KERA CROSS「骨と軽蔑」シアタークリエ
<2024年2月25日(夜)>
どこか西洋風の国。東西に分かれて戦争が続いており、男手はすでに足りなくて女子供まで徴兵されている。その西側で兵器工場を経営する一家。兵器工場の社長である主人は病気で寝たきりとなって女性秘書が何くれとなく世話を焼いている。その妻は完全に夫のことを諦めている。二人の娘は姉が売れない小説家だが徴兵されそうになった夫が行方不明になる。独身の妹は家の手伝いをしながら夫から姉に届く手紙を母と女中と相談して処分している。
どことなく暗い雰囲気の一家と関係者を描く女優ばかり7人の芝居。女中役の犬山イヌコがたまに客席に語り掛けたりして自分がこれまで観たKERA芝居とはやや違う。ただ、気が付いたら終わっていた。それはのめり込んで時間を忘れたのではなく、もうふた波乱くらい来るかなと考えていたところで巻きに入ると宣言されて、さらにそこからが微妙に時間が掛かる。女性秘書が起点になってもう少し一家を引っ掻き回すかなと思っていたけれどそちらの話が少な目。
何となくだけれど、もう少し用意していた話があったのを上演時間の都合で削ったような気がする。休憩を挟んで3時間に収めていたのは観る側としては助かるけれど、「フローズン・ビーチ」なんかは休憩なしの2時間だったからあれと比べるとどうも話の密度が薄く、食い足りなく感じた。
役者で言うと、頭から芝居のリズムをわからせてくれる犬山イヌコがやっぱり得難いところで、峯村リエが後半もう少し出番がほしくて、宮沢りえが出番の割りにもったいなくて、鈴木杏が後半に向かってどんどんよくなって、堀内敬子が地味ながらもおいしいところもある役をきっちりこなして、水川あさみは役どころの割りに出番が少ない。
小池栄子が難しい。かなりいい役を持ち場以上にいい役に仕上げていた。でもあの役はもう少しとんちんかんで不穏な役にもできたんじゃないか、明るく前向きな役に仕上げたばかりに食い足りなさの原因のひとつになっていないか、と疑っている。演出かもしれないけど。
文句なしにすごかったのは舞台で、庭と屋敷の中をプロジェクションマッピングと照明で切替えるけど、どう見ても無茶な美術のはずなのにまったく違和感がない。違和感がなさすぎて芝居中でネタにしていたくらい違和感がない。それはもうさすがとしか言いようがない。これを見たらミュージカルのスクリーンやプロジェクションマッピングですら野暮ったく見える。場面転換の極致みたいなことをやっているのでこれは見てのお楽しみで。
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