2026年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

« 2026年4月 | トップページ | 2026年6月 »

2026年5月31日 (日)

1950年代で楽しんだ2026年の1日

昨日の昼に観た「エンドゲーム」は初演が1957年、夜に観た「十二人の怒れる男」は舞台版初演が1955年(オリジナルテレビドラマは1954年)。この2本重なったのは予定と体調と相談しての偶然ですが、両方とも初演が1950年代です。どちらも古典と呼ばれて今に残る傑作ですが、それが現代でも楽しめました。

ギリシャ悲劇だって今でも上演されるのだから、1950年代なんて芝居の世界ではついこの前だと言われればその通りです。ただ「十二人の怒れる男」を上演したCEDARは主宰が演出家で、脚本は名作の上演が方針らしいです。そういうことが出来るくらい優れた芝居の脚本も世の中にはたくさんあります。観る方はありがたいですが、脚本を書く方は大変ですね。過去の名作を押しのけて上演を勝ち取らないといけませんから。

似たような話は音楽でも聞いたことがあります。レコードやCDなど物理メディアとその購入(レンタル)費用に縛られている間は新作優勢だったのが、サブスクが解禁されるとその縛りがなくなって、過去の名作、名演奏と真っ向勝負して聴き手の時間を勝ち取らないといけない。

個人的にはサブスク全盛になったおかげでむしろ音楽からは縁遠くなりました。膨大すぎるので、丹精込めて作られたパッケージを少数選んで、繰返し聞く方が性に合っていました。映画もそうですね。結果、サブスクやっていません。

芝居は生身の人間がやるものですから、まずこれが完全にネットワークで配信できるようになるためにどのくらいの技術の進歩が必要か。それに役者と観客の、その日その日の具合で笑い所も泣き所も変わって、そのセッションが芝居の拠り所というか最後の砦というか。NTLiveとかよくできていますけど、あれは客席の反応も入っているのが良し悪しです。ないと困るのはわかりましたが、あったらあったで反応も生ものですから、初見のときはいいとして繰返し観る時に同じ反応というのも困ります。

何が言いたいのかよくわかりませんが、久しぶりの暇ネタでした。

エイジポップ/CEDAR主催企画製作「十二人の怒れる男」博品館劇場

<2026年5月30日(土)夜>

ニューヨークの裁判所。少年が父親を殺したと告発された裁判。3日間の裁判が終わり、有罪になれば死刑とわかっている。評決を下すために部屋に集められた12人の陪審員も大半が有罪を信じていたが、1人だけ無罪を主張する。それも少年の無罪を確信してのことではなく、もっと議論するべきだという主張だった。早く帰りたい者も多いが、有罪か無罪かを出す評決は全員一致が決まりのため、仕方なしに裁判の証拠を振り返る議論が始まる。

映画は観たことがあってオチは知っていたものの、改めて観るとこれぞ脚本の力と思い知らされる1本。若手とベテランを上手に混ぜた配役はベテランが圧巻の域。有罪強硬派である陪審員3番の中村梅雀と、陪審員10番のモロ師岡の、あれだけ怒鳴るのに観ていて不快にならない演技はお手本にされるべき。陪審員9番の佐藤B作はあの短い手番に笑いを突っ込んでくるアクの強さは3番か10番でもいいくらい。陪審員長の大鶴義丹は抑えた役どころを確実以上に。若手はそれぞれ大健闘で、代表してセールスマンの陪審員7番の今江大地を挙げておく。違和感皆無の小田島恒志と小田島則子のこなれた翻訳、実測2時間40分、生の人間がぶつかり合うやり取り。チケット代が高いのが難点も観れば確実に楽しめる。まだ間に合うのでお勧めしておく。

今回調べたところ、自分の観た映画は1957年製作だが、今回上演された舞台版は1955年初演、さらにオリジナルは1954年のテレビドラマ(生放送)と知って驚く。半世紀を優に超えても全然古くない。

新国立劇場主催「エンドゲーム」新国立劇場小劇場(若干ネタバレあり)

<2026年5月30日(土)昼>

2つの窓と1つの扉がある、空っぽの部屋。目が見えず終日椅子に座って過ごす男ハムは、足の悪い年下の男クロヴを召使のように使って暮らす。部屋の隅に置かれた2つの樽には年老いた男女が入って過ごしている。どうやら2人とも両足がないらしい。片方の窓の外に広がるのは何もない海、もう片方の窓の外には何もない大地。変化のない、希望もない暮らしが続いたある日の話。

ほとんど何もない芝居であることは同じベケットの「ゴドーを待ちながら」に似ているが、そんな芝居に厚みを持たせる演出はさすが。役者4人はそれぞれよい出来だが、個人的にはハムを演じた近江谷太朗が出色の出来で、キャラメルボックス時代しか知らない自分にはこんなふてぶてしい芝居もできたのかと驚き。少し内に丸まった部屋で、やや高いところに2つの窓を設けた美術は頭蓋骨の内側を思わせ、4人の登場人物を1人の人物の脳内に見立てて絶望と希望を揺れ動かしたのかもと推測。

何も起きない日常、倦んだハムと不機嫌なクロヴ、幸せな過去を持つ2人の老人、と来れば同じベケットの「ゴドーを待ちながら」を彷彿とさせる構成。そちらはエストラゴンとウラジミールの2人とも終始退屈していた。「エンドゲーム」は4年後の1957年初演だが、何もできることがない中で物語を語って過ごすハムに対し、それを聴くことにもうんざりして、最後にわずかな希望が見えてハムより希望を優先したクロヴが、4年間の作者と時代の心境の変化か。そして外に出ていく物語は今期で芸術監督が終わる演出家が自身をなぞらえて選んだか。

2026年5月17日 (日)

松竹/梅田芸術劇場主催「ハムレット」日生劇場

<2026年5月17日(日)夜>

王である父を亡くして悲しみに暮れるデンマークのハムレット王子。それから二か月しか経っていないのに母が叔父と再婚を決めてさらに悲嘆していた。だが父王の亡霊を見たと夜警の兵士から教えられて見張っていると、はたして父王の亡霊と出会う。叔父に毒殺されたのだと伝えられたハムレットは、叔父に復讐を果たすために狂人を装って機会をうかがう。

美術や衣装で多少の工夫はあるも直球演出のハムレット。国王の石黒賢、王妃の柚香光、大臣ポローニアスの梶原善の3人がまずまずで頑張るが、タイトルロールの染五郎がパワフルではあるものの主人公の奥行きを出せずに合格点未達、他は年齢が点数くらいか。個々によい場面はあったものの、シェイクスピアの中でも主人公に掛かる比重が高いので上演後半の染五郎の進化に期待する一方、一筋縄ではいかない重い古典に臨むのであれば若手はせめて声を腹から出せる役者を揃えられたし。

2026年5月12日 (火)

2026年5月6月のメモ

まとめるのが遅くなって始まってしまったものもあります。そしてシェイクスピアが5本とか多すぎです。しかも観たくてもチケット買えません。

・MMJ/Dis GOONie企画製作「OLD WATERCOLOR FISH」2026/05/07-05/17@紀伊國屋ホール:ゴッホが亡くなったあとの画家たちの話、らしいのでピックアップ

・公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ制作「リア王」2026/05/05-05/24@彩の国さいたま芸術劇場大ホール:こちらは吉田鋼太郎のリア王で長塚圭史演出

・松竹/梅田芸術劇場主催「ハムレット」2026/05/09-05/30@日生劇場:こちらは染五郎ハムレットをデヴィッド・ルヴォー演出

・パルコ・プロデュース「リチャード三世」2026/05/10-05/31@PARCO劇場:こちらは吉田羊のリチャード三世を森新太郎演出

・新国立劇場主催「エンドゲーム」2026/05/20-05/31@新国立劇場小劇場(2026/05/15-05/16プレビュー):小川絵梨子の芸術監督実質最終演出作品はベケットで

・フジテレビジョン/ニッポン放送/サンライズプロモーション大阪主催「四畳半神話大系」2026/05/17-05/31@新国立劇場中劇場:原作小説をヨーロッパ企画の上田誠で脚本演出

・爍綽と「裏緑特技悲喜話」2026/05/20-05/24@浅草九劇:村角太洋を脚本演出に迎えて

・玉田企画「光る」2026/05/22-05/31@シアタートラム:名前を聞くのでピックアップ

・art unit ai+企画制作主催「平家物語」2026/05/26-05/28@座・高円寺2:琵琶とコントラバスによる一人語りで面白そうだけど平日のみ

・エイジポップ/CEDAR主催企画製作「十二人の怒れる男」2026/05/30-06/07@博品館劇場:映画は観たことがあっても舞台は観たことがないのでピックアップ

・青年劇場公演「Sの顛末」2026/06/03-06/08@紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA:高羽彩の脚本演出で描く青鞜時代

・松竹主催「六月大歌舞伎」2026/06/03-06/25@歌舞伎座:夜の部に勘九郎七之助で「盟三五大切」の通しあり

・関西テレビ放送企画制作「曲がれ! スプーン」2026/06/04-06/14@IMM THEATER:こちらはヨーロッパ企画の過去作をヨーロッパ企画の大歳倫弘に演出を任せて

・TBS/ワタナベエンターテインメント製作「神経衰弱ぎりぎりの女たち」2026/06/07-06/21@日本青年館ホール:元は映画らしいですがそこをミュージカルで

・PARCO PRODUCE「カッコーの巣の上で」2026/06/07-06/29@PARCO劇場:元は映画らしいですがそこを松尾スズキ演出で

・フライングシアター自由劇場「豪華客船タイクツニック号沈没」2026/06/14-06/21@吉祥寺シアター:串田和美がノゾエ征爾と共同で脚本演出

・劇団俳優座「ファーム・ホール」2026/06/15-06/30@俳優座スタジオ:なんとなくひっかかるのでピックアップ

・シーエイティプロデュース制作「虹のかけら」2026/06/19-07/05@博品館劇場:観たことはありますが観られるものならもう一度観たっていい戸田恵子

・KERA CROSS「シャープさんフラットさん」2026/06/19-07/05@紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA:初演はホワイトチームブラックチームも観てKERA芝居の中ではかなり好みの1本を今回はマギー演出で

・風姿花伝プロデュース「ハムレット」2026/06/22-07/12@シアター風姿花伝:こちらは成河のハムレットでニシサトシ演出

・ミックスゾーン企画製作「コテンペスト」2026/06/27-07/07@本多劇場:こちらは小手伸也テンペストで村上大樹演出

主催にテレビ局が絡む芝居も近頃目立ちますね。あとパルコ・プロデュースとかPARCO PRODUCEとか表記が変わる理由がいまだにわかりません。

2026年5月 5日 (火)

KOKAMI@network「トランス」本多劇場

<2026年5月5日(火)昼>

高校の同級生で友人だった男女3人。精神科医になった女性の元に、患者として男性がやって来る。自分が自分でないように感じる、その間の意識がないという。友人を診察できないという医師のルールに従って他の医師が見つかり次第引継ぐことになったが、2回目の診察にやって来ないのを心配して自宅を訪ねたら、もう1人の友人の男性がいた。ぼったくりのおかまバーで働いていたが、財布ごと巻上げられた友人を助けて自宅まで連れてきたという。久しぶりの再会を祝って3人は飲むが、患者の男性の様子がおかしくなる。

3人芝居として有名な1本。ギャグに多少アレンジを入れてもおそらく原作ほぼそのままと思われる。ゲイの参三役を務めた伊礼彼方が初めから終わりまで飛ばして文句なし、患者役の風間俊介は様子がおかしくなってからの押しの強さが抜群。精神科医役の岡本玲はあと少々のテンションと腹から声を出してくれれば不満の大半は解消されるのにという惜しいところ。ただし登場人物が推定30歳前後のところ、この脚本自体が80年代から90年代の小劇場らしい若さに溢れているので、まだ芸能界で安定したポジションを確立していないような20歳前後の役者が似合いそう。またそれだからこそ伊礼彼方の出来に惜しみない拍手を。

« 2026年4月 | トップページ | 2026年6月 »