松竹製作「八月納涼歌舞伎 第二部」歌舞伎座(ネタばれあり)
<2026年8月23日(日)昼>
家賃を溜めたまま貧乏長屋の嫌われ者である駱駝の馬太郎が死んで、金のない兄貴分のやくざ者が大家から弔いの準備をせしめようと紙屑屋と一緒に大家を脅す「らくだ」。主家の刀を奪われたために目が見えず浪人になった男と知合った盗賊の頭お松は男と子を成して後、何とか刀を取戻そうと峠を越える刀持ちを片っ端から襲っては奪われた刀を探すが、ある日のこと、家の前で襲われる男女を助けてみれば夫のかつての許嫁と、自分が襲った男の兄の付人で「百千鳥沖津白浪」。
「らくだ」はなかなか歌舞伎では出てこない死体役を使ったカンカン踊りをどれだけ面白く見せるかの気軽な1本を、軽さが信条の幸四郎とべらべらまくしたてるのも上手な勘九郎が賑やかに演じる。片岡亀蔵追悼とあるのはこの死体の馬太郎役が亡くなった片岡亀蔵が上手だったかららしく(未見)、今回演じた片岡市蔵はその兄。芝居中にも思い出話や亀と唱える場面を何度も出して会場も拍手。合掌。
本興行では62年振りという「百千鳥沖津白浪」は、ラストに子を預けてのお松の啖呵はさすが七之助。ただしお松は「後ろ暗い盗賊の身分を隠して夫を想う妻」「すでに子を成しているがまだ結婚していないところによい家柄の本来の許嫁がやって来たことで身を引いたほうが男の仕官復帰が叶うものの子供の行く末に悩む女」「刀を探すためにかつて男の兄を殺めたことに気が付かされて後悔する盗賊の頭」という3つの悩みどころがあって、1番目と2番目は念入りなものの3番目が薄い。これは最後は男から身を引いてお縄に付くことを選ぶ有力な動機の1つのはずなので工夫の余地あり。
あとは時間稼ぎの暇話。七之助に娘が生まれたそうで、それは目出度いものの、よりによってこの演目の中での話題にはちょっと浮く。着替えに時間が掛かるのはしかたないとしても、あそこは夫の目が見えないならその場で着替えて見せるとか時間短縮の手はいくつかありそう。よく出来た話なので演出を立てて再演も目指してほしいところ。
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