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2025年8月25日 (月)

歌舞伎の大幹部目当ては早目の日程が吉か

初めに発表されたときに名前が出ていなかったから何事だろうと思いました。公式の初回発表より。

2025年8月11日
松竹株式会社

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」
第二部『火の鳥』公演中止のお知らせ

平素より格別のご高配を賜わり厚く御礼を申し上げます。

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」にて、出演者の体調不良により、第二部『火の鳥』(ひのとり)の本日8月11日(月・祝)の公演を中止とさせていただきます。

皆様には大変なご迷惑をおかけいたしますこと、深くお詫び申し上げますとともに、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

なお、明日は当初より、休演日となっております。
明後日以降の上演に関しましては、決定次第、松竹ホームページにてお知らせいたします。

また、本日の第二部をご購入いただきましたお客様につきましては、払い戻しをいたします。
払い戻し方法に関しましても、決定次第松竹ホームページにてお知らせいたします。

何卒ご諒承を賜わりますよう、よろしくお願い申し上げます。

いくら新作とは言え、周りの役者なら代役を立てるところです。コロナのようなものが広まったのなら第一部と第三部も中止します。だから目玉役者に何かあったのだろうと考えたら、その通りでした。公式の続報より。

2025年8月12日
松竹株式会社

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」
坂東玉三郎の復帰および第二部『火の鳥』公演再開のお知らせ

平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『火の鳥』は、8月11日(月・祝)の上演を中止しておりましたが、8月13日(水)より公演を再開いたします。

なお、公演の再開に伴いまして、第二部『火の鳥』の舞台を休演しておりました坂東玉三郎の体調も回復し、明日13日(水)より公演を再開させていただくことになりました。

皆様には、多大なるご迷惑、ご心配をお掛けしましたこと、お詫び申し上げます。

なお、個人のプライバシーにかかわるお問い合わせに関しましてはお答えできませんので、ご理解ご了承いただきますようお願い申し上げます。

大幹部と呼ぶのが正しいのかはわかりませんが、玉三郎は当代きっての女形、出れば客を呼べる人気者の一人です。それでも御歳75歳ですから、1か月公演を務めるのは大変です。

それとコンビで鳴らした仁左衛門ですが、こちらもたまに休演します。なにしろさらに年上の81歳です。今年3月の忠臣蔵が昼の部と夜の部で交代になっていたのは、1日出ずっぱりがきついという理由もあったでしょう。

それでもあれだけ出来るのは凄いことですし、長く活躍してほしいと客の1人として願っていますが、それだけに客としては貴重なチケットを手に入れた回が休演になっては悔やまれます。ダブルキャストも多いですが、目当てであればなるべく登場回の前半に観ておくのが吉というものでしょう。

2025年9月10月のメモ

割と数が多くて芸術の秋という雰囲気ですが、初日が1日違いで次々と並んでいるところは何となくきれいですね。

・松竹主催「菅原伝授手習鑑」2025/09/02-09/24@歌舞伎座:今年の通し上演3本のうちの2本目

・企画招聘tsp「コーラスライン」2025/09/08-09/22@東京建物BrillaHALL:もう一度きちんと観るかどうか

・dialogue+1「The Breath of Life」2025/09/10-09/17@OFF・OFFシアター:Serial Numberが女性2人芝居を上演するための番外ユニットの1本目は見物側の実力が足りなかった海外芝居

・ネルケ×悪童会議プロジェクト「絢爛とか爛漫とか」2025/09/11-09/28@新宿シアタートップス:2チームありますが両方ともモボ版、悪童会議は前回がよかったので今回も期待、そしてこの演目の客席側に問題がないことも期待

・神奈川芸術劇場プロデュース「最後のドン・キホーテ」2025/09/14-10/04@神奈川芸術劇場ホール:KERA新作

・パルコ企画製作「ヴォイツェック」2025/09/23-09/28、11/07-11/16@東京芸術劇場プレイハウス:初日を間違えてチケットを売り直すという珍しい事件がありましたが小川絵梨子演出、ツアー後にもう一度戻って上演する珍しい日程

・名取事務所「砂漠のノーマ・ジーン」2025/09/26-10/05@「劇」小劇場:粗筋だけでも重い話ですが役者と演出は期待できます

・演劇集団円「風のやむとき」2025/09/27-10/05@吉祥寺シアター:演劇集団円の創立者である芥川比呂志を演劇集団円が描くという点で期待

・松竹主催「義経千本桜」2025/10/01-10/21@歌舞伎座:今年の通し上演3本のうちの3本目、とにかく日程の組み方をあれこれ試している模様

・新国立劇場主催「焼肉ドラゴン」2025/10/07-10/27@新国立劇場小劇場、12/19-12/21@新国立劇場中劇場:有名な1本なのでできればこの機会に、これもツアー後にもう一度戻って上演する日程ですが小劇場が中劇場になるもっと珍しいパターン

・ホリプロ企画制作「チ。」2025/10/08-10/26@新国立劇場中劇場:漫画原作を長塚圭史脚本の海外演出家で

・Bunkamura主催企画製作「リア王」2025/10/09-11/03@THEATER MILANO-Za:大竹しのぶがリア王だけどむしろ他の役者の期待が大きい

・東京舞台芸術祭実行委員会主催「Mary Said What She Said」2025/10/10-10/12@東京芸術劇場プレイハウス:スコットランド女王のメアリー・スチュアートを描いた1人芝居の海外招聘作品

・東宝製作「エリザベート」2025/10/10-11/29@東急シアターオーブ:有名な演目だし役者もよさそうだし

・M&Oplaysプロデュース「私を探さないで」2025/10/11-11/03@本多劇場:岩松了の新作

・新国立劇場主催「シンデレラ」2025/10/17-10/26@新国立劇場オペラパレス:初心者が試しに観るならこのくらいベタな演目の方がいいですね

・CCCreation合同会社主催「近松心中物語」2025/10/18-10/26@神奈川芸術劇場大スタジオ:演目の割にパンクなチラシで迷いましたけどとりあえず

・EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」2025/10/19-11/03@新宿シアタートップス:一度観ておきたい

・フライングシアター自由劇場「西に黄色のラプソディ」2025/10/20-10/27@吉祥寺シアター:串田和美は本当に好きにやっています

・文学座「華岡青洲の妻」2025/10/26-11/03@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:今年は大竹しのぶ版の上演もありましたがどうせ観るなら鵜山仁演出の方がよいのではないかと

これだけ挙げたところから、にらめっこをしながら観る芝居を煮詰めていきます。

2025年8月24日 (日)

劇場で騒ぎがあったときに逃げられるかどうかを心配するような事件

たまたま同じ日に渋谷で芝居を観ていたので他人事ではありません。NHK「渋谷ヒカリエで催涙スプレーのようなもの噴射か 容疑者逮捕」より。

2025年8月23日 17時46分

23日午後、東京・渋谷区の大型複合施設「渋谷ヒカリエ」内で、催涙スプレーのようなものが噴射され、あわせて18人がのどの痛みなどを訴えました。

警視庁は傷害の疑いで40代の容疑者を逮捕し、被害者の1人と肩がぶつかって口論になり、催涙スプレーのようなものを噴射したとみて調べています。

23日午後1時半ごろ、JR渋谷駅前の大型複合施設、渋谷ヒカリエの7階にあるレストランが入るフロアで、「催涙スプレーのようなものが吹きかけられた。せきこむ人がたくさんいる」と110番通報がありました。

東京消防庁によりますと0歳~60歳の男女18人がのどの痛みを訴えるなどして、このうち8人が病院に運ばれましたが、いずれも症状は軽いということです。

警視庁はこのうち男性1人にけがをさせたとして、40代の男の容疑者を傷害の疑いで逮捕しました。
(中略)
神奈川県から買い物に訪れた30代の男性は「悪臭など変わったことはありませんでしたが、7階から6階におりるエスカレータが通行制限されていました。これだけ消防車も出ているし、何が起きたのかと思いました。観光客も多いし、人が密集するところでこういう事件が起きるのは怖いです」と話していました。

子どもと3人で訪れていた30代の女性は「買い物をしようと思って来ましたが、事件があったとは知りませんでした。休日だし子どももいるとすぐ逃げられないと思うので怖いです」と話していました。

「渋谷ヒカリエ」は、2012年に渋谷駅前にオープンした地上34階、地下4階建ての大型複合施設です。

オフィスのほか、レストランやショッピングのフロア、それに劇場やイベントホールも入っています。

この劇場は東急のシアターオーブです。ヒカリエの11階がエントランスで、そこから12階に上がる形で入場する劇場です。普通はエレベーターが2か所あって11階まで直行しますが、エスカレーターも1ヵ所あって、いちおうそちらも使えますが、たしか10階が劇場地下かその下のイベントスペースの天井かで何もないフロアなので、11階の次が9階という構成のエスカレーターになっていたはずです。

ここは一般来客が普段使える階段がないビルなんですよね。たしか北側エレベーターの脇に非常階段への扉があったはずですが、非常階段なので試しに使ってみるわけにもいきません。エレベーターを使えない場合、エスカレーターは下のフロアも含めてたしか1か所だけです。今回は催涙スプレーだったからよかったものの、火事になったらよほど度胸を決めないと下まで逃げられません。

これに近い形なのがやはり東急の歌舞伎町タワーに入っているシアターミラノ座で、あそこもエレベーターとエスカレーターで階段が見えるところにはなかったはず。そしてエスカレーターは1列幅なので後ろから押されたら危ない。土地一升金一升の都心ではありますが、同じ東急のBunkamuraのゆったり感とは比べるべくもありません。

ちなみに今回の事件と同じ渋谷のパルコ劇場、私が当日その時間にいた劇場ですが、あそこは建物内こそ下の階に降りるところは1か所(少し降りると2か所)ですが、劇場からすぐビルの外階段に出られるようになっていて、そちらの道も選べます。もちろん他にも危ない劇場はあって、たとえば紀伊国屋ホールは劇場から出て本屋のエレベーターまたは階段で外に出る必要がありますが、本屋が火事になったときに劇場内にいたらどうやって逃げればいいのか実は知りません。駅前劇場とか階段1か所ですし。ただ、フロアが4階3階なのと、11階9階なのとは違いますし、劇場の中にいる人数の多さも違います。

劇場にいるときに何かあったとして無事に外まで逃げられるか、考えさせられる事件でした。

パルコ企画製作主催「人形ぎらい」PARCO劇場(若干ネタバレあり)

<2025年8月23日(土)昼>

現代大阪で上演中の文楽。夜には楽屋の人形置場で人形同士が会話する。いつも悪役の人形・陀羅助は、ヒロイン役の女性人形・姐さんに惚れるが、主役を務める人形・源太と2人して笑われる。姐さんに幸せになってほしい一念で脚本を書換えてほしいと近松門左衛門に直訴したりもするが当然断られる。そんなある晩、源太は顔を鼠に齧られる。それでも直された顔で何とか舞台には出た源太だが、山場の場面で顔のことが気になるあまりにとちって、それを恥じて劇場から失踪してしまう。姐さんに頼まれた陀羅助は源太を探して夜の大阪に飛出す。

粗筋がややこしいですが、人形同士が話すのに加えて、人形と人形遣いが話したり、近松門左衛門(の人形)が出てきたり、いわゆるメタな作りの芝居に仕立てられています。初めは劇場の中を舞台に話が進むので、近松門左衛門が出てきたところで江戸時代の話かと誤解していたのですが、どうやら現代の話である、と了解できたあたりから話もだんだんスピードが出てきて楽しめました。

万年脇役がヒロイン役に惚れてしまうとか、結局追いかける男をお福(という人形)が励ますとか、主筋は王道の友情もののような展開を押さえつつ、メタな作りで散々笑わせてから最後に(ネタバレ自粛)といった展開まで、ツボを押さえた脚本はさすが三谷幸喜です。

後半になってスピードが出てきた理由はもう1つあって、出だしが文楽の劇中劇で始まるのですが、ここは太夫の語りが本格で行なわれます。唸る形です。そうすると展開が遅い上に何を話しているのかわかりません。菅原伝授手習鑑を通しで観たときと同じ感想(前半後半)で、字幕がほしい、となります。あとは前半、太夫が1人で複数役を語りますが、1人でやると会話を重ねられないので間を開けずに1人複数役で進めることになるのですが、切替の技術はすごいにしてもやっぱり不自然な間になって聞きづらくなる。

それが後半は人形の地の語り(と呼べばいいのか迷いますが)になるともっとくっきりはっきり話すようになって、間も取れるようになって、終盤は複数太夫が語る場面も出てきて、現代芝居に近くなります。こうなると人形が役者に見えてくる、そこにメタな展開が重なる、と楽しくなります。

で、もっぱら芝居は耳で楽しむ私ですが、やはり今回の人形スケボーを取上げないわけにはいかない。あれは裾をまくった脚と合せて、最高に格好いい場面でした。今回の文楽は「文楽人形に不可能はない。人間にできることで、私らに出来ないことはないんや!」という芝居中の台詞にもあったキーワードから始まったらしいですが、それを体現した名場面でした。

この場面に限らず後半は実に上手に人形が動いて、人形遣いとして出ながら監修を務めた吉田一輔が実現に預かってかなりの力があったらしいです。これは覚えておきます。

歌舞伎もそうですけど、伝統芸能の底力はすごいです。ただし本格古典が現代にフィットしない理由もわかってきました。(1)古典ばかり上演して現代の物語を上演しない、または現代人が観ても納得するように手直ししない、(2)テンポが遅い、(3)語り口が明晰でない、の3つです。このうち(1)は作品によっては通じるものもあるとして、(2)は賛否もあるでしょうが、(3)だけは私には受入れられない。芝居を耳で楽しむ癖のついた私には、何を話しているのかわからないのが一番のストレスになります。歌舞伎だってだって、はっきり語ってもいいものはいいですから。そして今回の文楽もその証明です。はっきり語ってもいいものはいい。けど、あの唸りも含めての伝統芸能なんですよね。そこが悩ましい。

2025年8月16日 (土)

はぶ談戯「JULIO」駅前劇場

<2025年8月15日(金)昼>

鴨川のとある精神病院に軽症で入院した患者を、医者が勝手に実験台にしてひそかに実験が行なわれた。ストレスを掛けた患者に特定のきっかけを与えて凶暴性を発揮させることが出来るかどうかを確かめる実験は、1か月の予定を短く切上げるほどの成果を見せたが、そのあとで治して退院した患者が何らかのきっかけで家族を殺害、警察に射殺される痛ましい結末となったが、実験は隠蔽された。それから4年後、事件の生き残りである犯人の妻が再捜査を願って警察にやってきたまさにその時、同様の手口で被害者が殺された殺人事件が起きる。

脚本が後藤ひろひとと聞いて観劇。こういう展開でもぐいぐい推し進める作風だったなと観ながら思い出しました。初演が1996年らしいので、若干ネタが古いところもそのままのようです。芝居の核心の大ネタに納得すればきれいに嵌まる脚本ですが、演出と演技が追いついていませんでした。

この20年以上で随分と現代口語演劇が広まりました。これは自然な台詞回しが売物ですが、それを実現させるために「客席に背を向けて話す」と言われたような役者の向きもセットで付いてきます。この脚本は、というか後藤ひろひとの脚本は真面目な場面とネタの場面が入り混じる小劇場らしい脚本ですが、どちらの場面かを問わずに客席に正面を切って話す役者、非常に多かったですね。これは正面を向いて伝えた方がいいと思える場面もありましたが、狙ったようには見えません。「絵作り」に頓着しない演出でした。

と言って、ネタの場面で吹っ切れて演技をするわけでもない。1対1でやりやすく、かつ独立性の高い場面だったのはありますが、後半に出てくる音響研究家のアンナの場面くらいですね、上手く振切れたのは。真面目とネタの入り混じった場面は切替の早さと内面のテンションの高さが求められるのですが、そこが上手くいっていなかった。ネタの場面に出ている複数の役者の意識が合せられていないといった技術的な面もあるかと思いますが、その前提として演出がここはネタの場面だと狙いを定めきれていなかった。圭茂木(兄弟)の登場する場面がことごとく外していたのがつらいところです。緩急に頓着しない演出でした。

加えて、演じている側がネタを知らないでやっているのではないかという雰囲気を感じました。時代に関係ないネタだけでなく、時代を感じさせるネタも多数あります。時代を固定した脚本なので時代を感じさせるネタも古いまま固定されたのは致し方ないにしても、ネタの理解は必要です。

あとは白で揃えてカーテンも使った美術はいい感じでしたが、衣装が何か、しっくりきませんでした。ファッションには疎いのですが、2000年ごろっぽい感じと今っぽい感じが混ざっていたような印象を受けました。それとも女優の化粧でしょうか。いっそ今風で揃えた方がよかったかもしれません。

これでも2000年頃なら、小劇場らしい佳作と感想を書いたはずです。が、今ではこの出来では他人に勧めることはできません。端的に言えば出来が古い。小劇場らしい脚本ほどテンションと技術の両方が求められるのだなと再認識しつつ、今時の日本の小劇場は確実に進化しているなと思い知った次第です。

2025年8月 4日 (月)

松竹主催「八月納涼歌舞伎 第3部」歌舞伎座

<2025年8月3日(日)夜>

江戸の日本橋を舞台に浜唄やおけさ節、布を波に見立てた布さらしを披露する「越後獅子」。刀の研ぎ師から侍に取立てられた元町人の守山辰次は、赤穂の討入で盛上がる家中を相手にお家を潰しては元も子もないと話して、剣術の稽古で家老に打ち据えられる。これはあんまりだと夜道で驚かして仕返しをしようと企んだが、これに驚いた家老が脳卒中で亡くなってしまう。だが守山辰次の仕業だと見抜いた同行者が切られたことにしたため、守山辰次は追われることになり、家老の2人の息子は敵討ちの旅に出ることになる。探すこと2年、ついにとある宿屋で出会うことになるが・・・「野田版 研辰の討たれ」。

初日。踊りは華やかで布もたくさん使っていいですね、という話。申し訳ないですがメインは研辰。

その研辰、再演版を観ているはずなのですが、美術から展開から記憶とはだいぶ変わった芝居でした。記憶よりももっとずっと、周りの無責任な煽りを強調してそれに当人たちが翻弄されるのはSNS時代を反映してのことでしょう。そこに出てくる人物も、前は御白州を舞台に奉行か代官の前で申し開いていたはずですが、今回は寺を舞台に追いかけてきた同心一人に野次馬と寺に参詣していた人たちが見物になって、より庶民が煽る形に。そこに出てくる和尚はたしか前回はいなかった役で、この展開にはほしかったのだろうなと。そしてあのラストは、それは野次馬たちが去った後の双方の当人たちの物語としては欠かせなかったので、あってよかったですね。

初日なだけに客席も期待していましたが、それ以上に役者が熱演。いかにも野田秀樹っぽい言葉遊びに、昔話も織り交ぜながらの勘九郎の勢いが止まらない。「若い、そしてエモい、昔は出来たんだ」と言われたら笑わないわけにはいかない。二役で奥方から姉娘の七之助もきっちり笑わせに来るけれど、妹娘の坂東新悟もなかなか。和尚の良観を演じた中村扇雀が怪しさも見せつつ貫禄十分。追いかける兄弟の弟に勘太郎が来るのも、邪険にする子供に長三郎が入りつつお楽しみで毛を振るのもいい。けれど兄弟の兄に入った染五郎が凛々しくてもっとよくて、わかりやすく売出し中でいい役を与えられているのもありますが、それに応えられるのも大事。今一番脂が乗っているのが勘九郎七之助なら、若手の一番の注目が染五郎です。

ホリプロ主催企画制作「ピーター・パン」東京国際フォーラムホールC

<2025年8月3日(日)昼>

3階の子供部屋で3人の子供たちが寝付いた夜、空を飛ぶ少年ピーター・パンが妖精ティンカーベルと一緒に忍び込む。母親が子供たちに聴かせていたお話をこっそり聴きに来たとき、飼犬に気付かれて置き去りにした影を取戻すためだ。ようやく影を見つけたが、騒いでしまったので長女のウェンディが目を覚まして事情を尋ねる。ピーター・パンは大人にならないネバーランドから来たので、自分たちのお母さんになってほしいとウェンディに頼む。賛成したウェンディと弟2人に妖精の粉を掛けると、ピーター・パンは一緒に空を飛んでネバーランドに向かう。

何で今更観たのかと言うと、夜に歌舞伎座を観るなら昼はどうするか、離れた劇場を移動する代わりに近場で何かないかと考えて見つけて、そういえばまともに観たことも読んだこともないのに作者の話を先に観ていたのを思い出したから。「ピーターパン」でなく「ピーター・パン」だと初めて知りました。それで観たら、物語の展開をいくつか端折りすぎかなと感じるところもありつつ、ミュージカルとしてはよく出来ているなと今更感心した次第。

フライングしてなんぼの舞台で、綱1本であれだけ振られながら歌って回って粉撒いて、客席も煽る山﨑玲奈ピーター・パンはさすがでした。役者としては素直な役のウェンディを素直に演じた山口乃々華が目を惹きます。その母親も誰かと思ったら太田緑ロランスで、調べたら代役、さすがホリプロ贅沢です。

これで45年目らしくスタッフは慣れたものとの印象を受けましたが、さすがに美術の剥出し鉄パイプは止したほうがいいのではないでしょうか。跳んで跳ねてのある舞台でツアーもあって、頑丈さとバラしやすさの両立が求められるのだろうなとは推察しますが。

そして抱っこ紐で抱っこされた子供すらいる客席はおそらく初。上演中に「毒だよ」と声を掛けるくらいはしてやったりでしょうが、泣く子供あり、親に話す子供あり、休憩時間中に帰りたいと話す子供あり、一筋縄ではいきません。短い時間で3部構成だったのも、場面転換の都合よりは子供をぐずらせないための工夫のように思われます。これをねじ伏せて上演した役者陣には敬意を表します。

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