松竹製作「朧の森に棲む鬼(尾上松也主演版)」新橋演舞場
<2024年11月30日(土)夜>
粗筋と役者以外の話は昼の回参照。
初演のキャスティングは古田新太以外は忘れていたのですが、観終わってから初演のキャストを検索したら、そもそも主演が幸四郎(当時染五郎)でした。忘れているにもほどがある。
で、ダブルキャストの主演です。昼の回の幸四郎は出だしのまだ軽い場面と、終盤で牢屋以降の悪人全開になる場面はさすがでした。夜の回の尾上松也も上手で、ツナに取入るところからの中盤は幸四郎よりいいんじゃないかという場面も多数です。この違いは初日であるだけでなく、両者のニンというのでしょうか。やっぱり幸四郎は三の線の似合う役者なので、取入るために嘘を付き続ける、肚の中で演技する中盤はどうしても軽くなるな、というのは初演と変わらない感想です。もう1役である四天王の1人、サダミツを演じているときはそれがいい方に働いて、こういうキャラなんだなとなるのですが。といって、サダミツを真面目にやった尾上松也はこれもいい出来でした。なので話が目当てならどちらを観ても構わないし、贔屓の役者がいるならそちらを選べばいいです。公演の間にどこまで変わるかが注目。
他の役者ですが、やっぱり上手なんですよ、みんな。その中で役どころもあって挙げておきたいのはツナの中村時蔵とマダレの市川猿弥。物語の要となる役どころを揺れる心と貫録とで十二分に出してていました。若首領のまっすぐさを出しつつチャンバラで一人だけ剣が速い市川染五郎は成長著しいので歌舞伎古典がどうなるか注目です。この3人以外にも、派手目な役と愛嬌もこなした大君の奥方シキブの坂東新悟も、肩の力の抜けた大君の坂東彌十郎もいいなあという人は多いでしょう。人懐っこくて身体が動いくキンタの尾上右近、悪いアラドウジの役を楽しそうにやった澤村宗之助、もう少し観たかったウラベの片岡亀蔵とショウゲンの大谷廣太郎。好きに選べって感じですね。名前の出てこない脇も含めて初日からいい出来です。
ただ、まだ初演のキャスティングを検索する前から、何となくこれは初演ではこの役者がやったのかなと見える役もちょいちょいありました。それだけ初演に役者が集まっていたということでもあるし、役者を考えての当て書きをしたこともあるのでしょうが、まだまだ工夫のしどころもあるのかなとは帰り道に考えました。
あと、殺陣の場面だったりその場面の主軸が台詞をセンターで話しているときに、脇で棒立ちになっている役者が多いのは気になりました。ちょっと身構えるだけでも全然違うのだから、そこは直してほしいです。
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