋は結構、ここで息子のお目見えが出来たのも結構。ただし超歌舞伎としてはもっと作りこまないと派手だねの一言で終わってしまう。自分が感じた3つの不満を解決するためには、初音ミクありきでない脚本を作ってから初音ミクを組込むようにアレンジして、舞台美術と照明と映像を創りこんで、会場も歌舞伎座以外の劇場で昼夜2公演1か月以上の体制を組んだ方がいい。歌舞伎座で他に混ざっての一本だと技術の仕込みに限界がある。

初音ミク目当てでやってきた客を飽きさせないためにもう一本として旅噂岡崎猫が選ばれたと思いますけど、あれは肉体を駆使してのアクロバットだからアナログな美術でもしっくりきます。客の感想としては旅噂岡崎猫のほうがよくできていました。

ところで第三部と合せて四本の演目を観たのですけど、全部の演目で人ならぬ身のものが出てきました。どの演目も最後はなんとなくごまかされて終わってしまったところも含めて、今月は化け物尽くしだぜと中の人が狙ったような気がします。

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