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2024年6月23日 (日)

東京喜劇熱海五郎一座「スマイル フォーエバー」新橋演舞場

<2024年6月23日(土)昼>

実は魔法使いが秘密で暮らしている現代社会。さる年老いた魔法使いの男性は銀行強盗が押入った場面に遭遇する。犯人が拳銃を撃ったところで時間を止めて弾を逸らしたのはいいが、その後で跳ね返って自分の足をかすめてしまう。しかもその場には都知事の母と娘が来店していたが、弾が当たって痛がる老人の苦しむ顔を見た恐ろしさのあまり、娘は笑うことを忘れてしまう。この娘に何としてももう一度笑ってもらおうと、人の心を動かす魔法を覚えなおすべく魔法学校に入りなおした老人だったが、生徒も先生も曲者揃いというか何というか。

あらすじは書きましたし、それなりに最後まで筋は通っていますけど、それよりは喜劇を転がすための設定の意味合いが強いです。開演前から言われた通り、気楽に観る芝居です。この日は客のノリもよく、釣られて気楽に笑いました。

観たのは伊東四郎が気になったのが第一ですけど、初めは観ていてどきどきしました。声に張りがないのと歩くのがゆっくりだったのが、振りなのかどうなのかわからなかったんですよね。最後に魔法で元気になる場面を披露するつもりじゃないかと。そうではありませんでした。動きが激しくなる場面では補助のように役者が付いたりもします。あれを観ると役者は足腰だと仲代達也が言った理由もわかります。

ただしそれを早い段階からネタにして、伊東四郎が年寄であることもたくさんネタにしていました。これが年齢層高めの客席に大うけで、あれだけできればまだまだ元気といわんばかりにからっと客席が笑っていたので、しばらくしたら年齢のことは気にならなくなりました。

で、芝居に沿ったネタだけでなく、伊東四郎の経歴を大いに生かしたネタも大いにありました。一瞬刑事のふりをして「お前は刑事か!」と突っ込まれるとか、そういうやつですね。「魔法が長すぎるからもっと短くしたらいいんだよ」「短く」「そうだよ」「ニン!」とか、ずるいですよね(笑)。そのへんはもう、楽しんだ人の勝ちです。

あとは動きや台詞回しがゆっくりでも、芝居が丁寧です。初めの銀行強盗の場面で弾筋を追う動きとか、しっかりまっすぐ線を引いていました。台詞も、年寄という設定が前提にあるものの、ゆっくりなりに芝居する。あれは周りが台詞を聴ける達者な役者ばかりなのも大きいと思います。

その周りですが、芝居の筋では都知事に松下由樹を持ってきましたけど、それは本物にサービスが過ぎる(笑)。来月の選挙云々とか、時事ネタもばっちりです。そしてレギュラーメンバーは、こちらも開演前に高齢化をネタにしていました。が、さすがに足腰は平気だし、芝居はこちらも達者です。三宅裕司や春風亭昇太や深沢邦之もいいですが、渡辺正行の軽さや、小倉久寛の変な役のこなし振りが、いいですよね。

ラサール石井だけ、滑舌が怪しくなっているところに年が出ていましたが、大過なく務めていました。「この議論の続きはX、旧Twitterで」「お前はそうやって議論するのがよくないんだよ!」と突っ込んでいたのは脚本家に拍手したい。熱海五郎一座の前身である伊東四郎一座の旗揚げ公演で、突っ込みができないことを悩む患者のラサール石井に医者の伊東四郎が「まずはそのままのことを言えばいいんだ」と言われて、聴診器を当てられて「お腹、胸、口、鼻、頭(適当)」となってしまうコントは私の芝居人生の中でも大好きな場面なので、いらん議論よりも役者に邁進してほしいです。

総じて、楽しんだもの勝ちの芝居であり、そのあたりが軽演劇なのかなと会得しました。そして年齢が高いにも関わらず軽い芝居を続けられる役者陣、すごいですよね。歳をとっても軽くいられるのって本当に見事です。

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