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2024年6月15日 (土)

フライングシアター自由劇場「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」新宿村LIVE

<2024年6月7日(金)昼>

王が滅ぼした国の女王との結婚を数日後に控えたある日、家来が王に訴える。息子の婚約者がである女性が、息子の友人と心を寄せ合っているのだという。女性は友人の女性に別れを告げて森に駆落ちするが、これが息子に告口して二人で森に向かう。その夜の森では職人一同が王の結婚式で上演するために稽古に励んでいた。だが森の中では妖精の王と女王が喧嘩中であり、これを何とかするために妖精王はいたずら好きの妖精パックに命じて目を覚まして初めて見た者を好きになる媚薬を女王に塗るように渡す。妖精パックがあちらこちらで媚薬を塗ってしまい・・・。

えーと、すいません、日にちを置いて感想を書こうとしたらチラシがどこかに紛れてしまいました。が、Wikipediaを見たところ家来の「娘」が婚約者の「男性」がいるにも関わらず別の「男性」と恋仲になり、という筋ですね。なんか間違いながら観ていたようです。大勢に影響はありませんが、そのくらいの集中力だったということで、あらかじめ断っておきます。

元は「真夏の世の夢」ですが、人間の王と家来に関わる話、妖精の話、稽古する職人の話、役者がそれぞれで1役ずつ持った上で、さらに役者としての独白を持たせるように構成された芝居です。全員白い衣装で、舞台は白い幕に、木とか城とかの形に切り出した白いパネルを役者が動かします。だからしつらえだけなら学芸会と言っても当たらずとも遠からずです。

そのくらいぎりぎりまで削った舞台美術にも関わらず、やっぱり観るに値する出来に仕上がっています。ひと言でいえば役者が達者。王様から壁(笑)までこなす島地保武と、軽く明るい声がアクセントの谷山知宏のコンビがいい味出しています。この2人に、割とフラットに演じた大空ゆうひの3人が身体に存在感がある。四角関係の婚約騒動組も頑張ります。

なのですが、役者だけではない。やっぱりこれは演出の串田和美の意思が色濃く貫かれているから観られる芝居になっているんですよね。終盤に暗転して「壁を壊せ」という声と工事機器で壁を壊す音を挟んでくる。この壁が、劇中の王と職人と妖精であったり、それを演じ分けないといけない役者であったり、あるいは芝居の世界と役者自身の独白による現実の世界との壁でもあり、しっかり作り込んだ商業演劇とそこまでやらなくたって芝居は芝居というミニマムな演劇との壁でもあり、宝塚からダンサーまで多岐にわたる出自の役者の混成チームのことでもあり、いろいろ捉えられます。とにかく役者になんでも分け隔てなく演じさせることで、そういう壁を取っ払って見せたところに意味があるのかな、と受取りました。もちろん、客に向けても壁を取っ払ってみろよと訴えるところもあるのでしょう。

それは今の時代となってはやや純朴に過ぎるメッセージではないかと思わないでもないのですが、それにも関わらず一定の説得力を持って成立っているんですよね。挙げたようないろいろな壁を取っ払った芝居を実際に創ってみせたというだけでなく、様々な立場から長年芝居を創り続けてきた、松尾スズキに「真面目に不真面目をしている」と言わしめた串田和美の矜持みたいなものが支えになっているのでしょうか。「K.テンペスト2019」もそうでしたけど、いろいろなアレンジを施すことがあっても芝居の核は外さない自信があるのかもしれません。

その串田和美の役者ぶりですが、やや声は小さくかすれているものの以前とさほど変わりません。それより独白の場面とは一転、パックを演じているときのあのじゃれるような、思い出しながらやっているような、ふざけた様子はまさにいたずら好き妖精ですね。

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