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2024年12月29日 (日)

ハイバイ「て」本多劇場

<2024年12月27日(金)昼>

祖母、両親、二男二女の家族だが、長男以外はすでに家を出ており、祖母は痴呆が進んでいる。そして祖母が亡くなった葬式の日から数日前、長女の呼掛けで久しぶりに一家が実家に揃った日に起きた家族の話。

これで5演目でしょか。私が過去に観たのは再演再々演。その時は前半と後半の再現度を極限まで高めて観客側に気付かせることに重きを置いた演出でしたが、今回は前半が次男視点、後半が母視点により寄せた演出になって、見やすさを追及していました。あと、細かいところは少しいじっている模様で、母親が携帯電話で話すエピソードは、前はあったかな、思い出せません。

その中でもこれはネタバレですけど、父親役は後半だけ岩井秀人に入替る形になっています。岩井秀人は以前は母親役を演じていましたけど、何と言うか、脚本演出家の気が済んだから今回は父親役も務めてみたのでしょうか。芝居全体に、以前観たときのようなひりひりした感じは薄れて、それよりは長男以外の3人の拙さと幼さが表に出て、母親の犠牲の大きさと長男の頑張りが認められて、父親はむしろ小さい男として描かれていました。全体に話がはっきりしており、これが今になって思い返したあの時の家族の正体だった、という演出だと受取りました。

その点、今回は母親役に小松和重を得られたのが幸いで、ああいう役にああいう演技をできるのが小劇場出身の達者な役者というもので、生々しさを減らしつつ、切実さを抽出した好演でした。そもそも下手な役者を絶対に連れて来ない岩井秀人ですが、他に長男役の大倉孝二と長女役の伊勢佳世を挙げておきます。あとはシンプルながらも土台のない柱と天井の舞台美術はさすがでした。

ごちゃごちゃ書きましたが、この芝居は小劇場ならではの可能性を体現した芝居として、現代口語演劇のひとつの到達点として、またある家族を描いた普遍的な話として、あらゆる面で完成度が高く、後世に残る1本です。体調不良が無くてチケットパズルが許されれば1週間前に観に行けていたから、年末の見納めにもう1度観に行ったでしょう。さすがに二日続けて観るには余韻が冷めやらなかった。これを書いている時点で東京千秋楽ですが、年明けからツアーがありますから上演される各地方の皆様は是非ともお見逃しのないように。

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