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2020年1月29日 (水)

CG(かもしれない)映画対生舞台

「キャッツ」は長年上演されているのにまだ観に行ったことがありません。ミュージカルと劇団四季と、両方への偏見が理由です。そうしたら映画の「CATS」が公開されて、舞台も観ていないのに映画版を観てたまるか、と思っていたらこちらは不評の嵐。不評すぎてむしろ気になってくるほどです。

で、面白い感想を見つけたので紹介です。なお引用元ブログにはネタばれがあるので気になる人はご注意を。

ただ重要なことは、欧米の人たちはそういうツッコミを「もちろん『CATS』という物語そのものは最高なのだが」という前提のもとにやっているのではないかということである。あの人たちはたぶん、CATSがどういう話なのかを知っている。僕らが「ドラえもん」のストーリーを知っているように。これはいわば日本における鋼の錬金術師やジョジョのような「人気漫画の実写化」の時に起きた現象に近いのではないかと思う。
(中略)
もちろん、跡形もないほどに原作をアレしてしまって、原作を知らない一般人が見てもつまらないというケースはある。でも少なくとも、この映画『CATS』は、舞台の本質的なところ、魂みたいなものはちゃんと受け継いで映画になっていると思う。
(中略)
もっと言えば「CGの普及によって、映画はむしろ舞台にかなわなくなった」という興味深いジレンマも感じた。例えば劇中で猫たちが見事なタップダンスを披露するシーンがある。一糸乱れぬ見事なパフォーマンスで、これを舞台で生で見たなら拍手喝采だろう。ただ映画の観客はもはや不幸なことに「これCGや編集でいくらでも後から綺麗に揃えられるよね」と心の中で思ってしまう。実際にそうである。たとえそのタップダンスが加工なしの本物だとしても、生の舞台で目の前で見たら感動するものに、映画の観客は感動できなくなっている。それがCGという万能の魔法が「万能の代償として感動を奪い去る」という形で映画から奪っていったものなのだろう。まるで良く出来たおとぎ話の苦い結末のように。

観客は作り手のエネルギーに反応するところがあって、その時代の粋を尽くしたものには反応してしまいます。今でも楽しめる昔の映画は、やっぱりある種のエネルギーが詰まっています。技術もそのエネルギーが欲する表現を実現するための手段のはずなのに、それが進化した挙句に「万能の代償として感動を奪い去る」ように作用するのだとしたら、やっぱり皮肉です。

そして見方を変えると、生舞台復権の可能性も考えられます。モノよりコトと言われてはや数年、原則同時には1箇所でしか上演できない、生身の人間が演ずるがゆえに表現にも制限がある、だけど生身の人間が同じ場所で演ずるがゆえのエネルギーや、制限が刺激する想像力が、映画を越えると広く認知される日が来るかもしれません。

ま、適当なんですけど。

2020年1月22日 (水)

2019-2020年冬もインフルエンザで公演中止発生

目に付いたもので今シーズン第一号は神奈川芸術劇場の「アルトゥロ・ウイの興隆」でした。とりあえず1月22日-23日の2日間3ステージで公演中止です。当日券が当日券専用ダイヤルの発売になるほどチケット販売が絶好調だったようで、しかも3時間5分と長丁場の公演で夜に追加公演も難しかったのか、振替公演なしの払戻です。なおこの間も劇場に行けばパンフレットは買えるそうです。どのくらい売れるのか。

2017-2018シーズン2018-2019シーズンのメモもリンクを載せておきます。

2020年1月16日 (木)

消防署の指導で庭劇団ペニノの東京公演が中止

公式サイトより。

先日、一般販売を延期とさせていただいた『蛸入道 忘却ノ儀』のシアタートラムでの公演に関しまして、中止とせざるをえなくなったことをご報告いたします。直前の段階での発表となってしまったこと、大変申し訳ありません。
本公演につきましては、舞台美術に関して世田谷区の消防署からの指導があり、劇場とともに調整を続けておりましたため、一般発売を延期とさせていただいておりましたが、最終的にこちらの希望の条件では上演許可がおりませんでした。苦渋の決断ではありますが、不完全な状態の作品を観客の皆様にお見せすることはできないと判断し、東京公演の中止を決めました。
今作は再演であるため、2018年夏に公演が決まった段階では当然、問題はありませんでした。ただ、そこから時間が経過し状況が変わり、2019年12月の段階で、現状の舞台美術では上演不可という第一報が届きました。そこから交渉を続け様々な代替案の提案を続けましたが、最終的に現状の舞台美術を維持したままでシアタートラムでの上演の許可を得ることはできませんでした。
すでに先行予約をいただいている方々をはじめ、シアタートラムでの公演を楽しみにされていた方々、関係者の方々にはご迷惑をおかけし、大変申し訳ありません。先行予約いただいた皆様には、全額返金いたします。

なお、福岡と三重での公演は予定通り行います。
また近い将来、東京で再演できるように劇場を探していく所存です。

タニノクロウ

「そこから時間が経過し状況が変わり」とは何を指しているのでしょうか。消防法には詳しくありませんが、他の劇場では公演できるようなので消防法改定されたという理由ではないはずです。

検索して見つけたネタばれサイトでは「舞台中央に設置された護摩壇には火が付き、部屋はどんどん暑くなる」とあったので、放火事件があったから本火を使う演出の条件が厳しくなったとか、そういう理由が推測されます。

前回見逃していたから観たかったけれど、残念。

2020年1月14日 (火)

客層把握に特化して参考にしたくなる□字ックのアンケート

芝居ごとにもらうチラシ束のトップにはたいていアンケートが挟まっていて、書いてほしいだろう上演側の心中は察しても書いていません。芝居を観始めたころは頻繁にアンケートに書いていましたけど、感想をWebに投稿するようになり、さらにブログを書くようになってからはチラシは読んでもアンケートは無視していました。

そこから話は進んで、去年観た□字ックの公演「掬う」。私の感想はいまいちでしたけど、家でチラシを読んだときのアンケート用紙が、何か雰囲気が違ってたまたま手に取ったところ、今まで読んだアンケートと明らかに内容が違いました。選択肢は省略して設問だけ以下に載せます。

・□字ックの公演をご覧になったことはありますか?
・本日の公演はいかがでしたか?
・本日の公演を何によってお知りになりましたか。(複数回答可)
・ご来場いただいた理由を教えてください。(複数回答可)
・チケットはどちらで入手されましたか。
・チケット購入から公演までで困ったことはありましたか。(複数回答可)
・性別
・年代
・所属
・本日はどなたとお越しになりましたか。
・何人でお越しになりましたか。
・ご自宅(出発地)から会場まで、どのくらいの時間がかかりましたか。
・1年間で平均どれくらい舞台(公演)をご覧になりますか。
・ご意見、ご感想などをお書きください。(これだけ自由記述)
・□字ックからDMは届いていますか?
・ごんご、公演案内は希望されますか?
・□字ックでは月1回メールマガジンを配信しています。こちらの配信を希望されますか?
・案内を希望される方は書きにご記入ください。(すでに正しく届いている方はお名前のみでも結構です)

ご協力ありがとうございました。
頂いた個人情報につきましては公演案内の発送及び、今後の演目決定の参考など個人を特定できない統計データ目的以外には使用致しません。

よく見かける設問もありますが、見かけない質問が目立ちます。公演情報を知った先を訊くことはあっても、チケットの入手先や困りごとまで訊くことは普通はありません。これは販売施策に関係してくる情報です。同伴者情報は演目決めから座席販売方法まで広く関わりますし、会場までの時間は公演時間や上演時間の決定に関わります。回答者が一般人なのかマニアなのかを判別するために1年間に観る公演数を聞くのもしっかりしています。最後に統計データ目的を記載している抜かりのなさを考えると、ひょっとしてアンケートやマーケティングが本職の人が関わっているかもしれません。何より、芝居の感想を訊く欄がほとんどないのがすごいです。

目的があってこういう情報を集めたいという意識を持ちアンケートが作れる制作者と、それを受けて脚本や演出や上演時間の調整相談に応じられる主催者との関係があってのアンケートだと感じます。□字ックは10周年記念公演でしたが、だてに10年続いていないことがわかります。

このアンケートを読んで、他はどうかとしばらくアンケート用紙を集めていたのですが、他と違っていたのが神奈川芸術劇場です。これは「常陸坊海尊」のときにもらったものです。

問1 本日の公演についてうかがいます。
(1)本日の公演はいかがでしたか?
(2)個の公演をお選びになった理由は何ですか?
(3)本日の公演について、どのようにしてお知りになりましたか?(○をお付けください。複数回答可)
(4)*ご来場に当たり、KAATのホームページをご覧になった方におたずねします。ホームページの情報は、わかりやすいですか。
(5)公演のご感想をお願いします。(これは自由記述)

問2 お客様についてうかがいます。
(1)お客様の性別
(2)お客様の年齢
(3)お客様のお住まい(例:横浜市西区)
(4)芸術劇場への来場回数
(5)本日はどのようにして会場においでになりましたか?
(6)お客様のご職業
(7)お好きな芸術のジャンルはなんですか。(3つまでお選びください)
(8)今後の公演企画、出演者に関するご要望がございましたら、ご自由にお書きください。(これは自由記述)

問3 本日の公演鑑賞の前後についてうかがいます。(複数回答可)
(1)本日の公演鑑賞の前後をどのように過ごされましたか(過ごされますか)
(2)どの地域で過ごされましたか(過ごされますか)
(3)あったら良いと思うホール近隣情報はどのようなものですか。

問4 神奈川芸術劇場の運営や管理についてうかがいます。
(1)施設の運営や管理についての全体的な印象についてお聞かせください。
(2)入場時や場内案内スタッフの対応及び案内の対応は適切でしたか。
(3)芸術劇場の施設、サービス面についてなど、何かお気づきの点がございましたら、お書きください。(これは自由記述)

問5 神奈川県では、文化芸術の魅力で人を引きつけ、地域のにぎわいを作りだす、マグネット・カルチャー、略して「マグカル」の取り組みを推進しています。
(1)「マグカル」という言葉を知っていましたか。
(2)神奈川県の文化芸術情報を発信するポータルサイト「マグカル・ドット・ネット」を知っていますか。

今後、(公財)神奈川芸術文化財団からのご案内をお送りしてもよろしいでしょうか。
よろしければ下欄にご記入ください。

ご記入いただいた個人情報は上記目的以外には使用いたしません。

芝居の感想を訊く設問もそれなりにありますが、ホームページの感想だったり、会場への来場方法だったり、前後の過ごしかただったり、施設やスタッフだったり、芝居以外の設問のほうが多いです。

ただ、記載内容をよく読むと、表記の揺れが目に付きます。劇場のことだけでも「KAAT」「会場」「ホール」「神奈川芸術劇場」「芸術劇場」と5種類です。最初は独自性の高い設問で、客から観た劇場認識を知りたいのかと思いましたが、どうも訊きたい内容がよくばりなだけでなく一貫性がありません。そのつもりで眺めなおすと、異なる部署のアンケート、それも劇場の各部門に加えて、横浜市の関係部署の分まで単純合体させたのではないかと疑われます。

それでも、劇場を借りて上演する劇団ではあまり気にしない内容で、劇場ならではの設問が多いです。特に、東京から時間がかかるため集客に苦戦気味の神奈川芸術劇場としては、来場交通手段を調べたり、観光スポットに近いことを生かして周辺と連携することは、重要な戦略のひとつなので、これは質問を続けてぜひ集客につなげてほしいです。新芸術監督になる長塚圭史が、ここら辺の設問と情報を整備して集客戦略を立てることを期待します。

ちなみに、ホームページのわかりやすさが設問にありますが、神奈川芸術劇場のホームページは、公演ページに上演予定時間や当日券情報を載せるだけでなく、複数会場を持つ劇場の公演カレンダーとしては一番見やすく、公演中止時の情報発表の早さ、丁寧さでも以前から優れた情報掲載をしている点で非常に好感度が高いです。Twitterも実用的な情報を多数載せています。さらにアンケート自体も、劇場でQRコードを配って後でも書けるようなトライアルもしています。この親切さと挑戦精神でよりよい情報提供につなげてほしいです。

他のアンケートについては、劇団公演だと芝居の感想に偏るものが多いのですが、劇場アンケートとしてちょっとひどいなと思ったのは新国立劇場のアンケートです。設問の最初で公演名を客に記載させています。アンケート用紙を演劇、バレエ、オペラで共通にしているためだと推測されますが、アンケートを回収した場所で公演名は自動的に決まるので、こんな余分なアクションを観客に要求したらアンケートの回収率が下がるだろうと他人事ながら心配になります。

さらに、裏面が新国立劇場友の会の申込用紙も兼ねており、劇場で直接申込む場合は劇場インフォメーションカウンターに持込むことになるので、これもアンケートの回収率が下がるのではないかと推測されます(QRコードが印刷されていて、そこから申込みできるようにもなっています)。よく見かけるアンケートのDM送付希望欄みたいなものだと思えなくもないのですが、これはどのくらい効果のあるやり方なのでしょう。本気でアンケート回収と友の会を募集するなら、コピー代が倍になるとしても別々の用紙にしたほうがいいのではないでしょうか。案外機能している可能性も否定できませんが、小川絵梨子を含む芸術監督陣3人も納得のアンケートなのでしょうか。知りたいです。

なお、新国立劇場では設問に「普段、どのような公演をご覧になりますか。○はいくつでもお付けください」とあって、「1 オペラ、2 クラシックコンサート、3 バレエ、4 ダンス、5 ミュージカル、6 演劇、7 伝統芸能(歌舞伎等)」と7項目を挙げているのですが、神奈川芸術劇場だと「お好きな芸術のジャンルはなんですか。(3つまでお選びください)」という設問に「1 演劇、2 ミュージカル、3 能・狂言・文楽・歌舞伎、4 その他伝統芸能/演芸、5 映画/映像、6 ワークショップ、7 講演/講座、8 バレエ、9 現代ダンス、10 その他舞踏全般、11 オーケストラ、12 室内楽、13 声楽、14 オペラ、15 パイプオルガン、16 吹奏楽、17 その他クラシック、18 現代音楽、19 ワールドミュージック、20 ポップス/ジャズ、21 演歌その他、22 絵画/版画/書/写真、23 彫刻/工芸、24 現代美術、25 その他展示、26 その他」と26項目なります。音楽や展示モノまで聞いているのはよいのですが、細分化すればいいってものでもないだろうとは思います。ポップスとジャズが合体するのかと驚きました。横浜だからジャズをやりたい、だけど真面目にアンケートしたら落とされる、という担当者の苦肉の策でしょうか。

もともとアンケートで何を訊くかは難しく、設問の仕方を変えると回答も変わるというやっかいな性質を持っているものです。観客も自分の情報より今観た芝居の感想を伝えたくてアンケートを書く人が一定数いるはずなので、設問を工夫したからと言って期待する情報を書いてもらえるかどうかの保証はありません。それでも制作関係者におかれては、多数の公演のアンケートを参考にしつつ、自分たちが知りたい情報を訊くためにどのようなアンケートがよいのか、再考してみてはいかがでしょうか。客席だけで単体アンケートを取るTriglavのような例もあります。

2019年12月28日 (土)

2020年1月2月のメモ

去年に続いて1月よりも2月に集中気味。正月や成人式で連休が多いと人の移動が多くて芝居の優先度が落ちるから2月のほうがいい、と創る側が考えるようになってきたのでしょうか。

・松竹製作「素襖落」「河内山」2020/01/02-01/26@歌舞伎座:昼の部に吉右衛門の狂言と、以前吉右衛門で観た「河内山」が白鸚で

・松竹製作「連獅子」2020/01/02-01/26@歌舞伎座:こちらは夜の部で11月に続いて猿之助と團子で

・宮﨑企画「つかの間の道」2020/01/08-01/13@こまばアゴラ劇場:チラシとあらすじが気になったのでピックアップ

・劇団晴天「共演者」2020/01/09-01/15@小劇場楽園:これもチラシとあらすじ気になったのでピックアップ

・KERA CROSS「グッドバイ」2020/01/11-01/13@かめありリリオホール、2020/02/04-02/16@シアタークリエ:KERA脚本を他人演出するシリーズ第二弾は初演が小池栄子を筆頭に充実していた1本を生瀬勝久演出で

・劇団青年座「からゆきさん」2020/01/16-01/19@下北沢本多劇場:今年は宮本研が多く上演されるらしいので観たいけど1日1公演が4日だけとか

・ONEOR8「誕生の日」2020/01/18-02/02@日暮里d-倉庫:久しぶりの新作公演に意味深なチラシでピックアップ

・別冊「根本宗子」「Whose playing that "ballerina"?」「超、Maria」2020/01/22-02/02@大スタジオ:前半が再演モノの英語バージョン、後半が新作2人芝居で本人も出演

・渡辺源四郎商店「だけど涙が出ちゃう」「どんとゆけ」2020/01/23-01/26@こまばアゴラ劇場:3日目の昼まで工藤千夏の「だけど涙が出ちゃう」、3日目の夜と4日目が再演で畑澤聖悟の「どんとゆけ」

・トライストーン・エンタテイメント/トライストーン・パブリッシング主催「少女仮面」2020/01/24-02/09@シアタートラム:唐十郎の有名らしい脚本を杉原邦生演出で

・PARCOプロデュース「志の輔らくご」2020/01/24-02/20@PARCO劇場:こけら落としです

・松竹製作「菅原伝授手習鑑」2020/02/02-02/26@歌舞伎座:午前の部を全部使って仁左衛門の菅丞相で、なお文楽でも同時期上演

・松竹製作「羽衣」「人情噺文七元結」2020/02/02-02/26@歌舞伎座:夜の部に玉三郎と勘九郎という不思議な組合せと、菊五郎の文七元結

・カオルノグチ現代演技「セイムタイム・ネクストイヤー」2020/02/05-02/10@下北沢駅前劇場:第一弾が面白くて2回観た野口かおる企画の第二弾は意表をつく翻訳モノに意表をつく明星真由美演出起用で

・青年団「東京ノート・インターナショナルバージョン」「東京ノート」2020/02/06-03/01@吉祥寺シアター:前半が7ヶ国語上演のインターナショナルバージョン、後半が日本バージョン

・国立劇場主催「菅原伝授手習鑑」2020/02/08-02/24@国立劇場小劇場:歌舞伎座に仕掛けて同時期上演

・東宝主催「天保十二年のシェイクスピア」2020/02/08-02/29@日生劇場:パワフルだけど長くてめったに上演されない井上ひさしの初期モノを演出でどこまで持っていけるか

・庭劇団ペニノ「蛸入道 忘却ノ儀」2020/02/15-02/23@シアタートラム:以前見逃したので載せるけど観られるか東京公演は中止になりました

・劇団☆新感線「偽義経冥界歌」2020/02/15-03/24@赤坂ACTシアター:いのうえ歌舞伎は39周年でサンキュー公演だそうです

・新国立劇場主催「社会の柱」2020/02/21-02/26@新国立劇場小劇場:研修所の卒業公演で、前回おもしろかったイプセン脚本宮田慶子演出の組合せ

・劇団た組。「誰にも知られず死ぬ朝」2020/02/22-03/01@さいたま芸術劇場小ホール:謎の豪華キャスト

・世田谷パブリックシアター企画制作「お勢、断行」2020/02/28-03/11@世田谷パブリックシアター:役者は魅力的だけど倉持裕との相性が悪くて前回がいまいちだった記憶があるので迷う

これは観たい、というのが何本かありますけど、落着いて臨みます。雪で公演中止、なんてなりませんように。

<2020年1月6日(月)追記>

2本追加。

<2020年1月16日(木)追記>

庭劇団ペニノが公演中止になったので修正

サブテキストとかコンテクストの例に使えそうな書き殴り

少し前にバズっていた「'89 牧瀬里穂のJR東海クリスマスエクスプレスのCMが良すぎて書き殴ってしまった」。推理小説を読まされているような勢いで、長いですが長さを感じさせません。まずは読んでみてください。

これは実際に出来上がった映像を見ながら、なぜヒロインがそういう行動を取ったのか、を解読していく経緯を書いた文章です。CMの台本がどこまで細かく書かれているかは知りませんが、カレンダー(らしきもの)は単に見栄えがいいからと選ばれただけかもしれませんし、撮影していたら場所が名古屋駅なのは自明でしょう。

でも「なぜギリギリだったのか」の理由まではさすがに脚本には書かれていないと思います。そんな脚本を撮影前の立場で渡されて、書かれた通りに演じるとの、ここまで背景を想像して演じるのとでは、おそらく仕上がりに差が出る。映像よりも舞台のほうがより差が出るはず。この想像がサブテキスト。

「なぜ柱の陰に隠れたのか」「このバンダナが牧瀬里穂のことをほとんど探していないという点」に対して「待ち合わせではなかった」「30年前のこの時代は、スマホどころか、携帯電話すらも一般的には使用されていない。ほとんどの待ち合わせが固定電話などで事前に行われていた。つまり、5分の遅れは致命傷だった」という背景を合意するのがコンテクスト。

なお新幹線、ひいてはこのCMを

ここで重要なのは、JR東海の広告戦略が「新幹線を人と人との物語」に狙いを絞った点であろう。やろうと思えば、その速さを売りにすることもできたし、ビジネス的な利点を前面に出すこともできた。しかし、そこで「遠距離恋愛のシンデレラ」に絞った点が興味深い。

これはこのCMを手掛けた電通の三浦武彦氏の著書『クリスマス・エクスプレスの頃』にもこう記述がある。

「新幹線は(人と人が出会う、町と町を結ぶ)コミュニケーションメディアである」

単なる移動手段ではなく、コミュニケーション手段として意識した意義は大きい。

とコミュニケーションに狙いを絞るところは脚本家や演出家の着眼点。

そしてこの文章を牧瀬里穂の誕生日に合せて公開するのが制作者のサービス精神。

だと思うんですけど、あっていますかね。

宝塚も上演できるBrillia HALLを主導した池袋区長のインタビュー

2回に分けてインタビューが載っています(前編後編)。最初に劇場(Brillia HALL)の計画を聞いたときに「このご時勢に箱物行政とかさすが東京23区」とうっかり考えていたのですが、そんな余裕もないところから盛返して、劇場も前から計画していたことがわかります。後編の劇場関係のところだけ引用しておきますが、経営者と呼ばれる区長の取組がいろいろ面白いので気になる方はご一読を。

高野:当初、劇場は4トントラック2台分の楽屋口で設計していました。これだけでも、通常以上に余裕を持たせた設計です。

 しかしタカラヅカの舞台はご存じの通り、豪華絢爛さが売り物です。例えば舞台装置を搬入するには、11トントラックが2台入る楽屋口が必要になります。同時に大勢の出演者が使える楽屋、その出演者たちが衣装を着けた状態で行き来できる広い廊下なども求められました。宝塚歌劇団とのお話し合いの中で、先方からの要求事項を数えてみたら、実に75項目にも上りました。

- かぐや姫も真っ青ですね。

高野:東京建物Brillia HALLは新時代の劇場として、客席は「見切り席」(舞台の一部が見えない席)ナシで行くことを最初に決めていましたので、要求事項を一つかなえるたびに図面を引き直してと、調整は大変でした。それでも私が決断して、宝塚歌劇団からのご要望はすべて実現しました。

- おお。

高野:その都度、設計図を描き換えていくのは、現場にとっても大変な作業でしたが、タカラヅカの舞台に対応するハードにすることで、歌舞伎、バレエ、ミュージカルと、すべてのパフォーミングアーツに、高いクオリティーで対応できるホールになります。そのことで、ライバルとなる他の劇場への優位性ができます。ホールは今、3年先まで予約が埋まっています。

- 一昔前は行政が手がけるホールは、ハコを造って中身が埋まらないものの典型だったのに。担当者の数が足りない、お金が足りないということは起こらなかったんですか。

高野:いや、起こりましたよ。

- それで、どうされたんですか。

高野:議会でもがんがん質問されましたけど、職員には「3人でやるところを1人でできるようなプロになれ」と言いました。要するに、自分たちでどこまでやり切るかが大事なんです。おかげでホールの担当技術者は、どこへ行ってもホールを造れるようになった。それぐらい勉強しました。

- ホールの内覧会に行ったとき、職員の皆さんがずらっと並んで、お辞儀をしながら来場者をお見送りしていた様子も印象的でした。ここは老舗旅館か、と思わされるくらいで。

高野:ですから人材育成にしても、ホールの稼働にしても、いろいろな意味で採算性はちゃんと成立しているんです。このホールはおかげさまで「東京建物」の企業協賛もいただき、池袋東口の新しい顔となりました。

75項目はどこかに載っているんでしょうか。大劇場建築の参考になるので残しておいてもらえるときっと嬉しい人たちがいる。

2019年12月11日 (水)

観たいものから観る方針

ナウシカの歌舞伎化なんて攻めすぎ、と思っていたら菊之助が怪我して12/8の夜の回が休演になりました。午前の部の終盤で花道から落ちてひじの骨にひびが入ったと。吉右衛門に続いて娘婿まで不運かと思いきや、次の日から復帰していました。日刊スポーツより。

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」(25日まで、東京・新橋演舞場)の8日昼の部で左ひじの一部を亀裂骨折し、同日夜の部を休演した尾上菊之助(42)は9日、舞台復帰した。

主人公ナウシカを演じる菊之助は、トリウマという2足歩行の大型鳥類のキャラクターから転落し負傷したが、9日は昼夜とも予定通り出演した。昼の部の登場場面では、菊之助は観客の大きな拍手に迎えられた。立ち回りや宙乗りをなくすなど、一部演出を変更したが、菊之助からのコメントやせりふ変更は特になかった。

構想5年の新作歌舞伎で代役も難しかろうし、3日で流せないと根性の出演続行です。

それと並行して、公演期間中に降板になってしまったのが村井國夫です。公式が後で消えそうなのでステージナタリーより。

村井國夫が劇団桟敷童子「獣唄」を降板することが発表された。

これは、村井が軽度の心筋梗塞と診断されたことによるもの。12月3日から東京・すみだパークスタジオ倉にて上演中の劇団桟敷童子「獣唄」は、8日から10日の3ステージを休演し、11日からは配役を変更して上演を再開する。村井の代役は、原口健太郎が担当。公演は12月15日まで。

筆頭クレジットだったので演技に気合が入りすぎたのかもしれませんが、心臓はよくない。年齢も75歳と恒例なのでこれは大事をとるのもしょうがない。養生して復活してほしい。

かと思ったら同じ演出家が演出する来月公演の芝居で三田和代の降板が発表された。これもステージナタリーより。

こまつ座「イヌの仇討」に出演予定だった三田和代が体調不良のため降板し、代役を西山水木が務めることが発表された。

チケットの払い戻しについては、こまつ座の公式サイトで確認を。本作は、井上ひさしが独自の視点で「忠臣蔵」を見つめ直した“忠臣蔵異聞”。2017年に同作を演出した劇団桟敷童子・東憲司により、今回再び上演される。出演者には西山のほか、2017年版にも出演した大谷亮介、彩吹真央、植本純米、石原由宇、大手忍、尾身美詞らが名を連ねている。公演は1月17日から19日まで神奈川・横浜市泉区民文化センター テアトルフォンテ ホールにて。

あまり書くのも失礼だけど御歳77歳で村井國夫より年上。こちらは症状が書かれていないだけ心配度が高い。こちらも養生して復活してほしい。

別に舞台に限らないけど、生ものなだけにどうしてもこういう心配が起きる。しかも台風とか自然現象でも公演中止が起こりうる。何なら自分が体調不良で家で寝ている破目になる。

だから芝居が2本あって、片方がとても観たい場合。とても観たいほうを来週で調整すれば両方観られるような場合でも、とても観たいほうから観て、もう片方は見送るなんてこともある。当日券メインのスタイル、かつ本数をある程度観るようになったが故の悩みと言ってはなんだけど、やっぱり全部は観られない。

なんてことを考えさせられた直後にこんな記事が出るわけです。ステージナタリーより。

「『勝手に演劇大賞2019』第10回記念スペシャルトークイベント」が本日12月8日に東京都内で行われ、中井美穂と徳永京子、そしてゲストのいのうえひでのりと早霧せいなが登壇した。
(中略)
「今年は60から80本観劇できた」と言ういのうえ
(中略)
早霧は、今年観た約10本の中から
(中略)
11月末の時点で300演目を観たと明かし、会場をどよめかせた徳永
(中略)
中井は今年は200本程度の観劇に収まったと言い

中井美穂はたまに芝居のアフタートークで司会をやっていて、どういう縁で呼ばれているのだろうと思っていたけど、何のことはない、見物ジャンキーでした。「収まった」と言っているのでもっと多い年もあるのでしょう。

300本越えはもう評論家とか、言葉通り「観るのが仕事」の人たちの世界ですけど、世の中にはこんな伝説がある。観客発信メディアWL「【鼎談】ハードコア・シアターゴアーの世界」より。2017年3月の記事なので「去年」が2016年を表します。

WL:今日来て頂いた3人の年間観劇数は合計すると1000本を超えています。1000本というのは、千本ノックとか千人針とか『千夜一夜物語』とか、普通は象徴的な数字で「たくさん」の記号的表現なのですね。それがこの3人の1000本は象徴ではなく、実数で1000本です。今回の鼎談を通して、年間300本を超える観劇をしている観客だからこそ見える演劇の風景を語って頂きたいと思います。まず1年間の観劇本数をお聞きしたいのですが?

じべ:去年が360本、2015年が408、14年が379本。2012年には604本見ました。これはちょっとどうかしてましたね(笑)。

WL:年間で604本ですか! これは観劇の金字塔と言える数字ですね。

りいちろ:私はかわいいものですよ、確か去年は326本だったかな。

うめ:私は1日1本超えの366本ということでWLで公表しています。ホントはもうちょっと多いかも。

WL:なるほど3人で1000本、確かに超えていますね。

じべ:ちなみにこれはのべ本数で、同じ作品を3回見た時は3回とカウントしています。

うめ:細かいことなのですが、どう数えるかというのもちょっと問題なんですよね。

じべ:私の数え方は、例えば2つの劇団が2つの演目を一緒にやる、でも公演としては2本立てで3000円だよ、というのなら、1本としています。

WL:つまり劇場の入口に入って、出てくるまでで1本という考えかたですね。そのなかで何本の作品が上演されようと。

じべ:かつてニフティサーブに小劇場好きが集まるフォーラムがありまして、そこで出た説で年間観劇数が200本を超えるとダメ人間というのがありました。

WL:なぜ200本なのですか?

じべ:200本の根拠は、平日に1本も芝居を見なくても、土日祝日にマチ・ソワ(1)で観劇すれば200本ぐらいは見られるわけですね。あるいは逆に、土日祝日は芝居を見なくても、平日の夜、会社帰りに1本見て帰ると年間200本ぐらいは見られる。となると年間200本を超えるようになるともうダメ人間だね、というのがゴアー(2)のあいだでほぼ定説になっていたんですよ。

WL:なるほど、それは説得力がありますね。年間200本だったら芝居から離れて真人間に戻る日が確保できるわけですね。

じべ:そうそう別の趣味が入り込む余地があるわけですよ。

りいちろ:(ここで割り込んで)昔はそうだったんですよね、昔は。(一同・爆笑)

WL:なんですか、昔はというのは?(笑)

りいちろ:だってほら、今は平日多少見なくても、土日の3本回しというのがけっこう可能じゃないですか。作る方もだんだん考えてくれてきていて、朝昼晩というのができるようになっているんですよ。11時、3時、6時とか。そうすると200本ダメ人間というのは昔の話で、今は別に?。

じべ:待って、待って。一日3本見るというのがそもそも変なの(笑)。その時点でもうダメ人間だよ。(一同・爆笑)

WL:真人間との臨界点である年間200本を超えたシアターゴアーは都内でどれくらいいるのでしょうか?

りいちろ:週に複数回劇場で会ってしまうみたいな感じで、確実に200本は超えていると思われる人が10人はいます。

じべ:よく見かけるけれど話はしたことはない人を含めるともっと多いですね。10人どころではないですね。

うめ:演劇をなりわいにしていない方で200本以上見られるかたは、おそらく30人ぐらいはいらっしゃると思います。

りいちろ:でもそれはあくまで私たちが見ている範囲での話ですから。小劇場ではなく、大きな劇場ばかりで見られている方もいるはずですし。ミュージカルや歌舞伎を年間200本とか。あるいはダンスばかりを集中的に見られている方とか。

じべ:われわれ3人の見ているのは小劇場が中心ですが、それでも重ならない部分がありますし。

りいちろ:3人で年間1000本超えといっても、われわれは東京の演劇シーンのごく一部をカバーしているに過ぎません。

604本とかもはや都市伝説の領域なので、50本越えてみたかったとか言っている自分の小ささを思い知らされる。こういう世界があるのを知ると、観る順番とか全部は観られないとか考えること自体が馬鹿馬鹿しくなる。

趣味ではあるけど義務ではなし、やっぱり観たい順番に観ればいい。

2019年11月 8日 (金)

北村明子の直球インタビュー

北村明子といえばこんな人ですが、林真理子が北村明子にインタビューしたAERA dot.の記事を見つけました。この分量に読みどころが詰まっているのがすごいので、前半と後半の見所をご紹介。まずは前半。

林:たとえば吉田鋼太郎さんみたいに、シェイクスピアの舞台をやっていた方がNHKの朝ドラに出てすごい人気者になりましたけど、ああいうコースもできあがっていて、それと同時に、映像育ちの人気者も舞台をやりたがりますよね。

北村:それは甘いんですけどね。もちろん映像育ちでうまい人もいますけど、映像で「うまい」って言われるのは編集の美学なんですよ。だってネコでも私たちを泣かすでしょ(笑)。ネコはただ「ニャン」と鳴いてるだけなのに、編集すれば「あー、可哀想に」って思うでしょ。極端に言えば、ものすごくヘタクソな役者でも、編集でうまく見せることができるんです。でも、舞台の上に立たされて「何かやれ」と言われたら、歩くこともできないでしょう。

林:できないと思います。

北村:それが舞台なんですよ。映像ですごい人気者になったから「舞台で主役でお願いします」みたいなことを言われても、「ちょっとカンベンして」って話よね。時間をかけて、ノーギャラででもやるという意欲を持って舞台に入ってくる若い子がいたら素晴らしいんだけど、そうじゃない。映像で人気者になって、「僕も舞台をやりたい」って事務所に言って、マネジャーが売り込みに来るところたくさんありますけど、私は主役じゃ使いたくないから、「一から始めるんだから、このへんの役でもいいですか?」って言うんです。「いや、それはちょっと」と言って出ない人が多いですよ。舞台をやったこともないし、実力もないのに、なんで主役にしなきゃならないんですか。

次は後半。

北村:つまんないときは、私は寝ないで出ますね。途中で。

林:北村さんが途中で出ていったらコワ~い(笑)。

北村:前にうちの高橋克実の劇団の公演を見に行って、それが桟敷席なんですよ。でも、あまりにもおもしろくないから、15分ぐらいたって、まだ克実は出てないのに席を立ったんです。そしたら「おまえのところの社長、帰ったぞ。おまえが出る前に」って劇団員がソデで大騒ぎしてたらしい(笑)。

林:そりゃあショックだったと思いますよ。

北村:でも、見るのが耐えられない。出たほうが正直でしょ?

キレッキレですね。なお嬉しい情報を見つけたので最後にこれもご紹介。

北村:そんなことないですよ。来年の春にチェーホフの最後の作品「桜の園」をやるんですけど、杉咲花ちゃんに初舞台で出てもらうんです。もちろん主役じゃないですよ。事務所の人が「杉咲を舞台デビューさせたいので、何かありましたら」って来たんです。彼女うまいから、このへんだったらできると思って「この役どうですか」って言ったら、「ぜんぜん大丈夫です」って。それを言えるマネジャーは偉いんですよ。

これはKERAとのチェーホフ四大悲劇企画の最後の1本ですね。期待しています。

ちなみに写真ではおっとり見えますが、シス・カンパニーの公演で劇場で見かけたときはもっと現役バリバリな印象を受けました。いやバリバリってこともないんですが、背筋の伸びが違う。物理的に。人があふれるロビーでも見た瞬間に、あ、この人がこの場所の責任者だ、とわかります。シス・カンパニーの公演を観に行く人はロビーできょろきょろしてみてください。

2019年11月 7日 (木)

キャスティングが大変な世界の演劇事情

主役の渡辺直美を全面に出して宣伝が始まったミュージカルの「ヘアスプレー」ですが、脚本家のメッセージがなかなか考えさせられます。

観客の皆様へ

 『ヘアスプレー』のクリエイターである私たちが、高校やコミュニティシアターにこの作品の上演許可を出すようになったころ、黒人である登場人物をアフリカ系アメリカ人以外が演じるためメイクアップを行うことをめぐり、一部の人から質問を受けました。

 世界中のすべてのコミュニティが『ヘアスプレー』の脚本通りにキャスティングができるような、見事にバランスのとれた民族構成にはなっていない(駄洒落で失礼します)ことは理解していますが、当然ながら出演者の顔に色を塗ることなど(たとえそれが敬意をもって、控えめに行われるものだとしても)許可できませんでした。というのも、やはりそれは結局のところブラックフェイス(黒塗りメイク)の一種であり、いうまでもなく本作品が反対の立場を取っている、アメリカの人種にまつわる歴史の一ページだからです。

 また、肌の色を理由として、俳優がある役を演じる機会を否定することは、たとえそれが “ポリティカリーコレクト(政治的に公平・公正)”であるとしても、それ自体が人種差別になることにも気づきました。

 ですから、本日(注1)ご覧になる『ヘアスプレー』の公演に(エドナ役を代々、男性が演じてきたように)本人の肌の色とは異なる役を演じている出演者がいるとしても、 “不信の一時的停止”(注2)という、いつの世も変わらぬ演劇的概念にのっとり、出演者の人種的な背景(あるいはジェンダー)を見るのではなくストーリーを味わっていただきたいと考えています。そもそもこのミュージカルのテーマは、物事を外見では判断しないことなのですから! 演出やキャストが優れていれば(そうであることを期待しています!)、そういったメッセージは明確に伝わるでしょう。そして観客の皆様には、楽しみながらそのメッセージを受け取っていただけましたら幸いです。

 感謝をこめて。

マーク、スコット、マーク、トム&ジョン

*注1:本メッセージは観劇当日に読んでいただく事を想定して書かれています。
*注2:小説や演劇等における虚構の世界を真実として受け入れること。

野木萌葱が芝居の当日パンフに「赤毛芝居」が好きだ、とを書いていました。昔、西洋の芝居が日本に入ってきたばかりのころに、カツラや付け鼻をつけて西洋の役を演じた芝居のことです。爾来100年以上、それを疑うような芝居がついに日本の商業演劇でも上演されるようになりました。

なお人種ではなく格差に関する似たような似ていないような話はこちら

より以前の記事一覧