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2025年7月 9日 (水)

劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定

株式会社パルコ企画製作舞台「ヴォイツェック」のことです。スピード勝負っぽいのでまずは公式サイトより。日付が入っていないところに慌ただしさを感じさせます。2025年7月9日発表です。

「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ

東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の弊社の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

当初は9月22日が初日に設定されていました。この日程がいつ発表されたかというと2025年6月12日と思われます。検索したところ、すでに日程を書換えている記事もあるところ、シアターテイメントNEWSの記事がまだ残っていました。

森田剛 主演 小川絵梨子 演出 パルコ『ヴォイツェック』秋上演。コメントも_

2025年6月12日
(中略)
概要
パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
会期会場:
東京:2025年9月22日(月)~9月28日(日)/2025年11月7日(金)~11月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
(後略)

つまり6月12日に公に発表されて、本日7月9日まで、ほぼ一か月、誰も気が付かなったことになります。

東京芸術劇場のサイトには公演情報が見当たりません。一度削除されたのではないかと考えます。ただ、その日が休館日という情報は見当たらず、劇場カレンダーもその日は1つだけイベントがシンフォニースペースやリハーサルルームを使って行なわれるので、この日が休館日というのを表に見えるサイト情報からだけでは判断するのは困難です。

チケットの発売日がチケットサイトを見た限りではいまいちわからないのですが、すでに削除されたinstagramの情報だとどうも8月6日(土)がチケットサイトでの一般発売日だったように思われます。ただ、それならまだ一般発売日に余裕があったところ、公式サイトでは未定に変更されています。

一般発売日

未定

※公演日程が当初の予定から変更となりましたため、発売日も変更となります。(詳細はこちら)
※一般発売日の発表は今後の更新をお待ち下さい。

役者はファンクラブがあるから先行していたようです。主演の森田剛のファンサイトにはこのようなお知らせが掲載されています。良席を引いていたファンは残念でした。

2025.07.09 舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行予約やり直しについて

森田剛主演舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行販売について、主催者より下記発表がありましたのでご確認ください。

◆「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ
https://stage.parco.jp/program/woyzeck/10806#news

++
東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の主催者の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
++

上記をふまえて、あらためて先行予約のやり直しを行わせていただきます。
詳細が決まり次第、あらためてご連絡させていただきます。
※尚、今回の抽選は全て無効になりますのでご注意ください。

公式サイトでも「弊社の確認が行き届かず」とあるので、パルコがやらかしたのは確定です。今回の公演は西日本をツアーして、最後にまた東京芸術劇場に戻ってくるという面倒な日程です。確認事項が多かったのでしょうが、一日丸ごと潰れてしまう間違いはさすがに言い訳できなかったのでしょう。

今回わかった話として、日程を決めるのはとにかく企画製作、またはプロデュースを行なう団体に決定権があるという話です。そこが決定権を持たないとチケット販売だけでなく役者スタッフ舞台道具の移動や搬出搬入の調整ができないから、それは自然なことと思われます。

反面、劇場を含めた関係各所は搬入開始から搬出完了まで日程の頭と尻尾だけ抑えてあとは任せきりというのもわかりました。もちろん劇場から該当日が休館日であることは伝えられたはずですが、仕込みやリハーサルなら使える契約ではないかと想像します。実際、1本はイベントがあるわけなので、表のスタッフが休み、警備スタッフも最小限の日だったのでしょう。

一方で、パルコの中の体制がどうなっていたのかは気になります。

・日程確認は1人に任せっぱなしで、その人がポカをした。
・日程確認は複数人で確認することになっていたが、その複数人が全員見逃した。
・元々劇場と打合せていた人が異動や退職でいなくなり、引継ぎ漏れでポカが起きた。

どれも考えられる話です。どれが理由でもおかしくありません。そしてどれが理由でも、さらにその裏にさらなる原因が隠れていそうです。

そしてこれ、誰が気が付いたのかも気になります。日程は任せっぱなし、表からはわかりづらい、と悪条件が揃っています。

・パルコの中の人が仕事中に気が付いた
・パルコの中の人以外の関係者が何かの拍子で東京芸術劇場の日程に気が付いた
・東京芸術劇場の関係者がたまたま日程を目にして気が付いた
・東京芸術劇場にたまたま縁のある熱心なファンが「あれ?」と気が付いて問合せた
・チケットセンターの人が準備をしていて「ん?」と気が付いて問合せた

どれが理由だとしてもまだ初日2か月以上前に気が付いてラッキーだったと思います。

2025年6月29日 (日)

輸送中の事故からのショーマストゴーオンその2

無事は無事らしいのですがちょっと気になったので取上げます。

「東京リベンジャーズ」の舞台、いわゆる2.5次元ものですが、大阪公演前に輸送事故が起きたという話です。公式サイト「大阪公演についての重要なお知らせ」より。

2025.06.24
大阪公演についての重要なお知らせ

平素より舞台「東京リベンジャーズ」をご愛顧いただきありがとうございます。

この度、6月26日(木)より大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて開幕を予定しております、舞台『東京リベンジャーズ ―The LAST LEAP―』につきまして、運送会社による輸送時の火災事故が発生し、衣装・メイク一式(ウィッグ含む)等が全焼、舞台美術の一部も焼失する事態となりました。なお、本事故関係者の命に別状はございません。

現在、上記損壊による影響の把握とその復旧作業を行なっておりますが、舞台のクオリティを上げるための工程と並行した急ピッチでの作業であり、見通しや代替品がどこまで確保できるか、今なお把握しきれておりません。

つきましては、製作委員会による慎重な協議の結果、本件の影響が最も大きいことが予想される6月26日(木)18:00開演公演を「プレビュー公演」とさせていただくことといたしました。
本「プレビュー公演」は、上演が途中でストップしたり、技術的、演出的な調整を行わせていただく可能性があること、ご了承いただけますようお願い申し上げます。

また、公演開始時間を以下のように変更させていただきます。
(変更前)6月26日(木)18:00 公演→(変更後)6月26日(木)18:30 公演

6月26日(木)18:00のチケットをお持ちのお客さまには、開始時間を変更させていただいた6月26日(木)18:30開演の「プレビュー公演」のご観劇いただきますようお願い申し上げます。
非常に厳しい状況ではありますが、短い時間の中でも、ベストを尽くし、困難を乗り越え、初日の幕を上げ、本公演を心待ちにしていただいているお客様のために、関係者一同全力で臨み、改めてできる限り最高のクオリティで皆様にお届けしたいと考えております。

当公演へのご来場が叶わないお客様、ご希望に沿わないお客様へは横浜公演を含めた他公演への振替、もしくは公演もご来場が叶わない方には払い戻しの対応をさせていただきます。
※完売等、状況によってお振替が難しい公演もございます。対応の詳細につきましては後日公式サイト、公式Xにて発表させていただきますので、ご案内をお待ちください。

今後とも舞台「東京リベンジャーズ」をよろしくお願い申し上げます。

舞台「東京リベンジャーズ」製作委員会

このエントリーのタイトルがその2になっているのは、2021年にも「ヘタリア」大阪公演前に似たような事故が起きていたからです。奇しくも大阪公演の会場も同じですが、それは2.5次元でよく使われる会場なのでしょう。そのときと似たようなアナウンス文言なのは、おそらく彼の業界で緊急時アナウンステンプレートのようなものが広まっているのでしょう。ひょっとしたら「ヘタリア」公演のアナウンスをベースにしたのかもしれません。それはまあいいです。

ただ、2.5次元で2度も似たような事故が起きたと聞けば気になります。前回今回の制作を確かめました。クレジット上は作者、出版社、製作委員会になるようですが、もちろん実際に受持つ会社があります。今回の団体を確実に調べきれていないのですが、調べられた限りでは別々の団体のようです。

となると運送側の事故なのはその通りなのでしょう。公式サイトのアナウンスが公開された時刻は不明なのですが、ステージナタリーでそれを紹介する記事には同日の18時04分とこれは時刻の記載があります。それよりは前の時刻に公式サイトからアナウンスされたことなります。

そしてこの会場は貸出しは1日単位、9時から22時までです。

ここから先は私の勝手な妄想になります。

団体側はおそらくこの日の6月24日と翌25日を仕込日として借りていたのでしょう。そして借りるなら朝9時からです。となると、朝9時から搬入を行ないたいと考えるのが自然です。すると、運送会社には朝の9時に会場にトラックを付けてくれと頼むことになります。そのために前日から持ってきて待機しておけ、その分の料金は払う、なんてことはないでしょう。

ならば他の仕事と組合せてまとめて稼いでやると考えるか、立場が弱くてそれでも引受けざるを得ないか、どちらかはさておき運送会社は引受けます。東京大阪間はどんなに速くても6時間です。休憩を入れればもっと長くなります。そして高速道路も、深夜に通行すれば割引があります。

となると、前日6月23日の夕方か夜までにスタッフ陣が荷物を預ける。それでトラックは一時待機するか、先に高速に入ってパーキングエリアで休憩するかはともかく、深夜に走って大阪に向かう。それで大阪に着くまでの間に事故に遭ったことになります。自走事故か貰い事故かが気になりますが、そこまではわかりません。

深夜に輸送トラックが高速を走るのなんて当たり前だろうと言われればその通りです。が、2.5次元の場合に割ときつい条件で運んでいるのかもしれないと妄想してしまいます。普通の芝居でも同じように運んでいるのかもしれませんが、その割に事故の話は見かけません。無事なのか、実は事故が起きているがリカバリーできる範囲で済んだので表沙汰になっていないか、どちらでしょう。

2度までは偶然、3度起きたら何かある、という言葉に従って今回までは偶然と考えたいです。3度目が起きないように気を付けてほしいです。

2025年6月20日 (金)

「ネタバレされたい人」が昔からいる

以前「『ネタバレされたい人』が世の中にいる」というエントリーを書きました。これを書いた時には、割と新しい現象なのだと思っていました。

ところが最近読んだ映画の本、山田宏一と和田誠の対談「定本 たかが映画じゃないか」の中に、こんなくだりを見つけました。

W (前略)いまの若い人たちは、もっとクールに好きになっているんじゃないかっていう・・・「キネマ旬報」で「オリエント急行--」は原作読んでストーリー知ってるから楽しみ方が違う、ああいうのは結末知らないで観た方がはるかに楽しい、っていうようなこと書いたらね、若い人やつから投書が来てさ、結末わかったらつまんない映画なんてのはもともとつまらない映画だ、自分は必ずストーリーを読んで、シナリオがあればそれも読んで、それから映画を観る、なんて書いてあるんだよ。そりゃ立派な意見かもしれないけどさ、映画を楽しんでないという気がするんだよ、不幸だと思うんだな、そういう映画ファンは。もっと違うじゃない、理屈じゃなく。映画館に勉強しに行くんじゃないんだから。
Y うん。勉強はいやだ。
W ワクワクするというか、金払って映画館入ってさ、ションベンなんかしたくなくても無理にションベンしてさ、待ってるとベルが鳴って、アナウンスがあって、、だんだん暗くなるとなんかドキドキしちゃって・・・ああいう感じね。(後略)

ああなるほど、昔からそういう人は一定数いたんだな、と勉強になりました。楽しみ方は人それぞれなのでネタバレを強要されない限りは文句はありません。ただ、自分は和田誠の側の人です。

一度観たものをまた観るのはいいんですよ。原作をすでに読んでいたものが舞台化映像化されたものを観るのだって構いやしません。その反対に、舞台化映像化をきっかけに原作に手を出すのも結構です。

でも原作なしの初見なら、ほどほどのあらすじにキャスト・スタッフ一覧を眺めて、チラシを観て、過去にどこかで名前を見かけていたら思い出して、それで飛込んで自分で答え合せをするのが趣味です。そこには観た芝居の良し悪しに対する一喜一憂だけでなく、自分の直感の精度を確かめたことによる一喜一憂も含まれていますから。

それでも昔と比べたら、はずれを引きたくない気分も強くなってきていて、年だなあとため息をつきたくなることもあります。

2025年6月18日 (水)

開演時間がばらついて困るという話と芝居が長くなりすぎじゃないかという話

私の昔の芝居経験は小劇場に偏っているのですが、その偏見を前提にして書きます。

芝居の開演時間は、昔なら昼は14時、夜は19時と相場が決まっていました。夜がこの時間になったのは、都内の人だと仕事が終わって晩飯を食べてから劇場に向かっても間に合ったからだ、とどこかで見かけたことがあります。それは東京の交通事情を考えると私にも納得のいくことでした。そこから逆算して、昼飯を食べ終わってから劇場に向かうことを考えると、昼が14時だったのでしょう。

それが近頃は、昼が13時、夜が18時が増えてきました。

理由の1つは、リタイアするくらいの年配の人が主要観客になってきたことでしょう。それは純粋に若い人の数が減ってきたからとも言えるし、他にも娯楽が増えた中で若い観客を掴まえることに失敗しているからとも言えるし、本気で面白い芝居を作ろうとしたらチケット代が1万円を超えるようになってさすがに若者が気楽に観に行けないこともあるでしょう。その理由はここでは本題ではないので置いておきます。

年配の人が主要観客になるとどうなるか。夜がきつくなる。それは家庭の事情もあれば、純粋に体力の問題もある。体力の問題は私も痛感しているところです。元々は夜公演が基本で土日祝日に昼公演を上演していた(平日だと水曜日だけ昼公演をやっているところが多かった)のですが、近頃の高い芝居の中では昼公演が基本で土曜日だけ夜公演を行なうようなものもあります。

道草ついでに書くと、もっと昔は1か月公演でも休演日がなかったようです。野田秀樹の夢の遊民社時代の本に、丸1日の休みがほしいと書かれていたのを読んだことがありますから。ただ、私が芝居を観たころには、長い芝居だと月曜日が休演なのは珍しくありませんでした。

そして理由がもう1つ。芝居1本当たりの上演時間が延びていることです。昔なら2時間きっちりに収めるのが普通だったのですが、近頃は3時間も珍しくない。ナイロン100℃の「ナイス・エイジ」初演は2000年9月ですが、上演時間は3時間40分と開演前アナウンスが流れてどよめいていました。私は観ていませんが同じ9月に蜷川幸雄演出の「グリークス」で土日に通し公演をやっていて、終演が22時を超えてBunkamuraの駐車場が閉まるのを関係ないと押通したとどこかで読みました。同じ2000年の6月がキレイ初演でこれが3時間超えだったはず。この前の「ベイジルタウンの女神」が3時間半超えでしたけど今時KERA芝居でこれだけ長くとも誰も驚かない。ただ2000年のころはまだ特別という感じでした。

それで2時間越えが当たり前になると、夜公演では終演時間の心配が出てくる。家がちょっと遠い人は最寄駅からの終バスに間に合わなくなったりもしますから。それで夜の開演時間を繰上げて、19時が18時半に、そして18時になる。となると昼の開演も繰上げないと間が詰まってしまいますから13時になる。

こうやって全ての芝居が素直に決まってくれるならそれはそれで慣れるのですが、問題はまだそこまで徹底されていないこと。平日だと高額の芝居は貴重な勤め人のシアターゴーアーを狙ったり、都内の小劇場は近場の観客狙いかつ相対的に観客も若い人が多いですから、夜が19時開演が残る。

この前の自分の話です。三谷幸喜の「昭和から騒ぎ」のチケットがたまたま取れたのが、土曜日の夜公演。これが2時間を切る芝居なのですが、夜の開演が極端にも17時半。せっかくだから昼にも何か観ようかと考えたけれどもこれが難しい。

劇団普通「秘密」を考えたのですがこれが土曜日は14時開演。上演時間を探したら2時間10分というものを見つけて、実際それくらいの上演時間でしたが、三鷹のあの駅から遠い劇場を16時10分に出て三軒茶屋に17時半に間に合うか。私は上演時間の微妙な延長を含めて何かあったらアウトと判断してこの日は見送りました。それなら劇団四季「ライオンキング」はどうだと考えたらこれは土曜日は13時開演(平日だと昼は13時半開演)の代わりに上演時間が2時間40分。間に合わなくもなかったでしょうが有明に土地勘がなかったのといつもカーテンコールが長いのは少ない観劇数でも知っていたので悩んで見送り。結局この日は夜の「昭和から騒ぎ」だけを観ました。

それで見送った2本を同じ日に観たのですが、「秘密」は三鷹が会場なこともあって平日夜は開演が19時半。まあ帰りが遅くなって大変でした。

そんな経験をした後にTHE ROB CARLTON「ENCOUNTERS with TOO MICHI」を観たらこれが1時間20分公演。快適でした。そもそも「昭和から騒ぎ」の2時間切りも快適でした。長すぎるんです、近頃の芝居は。

歌舞伎あたりは独自のタイムスケジュールですし、ミュージカルは歌の分だけ長くなりますから、突詰めるときりがない話題です。とりあえず小劇場に近いところのストレートプレイを考えると、昼は13時、夜は18時、上演時間は2時間以内、がありがたいです。平日夜なら勤め人狙いの19時でも仕方ありませんが、もう少しスタンダードなタイムスケジュールが固まってくれると観客にはありがたいなという話でした。

2025年5月12日 (月)

映画のリーディング公演が中止に

こんな企画があったんだということを初めて知りました。

Classic Movie Readingは名作映画を朗読劇にし、名作の魅力に再び焦点を当てるプロジェクト。
過去には「ローマの休日」「自転車泥棒」「風と共に去りぬ」「若草物語」を上演しており、
Vol.4ではシリーズ初となる邦画、小津安二郎監督の傑作「東京物語」を上演しました。
Vol.5では「ローマの休日を」脚本を一新して再演いたします。

著作権の切れた映画の名作なら脚本の出来は保証されていますから、それを朗読劇に仕立て直せばいいとはいい目の付け所です。少し前には江戸川乱歩の著作権が切れて上演が重なったこともありましたが、著作権切れなら堂々としたものです。

それが今回は中止になりました。公式より。

Classic Movie Reading Vol.5『ローマの休日』
公演中止・延期のお知らせ

平素よりClassic Movie Readingシリーズにご愛顧を賜りまして、誠にありがとうございます。

Classic Movie Reading Vol.5『ローマの休日』につきまして、製作委員会内における重大な相違が発覚し、協議を続けてまいりましたが、公演を無事に上演するまでのクオリティの担保や進行が難しいという判断で、大変残念ながら、7月12日(土) 、13日(日) 4公演を中止・延期とさせていただきます。

これは出演者、スタッフに関しての非は一切なく、運営サイドの責任となります。ご来場を楽しみにされていたお客様には、大変なご迷惑をお掛けすることとなり、誠に申し訳ございません。心よりお詫び申し上げます。

<中止となる公演>
7月12日(土) 14:00/18:00
7月13日(日) 12:00/16:00

チケットの払い戻しに関しましては「チケット払い戻しのお知らせ」をご確認ください。

Classic Movie Reading Vol.5『ローマの休日』製作委員会

初めは何か著作権に触れたのかと思いましたが、出演者やスタッフに非は一切なく運営サイドの責任と書かれていますし、そもそも再演かつ他の映画のリーディングも上演しているから、著作権周りの確認でへまをしたとも思えません。

それでサイトの下を見ると、このような記述があります。

企画・製作:style office
主催:Classic Movie Reading Vol.5「ローマの休日」製作委員会

この業界における企画と製作と主催の使い分けがいまいちわかっていないのですけど、長年薄らぼんやり考え付いたところでは、企画は劇場との調整を担うところ(公演スケジュールとチケット販売と役者スタッフのキャスティング)、製作は稽古して上演まで持っていくところ(演劇っぽいところ)、主催は金を出すところ(それと引換えにチケットのいくばくかの販売権を握る)、ではないかと考えています。

それと製作委員会というのは映画でよく聞く体制で、複数名が製作費を出す代わりに、一定以上儲かったらあとは全部自分たちで持っていくための体制だとどこかで見たことがあります。

だから製作委員会内における重大な相違とは、つまるところ儲かったときの分け前の取分が決まっていなかった、あるいは損が出たときの負担割合が決まっていなかった、ということではないかと思われます。どちらでしょうね。

日付は入っていませんが、これが発表されたのが2025年4月23日です。上演予定が7月12日と13日ですから、ドタキャンよりはずっとよかったでしょう。少なくとも観客にとっては。

2025年4月14日 (月)

椅子で公演一時中止

椅子?

歌舞伎座の「四月大歌舞伎」のことです。公式発表より。

2025年4月14日
松竹株式会社

歌舞伎座「四月大歌舞伎」公演一時中止につきまして

 平素より格別のお引き立てを賜りまして誠にありがとうございます。
 この度、歌舞伎座の客席椅子に不具合が発生いたしましたので、上演中の「四月大歌舞伎」の公演を下記の期間中止し、お客様の安全に万全を期する為、全席に亘る点検作業を行うことといたしました。

 本日 14 日(月)夜の部から 17 日(木)夜の部までの公演を中止(※)し、休演とさせていただきます。(※翌 18 日(金)は休演日です)

 ご来場予定のお客様をはじめ、関係各方面の皆さまに多大なご迷惑をおかけいたしますこと、深くお詫び申し上げます。

19 日(土)からの公演の再開目処、ならびに設備の状況などにつきましては18 日(金)までに改めてお知らせいたします。
 また、中止いたしました公演のご入場券の払い戻し方法につきましては、決定次第、「松竹公式サイト」「歌舞伎美人(かぶきびと)」にて、お知らせいたします。

 重ねてお詫び申し上げますとともに、ご理解を賜りたく、何卒よろしくお願い
申し上げます。

これでも私、「2024年の公演中止のいろいろ」なんてエントリーを書いた人です。今年も公演中止についてはすでに1件書いています。だけど客席椅子の不具合で一時中止とは、珍しすぎます。

昔はここからいろいろ調べたんですけど、今はそんな気分でもないのでメモだけ残しておきます。

2025年3月 1日 (土)

読んだだけで観に行った気になれるブロードウェイ観劇事情

“観劇特化”のNYブロードウェイ旅 習得ノウハウまとめ(2025年2月)」というブログのエントリーが公開されています。4万字は伊達ではありません。ブロードウェイで芝居を観るための情報があれこれ書かれています。読み終わったらお腹いっぱいでもう観てきた気分になれます。観に行きたいけどよくわからない人は必見です。

いくつかある中で、特に目を惹いたのがこちらです。

(1ドル159円換算)
チケット  157608  9本。個別内訳は別表参照。

円安時代だからというのはわかりますが、割引を駆使してあれこれやった上でこの値段です。さすがブロードウェイ、いいお値段しております。

主宰に愛想を尽かして演出家が逃げて公演が中止になるという珍しいケース

2024年の公演中止のいろいろ」などというエントリーを書いた者ですが、また新しい公演中止のケースが1つ増えました。演劇集団アトリエッジという団体の公演中止です。いしだ壱成が出演予定だったということもあったか、記事になっていました。

公式サイトには以下の通りの文章が掲載されています。

【お詫びとお知らせ】
三月に公演を予定しておりました
「PEACE in the Bottle」ですが、
この度、劇団代表である私の劇団員への不適切な指導により、演出の古新舜様が降板されると言う結論を招いてしまい、
関係者の皆様には多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
劇団側で協議を重ねた結果、責任をとって、今作品の公演中止を決定いたしました。
諸々の事務処理は弁護士と相談の上、真摯に対応させて頂きます。
尚、既にチケット等、代金を入金されているお客様への返金は速やかに対応させていただきます。
大変申し訳ありませんでした。

演劇集団アトリエッジ主宰・奈美木映里
制作一同

劇団代表が自分が原因だと明言するのは何かかばうようなことがあったのか、それとも認めざるを得ないくらい明らかに原因だったのか、どちらかと考えていたら、当の演出家本人がXで長文説明していました。申し訳ありませんが全文引用します。

【ご報告:古新舜の舞台『PEACE in the Bottle』演出・監督降板と舞台中止のお知らせ】
こんにちは。古新です。
日頃より温かい応援を賜り、心より感謝いたします。
この度、私、古新舜は舞台『PEACE in the Bottle』の演出・監督を降板することを決断いたしました。
この舞台を愉しみにしてくださっていた皆様には、
このような形でのご報告となることを、心よりお詫び申し上げます。
公演に向けて連日、準備を進めてまいりましたが、
関係者のケアや事実確認、弁護士との協議を重ねた結果、
演出家としての責任を果たすことが難しいと判断しました。
その理由について、簡潔にお伝えいたします。
1. 劇団代表が、劇団員に手を上げる行為を容認できないため:
稽古の一環として、劇団代表が遅刻して来た劇団員に対しての指導行為として、
他の演者の前で手を上げる行為がありました。
たとえ厳しさの一環であったとしても、演劇において暴力が許容されるべきではないと私は考えています。
演劇とは「人と人とが表現を通じて心を伝え合うもの」であり、
その手段として身体的な力が用いられることに強い違和感を覚えました。
私は、すべての出演者が安心して創作に打ち込める環境でなければ、良い作品は生まれないと信じています。
そのため、この環境で演出を続けることはできないと判断しました。
2. 運営体制に問題を感じたため:
商業公演として皆様に作品をお届けする以上、運営の在り方には慎重であるべきと考えています。
しかし、準備や進行の面で改善の必要性を強く感じる点があり、演出に専念できる状況ではありませんでした。
公演を愉しみにしてくださっているお客様に誠実な作品を提供するためには、より良い体制が必要であると判断しました。
3. 主宰者の創作への接し方で疑問を感じたため:
作品を創り上げていく中で、舞台の主宰者との価値観の違いを感じる場面がありました。
舞台は多くの人が関わる共同作業です。信頼関係を築き、互いに尊重し合うことが作品の完成度を高めると考えています。
しかしながら、今回の制作過程において、そのような環境を作ることが難しいと感じました。
演出家として、共に作品を創る方々と良好な関係を築くことができなければ、作品をより良いものにすることはできません。
そのため、この舞台を離れることを決断しました。
このような結果となり、作品を愉しみにしてくださっていた出演者皆様には、
大変申し訳なく思っております。
私自身も、この公演に向けてこの数ヶ月、全身全霊で取り組んできただけに、残念な思いでいっぱいです。
この決断に至るまでのこの三日間、古新は大変苦しみました。
作家として、人間として、さまざまな想いが交錯しました。
ですが、私の次回作が困窮家庭の子どもたちを題材としている上で、
現状、このような状況下で、この舞台を手がけることはけっしてできないという判断に至りました。
最後に、日頃より温かい応援を寄せていただいている全国の皆様に、心より感謝申し上げます。
そして、この舞台にご尽力くださいました出演者、スタッフ、応援者皆様に厚く御礼申し上げます。
このようなことがありましたが、今回の経験を十全に活かして、
来月の「夢AWARD15」のファイナリスト登壇、そして
次回作「ギブ・ミー・マイライフ!」に
全身全霊で臨んでいきたいと考えております。
引き続き、研鑽を重ねてまいりますので、
これからも温かい応援のほど、よろしくお願い申し上げます。
古新 舜拝

午後8:09 ・ 2025年2月28日

公式サイトに載っていた「劇団員への不適切な指導」として、少なくとも「稽古の一環として、劇団代表が遅刻して来た劇団員に対しての指導行為として、他の演者の前で手を上げる行為」があったと断定しています。弁護士とも協議したと書いているくらいですし、演出家から辞退するからには相応の理由がないと演出家自身の将来の仕事に差障ります。だから事実でしょうし、劇団公式サイトも載せざるを得なかったのでしょう。

このツイートの前にもいくつかツイートがあります。「この決断に至るまでのこの三日間」のツイートです。

外の世界を知らないと、自分たちの慣習だけで事業を成り立たせている組織が多々あるが、風の時代は、組織の隠蔽や支配の構図は露呈されていると感じる。起業の前に、経営者免許のようなモラルや理念経営を学ぶことが必須ではないか。ホットハートだけではなくクールマインドが経営者には必要だ。 #コニーのまなざし
午前6:54 ・ 2025年2月26日

 

家庭でも芸能界でも、躾や愛情と称して子どもや俳優に手を出す親や経営者が多々いるが、看過できない。歪んだ支配は、風の時代にはそぐわない。古新も姫も、暴力なしで相手を成長させられると強く説いている。教育とは支配ではない。安心と信頼によって、人格を尊重する環境をしっかり広げたい。 #コニーのまなざし
午前6:38 ・ 2025年2月27日

 

半年間全身全霊をかけて向き合ってきたことが、とある一人の身勝手な営為で全てがパーになった。古新にとって不可抗力ではあるが、関係者が泣いていて心が痛い。日中報告します。物作りは得てして想いばかりが先行するが、運営体制、人間性、倫理観、社会性それらを学ばずして事業は行えない。 #コニーのまなざし
午前6:40 ・ 2025年2月28日

泣いている関係者が誰なのかはわかりませんが、「とある一人の身勝手な営為」と書いてあるので、他にもいろいろあったのを主宰が引っ被ったわけではなく、本当に主宰がひどかったのだと思われます。

となると、手を上げた話が一番目立つ話ですが、それだけにわからない。

まず、演出家が役者を殴るならたまに聞く事件なのですが、今回は演出をしない主宰が手を上げたというのが珍しいところです。

遅刻してきた劇団員を叱るだけでなく殴ったというなら、まだわかります。「時間厳守」「挨拶」「年齢よりも芸歴優先で相手を立てる」のが芸能界の掟で、何しろ色々な人がいる業界ですから、そんな中でも仕事を回していくために最低限かつ必ず守るべきとされたのがその3つの掟だと素人のこちらは理解しています。そこから先は売れている者が正義。

なのですが、稽古の一環として手を上げるというのがさっぱりわからない。殴るのが稽古になるわけがない。それなら虫の居所が悪かったから八つ当たりで殴ったというほうがまだ納得がいきます。検索して見つけましたが、今回の主宰は1957年生まれだそうなので、遅刻したら手を上げられても文句を言えない古き芸能界を生き延びてきた人なのでしょう。去年観た別の芝居のアフタートークで「非常に雰囲気のいい現場」という話が強調されていたので、その裏返しの極端な例が今回なのかなと考えます。

ちなみに有名な話では、芝居の本番に遅刻した阿部サダヲを松尾スズキが殴った話があります。だから稽古でよほど何度も遅刻している前科があるなら主宰に多少同情の余地があるかもしれませんが、それなら降板するのは演出家ではなく役者でしょうから、そういうわけでもないと考えられます。

他の2つの理由も併せて考えると、演出家が仕事を引受けてはみたものの、3番目の「主宰者の創作への接し方で疑問を感じ」ることが何度かあり、それもある程度は致し方なしと進めていた。その過程で演出以外にも公演を手伝わされるような状況になって2番目の「運営体制に問題」を感じることが多々あった。とは言え、逃げるに逃げられないところ、1番目の問題があって、さすがにこれはあかんとケツをまくった、といった経緯ではないかと推測します。

仮に、本当に仮にですが、病気でもないのに手を上げないとわからないような劇団員なら、昔はいざ知らず今なら手を上げるよりクビにするほうが当世流です。暴力は、暴力を受けた本人だけでなく、周りも嫌な雰囲気になって、全体のパフォーマンスが落ちると言われています。

それは反対に言えば、理不尽に一発二発殴る殴られるくらいは当たり前、それよりは一芸で何とか身を立てることを優先したいような人はお呼びではないということです。宮沢章夫が亡くなった2022年に私はこんなエントリーを書きました。

昨今はインターネットが発達したことと世間全般にハラスメントという概念が膾炙したことで、不行跡が伝えられると魅力にダメージが入って謹慎に追込まれるようになりました。が、能力はまた別の話です。場合によっては歪んだ人格が能力や魅力を生みだす面もあります。が、経緯はどうあれ獲得された能力というものはあります。

俗に「作者と作品は別人格」といいますが、これは作品は独立して評価されるべきという話だけではありません。客を呼べるだけの成果を出せる人の人格がまともなわけがないだろうという話も含んでいます。周りにかける迷惑の度合いに濃淡があるだけです。

繰返しますが私は暴力反対です。だからと言ってつまらないものに金を出すつもりもありません。私に限らずたいていの人が同じでしょう。だから昔から世間では、芸能界や出版界は堅気じゃない、まともな人間のつく職業ではないと区別していました。今でもそう考える人は多いでしょう。それは差別と呼ばれるレベルの区別ですが、人格よりも能力や魅力が必要な業界ではそうならざるを得ないからです。

それが最近、堅気と業界との境が曖昧になってきました。またハラスメントのない創作および創作環境の追求を試みる活動も出てきました。宮沢章夫の暴力沙汰からの隠遁は、その過渡期の出来事と言えます。

その活動がどこに落ちつくのか、金を払いたくなるコンテンツが引続き提供されるのかは、芝居なり本なりに金を払ってきた客の一人として興味を持っています。

世間の潮流は、芸能界の行き過ぎた面を正す方向に向かっています。それはそれで一理あって、うっすらと考えていることもあるのですが、本件とは話がずれますのでまずはここまで。

2024年12月29日 (日)

2024年の公演中止のいろいろ

KUNIOの公演中止はすでに書きましたが、今年は他にもいろいろ公演中止があったので、メモしておきます。

その1。これは一部中止のケースですが、2024年2月6日-28日に帝国劇場で上演予定だった「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は初日から3日間4ステージを中止して、さらに予定休日明けの土日である2月10日と11日の2日間3ステージも中止しました。これは発表が初日2日前、さらに商業演劇ど真ん中だったため新聞記事にもなり、海外からも公演を観に来る観客の話を見かけて私も驚いた記憶があります。結局チケット代だけでなく交通費に宿泊費まで負担するという珍しい返金にまでなりました。公式サイトより、初めの公演中止の経緯説明と、公演中止期間延長の説明と、2本立てで。

帝国劇場2月公演
ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』
一部公演中止に関するお詫びとお知らせ

2024年2月6日
東宝株式会社 帝国劇場

 平素より東宝演劇に格別のご愛顧を賜りまして誠にありがとうございます。

 2月4日に、弊社ホームページ及びX(旧ツイッター)において急ぎお知らせ致しましたとおり、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』につきましては、2月6日から8日までの合計4公演を中止させていただきました。この度の公演中止は私ども東宝株式会社の本公演製作における見通しの甘さ、製作体制の不行き届きが招いた結果でございます。ご観劇を楽しみにされていたお客様をはじめすべての関係者の皆様に心より深くお詫び申し上げます。
 また、公演中止のご案内が公演日の直前となった結果、お客様に多大なご迷惑をおかけ致しましたこと、公演中止に関する当初のご説明に至らない点があり、多くのお客様にご心配、ご迷惑をおかけ致しましたことにつきましても、重ねてお詫び申し上げます。

 改めまして、今回の中止に至った経緯と、中止になった公演のチケットをご購入いただいていたお客様への対応についてご説明申し上げます。
 本作品については、弊社製作体制のもと、その複雑な演出プランに対応するための確認作業が想定以上に必要となったことなどから、稽古の進行が予定より遅れておりました。帝国劇場における舞台上での稽古開始後も、ぎりぎりまで、予定通りの初日に向けて一同で力を尽くして参りましたが、さらなる修正・見直し等が発生するなどしたことから、進行の遅れを挽回することができず、協議を重ねた結果、スタッフ・キャストの安全確保の観点からも、初日を延期し、上記4公演を中止せざるを得ないという判断に至りました。

 かかる事態は、全くもってあってはならないことであり、弊社ではその責任を重く受け止めております。

 弊社といたしましては、中止となった上記4公演のチケットをご購入いただいていたお客様に対しましては、チケット代金の払戻しのほか、ご購入時のチケット販売手数料およびシステム利用料、公演中止発表以前にご手配済の交通費および宿泊費のキャンセル料、またはキャンセルが叶わなかったお客様は上記交通費および1公演日につき1泊分の宿泊費を、弊社で負担をさせていただきます。お支払いされた金額の領収書等および中止公演回のチケットをお手元に保管頂きたくお願い申し上げます。
(後略)

 

帝国劇場2月公演
ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』
公演中止期間延長【2月10日~11日】のお知らせ

2024年2月8日
東宝株式会社 帝国劇場

平素より東宝演劇に格別のご愛顧を賜りまして誠にありがとうございます。

ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』につきまして、既にお知らせの通り、2月6日(火)~8日(木)の公演を中止とさせていただきました。

その後、2月10日からの公演実施に向けて一同鋭意舞台稽古に取り組んで参りましたが、スタッフ・キャストの安全確保に努めながらの準備に更なる時間を要し、誠に苦渋の決断ではございますが、2月10日(土)、11日(日)の3公演も中止とさせていただき、2月12日(月・祝)の公演より上演させていただきます。

ご観劇を楽しみにお待ちいただいたお客様に対しては中止期間の延長を誠に申し訳なく存じますとともに、ご案内がご観劇日の直前となりましたことにも衷心よりお詫び申し上げます。

弊社といたしましては、弊社の本公演製作の見通しの甘さ、製作体制の不行き届きにより、お客様に多大なるご迷惑をお掛けしたこの度の事態を重く受け止め、再びこのようなことを引き起こさないようその対策を徹底して参る所存です。

<中止となる公演>

・2月6日(火) 18:00開演の部
・2月7日(水) 18:00開演の部
・2月8日(木) 13:00開演の部
・2月8日(木) 18:00開演の部
・2月10日(土) 13:00開演の部
・2月10日(土) 18:00開演の部【貸切公演】
・2月11日(日) 13:00開演の部

上記公演回の入場券をお持ちのお客様につきましては、チケット代金の他、ご購入時のチケット販売手数料およびシステム利用料、公演中止発表以前にご手配済の交通費および宿泊費のキャンセル料、またはキャンセルが叶わなかったお客様は上記交通費および1公演日につき1泊分の宿泊費を、弊社で負担をさせていただきます。
また、上記公演回の入場券をお持ちのお客様につきましては、本公演の配信を無料視聴いただけるよう検討しております。
実施が決まりましたらご案内させていただきます。
なお、振替公演につきましては、鋭意調整を試みましたが、この度は残念ながら実施することが難しいとの判断に至りました。
本公演を楽しみにお待ちいただいていたお客様にはこのようなご案内となり誠に申し訳ございません。
(後略)

時期としてはその2にKUNIOの件がありましたが、それはすでに書いたので飛ばします。

その3。トリコ・Aは2025年3月14日-16日に座・高円寺で、続いて2025年3月28日-30日までロームシアター京都で上演予定だった「穴」を中止しました(発表はたしか9月10日)。これは資金難と正直に話した珍しいケースです。さらにロームシアター京都の2024年度のラインナップにも並んでいた作品らしく、半年以上前とは言え、そんな理由での中止が珍しくて覚えていました。助成金を申請していたけど通らなかったとかそんな理由でしょうか。公式サイトより。

トリコ・A演劇公演2025『穴』公演中止のお知らせ

平素よりトリコ・Aを応援いただき、誠にありがとうございます。

この度、2025年3月に上演を予定しておりましたトリコ・A演劇公演2025『穴』につきまして、全公演を中止させていただくこととなりました。上演に向けて準備を進めてまいりましたが、資金面での採算の目途が立たないことが大きな理由で、今後もトリコ・Aの活動を継続していくための決断となります。

今後の公演の時期については、改めてお知らせいたします。

楽しみにしてくださっていた皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。

なお、東京公演につきましては、予定しておりました公演に代わりまして、市民の皆様も対象としたワークショップを開催する予定です。こちらの詳細については、後日改めて発表いたします。

何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。


その4。一般社団法人PALは2024年11月1日-3日にアトリエ春風舎で上演予定だった「他人」を中止しました(発表は10月10日付)。直前まで進めていた別の劇場オープンによって力尽きたという珍しいケースです。劇場ホームページに載ったカンパニーからの告知より。

アートボックス卸町オープン記念公演
『他人』公演中止のお知らせとお詫び

既に大勢の方からチケット予約をいただいているアートボックス卸町オープン記念公演『他人』の公演ですが、大変申し訳ありませんが中止とさせていただくこととなりました。
先月より稽古に入り、これまで公演準備を進めてきましたが、私のこの半年間のアートボックス開設に関する作業の疲労が心身共に極致に達し、今月に入ってからは夜間の稽古にまったく集中することが出来ず、実のある稽古になりませんでした。
このままでは出演している俳優たちはもちろん、観客の皆様にも御納得いただける作品を仕上げることは出来ないと判断し、本当に慚愧に堪えませんが公演の中止を決定したしだいです。
東京より秋田に招いた北川莉那さん、この公演に全力で取り組んでいた木村麻子さん、妻である主演の大崎由利子、そしてなによりこの公演に期待を寄せてくださっていた観客の皆様に心より深くお詫び申しあげます。
アートボックス卸町のオープン記念公演第1弾、麿赤兒ソロ舞踏『Alter Ego』は満席のお客様を迎え、感動と興奮の渦の中、無事に終了いたしました。
その直後にこのようなことをお知らせしなければならないのは、本当に心苦しい限りなのですが、何卒ご理解くださいますよう伏してお願い申し上げます。

一般社団法人PAL 芸術監督
『他人』公演演出担当
山川三太

その4。PARCO劇場が自分の劇場で上演した芝居を高解像度で撮影して舞台そのままの映像を同じ劇場で上映する「パルコステージ "8K" フェス」を2024年11月8日-14日で予定していましたが、一挙5作品上映の予定がうち2作品が予定が間にあわずその2本の回は上映中止になりました(11月に入るか入らないかのころに発表)。これは中止になった「海をゆく者」を観ようとしていたので覚えています。公式サイトにちらっと載っています。

『パルコステージ "8K" フェス』上映作品変更のお知らせ

パルコステージ "8K" フェスで上映を予定しておりました5作品のうち、
「海をゆく者」と「オーランド」につきましては、上映のための準備が整わず、やむを得ず今回の上映を見送ることといたしました。
楽しみにお待ちいただいていたお客様へは大変申し訳ございませんが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

東宝の件は、長くやっているだけあってやらかしと思われる公演中止を過去にもやっているため、そちらと関係づけて避難する観客も多かったと記憶しています。ただ他は、1つ1つの理由を見れば、自分が同じ立場ならそう決断したいだろうなとわかる理由ばかりです。ですが、規模は小さいとは言うもののショーマストゴーオンの芸能界の端にいる小劇場ですらこのような理由の中止が目立ってきています。

公演中止自体は以前からあったでしょうが、それは主演の体調不良のような、中止になってもしょうがないと観客から見える理由が多かったです。台風による交通機関の影響が出た場合の公演中止はもう少し前から行なわれるようになりましたが、あれは観に行かないとチケット代が損になると考える客が交通機関の運休に巻き込まれて交通難民や宿泊難民になることを防ぐという面のほうが大きいと理解しています。裏方事情の中止を堂々と公にすることは少なかったです。

2024年は公演中止がいろいろあって、あれが舞台業界のターニングポイントだったと振返りそうな予感がありますから、備忘録として残しておきます。

2024年11月24日 (日)

新国立劇場演劇研修所の21期生募集とコクーンアクターズスタジオの2期生募集

新国立劇場の演劇研修所もそんなに長く続いているのかと驚きました。3年間の本格的な研修所で、入所費用は33000円、年額授業料は242000円と決して安くありませんが、奨学金が2年目から出ますからこの手の研修所では負担は少ない方です。応募締切は年内ですが、その前に「ロミオとジュリエット」の試演会がありますから、応募したい人は雰囲気を確かめてから応募できます。

そしてコクーンアクターズスタジオは1年だけの活動だと考えていましたが、2期生募集の案内を見かけました。1年間の研修で入学金160000円と授業料260000円です。1期生の公演が3月に行なわれますが、応募締切が年内なので、こちらは雰囲気を確かめることができません。が、講師陣の顔ぶれとコメントを読めば何となく伝わります。

研修所としては真逆にあるだろう2つで、3年かけて役者の地力を鍛えようとする新国立劇場は台詞に重きを置いています。コクーンアクターズスタジオは笑いを外せない要素の1つに据えています。新劇出身の芸術監督が多く、そこから所長にスライドする新国立劇場と、松尾スズキが芸術監督と主任を務めるコクーンとでは、それは性格も違うだろうというものです。

ただまあ、どちらの研修所がいいとか悪いとかではなく、1人の人間として物事の捉え方というものがありますよね。結局そこがしっかりしているかどうかが続く役者になれるかどうかの分かれ道ではないかと近頃は考えるようになりました。別の言い方をすると、演出家が務まるような能力も役者には必要ではないかということです。これには脚本の世界をどう捉えてどう立上げるかを考えられる能力という意味と、役者から制作まで集団を考えながら芝居に足並みを揃えられるかどうかという意味とがあります。ちなみに売れるかどうかは実力+色気+運です。

大変な時代ですが、その道を選んで入った人たちにはぜひとも活躍してほしいと願っております。

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