新国立劇場主催「ピローマン」新国立劇場小劇場
<2024年10月18日(金)昼>
とある検閲の厳しい国家で警察に呼ばれた男。兄と二人で暮らしており、趣味で短編小説を書いている。一緒に押収された小説は子供が酷い目に遭って終わる話ばかりだが、それで警察に呼ばれるとは考えられないと訴える。やがてやり取りの末に聞かされた話は、自分の書いた小説の通りに殺された子供がいて、兄と共謀して子供を殺した容疑であることと、隣の取調室に兄も呼ばれていること。自分も兄もそんなことはしていないと必死に訴えるが・・・。
悲惨な話で定評のあるマーティン・マクドナーの一本を小川絵梨子が演出。十分に素晴らしい出来だけど脚本の裏テーマである小説家と読者と物語の話を掘りすぎて表である酷い目に遭った子供の話が置いていかれた感あり。まだまだ役者にできることがたくさんある印象。
劇場の壁にも貼られていたしこの日あったアフタートークの頭でも話していたけど、物語を創ることを演出家が追及した結果こうなったのは想像が付く。ただ、アフタートークで真っ先に、救われましたよねと司会が話していたけど、誰が何から救われたかといえば観客が絶望から救われたのは第二で、第一には作家の弟がそこに至るまでの酷い人生のはずだから、そこは両方追及してほしかった。
ちなみに小川絵梨子の過去の本人演出は観逃したけど、パルコ劇場の日本初演(のはず)は観たことがある。あのときはロンドン留学前でバイオレンス全盛時代の長塚圭史が演出して、高橋克実、山崎一、中山祐一朗、近藤芳正が主要4人だった。今回よりももっと乱暴な演技で表の話を強調しながらも、物語を創る裏の話は脚本に十分織込まれているのだからそれでも通じた覚えがある。記憶の美化はあるかもしれないけど。
今回は対面舞台。距離が近いのは結構なことで、奥側の席で観たけれど多少正面寄りの場面はあってもさして損した気分はなかったからそこは気を使って演出されていた。ただし舞台前面端に置かれた美術の数々は客の陰に隠れて後ろからは見えなかったから、前2列くらいとそれより後ろとでは受ける印象はかなり変わるはずで、あれはもったいなかった。バルコニー席は不明。音響が選曲と会場の音響構築と両方でいい感じ。
アフタートークは次があって途中で抜けたからあまり書かないけど、役者全員に小川絵梨子に司会は中井美穂であっているか。全員で英語脚本と小川絵梨子の翻訳を見比べながら細かい語尾や単語は役者が調節もしたらしい。あとは非常に雰囲気のいい現場だと役者が全員強調していたけど、それなら余所の現場はどうなんだとツッコミのひとつもほしいところ。人が多すぎて話を回すのに一苦労で分散していたのがもったいない。
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