2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

2025年2月24日 (月)

新国立劇場オペラ研修所「フィガロの結婚」新国立劇場中劇場

<2025年2月23日(日)昼>

とある伯爵家で使用人のフィガロとスザンナが結婚式を挙げる当日。スザンナに懸想する伯爵は愛人になるように迫り、フィガロとの結婚を信じて金を貸してきた女中頭のマルチェッリーナにその恋人の医師バルトロはフィガロの結婚を邪魔しようと画策する。フィガロもスザンナも何とか両者の企みを跳ね返そうとするのだが、それを知らない伯爵夫人は伯爵の愛が離れていくのを心配し、スザンナに頼んで伯爵を逢瀬に誘って自分が身代わりになって伯爵を懲らしめる計画を立てる。それだけでもややこしいのに、近ごろ恋に目覚めた伯爵の小姓ケルビーノは伯爵夫人は素敵だとスザンナに訴える。小姓と言えども男性なのに伯爵夫人と二人っきりのところを見られては嫉妬深い伯爵の怒りが予想されるのでスザンナも伯爵夫人も追返そうとする。フィガロの結婚の日なのに、とにかくややこしい1日。

おー聞いたことある、というオープニング曲から始まりはしたものの、とにかくややこしい話。ややこしさの全貌がようやく見えてきた後半は登場人物全員、間が悪い空気読めと引っぱたきたくなるけれど、それは置いておいて、やっぱり耳馴染みのいい曲が多くて、モーツァルトの名作と言われている理由はわかりました。「セビリアの理髪師」の続編だということも初めて知りました。

全編イタリア語の字幕というあたりに一抹の不安を感じましたが、ろくに粗筋も知らないで臨んだ身としては、むしろ粗筋を字幕で追って耳では原語を楽しめたので初フィガロには今回の仕組みの方がよかったと観終わった今は思います。だけど字幕を観ないで原語で聴いているっぽい笑いも少数ながら起きていて、芝居とは客層が違うなと思わされました。

ダブルキャストなので本日初日にして最後だったため、出だしこそ歌手が(オーケストラも)やや緊張していた気配がありましたが、前半の後半あたりから温まって来て、終わるころには絶好調でした。だから頭から通しで出ていた歌手は調子を測るのが難しいですけど、それでも歌がいいなあと感じたのは伯爵夫人の吉田珠代が一番、ケルビーノの大城みなみは歌だけでなく茶目っ気を出した演技も含めて二番、伯爵の中尾奎五は一人演技の場面で声量が落ちたのが惜しいですけど大勢と合せるときはそんなことなくて威厳があるときの伯爵らしさもよく出ていて三番、でしょうか。とはいえ、そこから先は明確に劣る人は誰もいません。しいて言えばオペラ歌手の圧倒的な声量というのも聴いてみたかったですが、声量が中劇場サイズにチューニングされていたのはしょうがないとして、声が前に飛ばず奥に向かう歌手が何人かいたようではありました。素人的には前にパーンと張って出てくる方が好ましいです。

カーテンコール含めて3時間45分の長丁場でしたが、有名演目を観られて聴けて、全体に満足の行く出来で、楽しめました。他の有名オペラもこれで観たいと思わされました。オペラハウスもいいんですが、やはり大きすぎる。

後は芝居と関係ありませんが、当日パンフを読んで知ったのは、オペラストゥディオ(オペラ研修所)の場合は全員音大を出てからさらに入っているのですね。そこは日本語の世界である芝居と、西洋言語で世界をマーケットに見据えないといけないオペラ(クラシック)の世界とでキャリアパスが全く違うのだなと勉強になりました。

2025年2月23日 (日)

松竹制作「猿若祭二月大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

<2025年2月21日(金)夜>

夜の部2本。大奥の女房江島と通じて島流しにあった歌舞伎役者生島は、島でも江島を忘れられず物狂いとなってしまったが、そこに通りかかった海女の1人が江島にそっくりで「江島生島」。博打にはまって素寒貧になり夫婦喧嘩が絶えない左官職人、一人娘が夜にも帰らないと騒いでいたところで吉原の店から使いがやって来て店に行けば、父の借金を返すために身を売りたいと娘が自分から言い出したとのこと、見かねた女将が娘は大事に預かるから1年限りで返して見せろと金を出し、さすがに心を入替えてさて家に帰ろうとしたところで「文七元結」。

チケットがあるかと思ったら普通席は完売で、当日券は「阿古屋」が売切れていたけどまだ買えた他の2本の当日券を掴んで観劇。「江島生島」は踊りと音楽で雰囲気を楽しむのが吉。そういう楽しみ方もあるのだなと発見。

「文七元結」は落語で聴いたばかりなので芝居ではどうかと見物。これは勘九郎と七之助ががっつりだけど、特に勘九郎が完全に劇場を手の内に収めて客席を転がしてみせた。演目だからか公演後半だからか、やや客席が慣れていた様子だったけれど、それを差引いても上々の上の出来。身投げの男を引き留める場面、誰も通りやしねえと言う台詞のところでちょうど客席の赤ん坊が声を上げてしまったのもすかさず「赤ん坊の声しか聞こえやしねえ」とネタにしたところは落着いたもの。最後の長屋での夫婦喧嘩からの大騒動はもう、七之助と二人してやりたい放題やっているのに矩を踰えないところに感心しきり。観られてよかった。名前の順番は一段下がるみたいだけど、兄弟二人がこの世代の一番二番です。

東京サンシャインボーイズ「蒙古が襲来」PARCO劇場

<2025年2月21日(金)昼>

来客の準備に忙しい対馬の村長の家。どうやら鎌倉から武士がやって来たらしい。海の向こうから異国の襲来があるかどうかを確かめたいからだという。だが手伝ってほしい子供は遊びに出かけ、久しぶりに戻ってきた村長の息子は妹夫婦に準備を任せてぐうたらしている。鎌倉からの客人の相手をするために他の村や神社からも人が来ているが、どうにものんびりとした晴天の1日。

東京サンシャインボーイズ再公演ということで、観ました。普段の三谷幸喜の芝居から考えていたのとはだいぶ異なるスロースタートな芝居なのは、劇団員が多くてその分だけ登場人物が増えて、紹介に時間がかかるからでしょう。三谷幸喜のことだから、むしろそれを解決するためにのんびりとした漁村という舞台設定を選んだに違いありません。そこから少しずつ笑いが始まっていきます。オチはどうなるかと考えながら観ていたら、これはないよなと考えていたオチになりました。そうやって期待を裏切っていってこその三谷幸喜、でしょうか。

名前を見れば「おお」と思うような実力派が並んでいるのですが、全員役に徹して、狙って笑いを取りに来るようなことはしません。が、それが過ぎて、観たことのある役者でも「この役があの人かな?」となってしまいました。三谷幸喜の嫌うところではあるでしょうが、もう少しあざとく笑わせに来てもよかったかなと思います。

開演前と後のアナウンスもささやかに笑いを取りに来るので、早めに劇場に着いてアナウンスが聞こえてきたら耳を傾けてみましょう。

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »