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2020年1月29日 (水)

トライストーン・エンタテイメント/トライストーン・パブリッシング主催「少女仮面」シアタートラム(若干ネタばれあり)

<2020年1月28日(火)夜>

宝塚にあこがれる少女と老婆は、宝塚の元スターが経営する地下にある喫茶店「肉体」をたずねる。おかしな客とおかしな店員にあしらわれながら、どうしても会いたいと懇願する少女を元スターは見初める。そこから繰広げられる「嵐が丘」の一節は演技指導か幻か。

唐十郎の1969年初演の岸田國士戯曲賞。女が男を演じる宝塚のお約束や、腹話術師と人形の主従関係といった「見て見ぬ振り」から、敗戦の焼け跡の記憶を「見て見ぬ振り」して地下鉄工事が進む世相を一刀両断させ、そこから満州まで話を飛ばす飛躍力はさすが元祖小劇場の唐十郎。適当なようではっとさせる台詞がたくさんあって、アングラと片付けられない説得力があるのはさすが受賞作。水道水を求める喫茶店の来店者の台詞を聞くと、野田秀樹の「パンドラの鐘」はこれが元ネタだったのではないかと思わされる。

この時代にこの脚本を選んだのは慧眼だけど、アングラ要素の多い脚本をそのまま演出してもつらいだろうし、かといって現代的に演出しすぎると脚本が死ぬ。結構頑張っていたけど、肉体と幻のほうに力点が置かれていた模様。あと、オリジナルはもっと猥雑だったであろうところ、ずいぶん上品に演出したなという感想。劇場がシアタートラムで上品さに輪が掛かったたのが惜しい。

伝説の宝塚の元スターに若村麻由美をキャスティングしたのが実にはまった1本。やけにそれっぽいので、真面目なのか笑うところなのか微妙に迷うところが「見て見ぬ振り」の脚本にはまる。もったいなかったのは腹話術師と人形を演じた武谷公雄と森田真和のパートが妙に上手なため独立したパートのように見えてしまったことで、もう少し本編に寄っていたらよかった。

ずいぶん台詞が多かったけど、これで1時間40分なのだから、昨今の長時間芝居の人たちは見習ってほしい。

2020年1月14日 (火)

Triglav「ハツカネズミと人間」神奈川県立青少年センタースタジオHIKARI

<2020年1月12日(日)夕>

大恐慌時代のアメリカ。農場で働くジョージとレニーだが、力は強くとも頭が弱いレニーが起こす問題で前に働いていた農場から逃げて、新しい農場にやってきた。幸い農場の社長には受入れられ、荷運び頭からも目を掛けられたが、社長の息子には絡まれ、その新妻は相手構わず色目を使っていつ問題を起こすか周囲を危ぶませる。自分たちの農場を持って独立するのが夢でも資金のないジョージとレニーだったが、事故で手を切落としたため仕事がままならない老人のキャンディが貯金をはたいて一口乗るという。少しだけ働けばもらった給金で夢がかなうと張り切る3人だったが・・・。

まったくノーマークだったけどマニアたちが興奮していたので予定を変更して千秋楽を見物。農場を渡り歩く生活の厳しさ、白人と黒人との間にある差別、農業生活と都会生活との差。老いて耄碌した犬を臭い、役に立たないからと平気で殺す場面(これは後に効いてくる場面でもある)や、勝手に話をするレニーを相手に話を続ける登場人物たちの行動は、希望やコミュニケーションが足りない現代の世相に通じるところがある。大恐慌時代ということは1930年代が舞台だけど、100年前の殺伐さに、100年経っても変わらないどころか悪化しているのではないかと疑われる人間の悩みが織り交ぜられた、超硬派な脚本。ついでに書くと松尾スズキの「母を逃がす」の元ネタかもと想像してしまう。

その脚本がよく伝わってくるところまで仕上がっていたけど、役者によってややムラがあった。そんな中で、頭が弱いけどその中で何らかの判断基準を持っていることを実に絶妙な線で演じて伝えたレニー役は素晴らしかった。こちらによれば内藤栄一であっているかな。全体に、演じられている場面はおおむねいいのだけど、過去にいろいろあった設定の登場人物が多いので、そこがもう少し反映されているとなおよかった。粗探しではなくて、一定以上の水準で上演されていたため、逆に脚本の手ごわさが伝わってしまったという痛し痒しな結果。稽古すればするだけ良くなりそうな雰囲気を感じた座組だったので惜しい。

小動物は布を丸めてあらわし、ほぼ平台と箱馬の置き換えだけで進める場面転換は見事だったし、場面転換以外は効果音だけ使ってBGMを流さなかったのも好感。客席は3方向を囲んだコの字形の自由席で、自分はとても観やすい席だったけど、観やすすぎたので、他の席がどうだったかは気になる。たぶん外れ席があった。

そのコの字形客席について、劇団アンケートとは別紙でアンケートが用意されるという珍しいケースだったので、せっかくだから書いておく。

(1)劇場に入った第一印象はいかがでしたか?
どこに座ろうか迷った。

(2)「その席」を選んだ理由を教えてください。
観やすい席を推測して選んだけど、選んだ理由は企業秘密。

(3)「その席」から演者のほかに、観客も視界に入ることについてお聞きします。該当する番号に○をつけてください。また、理由なども記して頂け得ましたらと思います。
特に気にならなかった。演者に集中できれば観客は気にならない。なお囲み舞台は好き。

(4)「劇場空間の客席設定」全体について、改善すべき点、気がついた点などありましたら自由に記述してください。
一列が長い割に足元が狭いので、客入れ最後に真ん中の席に座ってもらうために客席案内担当が椅子を抜いて客に後ろから入ってもらっていた。上手下手の客席は中央に通路を取ったほうがよかったのではないか。あと階段の段差がもっとわかるように太い明るい色のテープを貼っておいてもらえると助かる。

(5)ご自身が坐られた席以外で気になる席ありましたら、気になる理由と共にお知らせください。
最前列にベンチシートがあったけど、椅子でそろえてほしい。どんなにいいクッションが用意されていたとしても、ベンチシート、かつ今回は座面が低いので、それだけで腰の痛さを想像して坐りたくない。

最後に制作陣に注文。ひとつ目、当日パンフには役者名だけでなく役名も併記してほしい。役名と役者名の関連がわからない当日パンフは価値半減。役名を載せることでネタばれになるのを避けるならわかるけど、今回の芝居ならネタばれの心配はなかったはず。ふたつ目、当日券の販売情報をWebのどこかに載せてほしい。本家サイトとTwitterを調べたけれど、価格は載っていても販売時間がいつかは見つからなかった。何分前に販売という情報と、枚数の余裕の両方を載せてもらえると助かる。今時は、ホームページにはTwitterに掲載の旨を書いておいて、Twitterで毎朝更新する方法が多い。みっつ目。上演時間の目安を載せてほしい。初日前に見込みで1回、初日終了時点で見込み時間に変更があったら更新、が望ましい。昨今は3時間越えの芝居も多々あり、終わった後の予定を事前に立てるのに必要。