青年団「思い出せない夢のいくつか」こまばアゴラ劇場
<2024年5月11日(土)夜>
歌手とマネージャーと付人が、営業先に移動するために夜中の電車に乗っている。煙草を吸いに行った別の車両では、妙な乗客に話しかけられて辟易とする。車中のこととてたいしたことができるわけでもなく、取りとめもなく交わされる会話の数々。
マネージャー役の大竹直と歌手役の兵頭公美は2019年版と同じ、付人が南風盛もえで今回は変わりました。元は緑魔子主演の外部プロデュースのために書かれた、銀河鉄道の夜をモチーフに作られた一本ですけど、当日パンフには「阿房列車」をセルフカバーする形で作られたとありました。冒頭にほとんど同じ会話を出してきたので、両方観るとそこは同じような台詞でも変わるものだなと。
あれと言えばこれと返せるくらい話が合う付合いの長い歌手とマネージャーで、別の人間と結婚数ヶ月で破綻した歌手はマネージャーにひそかに好意を寄せている、というところまでは2019年版と同じです。ただ2019年版は、「夫婦が似るって本当ですか」と聞く若い付人に懸想するマネージャーと、それを察していながら知らん振りして若い付人を遠くへやれないか考える歌手、という関係に見えました。そこが今回は、すでにマネージャーと付人は付合っていて、付人は歌手を尊敬していて、歌手は二人を応援する、という関係に見えました。はっきりとした応援の台詞や笑いの終わりに泣いたように見せる演技が前回はあったか、思い出せません。
前回観たときもいいなあと思いましたが、この芝居にはマネージャー役の大竹直と歌手役の兵頭公美の組合せが似合っています。青年団で平田オリザの演出に応えつつ、普段の青年団らしくない雰囲気も出せますよね。南風盛もえも好演でした。
「S高原から」「銀河鉄道の夜」と来て、「阿房列車」に続けてこの「思い出せない夢のいくつか」を観て、こまばアゴラ劇場の閉館前の観劇を締められたのはよかったです。「思い出せない夢のいくつか」を最後の1本にしたかったので、それは上手くいったし、最後の1本にふさわしい仕上がりでした。
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