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2024年2月28日 (水)

チケット販売に劇団名くらい入れてもらったほうがいいと思う

今度パラドックス定数が上演する「諜報員」ですけど、チケットの売行きはどんなもんだろうかと検索してみました。ぴあで。そうしたら「パラドックス定数」と入力しても引っかからないんですね。「諜報員」だと引っかかるんですけど。

商業演劇はさておき、劇団芝居だと普通は「劇団名『芝居名』」みたいな形で登録されています。だから劇団名で検索すれば引っかかるのに、今回は「芝居名」としか登録されてない(つまり「諜報員」としか登録されていない)ようです。

劇団側の申込時の記入ミスか、ぴあ側の登録時の登録漏れかわかりませんけど、不便ですよね。いまどき貴重な劇団なんですから劇団名も載せるようにしたほうがいいと思います。

で、ここまで書いてひとつ思いつきました。諜報員は身を隠すのが仕事だからチケット販売でも身を隠す、とか狙ってわざと劇団名を載せない形にしたとか。さすがに今時そこまでやるような酔狂はないと思います。単純に観客に対して不便を強いるだけです。流行りません。

暇ネタをしばらく書いていなかったので、ちょうど手頃そうな話題かなと思って取上げました。特に劇団に恨みはありません。いまさら訂正できるものかわかりませんがこんなことも起こりうるから気をつけましょうという話です。

2024年2月27日 (火)

2024年3月4月のメモ

こまばアゴラ劇場閉館にいまさら気が付きました。

・松竹主催「三月大歌舞伎」2024/03/03-03/26@歌舞伎座:昼の部に仁左衛門の出る御浜御殿綱豊卿

・パラドックス定数「諜報員」2024/03/07-03/17@東京芸術劇場シアターイースト:新作は男六人で近代事件のゾルゲ事件が題材と聞けば要注目に決まっている

・パルコ企画製作「リア王」2024/03/08-03/31@東京芸術劇場プレイハウス:段田安則をリア王に他もきっちり集めたキャストで

・東宝製作「千と千尋の神隠し」2024/03/11-03/30@帝国劇場:初演はコロナに祟られたけれど今回は主演を四人に増やして東京の後は国内ツアーとロンドン公演を並行して走らせる結構無茶な企画

・松竹主催「四月大歌舞伎」2024/04/02-04/26@歌舞伎座:夜の部が仁左衛門玉三郎で於染久松色読販と神田祭

・青年団「S高原から」2024/04/05-04/22@こまばアゴラ劇場:こまばアゴラ劇場さよなら公演の1本として

・フジテレビジョン/サンライズプロモーション東京主催製作「GOOD -善き人-」2024/04/06-04/21@世田谷パブリックシアター:長塚圭史演出

・梅田芸術劇場企画制作主催「VIOLET」2024/04/07-04/21@東京芸術劇場プレイハウス:初演がコロナで3日間しか上演できなかったけれど評判がよかった藤田俊太郎演出

・新国立劇場主催「デカローグ1-4」2024/04/13-05/06@新国立劇場小劇場:規模が大きすぎて小川絵梨子と上村聡史が手分けして演出するよくわからない公演

・動物自殺倶楽部「夜会行」2024/04/24-04/28@「劇」小劇場:鵺的で初演した芝居を別ユニットで上演

・青年団「銀河鉄道の夜」2024/04/25-04/29@こまばアゴラ劇場:こちらもこまばアゴラ劇場さよなら公演の1本として2チーム上演

今回は割と公演期間が長めの芝居がみっちりと詰まっています。

KERA CROSS「骨と軽蔑」シアタークリエ

<2024年2月25日(夜)>

どこか西洋風の国。東西に分かれて戦争が続いており、男手はすでに足りなくて女子供まで徴兵されている。その西側で兵器工場を経営する一家。兵器工場の社長である主人は病気で寝たきりとなって女性秘書が何くれとなく世話を焼いている。その妻は完全に夫のことを諦めている。二人の娘は姉が売れない小説家だが徴兵されそうになった夫が行方不明になる。独身の妹は家の手伝いをしながら夫から姉に届く手紙を母と女中と相談して処分している。

どことなく暗い雰囲気の一家と関係者を描く女優ばかり7人の芝居。女中役の犬山イヌコがたまに客席に語り掛けたりして自分がこれまで観たKERA芝居とはやや違う。ただ、気が付いたら終わっていた。それはのめり込んで時間を忘れたのではなく、もうふた波乱くらい来るかなと考えていたところで巻きに入ると宣言されて、さらにそこからが微妙に時間が掛かる。女性秘書が起点になってもう少し一家を引っ掻き回すかなと思っていたけれどそちらの話が少な目。

何となくだけれど、もう少し用意していた話があったのを上演時間の都合で削ったような気がする。休憩を挟んで3時間に収めていたのは観る側としては助かるけれど、「フローズン・ビーチ」なんかは休憩なしの2時間だったからあれと比べるとどうも話の密度が薄く、食い足りなく感じた。

役者で言うと、頭から芝居のリズムをわからせてくれる犬山イヌコがやっぱり得難いところで、峯村リエが後半もう少し出番がほしくて、宮沢りえが出番の割りにもったいなくて、鈴木杏が後半に向かってどんどんよくなって、堀内敬子が地味ながらもおいしいところもある役をきっちりこなして、水川あさみは役どころの割りに出番が少ない。

小池栄子が難しい。かなりいい役を持ち場以上にいい役に仕上げていた。でもあの役はもう少しとんちんかんで不穏な役にもできたんじゃないか、明るく前向きな役に仕上げたばかりに食い足りなさの原因のひとつになっていないか、と疑っている。演出かもしれないけど。

文句なしにすごかったのは舞台で、庭と屋敷の中をプロジェクションマッピングと照明で切替えるけど、どう見ても無茶な美術のはずなのにまったく違和感がない。違和感がなさすぎて芝居中でネタにしていたくらい違和感がない。それはもうさすがとしか言いようがない。これを見たらミュージカルのスクリーンやプロジェクションマッピングですら野暮ったく見える。場面転換の極致みたいなことをやっているのでこれは見てのお楽しみで。

神奈川芸術劇場プロデュース「スプーンフェイス・スタインバーグ(安藤玉恵版)」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2024年2月24日(昼)>

自閉症として生まれ、小児癌で7歳にして死に直面している少女であるスプーンフェイスが語る自分の一生と死に臨んでの心構え。

出ずっぱりしゃべりっぱなしの一人芝居でこの日は安藤玉恵。脚本は片桐はいり版と同じで、あまり子供らしくも病人らしくもなくはっきり客席に語り掛ける演出。内面の大人びたところを外に出した役作りというか。人形に話す相手を割当てて進めるところが片桐はいり版にはない工夫。

多少幕の上げ下げを調整するとかマイクを使うとかはあるけどスタッフワークはほぼ同じ。全体にスタッフワークのはまり具合は安藤玉恵版のほうがよくて、こちらを基準に仕立てて片桐はいりもそれに合せたっぽく見えた。

それで仕上がりはというと、これは脚本負け。少女も自閉症もわざわざ見せん、自分流で丸ごと料理してやる、という意気込みはあったのかもしれないけど、重たい話を引受けきれていない。早めの台詞回しと場面ごとの間もあまり取らないのとで話がどんどん流れてしまった。安藤玉恵をもってしてもこれか、と脚本の手強さを再認識。あと15分余分に使ってもう少しゆっくりやってくれと演出で最短上演時間を縛ってもよかったのではないか。

神奈川芸術劇場プロデュース「スプーンフェイス・スタインバーグ(片桐はいり版)」神奈川芸術劇場大スタジオ

<2024年2月22日(夜)>

自閉症として生まれ、小児癌で7歳にして死に直面している少女であるスプーンフェイスが語る自分の一生と死に臨んでの心構え。

出ずっぱりしゃべりっぱなしの一人芝居でこの日は片桐はいり。少女を演じながらいろいろなものや人形を相手にちょこまかと動いているうちになんとなくそれっぽく見えてくる。立てたくなるような台詞がたくさんあるにも関わらずかなり抑えめに進めて、最後に思い切りはじける演出。観客が自閉症の子供を観るような動きや話し方を少し出した役作りというか。

脚本では収容所でも遊んでいた子供の話が出てきて、どうしてもドイツで死の話というとナチスと収容所が出てきやすい。それはしょうがないけど、でもいまはイスラエルとパレスチナの話があって、やられてやり返すにはまあなかなか徹底しているな、みたいな話がある。だからそこがフックにならずにむしろ引いてしまった。上演時期の問題とはいえ不利に働いたのはつらいところ。

仕上がりは、あと少しで傑作に手が届きそうだったけれども手前で届かなかくて惜しい、くらいの出来。父親が酔ってスプーンフェイス相手に嘆く場面と最後にはじける場面がよかった。選曲が何となく合っていないように聞こえたけどこれは後で観た安藤玉恵版と共通で使っていたから。面倒でも選曲は変えたほうがよかったと思う。

この日は片桐はいりに演出の小山ゆうなと芸術監督の長塚圭史の三人でアフタートークがあったのでうろ覚えだけれどメモ。言葉遣いは私の脳内で勝手に変わっているので注意。

長塚:自分も公演中なので観るのが実は今日が初めてです。昔、パルコ劇場で麻生久美子さん朗読を演出したことがあります(2010年4月)。それは2日しか上演しなかったけれど頭の片隅に引っかかっていて、今回芸術監督として上演演目に選びました。

小山:自分の周りではパルコの朗読を観た人が何人かいて評判がよかった。

長塚:イギリスのキャサリン・ハンターが一人芝居で上演したのは知っているけど観たことがないからどうやったのかわからない。そうしたら片桐はいりさんと安藤玉恵さんを提案された。前に片桐はいりさんと一緒に仕事したときには「もう人間とか演じないで物とかやりたいんだよね、物」と話していたので(笑)そんな人がどうやるのかとても興味があった。

片桐:そんなこと言いましたっけ。

長塚:片桐はいりさんは小野寺修二さんの舞台に出たりしてフィジカル寄りの印象を持っていた。

片桐:近ごろは(ひざ? 脚? をさすりながら)身体の調子が悪くてフィジカルな舞台に出られないんです。もともと台詞を言うのは苦手だったけれどもそれでも舞台に出たいと思ったら台詞をやるしかない、と。だから一人芝居に挑戦したけれどいつも悩んでいます。特にこんなご時世(戦争のことか)だから火花の話(終盤)の台詞なんてどうやって言おうとか。

小山:片桐はいりさんは理想が高くて妥協しないから毎公演で終わった後に舞台裏に戻ってきたら「上手くいかなかった」って言っているんです。

片桐:そういう舞台裏はお話しないでください。だったら金返せって言われても返せませんから(笑)。

長塚:オープニング、顔を出すところからすでによかった。

片桐:稽古は安藤玉恵さんと一緒でした。それで初めは幕に影を映しながらゆらゆらとやるオープニングを提案したけどこれは演出で却下されました(笑)。安藤玉恵さんは「それなら私は天井から降りてきたい!」って話していましたけどそれはありません(笑)。でも私とは別のオープニングです。

長塚:稽古はどうでしたか。

片桐:安藤玉恵さんと共通にするポイントだけ決まっていて間は好きにしていいという演出でした。で、元がラジオドラマだからト書きの一切ない脚本なんですね。つまり自由にやらせてもらおうと。カメラを使うのは小山ゆうなさんの提案です。

小山:でも発想がすごい。スプーンフェイスがカセットテープを相手に吹込む場面は片桐はいりさんの提案なんです。しかもそれを隠したところが父親の荷物の間なんですよね。

長塚:朗読はほとんど稽古期間が取れなくて、それでも頼んで5日間稽古したけれど、翻訳も同じ常田恵子さんなのに「あれ、こんな場面あったかな」と観ていて焦りました(笑)。ああいうことはどうやって思いつくんですか。

片桐:わざわざ考えることはなくて、周りのもので何とかするというか。カセットテープのことだと稽古場をぐるっと見渡して、よしこれ、ってそこまで深く考えずに試しました。

長塚:人形に話しかけたり。

片桐:自分版の演出はいつも台詞を誰に話すか問題があるので。あまり話すとこれから向こうも観てくれる人にネタばれになるから言いませんけど安藤玉恵さんはもっと客席に語り掛けるスタイルです。自分はストレートにそのままやりたくないからわざわざ面倒な演出を試してしまって。

それで出来れば両方観てください、みたいな話をして終わったのかな。こんな感じの話でしたけれど、昔はもっと覚えられたのに(嘆)。

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