2026年1月
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2025年12月30日 (火)

2025年下半期決算

恒例の決算、下半期分です。

(1)R Plays Company「海と日傘」すみだパークシアター倉

(2)ホリプロ主催企画制作「ピーター・パン」東京国際フォーラムホールC

(3)松竹主催「八月納涼歌舞伎 第3部」歌舞伎座

(4)はぶ談戯「JULIO」駅前劇場

(5)パルコ企画製作主催「人形ぎらい」PARCO劇場

(6)(7)松竹主催「菅原伝授手習鑑 昼の部夜の部(Aプロ)」歌舞伎座

(8)神奈川芸術劇場プロデュース「最後のドン・キホーテ」神奈川芸術劇場ホール

(9)パルコ企画製作「ヴォイツェック」東京芸術劇場プレイハウス

(10)ネルケ×悪童会議プロジェクト「絢爛とか爛漫とか(絢爛チーム)」新宿シアタートップス

(11)東京舞台芸術祭実行委員会主催「Mary Said What She Said」東京芸術劇場プレイハウス 

(12)新国立劇場主催「焼肉ドラゴン」新国立劇場小劇場 

(13)(14)(15)松竹主催「義経千本桜 第一部第二部第三部(Bプロ)」歌舞伎座

(16)文学座「華岡青洲の妻」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

(17)EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」新宿シアタートップス

(18)ほろびて「光るまで」浅草九劇

(19)二兎社「狩場の悲劇」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

(20)松竹主催「吉例顔見世大歌舞伎(夜の部)」歌舞伎座

(21)劇団☆新感線「爆烈忠臣蔵」新橋演舞場

(22)阿佐ヶ谷スパイダース「さらば黄昏」小劇場楽園

(23)KAAT×城山羊の会「勝手に唾が出てくる甘さ」神奈川芸術劇場中スタジオ

(24)新国立劇場海外招聘公演「鼻血」新国立劇場小劇場

(25)劇団四季「恋におちたシェイクスピア」自由劇場

(26)松竹主催「十二月大歌舞伎 第三部」歌舞伎座

(27)TBS/ホリプロ/ATG Entertainment主催「ハリー・ポッターと呪いの子」赤坂ACTシアター

(28)ゆうめい「養生」神奈川芸術劇場大スタジオ

以上28本、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、

チケット総額は 306600円
1本あたり(チケットあたり)の単価は 10950円

となりました。上半期の18本と合せると46本で

  • チケット総額は 477500円
  • 1本あたりの単価は 10382円

です。なお各種手数料は含まれていません。また、下半期も映画館での芝居映像見物はありません。

上半期はぎりぎり超えていなくて、下半期はチケット単価が10000円を超えて、通年でも超えました。歌舞伎をまともな席で観たのが大きいです。初めは通年ではぎりぎり超えていないと思っていたのですが計算間違いをしていて、計算しなおしたら超えていました。上半期と下半期の両方で超えることも近いでしょう。

なお「チケットの手数料について2題」と題したエントリーを書いたばかりなので、せっかくだからチケット手数料も集計してみました。

  • チケット購入手数料(通年) 15142円

でした。手数料のない当日券芝居もあれば、キャンセル流れを抑えて通常よりも手数料がかかったものもあるので、1件あたりの手数料には幅がありますが、ざっくりと3%上乗せと見てよいでしょう。単価の高い芝居が多かったので3%で済んでいます。件数も総額も多いので、この手数料がなければあと1本か2本は芝居を観る金を捻出できる額が手数料に消えたとも言えます。慣れていくしかありません。

上半期に続いて下半期も演目なり団体なりを「一度は観たい」と「もう一度観ておきたい」がテーマでした。(1)(2)(3)(6)(7)(10)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(21)(23)(26)(27)(28)です。加えて「まだ行ったことのない劇場にも行っておきたい」という裏テーマもありました。ほぼ重なりますが(1)(2)(18)(22)です。これだけ観てもなお、見逃して先送りになった芝居が何本かありますが、いろいろ観られてすっきりしました。歌舞伎とかシェイクスピアのような古典は、有名どころはこれからもなるべく一度は、できれば通しで、観るようにしたいです。

寸評ですが、さすが野田秀樹の再演の(3)、文楽の可能性を広げる三谷幸喜の(5)、自身のキャリアとこれからの決意をドン・キホーテに託したKERAの(8)、評判に偽りなしの四演目だった(12)、周年公演で全力を尽くした新感線コンビの(21)、怪しい雰囲気を振りまく(23)とベテラン脚本演出家勢が大活躍する中に、若い染五郎に刮目した(26)、脚本の力を見せてくれた何度上演されているかわからない(10)、脚本演出役者に加えて美術にも力を入れて圧倒的な完成度を見せてくれた(17)(28)でした。

ここからひと搾りすると(3)(8)(12)(17)(23)(28)になります。さらに搾って(8)(28)となりますが、下半期の1本には(28)を挙げます。これを観る前は(8)が今年の1本のつもりでいましたが、(28)を観たらああ今年の芝居はこれで締めていいと思える、それだけの完成度がありました。あれが駄目な出来ならもう1本挑戦、またはNTLiveを観に行っていたことでしょう。

ちなみに、ひと搾りしたあとの6本中では(8)と(23)だけが新作で残り4本が再演以上のものですが、小劇場の利点を生かして初演から極力早く再演に持ってきた(17)(28)の制作手腕は褒められてしかるべきです。またこの6本中半分が神奈川芸術劇場の上演で、集客はいまいちなようですが近頃気になる芝居が多いのです、長塚圭史が芸術監督をやっている間は関東の人たちは気にしておく方がよいです。

2025年振返りです。先に芝居の中身についてですが、ここ数年感じることとして、上手い。一度は観たい芝居を優先したので何が何でも上手とは言いませんが、現代口語演劇の洗礼を受けた世代の中に「おっ」と言える水準の役者が何人もいましたし、それを見て影響を受けた人もいるのでしょう。脚本の台詞や構成、演出の目標、その他いろいろ、商業演劇とタメを張るか下手な商業演劇以上という芝居を見かけました。上半期もありましたが、下半期だと(17)(18)(28)です。できる人たちの水準が昔よりも明らかに上がっています。

一方で、古典の上演については肩透かしが多かったです。着物髷物と言わず、明治の築地小劇場以来の西洋古典以来、積重ねられたはずの技術を観る機会が足りなかった。そういう芝居をあまり観ていませんし、その手の技術もしっかり身に着けたのだろうなと思わされる役者もいましたが、全員が全員そうではない。そもそも現代口語演劇自体が、現代口語で書かれた脚本を元にしています。古典には古典として残るだけのことはある台詞の重さがあって、それは現代口語演劇でさらっと言えばいいわけではなく、かみ砕いて肚に響く声に乗せないといけない。

両方あるのがいいと思うのですよね。平田オリザが現代口語演劇を目指したときは不自然な翻訳語に、唐十郎や野田秀樹が出てきて小劇場ブームが始まるころですが、唐十郎や野田秀樹は詩的な脚本と台詞なので、不自然さでは翻訳語とどっこいどっこいです。そこに現代口語演劇が出てきて、しかも本を書けるほど方法論がはっきりしていたので、そちらに向かう人が増えた。その人たちが堂々たる古典に臨む機会があればまた違うのかもしれません。新国立劇場のシェイクスピアシリーズ、新劇系と現代口語演劇の申し子たちを半々くらいでやってもらえないものでしょうか。

それにしても小劇場に何が驚くといって、脚本家兼演出家、たまに役者もやる人が、この時代になってもまだまだ出てくることです。新劇系だと文学座は演出家が湧いてくると言われているそうですが、何なんでしょうねこの生命力は。「日本文化はフィルタリングシステムという話」という引用ばかりのエントリーを思い出しました。佐々木俊尚の文章を再引用すると以下です。そういうことなんでしょう。

 しかし日本文化はそういうノイズに塗れた中から、秀逸なひとにぎりのクリエイターを生み出してきた。そういうフィリタリングシステムを作り上げてきたのである。全員が力をそろえてひとつの構造を作り上げるのではなく、バカや暇人が好き勝手なことをやってただコンテンツ消費をしているだけの中から、フィルタリングしてわずかひとにぎりの天才クリエイターを生み出すというただそれだけのことを、日本文化は綿々とやってきたのだ。

その一方で、誰が見ても古典の分野である文楽は三谷幸喜に脚本演出を頼み、歌舞伎は次世代への代替わりに備えて急ぐ。その中でも大看板を引受けているなと考える筆頭が勘九郎七之助ですが、これはご存じ勘三郎と野田秀樹との間で現代的な演出に応えることを求められたり、宮藤官九郎を呼んだりと、現代的な要素をたくさん吸収した上で古典にも臨んで、成功している。もっと若手だと染五郎でしょう。

当たり外れは芝居の常ですが、とにかく演目だけを見れば、いい芝居の予感を手にする目と耳と鼻を持っていれば、今の日本の芝居業界は百花繚乱です。古典と現代の融合も、あと10年くらいしたらもっと進んでいるかもしれません。

とは言え、業界事情はいろいろです。

まずはパワハラの話。去年は「2024年の公演中止のいろいろ」というエントリーを書きましたが、今年は演出家が関わる2件がありました。上半期の「主宰に愛想を尽かして演出家が逃げて公演が中止になるという珍しいケース」では演出家が現場のパワハラを見て自分から降りたケース、下半期の「佐藤信が演出降板」では演出家自身がパワハラ認定されて降りざるを得なかったケースです。こういう話が今後も出てくるか、あるいはこれが広まってパワハラが減ってくるか、あるいはセクハラその他のハラスメントも対応が進むか、どうなるでしょう。

ただしハラスメント反対という話とは別に、そもそも面白い舞台を創れてなんぼというのが芸能界です。清く正しく美しくても、出来上がった芝居がつまらなかったら意味がありません。それは2024年に「人格より前に能力と魅力が求められる業界の話」と書きました。ハラスメントの駆逐と創造性の維持向上が芸能界で両立可能なのか、引続き追える範囲で気にしたいと思います。

次に制作側の話。「劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定」や「抽選販売でほぼすべてのチケットが当選して抽選のやり直し」といったミスがありました。前者はパルコがやらかして、後者はチケットぴあがやらかしました。大手にしてこれですから、人手が足りないか、この手の失敗をカバーしていたベテランが退職してノウハウが一時的に足りなくなっているか、そのような話が連想されます。

一方で上半期には「輸送中の事故からのショーマストゴーオンその2」という事故もありました。人が無事なのは何よりですが、いろいろ大丈夫かと心配になります。

それとチケット代。去年に引続き値上がりしています。業界側から見た表現なら値上げ転嫁が順調とでも呼ばれるところでしょうか、私が考えていたよりも値上がりのペースが早いです。物価高が続いていて背に腹は変えられないところでしょうか。日本の芝居は短ければ3日、長くても数か月で次に移るので、値上げしやすいのでしょう。代わりに昼と夜、平日と土日祝日、子供や学生向け、など1つの公演に複数のチケット価格帯を導入しています。そのあたりは座席の違いと合せて「座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例」、あとは「チケット代から予想する舞台の出来について(2025年末版)」をまとめました。後者を書きながら、近頃チケット代が出来の指標として役に立たなくなってきているなと気が付きました。

パワハラの件、制作のミスや事故、チケット代の値上がり。この3件は奇しくもそれぞれハラスメント防止、ベテラン退職と人口減による人手不足(推測ですけど)、物価高といった社会の大きな動きを反映した出来事でした。芸能界といえどもこのレベルの社会の変化とは無縁ではいられないということがわかります。だから2026年も似たような出来事が起きると予想します。

2026年にもうひとつ何かあるかもしれないとしたら、戦争ですね。起きるなら2027年ではないかと言われていましたが、最近騒がしいですからね。全力で回避してほしいです、世界が。

最後に個人的な話です。夏から後に体調を崩して、年末2か月は完全に駄目でした。なのにここに観たい芝居が固まっていたので、慣れた趣味に逃げて体調が駄目でも精神的には何とか保とうと自分で自分に言い訳しながら観ていたのですが、これがまた体力を使うことに跳ね返ってあまり上手くいきませんでした。チケットを前売で買った芝居がなかったら観る芝居はもっと減っていたでしょう。

これが20年前なら週末の疲れを平日で癒してみせるとうそぶいていられたのですが、さすがに無理で12月は芝居を減らして対応することになりました。ブログを書くのもなるべく短くまとめようとしたのですがこのエントリーを書くために見返していたら記載ミスがたくさん見つかりましたし、短く書くために考える時間を余計に使ってしかもあまり短くならないという散々な結果でした。暇ネタは書く気力がなくて、でもここで書かないと忘れるからと年末に掃除をしながらまとめて書いたら、結局掃除が疎かになりました。

昔と同じようにはいきません。いろいろ変わるんです。それに対応することが求められます。大は社会の変化から、小は自分の体力低下まで。1年前にも書いたことですが、それを思い知らされた年末でした。

観る本数をもっと減らすはずで、上半期は少し抑えられましたし、下半期も夏までは抑えられたんですが、年末のラッシュを上手く乗りこなせませんでした。ここは反省です。ただ、だからこそ(28)を観られた面もあります。数をこなさないと出会えないんですよね、いい芝居は。そういうことがあると反省が足りなくなるところを反省しないといけません。

昔なら上演が始まってから評判がよさそうなら観に行っていたのですが、今時は面白い芝居は土日祝日どころか平日も前売完売、そんな芝居の当日券は行列先着順ではなく前日電話予約が必須、だから見込みでチケットを押さえる必要があると思ったらリセール禁止。これで買ったチケットのおかげで芝居を観に行く元気を搾り出せたのか、長い目で見ると体調を悪化させた呪いなのかはわかりません。

そんな昔の当日券派時代は小劇場ばかり追ってきたので、それは今になって役者や脚本家や演出家から芝居の出来を見極める役に立っています。ですが演目を考えると、定番名作や古典の観劇経験が足りていないので、体力が少しでもあるうちに観ておきたい。

ただ、体調悪化と芝居ラッシュで、芝居以外に今年やりたいと考えていたことが夏以降に止まってしまったので、そちらを復活させるために芝居の本数の折合をつけないといけなくて、これが未だにまとまっていません。来年の課題です。

ブログはどうするかと言えば、雑でも短くても、暇ネタが減っても、観た芝居の寸評を書くことは続けたい。金のためでもない、誰のためでもない、何のためだかわからない、ここはそういうブログです。ああでも、芝居の寸評は木戸銭を払った一観客の立場から誠実に、そして内容は雑でも文章は丁寧でありたいです。目標ですけど。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

2025年12月29日 (月)

劇中劇の芝居を本当に上演して撮影するNetflixの宮藤官九郎脚本ドラマ

ややこしいのでまずは制作会社っぽいところのサイトより。

[NEWS] 大人計画×Netflix「俺のこと、なんか言ってた?」 宮藤官九郎作・演出の舞台が、 宮藤官九郎オリジナル脚本のNetflixシリーズとコラボ!! 下北沢ザ・スズナリにて上演決定!!

この度、2026年1月28日(水)~2月1日(日)、ザ・スズナリにて、劇団ウイスキーボンボン第7回公演『誰も知らない大物俳優』の上演が決定いたしました!

本作品は、宮藤官九郎が完全オリジナルの脚本を手掛けるNetflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」(2026年/Netflixにて世界独占配信)の劇中公演です。主演は、まさに“誰も知らない大物俳優”田中卓。共演は、無頼タケルノミコト、二萬田久子。その内容が事前に明かされることは無く、秘密裏に上演されるこの舞台は、ご観劇いただくお客様も内容や感想を一切劇場外に漏らしてはならない極秘プロジェクトです。お客様もこのプロジェクトの一員として秘密を共有することになります!口外不可でよろしくお願いします!!そして乞うご期待!!!

作・演出:宮藤官九郎コメント

これは僕の作品であって僕の作品ではない、駆け出しの劇作家が書いたテイの劇中劇です。
主演は役所広司に見えるけど役所広司ではないテイの男、田中卓。
共演の2人もおそらく誰かなのでしょうが、誰も知らないテイでご覧下さい。

2026年配信予定のNetflixのドラマが宮藤官九郎の脚本であり、その撮影中である。ドラマの中で劇中劇があるが、それを実際に公演をやって撮影する。そのドラマの主人公が役所広司で、ドラマ中に出てくる劇団名が「劇団ウイスキーボンボン」である。ということまでまずはわかりました。

次。大人計画の公式サイトに、ドラマ中の設定に則りつつもギリギリそうでないメタな公演サイトが載っています。宮藤官九郎が脚本演出を行なう3人芝居である。公演期間は水木金の前半3日間と日曜日に分かれている。水木金は有料で販売する。そのうち金曜日は公演収録日である。ここまでは普通です。チケット料金が13000円ですけど、宮藤官九郎の脚本演出で、3人の役者のうち少なくとも1人は役所広司ですから、まあ妥当でしょう。お土産付きらしいですが、ドラマの販促グッズか何かでしょうか。

そして日曜日は抽選ですが完全無料の回。システム利用料は負担するようですが495円ならただみたいなものです(チケットぴあでの申込にクレジットカード必須となっています)。代わりにドラマのエキストラとしても撮影に参加してもらうことが条件です。

〇特別無料招待券

2月1日(日)13:00公演は、事前抽選にお申し込みいただき、当選されたお客様のみご覧いただける特別無料招待公演です!
客席内にカメラが入り本番を全編収録すると共に、終演後にドラマ収録を行います。
ご観劇のお客様には終演後のドラマ収録もエキストラとしてご参加いただきます。
(中略)
【料金】
招待のため無料
※ただし、当選時にはぴあシステム利用料330円+チケット発行料165円をお客様にご負担いただきます。

いろいろ条件も書いてありますが、そのチケットの抽選と販売を管理するチケットぴあのサイトの方が若干詳しいみたいなので申込ボタンからそちらを見てみましょう。

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演 特別無料招待券受付
注意事項-必ずご確認ください

※本受付は、「チケットぴあ」の販売方法とは異なる特別受付となります。チケットぴあサイトでご利用いただけるサービスは適用されませんので、ご了承ください。

※本受付は、引取方法「購入後あとから選ぶ」をご選択いただきます。ご当選・お支払い後に、チケットぴあ「Myチケット」ページにて発券場所をお選びください。ご登録の氏名/電話番号がぴあ会員登録情報と一致しない場合、お申し込みができません。予めご注意ください。

受付/結果発表日程

● 受付期間
2025年12月25日(木) 10:00 ~ 2026年01月08日(木) 23:59

● 結果発表
2026年01月16日(金) 18:00頃(予定)
結果発表後は早急に、申込状況照会はこちらより、当落結果をご確認ください。

● 結果確認方法

※申込状況照会には、受付完了画面にて表示される『申込受付番号』/お申し込み時にご登録の『申込状況照会用パスワード』が必要です。
※サポート情報として、当落結果通知メールを上記の結果発表日時に配信いたしますが、メールが未着の際は必ず、お客様ご自身で [申込状況照会] の結果発表をご確認ください。
※@pia.co.jpからのメールを受信可能な状態に設定してください。メールの再送はできません。
※インターネットの途中経路の障害や、お客様のご利用されているメールサーバ、端末の設定の問題等による遅配・未配につきましては、弊社はその責任を一切負いません。
※毎週火曜・水曜の午前2:30から午前5:30まではシステムメンテナンスとなります。

受付公演詳細

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演
2026年02月01日(日) 13:00
【B】
会場:東京・ザ・スズナリ
席種: 特別無料招待券 ※整理番号付き当日引換券/公演当日要身分証明書

注意事項

【チケット】
※公演当日、お引き換えの際に券面に記載の氏名確認を行います。身分証明書(ご本人と分かるもの〈免許証、保険証、マイナンバーカードなど〉)の原本を必ずお持ちください。確認後、指定席券と引き換えてご入場いただきます。
※お席はお選びいただけません。ベンチシートや、開演直前に客席にご案内する注釈付き指定席となる可能性もございます。
※指定席券とお引換後、ドラマ収録の都合でお座席の変更をご相談させていただく場合がございます。

【ご注意】
※2月1日(日)13:00開演の無料公演をご観劇のお客様には、ご観劇内容・収録内容を第三者に開示・漏洩しないことをお約束いただき、 撮影した肖像の利用に関してご同意いただくため、【秘密保持に関する誓約及び肖像権の利用等に関する同意書】をチケットお申し込み時にご確認いただき、ご観劇当日のご入場時にご署名いただく必要がございます。
また、知り得た情報はインターネットなどあらゆる媒体に書き込まない、口外しないようお願いします。
※エキストラとしてもご参加いただきますので、収録に映り込むことを前提にお申し込みください。
※終演後のドラマ収録は最大4時間位を予定しております。19時まで劇場に居られる方のみを対象にしております。
※早い整理番号から良席にお座りいただけるという訳ではございません。
※ご入場は整理番号順ではございません。
※撮影されたすべての映像の著作権は、Netflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」の権利者に帰属いたします。無料公演に応募され出演された方の、映像に関するいかなる権利も主張されない事に同意されるものとしてご応募ください。
※撮影中に、スタッフの指示に従っていただけない場合は、退場をお願いすることがあります。
※ご記入いただきました個人情報は本公演(エキストラ参加)以外では使用いたしません。
※開演の5分前を過ぎますとご自身のお席にご着席いただけない場合がございますので、予めご了承ください。
※本公演のチケットは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されております。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※車イスでご来場予定のお客様は、チケットご購入前に大人計画(03-3327-4312)までお問い合わせください。
※営利目的でのチケットのご購入ならびに転売は固くお断りいたします。
※チケット券面に購入者氏名が印字されます。

【お問い合わせ】
(後略)

この後のページでもこまごまとした注意事項が続きますが、とりあえずここまで。普通に見るなら13000円払う芝居を無料で観られる代わりに、エキストラとしてこれだけの条件に同意するようチケット申込みの時点で権利関係についてはしっかり釘を刺しています。そりゃアメリカ発の会社が法律関係を押さえないわけがない。内容を漏らさないことについて秘密保持契約をするとありますが、申込時にメールアドレスは伝わることになっていると後のページに書かれていますし、申込みもクレジットカード限定です。署名と合せていろいろ追及する手段は向こうも把握して備えていますから、ばらして知らんぷりの炎上狙いは止めたほうがよいです。

最大4時間くらい、19時まで居られる人、という条件が明記されているのはいいですね。ドラマの撮影は時間があってないようなものと昔から言われていますが、次の日が仕事の人も、遠方から応募する人もいるでしょうから。

無料で観られるのだから座席が選べないのはそりゃそうだろうと思いますが、面白いのは座席変更を後で相談する件です。座高の高い人とか服装が派手な人とか頭髪がお歳を召している人とか、画面上の絵作りを考えないといけないんでしょうね。個人的な予想ではエキストラの一般客だけでなく本業の役者も客席に混じってあれこれやるんだと思いますが、それに舞い上がらないような人をなるべく真ん中に持ってくるとか。

とは言え、13000円を取ったとしても公演だけなら大赤字でしょうから、その分は撮影費用に組込まれているのでしょう。Netflixは全世界相手にするだけテレビドラマと比べて予算が文字通り桁が違うという記事を読んだことがありますから、こういうこともできるのでしょう。いい予算の使い方だと思います。反面、視聴数のノルマが厳しくて達成できないと次がない、だから初めて参加した仕事が成功せずに2回目の機会なくお払い箱になる人も後を絶たない、とも記事には書かれていました。芸能界に向いた仕組みだと思いますから別世界の話です。

次の公演の予定を立てるために調べていたら見つけた公演だったものの謎だったので、あらためて調べてどういうものなのかようやくわかったので一段落です。

ちなみにこれを書いているのは抽選の応募期間中なので応募しようと思えばできるのですが、いろいろと面倒そうなので止めておきます。それなら平日公演に応募するかというと、当たれば都合の付く日が1日だけあるのですが、それでもいろいろ面倒そうな予感がするので止めておきます。面倒そうだけど役所広司が観られるかもしれない、よりは、役所広司が観られるとしても面倒そう、と考えてしまう私はおっさんです。面倒が起きてから文句も言えませんしね。

2025年12月28日 (日)

抽選販売でほぼすべてのチケットが当選して抽選のやり直し

芝居の予定を立てるべく調べている最中に見つけました。ヨーロッパ企画の公式「お詫びとお知らせ」より。

ヨーロッパ企画第44回公演「インターネ島エクスプローラー」
ヨーロッパ企画公式サイト先行 チケット購入のお客様へ

2025年10月15日

2025年10月4日(土)~10月9日(木)に実施いたしましたヨーロッパ企画「公式サイト先行」では、多くの皆様にお申込みをいただき、誠にありがとうございました。

しかしながら、10月14日(火)に行われた抽選作業の際、先行販売を実施したチケットぴあサイトでの抽選処理作業に不備があり、本来は抽選が行われるはずだった一部公演において、希望枚数のほぼ全てが当選として処理されてしまいました。

この誤処理により、下記の公演で収容人数を超える枚数が販売されていたことが判明いたしました。誠に恐縮ではございますが、対象公演の公式サイト先行での当選を一旦無効とし、チケット代金を全額払い戻しさせていただく対応を取らせていただきます。

対象となるお客様には大変なご不便とご迷惑をおかけいたしますが、払い戻しとあわせて再受付を実施いたします。詳細は以下の通りです。

【対象公演】

公演名:ヨーロッパ企画第44回公演「インターネ島エクスプローラー」
日時 会場 対象席種
2025年12月13日(土) 15:00 栗東芸術文化会館さきら 中ホール 一般・学生
2026年1月9日(金) 19:00 本多劇場 一般
2026年1月10日(土) 13:00 本多劇場 一般
2026年3月7日(土) 13:00 札幌市教育文化会館 大ホール エクスプローラーシート

【再受付および払い戻し方法】

対象のお客様には、チケットぴあより順次メールにてご案内をお送りいたします。
メールには再受付の詳細および払い戻し手続きの方法を記載しておりますので、ご案内が届き次第、ご確認のうえお手続きをお願いいたします。

【本件に関するお問い合わせ先】

(中略)

公演を心待ちにしてくださっていた皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
今後は、このような事態が二度とないように、再発防止に努めてまいります。

チケットぴあ
ヨーロッパ企画/株式会社オポス

これについてはチケットぴあがやらかしたことが明記されていますので責任ははっきりしています。

原因についてはまったくの推測ですが、チケットぴあだと公演の会場単位でチケット販売を分けるのが基本で、同じ会場であれば学生向けなど特別なチケットでない限りは同じページで販売します。それなのに特定の公演回が対象となっています。おそらく割当てられたチケット数を入力する際の入力ミスで数字を間違えて入力してしまったのではないでしょうか。「希望枚数のほぼ全てが当選」と書かれている所からすると、桁を間違えてお尻に0を付けたり頭に1を付けたりしたら劇場総席数を超えて、それは何となくシステムで弾く仕組みが入っていそうですから、割当て総数を入力するところを劇場総席数を入力した、あたりでどうでしょう。だとするとヨーロッパ企画の抽選に申込んだときの倍率は他のチケットセンターも考えると5倍くらいかな、とか連想が広がりますが、まったくの推測なのでこの辺にしておきます。

それにしてもこの7月には「劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定」という事件があったばかりです。書類を確認するときは固有名詞と数字(日付含む)だけは間違いがないように確かめると言われていますので、そこは気をつけてほしいところです。

それとは別に、やっぱり人手不足が芝居の制作関係にも来ているのだろうなと思います。それは私の仕事でもひしひしと感じるところではあり、他山の石にしなくてはいけません。

余談ですが、どうせならついでに「芝居業界の笑えない失敗 制作編」で誰か1本作らないでしょうか。芝居本番のトラブルは「ショウ・マスト・ゴー・オン」みたいに作られていますが、もっと事務所寄りが舞台のもので、登場人物が制作とかマネージャーとかスポンサーばっかりで役者役が全然出てこない芝居。これは揶揄しているのではなくて、そういう形でまとめることで業界内の啓蒙に資するのではないかという提案です。それこそヨーロッパ企画が得意そうなのですが。

もっとも、芸能界で本当に笑えない失敗となると刑事事件になるのはここ数年来の事件で明らかなので、ネタは選んでほしいところです。

2026年1月2月のメモ

少し調べる範囲を広げましたが、それでもここまで多くなるとは思いませんでした。ニッパチは今や昔です。

・松竹製作「わが歌ブギウギ」2026/01/02-01/20@三越劇場:キムラ緑子が笠置シヅ子を演じます

・松竹主催「壽初春大歌舞伎」2026/01/02-01/25@歌舞伎座:午前の部に勘九郎七之助の実盛物語がありますが、午後の部は七之助幸四郎の女暫に、ダブルキャストで女殺油地獄もある

・PARCOプロデュース「志の輔らくご in PARCO 2026」2026/01/05-01/31@PARCO劇場:当日券次第です

・ヨーロッパ企画「インターネ島エクスプローラー」2026/01/07-01/25@本多劇場:近頃珍しい全国ツアーを頑張っているところが好ましい新作

・Bunkamura主催企画製作「クワイエットルームにようこそ」2026/01/12-02/01@THEATER MILANO-ZA:松尾スズキが自作小説のミュージカル化ですが原作が面白かった記憶がある

・燐光群「OIL」2026/01/09-01/18@ザ・スズナリ:石油の歴史とこれからを描いた海外芝居

・東宝製作「ピアフ」2026/01/10-01/31@シアタークリエ:大竹しのぶを観に行くかどうか

・果てとチーク「だくだくと、」2026/01/15-01/18@シアター711:近頃見かける劇団名なのでピックアップ

・エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/キョードーファクトリー主催「ピグマリオン」2026/01/20-02/08@東京建物BrilliaHALL:主演が沢尻エリカであることとチケットを買うのが面倒そうなことを除けば演目と他の出演者は大変に魅力的

・ONEOR8「ママごと」2026/01/21-01/27@紀伊國屋ホール:何となく面白そうなのでピックアップ

・文学座研修科発表会「ロミオとジュリエット」2026/01/23-01/25@文学座アトリエ:研修科の発表会ですけどたまにはこういう鉄板演目もピックアップ

・インプレッション製作「チェーホフの奏でる物語」2026/01/23-02/02@東京芸術劇場シアターウエスト:イッセー尾形の出るニール・サイモン芝居

・大人計画×Netflix「劇団ウイスキーボンボン第7回公演『誰も知らない大物俳優』」2026/01/28-02/01@ザ・スズナリ:Netflixドラマの劇中劇を撮影するために本当に上演する、という理解であっているのか、宮藤官九郎脚本演出芝居で、千秋楽は撮影と引換えに無料という予算の使い方を心得ている企画

・アイオーン主催「ゴドーを待ちながら」「ゴドーを待ちながらを待ちながら」2026/01/30-02/15@赤坂RED/THEATER:「ゴドーを待ちながら」は小倉久寛と青年座の横堀悦夫を立てて、そのバックステージ芝居の「ゴドーを待ちながらを待ちながら」と同一期間に別々上演、演出は西本由香

・トライストーン・エンタテイメント/ディライト・エンタテイメント企画制作「いのこりぐみ」2026/01/30-02/23@IMM THEATER:三谷幸喜の新作4人芝居

・松竹主催「猿若祭二月大歌舞伎」2026/02/01-02/26@歌舞伎座:どうしよっかなー、くらいの気持ちで

・世田谷パブリックシアター企画制作「黒百合」2026/02/04-02/22@世田谷パブリックシアター:泉鏡花はあまり趣味ではないのですが演出が杉原邦生なところで念のためピックアップ

・劇壇ガルバ「The Weir」2025/02/05-02/15@ザ・スズナリ:第7回公演まで続いて一度観ておきたいのですが今回の演目はアイルランドものということで悩む

・新国立劇場演劇研修所演劇研修所「社会の柱」2026/02/10-02/15@新国立劇場小劇場:卒業公演にイプセンの1本

・国立劇場主催「令和8年2月文楽公演」2026/02/11-02/23@KAAT神奈川芸術劇場ホール:絵本太功記の通しと勧進帳ということでピックアップ

・KAAT神奈川芸術劇場企画制作「冒険者たち」「帰ってきた冒険者たち」2026/02/11-02/23@KAAT神奈川芸術劇場中スタジオ:長塚圭史が神奈川県内を取上げる劇場プロジェクトに、らしからぬ出演者を集めて再演と新作の2本を同一期間に別々上演

・劇団青年座「鵺が疾る」2025/02/15-02/23@東京芸術劇場シアターウエスト:野木萌葱の新作で演出は黒岩亮

・スラステ「WIVES and HUSBANDS」2026/02/18-02/23@駅前劇場:THE ROB CARLTONの村角太洋を作演出出演に招き、羽野晶紀やインディ高橋の新感線メンバーも呼んで

・範宙遊泳「われらの血がしょうたい」2026/02/21-03/01@シアタートラム:演出を額田大志に任せての再演芝居

・文学座研修科発表会「真夏の夜の夢」2026/02/20-02/22@文学座アトリエ:研修科の発表会でもこちらは本科夜間部の上演で、鉄板演目だからピックアップ

・新国立劇場オペラストゥディオ「ウィンザーの陽気な女房たち」2026/02/20-02/22@新国立劇場中劇場:名前だけ聞いたことのある演目をこういう機会に覚えたい

・GAMARJOBAT「ピストルと少年」2026/02/20-02/23@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:台詞のない1人芝居らしく、表題作は二部で、一部に他の短編も組合せて上演らしいのでピックアップ

・劇団アンパサンド「歩かなくても棒に当たる」2026/02/20-02/25@東京芸術劇場シアターイースト:近頃見かける劇団名なのでピックアップその2

・MONO「退屈忍者」2026/02/27-03/08@吉祥寺シアター:タイトルからして目を惹きます

これだけ数が多いのに一度観ておきたい系の演目や団体が多くて困りますが、さすがに数は増やせませんので何とか厳選したいです。

チケット代から予想する舞台の出来について(2025年末版)

世の中の物価上昇に伴ってチケット代も値上がりしています。関係者だって物価上昇を埋合せられるように稼がないといけないので、それは致し方ありません。

それで2004年に書いた(ブログの移動に伴い2011年に再掲載した)「再録:チケット代から予想する舞台の出来について」を、今の感覚に直してみようと思います。

前回はその公演の一番高い席を基準にしていたのですが、昨今だと土日祝日公演が高い、夜公演が安い、子供割がある、学生割引がある、など1つの公演の中でもチケット代がばらつきます。なので基準は「その公演で一番標準的で割増も割引もないと考えられる平日昼間公演の大人料金で一番高い席の値段」を基準とします。実際にはその公演で一番安い料金を基準に上乗せを決めていると思いますが、そこはあまり穿つことなく素直に考えます。

また前回と同じく、伝統芸能や宝塚や海外来日モノの日本公演はまた別の基準になりますのでひとまず脇に避けます。

・無料:
観てはいけない。

・ - 3500円(旧2000円までの価格帯):
旗揚げしてすぐの場合。旗揚公演に限っては出来のいい可能性はあるが、数回公演してもこの値段だと手を出さない方が賢明。

・ - 6500円(旧3500円までの価格帯):
ある程度公演を重ねた劇団。規模の大きい劇場には向かない作風の劇団、ある程度売れた人たちが本公演とは別に上演したい場合、芸能人としてそこそこ売れていても舞台経験の浅い人が舞台を始める場合、長年公演しているが全然おもしろくない(動員数が伸びない)のでこれ以上の値段をつけることができない劇団、の4パターンが主。玉も石も多い、小劇場という言葉が一番似合う層。

・ - 8000円(旧5000円までの価格帯):
ある程度の評価を得られて、中規模以上の劇場で上演するに耐えうる質を維持している劇団が多い。コアな少数ファンを当てにした、つまらなくて売れない劇団もたまに混じる。スタッフワークのレベルも上がる。昔ならエンタメ要素必須の価格帯でも、近頃だと小劇場社会派系地味芝居でもこのくらいのチケット代はある。

・ - 13000円(旧8000円までの価格帯):
昔の小劇場から売れた劇団、あるいはその関係者を巻込んだプロデュース公演でいまとなっては事実上商業演劇になっている一群と、芸能系の商業演劇群とが混在しているレベル。小劇場系だとはずれが最も少ないと思うが、それでもはずれるときははずれるし、芸能系は言わずもがな。脚本家か演出家か役者に人気者が含まれ、スタッフワークは確実で金がかかっている。

・ - それ以上:
人気者を前面に押出しての価格帯。スタッフワークは確実で金がかかっており、その点ではチケット代について納得させてくれる。ただしスター頼みの面も大きく、芝居の出来を保証するものではない。役者目当てでない場合は、チケット代が高い分だけ外れたときの怒りも大きくなる。

こんなところではないでしょうか。以前は旧6500円までの価格帯を設けていましたが、「つなぎ」と書いていたくらいその当時でもあまり見かけないチケット代の価格帯でした。ですから割と強気なチケット代も珍しくなくなってきた昨今、上下の価格帯に吸収されて消えました。

以前はまったく観なかったので書かなかったこととして、ミュージカルがあります。できる役者が限られる、演目に海外翻訳物が多い、生演奏が入ることもある、と金の掛かる要素が多いため価格帯が高値安定しており、13000円スタートくらいでしょうか。16000円とか見かけますし18000円でも驚きません。こちらはチケット代から出来を判断することは不可能で、演目と出演者で判断することになります。

ちなみに、劇団四季のチケット代はなかなか相場に近いです。ただあちらは、ロングラン演目だと減価償却費だか契約当時の為替だか何か理由があって、一般レギュラー価格が13000円のところ、新作だと13500円になっています。会員価格だと1000円引きになりますが、今後もチケット代はじわじわと上がるのだと読取れます。

そしてここまで書いておいて何ですが、チケット代から出来を推測するのは近頃は成立たなくなってきているなと思います。

2004年当時は売る側としても提供できるものに見合った値段というのを意識していたような、チケット代の格とでも呼ぶべきものがありました。小劇場とか老舗新劇劇団とか商業演劇とか、互いの領分がもっとはっきり分かれていて、そこにチケット代の相場がありました。そこは2025年現在、存在しません。小劇場から芸能界に進出して活躍する人が増えて、小劇場と新劇劇団との間で脚本家や演出家レベルでの交流が盛んになり、テレビの影響力低下と海外ネット系オリジナルドラマや映画の作成が日本にも入って、ごちゃ混ぜです。

スタッフワークも、IT系ツールの発展で映像と音響はかなりのところまで作れて、機材よりも腕前とやる気次第になっています。なんだったら小劇場なのにLEDパネルまで導入する芝居が出てくるくらいです。

あとは役者の腕前も、平均値は今より数段下でした。だからこそ達者な役者のいる劇団は人気となり、大きくなり、人気の役者が抜けて終わる、というサイクルでした。そこを底上げしたのが、ここ30年近くの現代口語演劇の膾炙によって自然体の演技のイメージが広まったことと、海外のメソッドの流入でしょう。若くても上手い人は本当に上手いし、その数も増えています。小劇場と芸能界の両方でです。

余談ですが、その分だけ、昔の小劇場で「怪演」して名を上げたような役者が減っている気もしますが、あれは劇団の作風が「怪芝居」であることとセットです。探せばどこかにいるのでしょうし、近頃の自分の興味でなかなかその手の芝居は観られていないのですが、それでも「怪芝居」の数自体が減っているように思われます。

閑話休題。それらの結果として、安いチケット代の面白い芝居のレベルと、高いチケット代の面白い芝居のレベルとが拮抗しています。面白さの1点だけを問うなら昔だって拮抗していたでしょうが、それは脚本家兼演出家兼主宰のセンスで引張り上げられるだけ引張り上げた結果だったでしょう。それが今だと役者もスタッフも商業演劇と大差ないケースも出ています。違うのは上演劇場の広さだけです。

あとはSNSの広がりもあります。SNS宣伝の上手下手はありますが、だとしても昔よりも口コミの重要性が遥かに高い。

結果として、チケット代から出来を予想する意味が減りました。それは芝居の出来を予想する手掛かりが減ったことになりますから、観客にとってはかえって難しくなったと言えます。

上演側に取っても難しくなっていて、自分たちの芝居の観客層をよく把握して、口コミが広がる層を考えて、上手く嵌まったときにチケット代が足かせにならないようなところまで思いを馳せる必要があります。

それでも昔に比べたら今の芝居環境の方が面白いものが多いです。チケット代が上がっても外れ芝居はなくなりませんが、外れたときの不満要素は昔よりも減っていますし、面白い芝居の面白さは昔よりも上がっていますから、観客にとっては今の方が豊穣と言えるでしょう。作る側は昔よりも大変でしょうが、そこは納得の上で取組んでもらいたいです。

チケットの手数料について2題

その1。今年は事前にチケットを買ってから芝居を観に行くことが増えました。昔なら当日券で観られていたであろう芝居でも、当日や前日の電話予約をしていないと販売もされないことが増えたからです。

そうすると芝居や販売方法ごとにチケットセンターの手数料が掛かるのですが、これは馬鹿になりませんね。キャンセルするときも手数料は掛かりますから、チケット代を丸ごと損するよりはいいですが、それにしたって高い。

割と最近まで当日券派だった自分の方が少数派であるとは思いますが、年間の回数が多いと無視できない金額になります。

その2。それでも当日券で観に行くことはあります。その中で新国立劇場の芝居を当日券で観たのですが、何と当日券のチケット代に330円の手数料が乗ってきます。今年からのようです。これが非常に納得がいきません。

大人の事情を推測するに、後ろのチケットシステムを全面的にチケットぴああたりに委託していて、その契約で1枚発券ごとにいくらと決まっているのだと思われます。だからその分を正直に請求しているのでしょう。

しかし主催公演の当日券を劇場の窓口で買って手数料というのはまったくもって釈然としません。そんなのは前売いくら、当日いくらとチケット代に差を付けて、そこに吸収させてしまえばいいことです。前売で買ってくれたお客様向けに500円安くする(当日券を500円高くする)くらいは昔から行なわれていたことで、それは幕を開けるまで出来が読めない芝居の世界には向いていたシステムでした。そうやって丸めてしまえばそんなものだと納得するのに。

ひょっとしたら国の機関の一部として、そのような値付けは好ましくないとされているのかもしれません。だとしたら無理かもしれませんが、まあ何と言うか馬鹿真面目なところが新国立劇場というものだなと思います。

2025年12月27日 (土)

座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例

先日観た「ハリー・ポッター」は、舞台も長年手掛けているホリプロという芸能界大手が、劇場主のTBSと手を組んで、海外発の有名シリーズを持込んだ芝居です。魔法の世界が舞台なのは皆さんご存知のところ、そこで映像に逃げずにアナログにどうにか魔法を再現させようとする努力の塊でした。これを実現するには劇場の中に相応の仕込みが必要、かつそれを操るスタッフも専任で必要となります。必然的に劇場を借り切ったロングラン、それも日本風のロングランではなく、年単位のロングランになったのでしょう。

ロングランということはリピーターも含めてあの手この手で集客しないといけません。有名シリーズでファンも多いでしょうから、1回限りであれば吹っ掛けることもできるでしょうが、そういう乱暴なことでは年単位の公演を続けられません。とは言え、自社他社の役者を集めるホリプロも、スタッフも劇場も、もちろん海外の版権会社も、稼ぎになるから付合います。凝った仕込みも含めて安売りはできません。

稼ぐためには利益率が高いと言われるグッズに力を入れるのはもちろんですが、それだって観客が来てくれればこそです。ということで、舞台興行の基本であるチケット代については、できるだけ大勢のお客さんがやって来て、かつ、ぎりぎり高い値段で売りたいと制作サイドが頭を悩ませるわけです。

それで細かくわけたのがまず座席です。公演が終了したら消えてしまうでしょうから座席表が必要な人はダウンロードしておいてください。URLに241028と含まれているのでそこで一度見直したのかもしれませんが、昔の料金はわからないので現在最新を元に話を進めます。

以下、座席表を観れば一発でわかる会場の赤坂ACTシアターの説明です。1階はA列からY列まで25列あって、H列とI列の間が通路です。2階はA列からK列まで11列あり、F列とG列の間が通路です。横は1番から42番まで番号が振られており、1階は列によって14番から27番または28番までが、2階は列によって14番から28番または29番までがセンターブロックです(2階最後列のみ座席の都合で15番から27番)。

これを運営団体は7つのチケットに分けました。

・9と4分の3番線シート(特典付SSS席相当):1階I列(通路後ろ)のセンターブロック
・SS席:1階A列からN列まで(I列除く)のセンターブロック、2階A列のセンターブロック
・Sプラス席:1階O列からU列のセンターブロック、A列からR列までのサイドブロック、2階B列からD列までのセンターブロック、A列からC列までのサイドブロック
・S席:1階V列とW列のセンターブロック、S列からW列までのサイドブロック、2階E列とF列のセンターブロック、D列からF列までのサイドブロック
・A席:1階X列とY列、2階G列とH列
・B席:2階I列とJ列
・C席:2階K列

これを見てわかることは何でしょう。

まず、特等席は最前列ではなく、通路後ろのセンターであると示したことです。これは特典付きで値段を上げている席ですが、それも含めて劇場中で一番価値ある席だと公式が認めています。これはわかることで、例えば歌舞伎の世界だと「とちり席」が価値が高いと言われています。最前列からいろは順で数えて7列から9列目のことです。至近で贔屓の役者にかぶりつきたい人もいるでしょうが、それよりは全体が見える程度には離れているけどできるだけ舞台に近い席、これが芝居を堪能するには良い席だということです。

それに合せて、センターブロックとサイドブロックとで価値が異なると示しています。たとえ最前列でも(というか最前列ほど)角度が付いて芝居全体が見にくくなるよりは、少し後ろでも正面に舞台全景を収められるほうが好ましいということです。これもわかることで、役者が背中を向けていたり、役者が重なって向こうの役者が隠れたりするだけでなく、観ていて首が痛くなります。歌舞伎だと花道の役者の背中ばかり見ることが多い下手前方は「どぶ席」と呼ばれているくらいです。後ろは後ろで、舞台の「絵作り」の見え方に関わりますから、そこに差を認めるということです。

そして席が後ろに行くほど安くなるのは誰でも納得するでしょうが、1階後ろがA席になっているのは、これはおそらく芝居の内容と劇場の構造によるものです。2階席の張り出しで視界上方が遮られる席だからでしょう。「ハリー・ポッター」は高さも上手に使ったり、客席側に照明を当てたりしていましたから、客席の視界が開放的な席は仕掛けが全部見えて望ましいということでしょう。だから距離が遠くなる2階でも前方席がSS席、Sプラス席、S席扱いになっていると読取りました。

2階後方は席種を細かく設定していますが、これは距離が遠いとか、劇場の天井が目に入ってくる席といった舞台の見え方云々だけでなく、客寄せのために安い席を設けるならここしかないという判断と思われます。それでも、2階通路後ろ列が1階最後列と同じ値段なのは、先ほど書いた通り視界の開放度合いによるのではないでしょうか。反対に言えば、視界の抜けを気にしない芝居であればここまで(今回の)S席相当で扱われる可能性もあります。

座席による差の付け方はわかりました。ではその差を値段に反映させるとどのくらいの差になるでしょうか。ちなみに家族連れを当て込んでSプラス席とS席には子供料金も設けられています。以下の通りです。

席種 平日昼料金 土日祝昼料金 夜得料金
SS席 17,000円 19,000円 13,000円
Sプラス席 16,000円 17,000円 12,000円
Sプラス席(6歳~15歳) 12,000円 12,000円 8,000円
S席 15,000円 16,000円 11,000円
S席(6歳~15歳) 12,000円 12,000円 8,000円
A席 13,000円 14,000円 9,000円
B席 11,000円 12,000円 7,000円
C席 7,000円 7,000円 6,000円
9と4分の3番線シート 20,000円 22,000円 16,000円

9と4分の3番線シートとC席が若干特別なので一旦置くとして、SS席からB席までが平日昼と夜(土日祝日含む)だと6000円差です。土日祝昼料金は平日昼料金に1000円または2000円を上乗せしているため、SS席からB席まで7000円差です。単価の高い商業芝居である前提ですが、このくらいは差を付けないと納得してもらえないという判断です。

また時間帯別料金ですが、土日祝日の昼公演(と初日と千秋楽)が高いのは昨今の流行りです。客層の高齢化に伴って、および商業芝居固有事情としてその日のうちに帰りたい遠方客への不人気も相まって、夜公演の数が極端に少ない芝居もあるほどで、どちらかと言えば今の「ハリー・ポッター」もその部類でしょう。夜間料金がぐっと下がっています。だからここは最高値と最低値が5000円または6000円差と読むのではなくか、平日昼を基準にプラス1000円から2000円、マイナス4000円と読んだほうがよいです。夜でも遠慮なく来てくれる若い人には、あるいはこのくらい下げれば何とか奮発していいと観客に考えてもらうには、10000円ちょっとが限界と判断しているということです。

そして子供連れは家族を当てにしているということで、席によって3000円から5000円の値引きを付けています。大人が1人以上付いてくるならペイする、中学生だけで観に来るなら業界にとって将来有望のお客様の育成、という判断でしょう。

一番高い9と4分の3番線シートですが、平日昼料金で20000円です。これは高く売りたいのもそうですが、おそらく制作側として、何とか20000円のチケット代の実績を作りたいと考えたのではないでしょうか。公式サイトの説明では以下の特典が付いています。

ハリー・ポッターの世界観を存分に味わえるシートです。特別なデザインをあしらったチケットに加え、限定の非売品グッズをプレゼントいたします。
さらに、ほかのお客様よりひと足早く劇場ロビーにご入場いただき、魔法の世界を独占できる特典つきとなります。

反対に、一番安いC席ですが、ここは昼公演が日にち問わずで7000円、夜公演だけ6000円です。たとえ2階最後列でも安売りしすぎてはブランドに関わるというのが判断のひとつでしょう。ただ、もうひとつ事情がありそうです。それが5000円で売られるゴールデン・スニッチチケットです。

毎公演、わずかな枚数だけ発行される希少なチケットです。毎週金曜日からエントリー開始、翌週に行われる抽選で当選した方に、翌々週の公演を5,000円(税込)で購入できる権利が与えられます。
さらに、申込完了画面にあるSNSシェアボタンからシェアすると当選確率がアップ!
金曜日は魔法の世界への扉が開く日。
是非エントリーしてハリー・ポッターの世界に足を踏み入れてみましょう!

※各公演枚数限定で、座席はお選びいただけません。
※どなたでもエントリーできます。
※エントリーは、一度のエントリー期間につき、お一人様1回のみとなります。
※購入者本人のみがチケット引換できます。

エントリー期間

毎週金曜日13:00から翌週月曜日23:59まで

※一部対象外の公演がございます。
※混雑が予想されるため、受付開始直後、受付終了前の時間帯を避けたエントリーをおすすめします。

大人の事情に遠慮せずに書けば、売れ残りを出すくらいなら安くたって売った方がいいのですが、それで高い席が値崩れを起こすのは困りますし、安すぎて1000円とかで売っても信用に関わりますから、こういう売り方をしているのでしょう。ここはロングランならではの苦労ですが、これで普段芝居を観に来ない人に観劇経験を覚えてもらえるなら悪い事でもありません。ただし、5000円はほしい、5000円払うつもりがない人間はお断り、という制作の言い分もあるのではないかと推測します。それが席の値段のブランドイメージを守るためなのか、必要経費からの算出なのか、客層が荒れないように注意しているのかまではわかりません。全部ひっくるめての気もします。

とにもかくにも、席と時間帯によってこのくらいの値段差を付けてもいい、付けないといけない、と考えているのが分かる値付けでした。

個人的には1階後方と2階前方の席にもう少し差を付けてほしいと思いますが、ここでもうひとつ考えないといけないのは席種の呼び方です。S席というと実態はともかくいい席のように聞こえます。S席のある公演でA席だとやや落ちる印象があります。それで真面目に区切りと名前を付けるとSS席がSSSSS席になってしまい、シングルS席の価値がかえって落ちます。だからこそSS席、Sプラス席、S席と呼んでいるのでしょう。この辺は気分の問題ですが、気分は大事です。歌舞伎座ですら1階に特等席を認めるようになった時代に、新国立劇場の公演がA席B席と実直に呼んでいるのは馬鹿真面目で好ましいなと個人的には考えますが、それはすれた観客である私の意見です。年に1度でも芝居を観に行く人の方が圧倒的に少ない世の中で、せっかく芝居を観に行くなら特別なイベントであってほしいと期待する人たちの期待を否定しない。年単位のロングランを行なうならこのくらいの気配りは必要なことです。

他の劇場では、文中で上げた歌舞伎座、あとは劇団四季の各劇場が、通年上演しているので参考になるでしょう。ただ、花道が座席の価値に影響する歌舞伎座と、専用劇場を造る際になるべく見栄えも考えて作っている劇団四季なので、ここまでわかりやすい席種の違いではありません。あとは、劇団キャラメルボックス昔「全ての席で同じように芝居が見える、だから値段も同じを目指す」と言った趣旨の発言をしていた記憶がありますが、志はさておき物理的な違いが発生する席種でそれは難しいことです。

長々と書きましたが、今回の「ハリー・ポッター」の値付けは、観客にとって良い席とはどこか、値段差はどのくらいが適当なのか、プロの制作が考えた実例として、最大公約数の指標のひとつと呼べることでしょう。

<2025年12月28日(日)追記>

元公演感想エントリーへのリンクを追加。

2025年12月21日 (日)

緊急口コミプッシュ:ゆうめい「養生」神奈川芸術劇場大スタジオ

感想はこちら。千秋楽以外は余裕のようです。これが都内の劇場なら満員御礼になって出す必要はなかったでしょう。遠い劇場には足が鈍るのは自分も覚えがあるのでわかります。

神奈川芸術劇場は劇場の作りと上演芝居の良さに比べて、アクセスで損している劇場です。アクセスで損しているからこそ芝居で頑張らないといけないとも言えますが。

ゆうめい「養生」神奈川芸術劇場大スタジオ(若干ネタバレあり)

<2025年12月20日(土)夜>

とあるデパートでイベントの設営撤去の夜間バイトに通う大学生。1人は美大生、もう1人は普通の大学生。バイトに来る予定が入っていたはずの美大生の友人はバックれたらしい。バイトをまとめる正社員はバイトへの当たりがいつもきつく2人からは嫌われている。その10年後、卒業後にそのデパートに勤めて設営撤去を行なう部署で働いている2人だが、新人社員とのやり取りに苦労している。そのクリスマスの晩、大きなツリーを撤去して次に展示されるのは、あの日バイトをバックれて、その後に成功した美大生の友人の作品展だった。

たしか評判が良かったはずと調べたら読売演劇大賞受賞作の再演、ちなみにその前作が岸田戯曲賞、とあって一度は観ておきたくて選択。期待をはるかに超える出来で、受賞も納得の1本でした。

劇場に入ると舞台美術を眺められるようにぐるっと裏を回って客席に誘導されて、その舞台美術の説明を当日パンフで読んだところから、本橋龍が演じる主人公の美大生による再説明、そこから芝居の世界に飛込んでクリスマスの晩のバイトが始まる、この一連の流れからお終いまで、何ならタイトルまで、一切の無駄なし。ここで終わりかと思ったところからもう一度展開させて締める構成は完璧でした。

登場人物の描き方も工夫があります。気が立っていてバイトや新人社員にきつく当たる責任者も、仕事に限って言えば当たりがきついだけで間違ったことは話していない。ただし夜勤の多い仕事柄、家庭の側に問題を持っていく。それに反抗する新人社員が芸術全般に吐く毒も、一面正しい。そんな中に、明らかに正しくない言葉が不意に混じって主人公を傷つけるあの匙加減と、そこで飲み込んで事を荒立てない主人公だからこそ連絡をもらったときの話が生きるし、ラストも生きる。

ちなみに芸術全般への毒の台詞の中に、人の不幸を搾取して作品を作っている(大意)という言葉があって、おそらくこの芝居は体験談はあってもモデルはいない作り話だと思いますが、仮にモデルがいたとしたらその言葉が当てはまるような作品内容です。そして芸術にはたしかにそのような要素があって、だからこそ芸術という営みが人類の歴史で続いているとも言えます。もっとも、それについてどこまで自覚的であるかは問われると思いますが。

役者3人で演じていましたけど、主人公を演じた本橋龍、仲間を演じた丙次、上司の正社員と新人社員の2役を演じた黒澤多生、本当に近頃の役者は達者ですね。再演で慣れていたのもあるでしょうが、芝居に求められる役をきっちり見せていました。切替の早さも含めて抜群でした。現代口語演劇が上手な若手の役者って切替の早さも得意な人が多い印象がありますけど、役作りのメソッドが違うのか、古典よりも脚本が役者に近くて楽にできるのか、どうなんでしょうか。

照明と音響もしっくりきていましたが、今回のスタッフワークの主役は脚本演出家が考えた美術。あのチープな舞台美術が縦横に駆使されて、終わってみればチープからシンプルへと変わって見えるのは、出来上がりが固定した作品の芸術である美術と、人間が演じて客が観て完成する表現の芸術である演劇との違いでした。初演はスズナリだったそうですが、天井が高く、むき出しだと案外無骨な神奈川芸術劇場大スタジオにもよく合っていました。

アフタートークは芝居と関係あったりなかったりする話が繰広げられましたが、面白いところは文字に残すのがはばかられるような内容なので割愛します。千秋楽以外はチケット全然余裕らしく、この回もたぶん6割くらいしか入っていませんでしたけど、近頃珍しく2時間を切る芝居でもありますし、近郊の人は初演を観ていない人なら年末の締めの1本にいかがでしょうか。

2025年12月17日 (水)

佐藤信が演出降板

座・高円寺で毎年年末に2本上演される「ピアノと物語」。去年から片方が新しい芸術監督のシライケイタによる新作に変わりましたが、もう1本の「ジョルジュ」は引続き上演されて、演出を前芸術監督の佐藤信が担っていました。それが降板になったという話です。劇場公式サイト「『ジョルジュ』演出者降板のお知らせ」より2025年12月3日付です。

杉並区は令和7年11月20日、前区顧問(文化行政担当)による不適切発言に関する公益通報制度にもとづく調査結果を公表しました。公表によりますと、職員の人格を否定し尊厳を侵害する発言があったと結論付けています。

これをうけて、佐藤信氏より当該人物が佐藤氏である旨と、『ジョルジュ』降板の申し出がありました。

当館は、区の調査結果と本人の申し出を総合的に勘案し、事態を重く受け止め、本公演への同氏の参加を見合わせる判断に至りました。

『ジョルジュ』は長年にわたり当館で継続してきたレパートリー作品であり、作品の性質上、内容を全面的に変更することは行いません。

稽古場の進行および上演の統括は、現芸術監督のシライケイタが担います。

ご観劇を楽しみにしてくださっていた皆様に、ご心配とご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。

座・高円寺は、誰もが尊厳を保ったまま働ける創造環境を守るため、再発防止策の強化と制度整備を進めて参ります。

杉並芸術会館(座・高円寺)芸術監督 シライケイタ

NPO法人劇場創造ネットワーク

発言と書かれているので暴力沙汰ではありません。とは言え、前芸術監督に対してお役所がここまで結論をはっきり書いて、(少なくとも形の上では)本人から降板の申し出を行なったということは、かなり詰めるようなパワハラが実際にあったのかなと想像します。どれだけ下に降りてきても演出家というのはそれなりの決定権を持たないと進められない役割ですから、少なくともクリエーションチーム(役者、スタッフ両方)に対しては上の立場となるでしょう。

また一方、脚本に対してある種の方向性を示して大勢をまとめていくために必要な能力は純粋な技術だけでなく芸術観も必要で、言ってみれば出来る人と出来ない人がいる役割です。本来であれば実績実力ともに兼ね備えた人は、貴重とまでは言わないまでもあまり数の多くない人ですから、周りからは大事にされるはずです。ましてその劇場の前芸術監督です。

昔ならそこは制作とかベテランとかがまあまあとか宥めてその場を収めて、詰められた方を食事に誘って慰めたり励ましたりして、みたいなやり方で回っていたのではないでしょうか。というか、そういう環境に耐えられない人は辞めて去っていたはずです。

演出家が一番偉い主宰劇団ならそれで通っていたと思いますが、公立劇場主催の演出となると、国や自治体というもう一段上の責任者が設けられることになります。

この話を読んだときに考えたのは、演出家なら自分を演出してほしい、でした。今の時代の倫理観というテキストとサブテキストを適切に読取って、公立劇場の雇われ演出家として乗込む「役者」にはどのような振舞が適切かを考えて、そのように演じてほしかった。

今回は上が自治体なのでパワハラに対して敏感なのはわかります。それが民間の、しかももっと有名な演出家と大掛かりな芝居の場合はどうなったかなと考えます。

トム・ストッパード死亡

ステージナタリー「劇作家トム・ストッパードが死去、哲学的かつウィットに富んだ大作を多数執筆」より。

劇作家トム・ストッパードがイギリス・ドーセットにある自宅で死去した。88歳だった。
(中略)
遺作となったのは、2020年にロンドンで初演された「レオポルトシュタット」。五十代になって自らのルーツを知ったというストッパードが、自伝的要素を絡めて執筆した戯曲で、20世紀のオーストリアで戦争、革命、ホロコーストなどに直面したユダヤ人一族の一大叙事詩が展開した。United Agentsは、ストッパードが「家族に囲まれ、安らかに息を引き取った」ことを伝えている。

私はこの人の書いた芝居をたくさん観た人ではありません。「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」は観たことがあります。「コースト・オブ・ユートピア」は観逃しました。「恋におちたシェイクスピア」を観た当日に訃報を目にしました。

そして「レオポルトシュタット」は日本の舞台NTLiveで観ました。このタイミングで観ておいてよかったです。そこから1年で、イスラエルがパレスチナを大空爆。ナチスが悪くてユダヤ人が被害者というのは第二次世界大戦のところだけ切出せばその通りですが、今の有様を見たら何を被害者ぶっているんだという話です。「被害者」というある意味ソフトパワーをかざせる立場をすべて投げ打つ所業の今、観たらこちらは鼻白んでいたことでしょう。英語圏の情報は集めていないのでわかりませんが、本人は何か発言していたのでしょうか。まあ晩年の大作と言えども自伝的要素であって自伝ではありません。そういう話を除けば、優秀な脚本家だったのだろうなと思います。

表現の芸術である芝居の中でも脚本は後まで残り得るポジションです。そのまま埋もれることも多いですが、残ったとしても脚本の評価が時代によってがらっと変わりうることを示す例でもあります。合掌。

2025年12月14日 (日)

TBS/ホリプロ/ATG Entertainment主催「ハリー・ポッターと呪いの子」赤坂ACTシアター

<2025年12月13日(土)夜>

ハリー・ポッターたちが闇の者たちと戦って二十年以上経った。ハリーとジニーの息子であるアルバス・ポッターは魔法学校に入学するが、魔法省長官で忙しくまた世界的に有名な父とは折合が合わない。あまり魔法が得意ではなく、学校の寮選びで評判の悪い寮に入ってしまったアルバスは、かつて父同士が仲が悪かったマルフォイの息子、スコーピウス・マルフォイとだけを友人として過ごす。そうして4年生になったある日、休みで家に戻ったアルバスは、かつて父と共に戦い亡くなった息子セドリックを取り戻すために時間をさかのぼる道具を貸してほしいと頼みに来た老人の話を立ち聞きしてしまう。その老人を追返した父に反抗し、スコーピウスと、老人の付添いに来ていて知合ったデルフィーと企んで、セドリックを助けるために過去にさかのぼる。

気にはなっていのですが、あれだけ有名なのにハリー・ポッターの映画も小説も観ていなかったので、小説くらいは読んでから出かけようと先送りしていた芝居です。せっかく買った小説も第2話の途中で挫折していたのですが、2026年一杯で終演するとのニュースが流れたので今のうちにと観劇に。

第2話まででも読んでおいてよかったですね。ハリー・ポッターは幼いころに両親を殺されて魔法学校に入るまで親戚の家に預けられて虐げられながら育ったとか、魔法学校の寮の組分けでスリザリンが悪い寮とされているとか、マルフォイは確か悪い側の1人だったなとか、女子トイレに嘆きのマートルがいるとか、暖炉を通って移動するとか、後日譚なので原作世界を踏襲した設定がたくさんあります。本筋だけ追えば有名すぎる有名人の親子の葛藤を描いて「呪いの子」というタイトルが最後の最後まで効いてくるのですが、原作がそれなりに長く、マントを羽織った観客もいたくらいですから原作ファンサービスも欠かせないのでしょう。原作の話題を律儀に拾っていそうな(だから原作を読み終わっていない自分にはネタバレなのだろうなと思われる)場面がたくさんありそうでした。

だから公式3時間40分ですが、劇場出たタイミングで3時間50分で、それでも駆足の上演という印象を受けました。キャスティングが多いので一応後日のメモ。ハリー・ポッターが大貫勇輔、ハーマイオニー・グレンジャーが奥村佳恵、ロン・ウィーズリーが関町知弘、ドラコ・マルフォイが姜暢雄、ジニー・ポッターが吉井怜、アルバス・ポッターが福山康平、スコーピウス・マルフォイが浅見和哉、デルフィーが高山璃子、マクゴナガル校長が白木美貴子の回です。

そしてハリー・ポッターなのだから、1つは魔法を舞台でやってみせるのが見所です。空を飛んだり、飛ばされたり、物が勝手に動いたり、火が出たり、吸い込まれたり、別人に化けたり、まあ忙しい。どれだけ腕前があっても運動神経の悪い役者はお断りされる芝居です。それなりに舞台機構も作りこまれているのでしょう。さすがロングラン芝居でした。

あと内容に関係ありませんがチケット料金は注目です。7種類もの細かい席割で高い席と安い席の差を思いっきり設けているのに加えて、近頃流行りの平日昼、土日祝日昼、夜の3種類でも料金に思いっきり差を付けて、さらに子供割引もあります(あとはラッキーチケットでもっと安く買えることもある)。チケットを買ったときには気付かずにスケジュールの都合だけで買ったのですが、これが夜公演で安い日程に当たったたためか、昨今見ないくらい若い人と家族連れで大賑わいの回でした。これはまとめられるものなら後でまとめたいですが、芝居制作者側の人はよく確かめておくといいです。

<2025年12月28日(日)追記>

座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例」と題して書きました。

松竹主催「十二月大歌舞伎 第三部」歌舞伎座

<2025年12月6日(土)夜>

大店の番頭に囲われているお富が、雨宿りしている顔なじみの番頭を連れて家に戻ると、強請目当てでやって来たのは蝙蝠安と与三郎。かつての色男もお富を逃がした見せしめに身体中が傷だらけで強請の手伝いをする毎日。そこでお富に顔を明かした与三郎が詰寄るところに「与話情浮名横櫛 源氏店」。大きな国を総べる大王が病がちになって、二人の王子であるヤマヒコとウミヒコに命じたのは永遠の命を得られるという火の鳥を捕まえてくること。長い旅路の果てにようやく捕まえたかと思ったのだが「火の鳥」。

「与話情浮名横櫛」は前に通しを観ていたので「源氏店」だけでも筋に迷うことはありませんでしたが、それがなかったらここだけ切出すのは不親切と考えたところでした。玉三郎のお富に染五郎の与三郎で、話題の組合せと芸の継承を急いだのでしょうか。玉三郎はさすがでしたが、染五郎は悪さと色っぽさとを兼ね備えた役はまだまだ苦手そう。強請仲間の蝙蝠の安五郎を演じた松本幸蔵の下手から強気まで幅広いところが目を惹きました。

「火の鳥」は壮大なロードムービーとでも言うべき仕上がり。物語の筋立てで言えばやや性善説というか、人類と地球の対比というか、正直に言えば20世紀の楽観が残ってやや古い世界観ではないかとは感じました。あと脚本の言葉選びももう少し大和言葉に寄せてほしかった。ただし、歌舞伎座の素舞台をさらけ出したり、あの広い舞台いっぱいの幕に映像を映して後ろの舞台と合せて長い旅を示してみたり、そこに長く厳しい旅に相応しい音楽を流したりと、昨今は忘れ去られたようなスケールの大きさはさすが玉三郎でした。火の鳥を演じたのも玉三郎ですが、ああこれは玉三郎でないと成立たないだろうなと思い知らされました。

で、兄王子ヤマヒコを演じたのが染五郎なのですが、これがものすごく格好いい。高麗屋と言えばニンは三の線と勝手に思っているのですが、父である大王のために弟を連れて長旅を目指す責任感と真っ直ぐな心を衒いなく出して行動する主人公感が、そして殺陣の立ち回りが、ものすごくいい。客席を歩くサービス(兼場面転換の時間稼ぎ)もあって割と近くでも観られましたが、顔も整っていました。「源氏店」の与三郎よりは現代っぽさのある2枚目が得意なんでしょうか。これは「阿修羅城の瞳」も「阿弖流為」も待ったなし。松竹はここで全突っ張りするべきです。

そして病がちな割に妙に目を惹いた大王が誰かと思ったら中車でした。いろいろあって謹慎から少しずつ慣らしているところで、報じられた話は褒められたものではありませんが他の役者のもっとひどい所業に比べるとまだまし。そして上手なものは上手。

これが歌舞伎かと言われると迷うところですし、先にも書いた通り不満も目につくのですが、観終わってみれば結構良かったという感想です。それは夏の初演を経て再演でこなれていたのもあるでしょうし、何と言っても玉三郎に加えて染五郎と中車を得られたのが大きい。このタイミングで一度は観られてよかったと満足しています。

劇団四季「恋におちたシェイクスピア」自由劇場

<2025年11月30日(日)昼>

金に困って次の作品のための前借が積重なっているシェイクスピアだが、同業の友人の筆が絶好調なのに反して次回作に行き詰っている。ある日、以前書いた芝居が女王の御前で上演され、それを見に来ていた裕福な商人の令嬢ヴァイオラが観劇し、シェイクスピアにあこがれ、その芝居に出演することを夢見るものの、女性が役者をすることが禁じられた時代である。思い余った令嬢は、まだ何もできていない次回作のオーディションが開催されると聞き、男装してオーディションに潜り込む。それに目を留めたシェイクスピアが書き始めた脚本は、興行主の注文からどんどんと外れていく。

映画原作だけど未見で、その舞台化。日本では劇団四季が今回で再演。「ロミオとジュリエット」の舞台が出来上がるまでのシェイクスピアとヴァイオラの関係を「ロミオとジュリエット」になぞらえて、あれこれと障害を設けて乗越えて、まあよくできた脚本です。「ロミオとジュリエット」を知っている方が楽しめますが、知らなくても楽しめます。

シェイクスピアが武藤洸次、ヴァイオラが川田菜々子の回でしたが、見目と声の張りと身体が良く動くことはよかったです。個人的には主人公の2人は、特に後半は、もう少ししっとりとしていた方が好みでした。そこは開幕間もない日程だったからではなく、「ロミオとジュリエット」原作で若い2人が突っ走るところを今回の主人公の2人にもあてはめた演出だったのかなと想像します。その分周りで、女王役の佐和由梨、あとマキューシオを演じた看板役者はネッド役でいいのかな、それだと長友デビッド洋輔、あとは役名も役者名も不明ですけど、チャンバラの稽古を付ける役だった人が物腰が終始きびきびしていて目を惹きました。

どきどきしてめでたしめでたしの話なので芝居初心者にはお勧めできますが、すれたベテラン観劇者にはチケット代を考えるとちょっと、という感じの仕上がりです。昨今の値上がりを考えると高いとまでは言い切れませんが、公演後半でどのくらい馴染んでくるかです。

観終わってロビーの役者スタッフ表を眺めていたら、映画原作はトム・ストッパードが共同脚本だと今さら知りました。脚本家なんだから映画の仕事をしていたって不思議はないのですが、こんなエンタメど真ん中な仕事もしていたのは発見だと頷きながら家に戻ったらちょうど訃報を目にしました。そういう巡り合わせもたまにはあります。

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