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2025年7月20日 (日)

R Plays Company「海と日傘」すみだパークシアター倉

長崎に暮らす夫婦。妻は病気がちであり、夫は教員を務めていたもののその世話で休みがちだったため解雇され、副業の作家を細々と続けながら次の勤め先を探す。借家の大家である隣の夫婦から世話を受けたり町内会の運動会にされたりと付合いがありながら過ごしていたが、ある日妻が倒れる。往診に来た医者の見立てでは余命3か月だという。

たまたま目に触れたのが岸田國士戯曲賞作として割と見かける演目というのは覚えていて、行ったことのない劇場でもあるからここで一度観ておくかと観劇。脚本の力で引っ張られて、役者と演出で残念な出来でした。

脚本は全編長崎弁らしき言葉で描かれる、いわゆる静かな演劇。大騒ぎする場面はほとんどなく、主人公夫婦と現元編集者の2人、主人公夫婦と隣人の夫婦、主人公夫婦と医者看護婦(主に看護婦)の日常場面を描きながら手掛かりを出しつつ、誰が誰のことをどう考えているのかを観客に読ませていく。平田オリザや岩松了よりももっと純文学に寄せたような話でした。

大騒ぎする場面がほとんどないのにこれを成立たせるのは、何と言っても主人公夫婦が台詞の百倍くらい腹に言葉を溜めていないといけません。まず第一に妻が病気であり、かつ余命が短いと診断されたことがあります。そのうえで、妻の病気について本人と夫と周りの人の考え、暮らしを巡る大家の隣人への感謝と遠慮の集まる町内運動会、厳しい暮らしの中で夫の仕事に対する屈折、そしてもちろん元編集者を巡る関係。

ざっと挙げただけでもこれだけあってなお、足の裏の潰さずに残したマメよろしくごまかし続けて、どれひとつとしてお互いに正直に相談できない優しさともどかしさ、減っていく時間と反対に積上がっていく心残り、それをぎりぎりで清算に動くかどうかの葛藤を、大げさに動くことも叫ぶこともなく静かな演劇として演じないといけません。そこが主人公夫婦の大野拓朗と南沢奈央に、特に夫側に足りなかったと言わざるを得ないのは残念でした。代わりに役者では隣人夫婦を演じた斉藤淳と阿南敦子が目を惹きました。

あとはスタッフワークですが、頑張っていました。精一杯の美術に照明が目いっぱい頑張って、音響も抑え目ながら最低限を入れて展開と転換を伝えていました。ただ靴を履かずに通したのはさておき、衣装替えをせずに、小道具をすべて省略で臨んだのはさすがにいかがなものか。日常に潜む劇的なるものを描く静かな演劇として、具象の省略はかなりハードルの高い演出です。夏に始まり冬に終わる3か月を描くためにも衣装替えはほしいですし、包帯鉢巻なしで場面を通すのは観客に想像力を強いりすぎですし、布団梯子はともかくお盆と茶碗くらいかき集めれば集まるだろうという話です。これがスピーディーな展開を求めてミニマム志向で臨んだ演出の方針か、できるだけ費用と準備を削りたい制作の制限か、その両方なのかはわかりません。ただ、扇風機やストーブ一発で季節の移り変わりを示す洗練の極みのような芝居を近頃観たばかりの身としては、いまいちだったと言わせてもらいます。

演目として一度観られたのはよかったですが、立上げたばかりの学生上がりの劇団ならまだしも、前半後半で変動するチケット代の最低が7000円で最高が1万円です。厳しい評価もやむなしです。公式サイトの芝居の紹介文で団体名に誤表記があるくらいですから、人手が足りていないのだろうなとは察しました。

<2025年9月13日(土)更新>

一部文章がおかしくなっていたのを修正。

2025年7月 9日 (水)

劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定

株式会社パルコ企画製作舞台「ヴォイツェック」のことです。スピード勝負っぽいのでまずは公式サイトより。日付が入っていないところに慌ただしさを感じさせます。2025年7月9日発表です。

「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ

東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の弊社の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

当初は9月22日が初日に設定されていました。この日程がいつ発表されたかというと2025年6月12日と思われます。検索したところ、すでに日程を書換えている記事もあるところ、シアターテイメントNEWSの記事がまだ残っていました。

森田剛 主演 小川絵梨子 演出 パルコ『ヴォイツェック』秋上演。コメントも_

2025年6月12日
(中略)
概要
パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
会期会場:
東京:2025年9月22日(月)~9月28日(日)/2025年11月7日(金)~11月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
(後略)

つまり6月12日に公に発表されて、本日7月9日まで、ほぼ一か月、誰も気が付かなったことになります。

東京芸術劇場のサイトには公演情報が見当たりません。一度削除されたのではないかと考えます。ただ、その日が休館日という情報は見当たらず、劇場カレンダーもその日は1つだけイベントがシンフォニースペースやリハーサルルームを使って行なわれるので、この日が休館日というのを表に見えるサイト情報からだけでは判断するのは困難です。

チケットの発売日がチケットサイトを見た限りではいまいちわからないのですが、すでに削除されたinstagramの情報だとどうも8月6日(土)がチケットサイトでの一般発売日だったように思われます。ただ、それならまだ一般発売日に余裕があったところ、公式サイトでは未定に変更されています。

一般発売日

未定

※公演日程が当初の予定から変更となりましたため、発売日も変更となります。(詳細はこちら)
※一般発売日の発表は今後の更新をお待ち下さい。

役者はファンクラブがあるから先行していたようです。主演の森田剛のファンサイトにはこのようなお知らせが掲載されています。良席を引いていたファンは残念でした。

2025.07.09 舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行予約やり直しについて

森田剛主演舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行販売について、主催者より下記発表がありましたのでご確認ください。

◆「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ
https://stage.parco.jp/program/woyzeck/10806#news

++
東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の主催者の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
++

上記をふまえて、あらためて先行予約のやり直しを行わせていただきます。
詳細が決まり次第、あらためてご連絡させていただきます。
※尚、今回の抽選は全て無効になりますのでご注意ください。

公式サイトでも「弊社の確認が行き届かず」とあるので、パルコがやらかしたのは確定です。今回の公演は西日本をツアーして、最後にまた東京芸術劇場に戻ってくるという面倒な日程です。確認事項が多かったのでしょうが、一日丸ごと潰れてしまう間違いはさすがに言い訳できなかったのでしょう。

今回わかった話として、日程を決めるのはとにかく企画製作、またはプロデュースを行なう団体に決定権があるという話です。そこが決定権を持たないとチケット販売だけでなく役者スタッフ舞台道具の移動や搬出搬入の調整ができないから、それは自然なことと思われます。

反面、劇場を含めた関係各所は搬入開始から搬出完了まで日程の頭と尻尾だけ抑えてあとは任せきりというのもわかりました。もちろん劇場から該当日が休館日であることは伝えられたはずですが、仕込みやリハーサルなら使える契約ではないかと想像します。実際、1本はイベントがあるわけなので、表のスタッフが休み、警備スタッフも最小限の日だったのでしょう。

一方で、パルコの中の体制がどうなっていたのかは気になります。

・日程確認は1人に任せっぱなしで、その人がポカをした。
・日程確認は複数人で確認することになっていたが、その複数人が全員見逃した。
・元々劇場と打合せていた人が異動や退職でいなくなり、引継ぎ漏れでポカが起きた。

どれも考えられる話です。どれが理由でもおかしくありません。そしてどれが理由でも、さらにその裏にさらなる原因が隠れていそうです。

そしてこれ、誰が気が付いたのかも気になります。日程は任せっぱなし、表からはわかりづらい、と悪条件が揃っています。

・パルコの中の人が仕事中に気が付いた
・パルコの中の人以外の関係者が何かの拍子で東京芸術劇場の日程に気が付いた
・東京芸術劇場の関係者がたまたま日程を目にして気が付いた
・東京芸術劇場にたまたま縁のある熱心なファンが「あれ?」と気が付いて問合せた
・チケットセンターの人が準備をしていて「ん?」と気が付いて問合せた

どれが理由だとしてもまだ初日2か月以上前に気が付いてラッキーだったと思います。

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