2010年9月 6日 (月)

サンライズプロモーション東京製作「イリアス」ル・テアトル銀座

<2010年9月5日(日)昼>

古代ギリシャがトロイアの国と10年戦争を戦っていた末期。ギリシャ軍随一の勇将アキレウスは、総大将アガメムノンとの確執が原因で戦線を放棄する。その間にトロイアに総攻撃を仕掛けたギリシャ軍だが、トロイアの王子ヘクトルの活躍の前に、逆に攻め込まれ、追込まれる。

ギリシャ悲劇(正確には詩に分類されるらしい)は粗筋を書くとそれだけで全紹介になってしまうのが悩ましい。有名な話なので知りたい人はWikipediaをどうぞ。自分は一度くらい観ておきたいという好奇心と、抜群の役者陣に惹かれて観劇。面白くてためになったし生演奏もよかったけど、時間と値段には見合わなかったな。

内野聖陽のアキレウスがすげー見栄えがよくて格好よかった。一度通路を通るときに間近で観たけど、迫力あります。池内博之のヘクトルと合わせて、絵になってます。でも、木場勝己とか平幹二朗にももっと暴れてほしかったし、馬渕英俚可と新妻聖子ももっと観たかった。終わってみればたったこれだけの人数であれだけ壮大な芝居を仕上げたのかと思うけど、そのなかでもさらに出番に差がつくからギリシャ悲劇で豪華すぎるキャスティングはもったいないのかも。

あと、劇場が悪い。これがシアターコクーンだったら、たぶんもっと好意的な感想になったと思う。ル・テアトル銀座は客席最後列までが遠すぎるし、歴史物の芝居に向いていない。経済事情とかいろいろあると思うけど、芝居に対する劇場の向き不向きには関係者はもっと敏感になってほしい。

シアターコクーンにするか、ル・テアトル銀座のままで8000円くらいだとよかったんだけどな。でも有名なギリシャ悲劇を観られて気分は豊かになったのでよしとする。

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2010年9月 5日 (日)

パルコ企画製作「ハーパー・リーガン」PARCO劇場

<2010年9月4日(土)夜>

夫は失業中、娘は高校生で、一人で家計を支えるハーパー・リーガン。父親が危篤との連絡を受けて勤務先に休暇願を出すが、繁忙期のため家庭の事情で足元を見られて、拒否される。思うところがあって、家族や職場にも内緒で実家に戻るハーパーが経験する様々な人たちとの出来事。

長塚圭史の久しぶりの翻訳劇演出、つい初日に観てしまいました。感想を端的に言えば、今の自分には観られてよかった、でも人には勧めるのをためらう、役者と、たまにやりすぎを感じるけど脚本のストレートさには好感、演出もっとがんばれ、って感じです。

小林聡美が、それぞれの場面でそれぞれの登場人物とひたすら対話する、直球ど真ん中の会話劇。血とか暴力は、昔の長塚圭史と比べるとほとんどありません。まあそれは予想通りだからいい。で、登場人物の話が、微妙な話題のときでも、というか、微妙な話題のときほど、すごい会話が明晰。このあたりが良くも悪くも、いかにも英語圏の脚本だなと思う。まったく余韻がないんだけど、こなれた翻訳と達者な役者で味わいが深まるのはいいです。ただ、喧嘩別れしたとはいえ、親の危篤の日以降ののハーパーの行動のぶっ飛び方は、芝居とはいえ、あれはイギリスならありうる展開なんでしょうか。正直どうなんだと思っているうちにハーパーがどんどん格好良くなっていくんで、だんだん気にならなくなるんですけど。

自分の人生に理不尽や疑問を感じたことがある人なら、どこかの場面が必ず心にひっかかるでしょう。そういう脚本です。それで自分は観られてよかったと感じたんですけど、ほかの人の感想、特に30歳から50歳くらいの女性の感想を聞いてみたい。

で、場面転換以外冗談抜きで出ずっぱりのハーパー小林聡美の演技が、なんていえばいいんでしょう、説得力が高いというか存在感が強いというか。失礼ながら決して美人な女優ではないんですけど、すごい凛々しくてきれいに見えて、さすが人気女優は違うと思いました。衣装の着こなしもよかったですね。ほかの役者も実力に異論はないんですけど、若者の多感な感情を表現した2役の美波と、とても馴染んだ雰囲気だった福田転球は、個人的にはかなり好感度が上がりました。

なんですが、芝居全体で観ると、もっさりしたテンポであることは否めず。厚みを出そうとして逆に緩急をつけ損ねた印象。あと、上で小林聡美の演技力を絶賛していますが、その説得力があだになった面もあり。ハーパーは行動や台詞にぶっ飛んだところがありますし、確実なのは確実なんてないことという台詞に象徴されるように、揺れ動いた結果として格好良くなるのがたぶん脚本の狙いだと思うけど、ハーパーが何をやっても正しくて必然で常識を体言しているようになっていた。そこは演出で調整してほしかったし、もし狙ってそうしたんだとしたら、稚拙じゃないかと思う。あと、コンクリートにはもう少し意味を持たせてほしかった。

これからよくなる余地も見て取れたので、血とか暴力とか目当ての人には勧めないけど、人生悩める人で、役者か脚本に興味を持った人にはいいんじゃないでしょうか。

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2010年8月 7日 (土)

ブス会「女の罪」リトルモア地下

<2010年8月6日(金)夜>

場末のスナック。客は常連の女性と飛込みの女性。店を閉めたいがなかなか出て行かない。女性だけの間で交わされるトークが、お互いのよくない秘密にまでつながり・・・。

つい観にいった。小劇場で女が女を書くとなんでこういう殺伐とした芝居になるのかよくわからないけど、面白いのは間違いない。キーワードはギャップでしょうか。みんな上手な70分勝負。でも開演押し。

客席が満員過ぎたので疲れた。詳細は省略。

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劇団M.O.P.「さらば八月のうた」紀伊国屋ホール

<2010年8月5日(木)夜>

深夜ラジオの長寿番組。リスナーから届いたメールには、介護中の老人が歌っていた歌について教えてほしいとのリクエストと歌詞の一部が載っているが、番組のパーソナリティを勤める女性以外には誰も聴いたことがない。その歌は、今は横浜の港につながれている船に深い由来を持っていた。

ラジオ番組の放送期間を劇団の存続期間に合わせて、しかも歌の内容が意味深な企画。役者オールスターの熱演とあわせて、新作にして劇団の解散公演にふさわしい仕上がりになっています。危うく泣くところでした。

船の名前は寒川丸とか言っているように聞こえましたけど、氷川丸の設定を借りて、ある種の歴史ドラマのようになっています。あちこちの年代を行き来するなか、人物関係を上手に絡めて、蒔いた設定はきれいに刈り取って、最後に終わると「おお」と驚いてしまいます。マキノノゾミはこんなに芸達者な脚本演出ができるのかと今更知りました。

この大作(2時間45分)に息を吹き込んだのは、間違いなく中心人物を2役演じたキムラ緑子で、彼女が喋って怒って歌って泣くのを観ているだけで幸せになってきます。いいところを抑える美声の小市慢太郎もよかった。それ以外も全員よかった。

ハーフプライスチケットが手に入るならもう一度観たい出来で、あえて口コミプッシュは出しませんけど、解散公演であることも含めて、ぜひひとりでも多くの人に、ストレートプレイのよさを味わっていただければと。このクオリティでこの値段でこの規模の劇場で上演する団体はどんどん減っていくのが悲しい。

開演前に、日替わりゲストとのラジオ対談もしているので、早めに到着して席につくといいかもしれません。ちなみにこの日のゲストは片岡正二郎でした。

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2010年8月 1日 (日)

NODA・MAP「ザ・キャラクター」東京芸術劇場中ホール(ネタばれありあり)

<2010年7月31日(土)昼>

とある町の書道教室。生徒にランクをつけて、高ランクの生徒は住込みで学びながら別の生徒に教えるシステム。ある日、海外旅行から帰ってきた家元はギリシャ神話に感動したので古代ギリシャ式に改めると言い出す。そんなところにやってきたのが、人探しの女性2人。

2ヶ月公演の終盤ぎりぎりになってようやく観られた野田地図。小劇場垂涎のキャスティングで臨んだ初の中ホール公演でしたが、これは駄目だったと言いたい。理由は以下全力のネタばれで。

住込みのシステムは生徒に財産を拠出させているのが理由の悪徳教室。これに「書道」から「紙」から「神」の連想で、家元が段々神のように振舞うようになっていく。そうなる前振りとして行方不明になった家族を探す2人が絡んで、時間を前後にずらしながら、団体がエスカレートしていく様子を描きます。

ということで、察しのいい人は気がついたと思いますが、後半3分の2はオウム真理教の事件そのままです。この「そのまま」というところが私が一番引っかかったところで、あの世界に残るテロ事件とそれを引起した人間たちが嵌るまでの経緯が浅すぎる。もちろん家元=松本智津夫の詳細を想像で描くのは控えたほうがいいし、主要メンバーで今も逃亡中の犯人もいるのですが、それならそれで、被害者とか、下っ端の生徒=信者とか、もっと違う視点を中心に描いたほうがよかった(2人の女性は家族を拉致された立場ですが、それも片方は潜入捜査っぽくなって微妙)。もっと言えば、中途半端にギリシャ神話でまぜないで、ストレートプレイにしたほうがよかった。

表現の自由と言っても、こんな内容を上演すると何が起きるかわからないとタブー扱いになるところ、これは野田秀樹の実績と実力に加えて、芸術監督をやっている劇場での上演、そして引かなかった役者スタッフがいてこそ実現できた企画だと思います。これを千秋楽まで無事に行なうことができれば(何も起こらないと信じたいですが)ひとつのタブーが消えるので目出度いのですが、でも芝居が現実に負けていた。野田秀樹をもってしても負けた。

付加えるのであれば、2ヶ月公演の終盤のための疲労蓄積と、ゆったりしすぎて芝居に向かない劇場のつくりという二重のハンディはあるのですが、じゃあこれをシアターコクーンでやって、どこまで芝居のまとまりが出たかは「もし」の話になるのでやめておきます。

ただ、そんなハンディを全力で跳ね返して勢い余って舞台から落っこちてあっというまに盛返したチョウソンハには惜しみない拍手を送りたい。あと、声に疲労を感じたけど緊張感は途切れさせなかった宮沢りえと美波の2人にも。

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2010年7月20日 (火)

こまつ座「黙阿弥オペラ」紀伊国屋サザンシアター

<2010年7月19日(月)昼>

江戸末期。深夜に身投げを助け合った2人が蕎麦屋でお互いの境遇を語り合う。その一人が後の黙阿弥こと河竹新七。この日を境にどうにも暮らしに困った男たちが蕎麦屋に集まってしまう。その日にちょうど起きたある問題を解決しようと、蕎麦屋の女主人の発案で株仲間になってしまった男たちが繰広げる、開国前後のあれやこれや。

井上ひさしが亡くなっていなければ男3人の新作芝居だったようですが、まあ新作はこれからずっと遅筆堂なのでこの再演。キャストも豪華で期待していたら、期待以上の出来でした。3時間半を感じさせない熱演に、惜しみない拍手。

江戸から明治にかけての生活の変わりっぷりと、それを生き抜く庶民のたくましさを、江戸の風習を守る黙阿弥、ひょんなことから外国に通じることになったおせん、その間で右往左往する男たちの配置が見事。そして膨大な台詞、台詞、台詞。みんな台詞回しが上手なもんで、聴いていて楽しいです。

この芝居、普通にやったら多分つまらなくて、成立させるためにはかなりのエネルギーが必要と思われますが、吉田鋼太郎と藤原竜也をはじめとして、ものすごい勢いが舞台から伝わってきます。藤原竜也がいつの間にか上手くなっていたり、エロがなくても内田慈が魅力的だったり(髷は似合っていませんでしたけど)、北村有起哉や熊谷真実が格好よかったり、役者に発見がいくつもありました。ここまで役者の力を引出した栗山民也も褒めておきます。特に前半の最後はやられそうになった。

政府に文句をつける場面も出てくるんですけど、それは全体には少なくて、やっぱり井上ひさしは21世紀より20世紀の脚本のほうが面白いんじゃなかろうか。こんな座組で観られることは多分もうないと思うので、チケットが高いのは難点ですが、ぜひ観ておいてください。どの席でもまず見切れませんのでそれはご安心を。

勧めたからには当日券情報。1時間前に集まって締切、そこで並んだ順に番号札を引いて、その順番で再整列して販売。今回は27人並んで、直接販売5枚、キャンセル販売がたしか4枚。こまつ座はいつも当日券販売が少なくて、以前の別の公演ではこれより少なかったこともあり。しかもキャンセルが少ないです。当日券狙いの人は公演期間の早いうちに行って、失敗したらもう1回挑戦するくらいの予定でみたほうがいいと思います。

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ナイロン100℃「2番目、或いは3番目」下北沢本多劇場(若干ネタばれあり)

<2010年7月17日(土)夜>

なんらかの出来事で国全体が大被害を受けてからしばらく経過したある町に、他所の町からやってきた5人。被害者救済を謳っているが、町の被害が大きい割りに、住人の悩みは少なくて世話になるあり様。しかし微妙におかしい雰囲気は隠されていて・・・。

最近のKERAというより、ちょっと前のナイロン100℃に近い感じ。でも政府の人間がかなり適当な扱いになっていたり、登場人物のひとりの最後がほったらかしにされたり、なんかいまいち。

全登場人物がフラットすぎて、背景を感じさせる場面が少ないのが残念。全体に笑いが少ないならそれでもいいけど、今回は大倉孝二に笑いを頼りすぎでちょっと強引。客演の若者役2人も、あのくらいの出番だったら若い劇団員を抜擢してほしかった。演技力を見て出番を調整した結果あのくらいの出番になってしまったんでしょうか。そんな中で、犬山イヌコと松永玲子の昔の男を巡るやりとりは数少ないスリリングな場面で、ベテラン劇団員主体なのにそういう場面が少なかったことを後から思い返して愕然としたり。

ラストがハッピーエンドっぽいのは、まあ最近幸せでキャスティングもされているしそういう芝居が書きたくなったんだろうかとも思いますが、野田秀樹みたいにちょっときもちのいい長台詞だったのはびっくり。昔は劇中でそれを笑いの対象にしていたのに。でも余韻はいまいちで、KERAでもこれから勉強が必要な分野ってものが芝居の中に残されているのかと思うといろいろ考えさせられる。

すごい悪く書きましたけど、そこらの芝居よりはずっといいですよ。ただ、個人的には「世田谷カフカ」のほうがエネルギーにあふれていたなと思います。

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2010年7月12日 (月)

モダンスイマーズ「真夏の迷光とサイコ」青山円形劇場

<2010年7月11日(日)昼>

丘の上の屋敷に引きこもる車椅子の女性。役目を与えられて本名と違う名前で呼ばれる使用人。彼女に見えるのは一人の男性の生活。二人の日常が交錯する。

話題になって久しいのに今さら初見のモダンスイマーズ。これをもっと劇団初期に、もっと小さい劇場で観ていれば可能性を感じたのかもしれないけど、ちょっと期待が大きかった分だけ外した感あり。

一番つらかったのは、交錯するのはいいとして、展開が個人的に「だからどうした」になってしまったこと。男性編はそれなりにわかるんだけど、そこに女性編を絡ませる意図がわからない。意味らしい意味があったのは最後の最後だけで、それだけのために引張るには女性編は不可解というか説得力不足。

ただし役者の上手さには目を見張るものがあった。主役の二人とドラム担当以外は二役を演じるんだけど、よかった。特に古川悦史と岡野真那美がよかった。調べてみたら前者の文学座はほほう、って感じだけど、後者は新国立の演劇研修所一期生だった。育っておりますな。反面、YOUはもう少し頑張ってほしかった。一人だけ華やかさが違うし、使用人を使い慣れている雰囲気の上手さはさすがなんだけど、ウマヘタ(ヘタウマではない)だった。もう少し緩急があってもよさそうなもんだけど、演出の間違いなのか演技力の限界なのかどっちなんでしょう。その他でいうと、ドラムをメインに使った音響とすっきりした衣装は好み。

駄目な点は、当日券の席(Cブロック)に背を向けることが多い演出。机を斜めに配置して椅子の位置を工夫すれば回避できるのに、どうしてああなるんでしょう。昔、KAKUTAの青山円形劇場初演でもひどい目にあったことがあって、今回はそこまでひどくないんですけどやっぱり円形を考慮した演出まで気が回らないんでしょうか。

そこしかないって言われたから当日券だししょうがないと納得して買ったのに、開演してみたらいろんなブロックで端の一列+最前列二席が空いているのが円形劇場なだけに芝居中も目に入って、ああこれはきっと有名人向けに備えていた関係者席が目一杯ドタキャンされたのかな(正式な経路で売れ残ったなら引揚げて当日券にまわされるはず)、とか考えながら当日券で外れ席から観る芝居のがっかり感というものをもう少し制作者におかれましては気にしていただきたく。

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2010年6月21日 (月)

新国立劇場主催「夢の痂」新国立劇場小劇場

<2010年6月20日(日)昼>

終戦後、参謀本部勤務で敗戦の責任を取ろうとしたが一命を取りとめた男。それから2年、親類の仕事を手伝って東北の旧家に滞在中、天皇行幸の宿泊場所としてその旧家が選ばれる。参謀本部で天皇を何度か観かけていた男は、失礼のないように予行演習を指導してほしいと旧家の一族に依頼され、了承するが・・・。

東京裁判三部作といいつつ、東京裁判は全然出てこない最終作。戦争の責任を問うという意味では、まあ間違っていない。けど、3本とも観た感想(夢の裂け目夢の泪)では、これが一番よくできていて面白い。

演出と脚本とどちらの影響が大きいのかはわからないけど、説教くさいのは前2本と同じながらも、前2本と比べて辛気臭さが薄いのは、直接東京裁判が出てこないせいか。あと、文法を手がかりに進める話の展開は、国語上手といわれた井上ひさしらしい。クライマックスで言い分を踏込んだあたりも、内容の是非はともかく、ようやく脚本がリスクをとってくれたと思えて、前2本の欲求不満が解消できた。

ただ、千秋楽で大盛上がりのところを申し訳ないけど、スタンディングオベーションすることはないだろうとは思った。その1。舞台装置が寂しすぎる。能舞台を模して、そこに劇中劇とか幽玄境を云々とか、いろいろ意味を込めたとは思うけど、離れの別宅とはいえ、宿泊場所に選ばれるような旧家で、娘が骨董を持出すような物持ちで、あれは簡素すぎる。その2。3本ともオチが同じなので、前半始まってまもなくオチが予想できたのは、シリーズ物であることを差引いてもつらい。その3。これが一番大きいけど、役者の実年齢と主役の年齢が離れすぎている。この芝居で32歳を68歳が演じたり、推定45歳前後を62歳が演じたりするのは、さすがに無理がある。最初は 台詞と役者の設定が一致しなくて(最後までその違和感は残って)大変だった。実力とか、初演に縁のある役者とか考えたんだろうけど、いくら人材の乏しい日本演劇界でも探せば適役はいるはずで、これはキャスティング ミスだと声を大にしていいたい。念のために言っておけば、役者は全員すばらしい演技だった。けど、演技ではカバーできないケースもある。

3本観終わって、もういいやとすっきりしましたが、チラシには井上ひさしの公演が多数。本当、多いですね。とりあえず「黙阿弥オペラ」と「父と暮らせば」は、都合がつけば観たいと思います。

そういえば、当日券で観たんですけど、並んでいる人数が少なく、しかも千秋楽だからとはいえ、お堅い新国立劇場にしては珍しく真摯に当日券の確保を調整していました。不慣れな点が誠実に見えただけとも言えますが、まあちょっとだけ好感度が上がりました。新国立劇場の職員も、少なくともそれなりに一生懸命な人もいるんだというのはわかりましたが、それでいてこの劇場の活動が演劇界の邪魔をしているようなへたくそな印象を受けるのは何が原因なんでしょう。私の妄想なんでしょうか。

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2010年5月17日 (月)

新国立劇場主催「夢の泪」新国立劇場小劇場

<2010年5月16日(日)昼>

終戦後の東京。新橋で法律事務所を営む弁護士夫婦。女癖が悪い夫に妻は腹を立てて別居している。そんなある日、妻が東京裁判で松岡元外相の弁護団の一員に選ばれる。

井上ひさし東京裁判三部作の第二部。前作が戦争責任の追求を中心においたのに対して、今回は戦争や裁判の位置づけ、それに戦争に翻弄された国民を描くことを主にしている。よくできているのは第一部と変わらないけど、熱中して観られないのも第一部と変わらず。

戦争の位置づけとか、差別の話とか、それはそれでいいんですけど、急に登場するから、第一部ほどではないにしても、脚本が説教くさいんですよね。あと音楽劇にすると上演時間が長くなるわけで、それも個人的にはマイナス。ただし、最後の10分はとても美しい。これは認める。

役者は全員上手だし、音楽劇なだけあって、みんな声がきれい。聴いていて心地よい。初見の人も多かったけど、石田圭祐と大和田美帆は別の芝居で観てみたい。

なんか意地になって観ている気がしないでもないけど、ここまできたら第三部も観ないといけない。でもどんな感じになるんだろう。

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