東京舞台芸術祭実行委員会主催「Mary Said What She Said」東京芸術劇場プレイハウス
<2025年10月11日(土)昼>
フランス王妃にしてスコットランド女王だったメアリー・スチュアート。その血筋と結婚により国と国との対立、そして本人の王位継承権を巡る争いに否応なしに巻込まれ、そして処刑された人生。
これは役者依存の1人芝居で見逃したら2度と観る機会がないのではと直感が訴えて観劇。それは正しくて、圧巻の1人芝居だった。
後半少しだけ音響で録音台詞が入るけど、ほぼ出ずっぱりで芝居らしい芝居はなくひたすら語り倒す、それも同じフレーズを多用して、タイプは異なるけれどもままごとの「わが星」と「あゆみ」を混ぜたような構成。ただし時間軸がかならずしも順番ではなくて、いったり来たりする。素舞台でほとんど小道具もないところでやってのけるのはレベルが高いのはたしか。芝居の内容がシリアスだけど、そこをきっちりかっちり仕上げたところは、イザベル・ユペールのすばらしい実力。ただ、フランス語はさっぱりなので字幕で内容を追いかけたのだけど、あれは本人の回顧だけではなくて侍女の回顧も混ざっていたのか? そこが混乱して、 途中からもっと声の調子に注意を向けたほうがいいと考えたのだけど手遅れだった。芝居を耳で観る人間ではあるけれど、活字にはもっと強く引付けられるのだなと自分を思い知った。
それと芝居については、元の史実を把握していないため見落とし多数でもったいなかった。Wikipediaが比較的コンパクトにまとまっていたから、これを読んでおけばもっと劇場でリアルタイムで楽しめたのにとは後悔。血筋としては下れば今のイギリス王室は全員この人の子孫。そして3代遡ればヘンリー7世、大伯父がヘンリー8世、おまけで書けば処刑された年にシェイクスピアが3歳、というヨーロッパの血生臭さ全開の時代を主役として生きた1人です。波乱万丈という言葉が相応しい。
近頃は歳をとったのか揉め事が多すぎて目が覚めたのか、ヨーロッパの暗い面も目に付くようになったけど、こういう芝居を観ると個人の自立と自覚を欧米が求めているのがわかるというか、欧米は孤独な世界なので自立と自覚がないと生きていけないというか、神も仏もありゃしない世界だからこそキリスト教が嵌まったというか、そういう世界で生まれた宗教だからこそキリスト教は団結しても融和しないというか。
今なら同じような1人芝居をできる日本人の役者も探せばいると思えるけど、こういう芝居を日本人がやるともう少し柔らかく仕上がるはず。芝居の内容も役者の強度もかっちかちに硬かった。
最後にスタッフワークについて書くと、1人芝居を支えるためか弦楽の音楽がかけっぱなしだったけど、音響の抜けの良さが普段観る芝居と全然違う。機材の違いなのか録音品質の違いなのか会場チューニングの違いなのか。たまに音が新しい芝居に出会うたびに考えるけど、個人的にはこのクリアさ(と録音品質?)が標準になってほしい。
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