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2024年5月 2日 (木)

AI脚本の朗読劇が中止になった話のメモ

少し前の話で、そんな公演が予定されていたのは中止になってから知ったのですが、もったいないなと思ったのでメモだけ残しておきます。

といっても遅れたのでいまいち話が分かっていません。AIに脚本を書かせて、それを声優に読ませる朗読劇だったようです。公式サイトより。

この度、弊社が企画いたしました「~AI朗読劇~AIラブコメ」についてAIで生成された脚本、デザインについてご説明いたします

日本俳優連盟様が、文化庁に提出されました【AIと著作権に関する考え方について(素案)】の中に書かれている「AIは、人間のクリエイターに取って代わるものではなく、人間のクリエイターに力を与え、補強するために使われるツール」という点において、弊社としても同じ考えをしており、今回の企画についても、その考えに基づいて制作をしております。
脚本、デザイン共に生成AIアプリを使用はしておりますが、一部利用しているにすぎず、クリエイタースタッフがハンドリングして制作しております。
具体的には、生成AIアプリに複数のキーワードを入力し、導き出した成果物に、クリエイターが手を加えて仕上げております。

生成される成果物は様々なキーワードの組合せによって無限に変化致しますので、何度もキーワードの組合せや言い回しを変えながら繰り返すことで、希望イメージに近い成果物が出るように、クリエイターが努力をしています。そのキーワードのセレクトはクリエイタースタッフが知恵や経験を活かして一般的なパブリックなワードを捻出しております。
※特定のクリエイターや個人のお名前、及び、作品名、キャラ名など著作権を有する名称をキーワードに用いることは一切行っておりません
以上のように、本作の制作の過程において生成AIアプリは、あくまでクリエイターが創作する一助に過ぎないことをご報告させていただきます。

本企画は、AIというデジタルを使って、人間が紡ぎ出す作品に、固定概念にとらわれない要素が入る、新しいクリエイティブへの挑戦であり、今までにない世界を楽しめる作品を目指して企画いたしました。
実際に、作られた脚本もデザインもクリエイタースタッフがまったく予想していなかった点が多々ありますので、ご来場いただいたお客様にはお楽しみいただけると思っております。

「~AI朗読劇~AIラブコメ」主催
株式会社Lol

元はシアターサンモールで2024年3月13日(水)-3月20日(水)に11公演を行なう予定で、ステージナタリーで見かけた出演者表だと1公演4人の声優が交代で演じる予定だったようです(クレジットが3人の公演が1回だけありますが)。

ところがこれが3月9日に中止になります。公式より。

この度、弊社企画で上演予定でした「~AI朗読劇~AIラブコメ」につきまして、公演を中止することとなりました。

応援いただいていた皆様及び、関係者の皆様には多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

この企画は、進化するデジタル技術とエンターテイメントとの融合を、皆様に楽しんでいただく新たなる試みとして企画いたしました。
本企画の発表の後、皆様より様々なご意見を頂くことは予想しておりましたが、一部の方々には、意図せず不信感・不安感を与えてしまう結果となり、関係者の皆様、出演者の皆様、事務所の皆様に多大なるご迷惑がかかる危険があるとの理由から、断腸の思いではございますが、中止という判断をさせていただきました。

チケットの払い戻しにつきましては、ご購入いただきました各プレイガイドにて対応させていただきます。払い戻し方法が決まり次第、改めてご報告させていただきます。

また、応援してくださった皆様、あたたかいメッセージをいただきました皆様には、心より感謝を申し上げますとともに、このような結果になってしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。

これだけだとよくわからないので検索したら読売の記事が見つかりました。「『AI脚本』を人気声優が朗読…銘打ったイベントは中止、『盗作』と批判相次ぎ 」より。

 同社によると、脚本は、業務委託したクリエイターが、有料で契約したチャットGPTなどの生成AIにアイデア出しを指示し、生成AIが作り出したものをたたき台にして、作成したという。既存の著作物と類似していないか複数で確認したとしている。

 劇場では、脚本の内容や話の流れに不自然な点があっても声優がそのまま読み上げて、終了後のトークセッションで、どの部分がAIで作られたものか種明かしする予定だったという。

 生成AIは、インターネット上の膨大な情報を機械的に学習し、精度を上げている。著作権法30条の4は、著作権者の利益を不当に害する場合を除き、AIが脚本などの著作物を無断学習することを認めているが、権利者団体などからは「ただ乗りだ」などと批判の声が出ている。

 同社が3月4日以降、SNSで「AIが書いた脚本を声優が演じる!」などとイベントの概要を発表すると批判が殺到。「無断学習がまかり通っている今、盗作脚本と変わらないのではないか」といった声や、生成AIを利用したイベントに声優が参加することで「声優さんの声を(AIに)学習されても何も文句言えなくなる」などの声が多く上がった。

 同社に対しても、「出演する声優は応援しない」「中止にすべきだ」といった批判的な意見が500件ほど届き、イベントが始まる4日前の同月9日に中止を発表した。

 同月6日から販売していたチケットは全額返金予定だといい、中止による損失額は1000万円に上るという。同社は取材に対し「エンタメの新しい可能性の一つとして生成AIを使ったが、説明不足な点があった。出演者の声優に迷惑がかかる危険があり、断腸の思いで中止の判断をした」としている。

なお公式に載っていた粗筋は以下の3本です。声優が演じることの前提か受け狙いかはわかりませんが、漫画やアニメやラノベに寄せた設定ですね。はっきりしませんが一度に3本上演する予定だったと思われます。

第1話『エイプリルフールの恋人』

登場人物
佐藤美咲:高校1年生の十五歳。ごく普通の女子高生。本が好き。
犬飼太陽:小学3年生の男子。美咲に好意を持っている。ちょっと生意気。10年間、二十歳になるまで毎年美咲に告白をする。

あらすじ
4月1日。高校の入学式の日。
美咲はいつも通る桜の木の下で突然告白をされる。しかし、その相手の背中には明らかにランドセルが・・・
10歳だという太陽の真剣な告白に心を動かされた美咲は「二十歳になったら付き合ってあげる」と約束をする。
年の離れた二人は徐々に心を通わせ、太陽は中学生になった。
だが、美咲と連絡が取れなくなってしまい・・・

第2話『声響剣士、幻想世界でアイドル譚』

登場人物
青山海斗:アイドルグループ『エンシャントドリーム(Enchanted Dream)のメンバー。
ルックスもダンスもファンサービスも完璧なのに、歌がど下手。
しかし、その声は異世界で桁外れの攻撃力となる。
リリア・ホーリーブルーム:異世界の見習い神官。ドジでおっちょこちょいだが〝声〟の攻撃力を目視する能力を持っている。その反面、修行不足のため自分の心の声がダダもれてしまう欠点がある。

あらすじ
海斗は人気アイドルグループのメンバー。
だが、歌が壊滅的に下手なことが原因でメンバーとぎくしゃくしてしまう。
そんなある日、ひょんなことから異世界に飛ばされるのだった。
見知らぬ世界で海斗を見つけたのは、リリアという新米神官。
海斗の甘いマスクも異世界では全く通用せず、ルックスには自信があった海斗は落ち込むが、逆にコンプレックスだった歌声が、魔物を倒す武器になるとわかり・・・

第3話『御曹司の花婿』

登場人物
桜井大樹:桜井財閥の御曹司。大手化粧品メーカーの若手社長。 俺様気質でクール。正妻の子ではないため冷遇されている。
一条かおる:蚕業を営む一条家の当主。内緒でラノベ作家をしている。滅多に外出しないので肌だけはキレイ
柏木真央:大樹の秘書。秘かに大樹に想いをよせる
一条ひかる:かおるの姉でワガママなお譲様

あらすじ
若くして大手化粧品メーカーの社長に就任した桜井大樹。
幼い頃から誰かと政略結婚させられることは決まっていたので、結婚に関して興味はなかった。 父親が持って来たのは、よりにもよって性格が最悪な一条家の長女ひかるとの縁談。
しかし、見合いの場で大樹は、ひかるの付き添いで来ていた弟のかおると結婚したいと言い出す。
もちろん無理だと断るかおるだったが、意外にも大樹の父は乗り気になった。
かくして、男性同士の偽装結婚生活が始まり・・・・

私はこれ、試しに一度上演してみればよかったんじゃないかと思うんですよね。「劇場では、脚本の内容や話の流れに不自然な点があっても声優がそのまま読み上げて、終了後のトークセッションで、どの部分がAIで作られたものか種明かしする予定だったという」というから、むしろ今時のAIでどのくらいオリジナルな脚本が作れるのか実験としてちょうどよかったんじゃないかと思います。

だから抗議をした人たちの背景は知りませんが、本気で盗作脚本を疑う人が抗議するなら「あとで盗作を検証するために映像とトークセッションを残して公開するところまでやるべきだ」と言うべきだったと考えます。そもそも私たちは本や映像や舞台や音楽を吸収して育って、その人たちがオリジナルを書いたりパクリを書いたりするわけです。脚本家が知らずに書いた場面が他の作品に似ていたとして、それはオリジナルかパクリかというのは興味深い議論です。著作権上は先取権の利が優先されますが、昔の大家でもパクリじゃないのかという作品は見かけるところですから。

なお「声優さんの声を(AIに)学習されても何も文句言えなくなる」なんて抗議は論外で、別の話です。本職の声優同士や声優組合(あるのかわかりませんが)が言うべきことで、将来の話はさておき、これで実際に声優の仕事をひとつ潰したわけですから、贔屓の引倒しです。ついでに言えば、声優の声だけではなく生身の演者としての価値が高まる可能性は信じなかったのかなとも思います。

で、盗作云々の話にもどりますが、私はAIに限らず非常に難しいと思うんですよね。というのも、一度だけ事例を調べてみたことがあるので。もしこのAI脚本に盗作を指摘できるような箇所があるならそれを挙げてもらって、むしろどこまでが盗作でどこまでが一般論か、グレーゾーンを潰すことはできないにしても狭めるような議論ができればよかったと思います。

初めての試みでそこまで要求するのは酷な話ですし、興行側が発表以上にどこまで深く考えていたかは知る由もありませんが、軽く検索した限りは中止にしたのはもったいなかったというのが私の今の感想です。

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