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2024年6月15日 (土)

ゴツプロ!「無頼の女房」本多劇場

<2024年6月7日(金)夜>

昭和二十三年の東京。人気作家の塚口は自宅に押掛ける編集者を待たせて二階で原稿を書き続ける。言論の鋭さと、躁鬱が激しくて二階から庭に飛び降りたりするような奇行を行なうことから無頼派作家と呼ばれる塚口を内縁の妻は支えるが、その妻にも我儘を言っては編集者や作家仲間の付合いを優先させてしまう。そんなある日、塚口が原稿を書き上げて編集者と飲みに行くが、編集者が原稿を忘れてしまう。それは塚口が以前に愛していた女流作家との話を描いたものだった。

坂口安吾をモデルにしつつ、その妻と周りの人物に焦点を当てた1本。中島淳彦脚本は初見ですけど、いい意味で小劇場らしい大らかさに溢れた仕上がりでした。

それぞれ欠点なり弱点なりの多い登場人物たちを前向きに仕上げてくるところはお手本です。一方で、熱量を前面に出した塚口に対して登場人物全員、距離感にある程度の齟齬があり、塚口が面倒見のいい相手は冷静で、塚口に親身な人ほど塚口が我儘をいうのは、世の中そういうところがあるよね、といったところでした。それがある出来事をきっかけに爆発する脚本、よくできています。

ただ、「贋作・桜の森の満開の下」は観たことがあっても、私は坂口安吾を1本も読んだことがないんですよね。だから一生懸命原稿を書いているのはわかっても、女流作家の話と、台詞でいくつか出てくる話以外、どういうことを書いている作家なのかがわかりませんでした。職業作家として生活のために原稿を書く必要があるのはわかりますが、無頼派として飲み歩く以外に作家としてのインプットをどこでしているいのかがわからなかった。「原稿を走る筆の音が、まるで身を削る刃物の響きに聞こえて」という台詞が浮いていた。脚本に足りなかったことをひとつだけ挙げるとしたら、塚口の作家面です。

ただしタイトルロールはその妻ですし、その分だけ周りの人間を描いています。いまなら編集者はもっと無礼な人間に描かれてもいいんじゃないかと思いますが、初演が2002年らしく、それならしょうがないです。個人的に好きな場面は、お手伝いのかんのひとみが爆発するところ、匿われに来た女流作家の妹を作家仲間の久保酎吉が口説こうとするところ、その妹の鹿野真央が姉の靴を置いて姉の身体を順番に思い出すところ、です。本筋と関係あるようなないようなところにも見所、演じどころの多い芝居でしたし、役者もそれによく応えて、しかも最後はばっさりと終わるところが、いろいろ見事でした。

近ごろの流行りである精密に深彫りしていく演出の芝居とは反対でしたが、脚本には合っていましたし、それで楽しめました。急に芝居を観られることになったので何を観ようか迷って選んだのですが、我ながらいい選択でした。

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