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2026年9月 8日 (火)

東宝とチケットぴあの座席ごとのダイナミックプライシング実験

「ミス・サイゴン」のチケット売行きがどんなものか、下調べのつもりで覗いてみたのですが、キャストの出ている日はほとんど売切れていました。ミュージカルに疎い自分としては、人気の演目に人気者を呼んでいるのだなと感心していたところ、面白い発売を見つけました。ダイナミックプライシングです。結構気合が入っています。どのくらい気合が入っているかというとこのくらいです。

・2026年で11月7日(土)13時と11月13日(金)13時の2日分を充てている。これは期末期初および年末のノイズを避けて、近い日程で週末と平日の差を調べようとしている模様。ちなみにどちらも昼公演で揃えているところもその一環のはず。あとはキャストとスタッフが安定してきた公演半ばということもあるかもしれない。

・両公演ともぴあ貸切公演。協力しているチケットぴあに恩恵を渡しつつ、チケット販売経路が複数になることによるノイズを減らしている。

・何度も上演して定評ある演目を選んでいる。そもそも満席の見込めない公演では値下げはあっても値上げはできないし、初公演か再演かで客足も変わるので、それを避けている。

・メインキャストがまったく同じになっている。ここは主催側が調整した何よりの証拠で、一番気合の見えるところ。

で、これだけ揃えて何を実験しているのかと言えば、座席の人気です。以前ハリー・ポッター公演について「座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例」というエントリーを書きましたが、この時で7区分でした。それが今回は3倍以上、驚きの25区分です。通常日程だとS席、A席、B席の3区分だけで、かつS席は1階と2階すべて、3階の正面後ろ2列がB席、3階の残りがサイド含めてA席という大雑把な分け方なので、それと比べたらものすごく細かいです。

ちなみに席種は、ブロックA、B、C、D、E、F上手、F下手、G上手、G下手、H上手、H下手、I上手、I下手、J、K、L上手、L下手、M上手、M下手、N、O、P上手、P下手、Q上手、Q下手です。ややこしい。

どのブロックがどの座席かというのが書かれたサイトが見つからないのですが、大雑把にAからIまでが1階、JからMまでが2階、N以降が3階みたいです。アルファベットの早い方が舞台寄りです。上手下手表記のないAからEとJ、K、N、Oが中央で、これがセンターブロックを含むのはたしかなのですが、両サイドの中央寄りの席も含んでいる模様です。あと、1階中央通路は無視されています。それで部隊最前列中央を中心に同心円とまでは言いませんが、上手下手境界はやや斜めに境目が設けられているらしく、同じアルファベットの上手下手ならおそらく左右対称です。

会場の東急シアターオーブで数回観劇経験のある観客として、わかる範囲でざっと確かめた印象では、1階後方や2、3階サイドの区分にやや雑なところが見受けられるものの、おおよそ納得のいく境界線が引かれている気配です。通路を挟んで安くなるならそっちがお得、みたいな席はなさそうです。お前らやっぱり主催者なだけあって詳しいよなと突っ込みたくなります。それでも実験するのは何故かというと、繰返しになりますが、価格ですね。

舞台との距離なり、見え方なりについて、どの席がどのくらい良席なのかは主催者側も把握している。人気の公演に人気者を起用した場合、熱烈なファンは非正規の経路で定価以上の大枚を払ってでも観ようとすることも、転売撲滅に力を入れる主催者として知っている。物価の値上がりの著しい昨今、それならいっそ初めから公式で値上げして販売したい。だけど全席をやみくもに値上げしてしまうと今現在のファンだけを相手にした商売になってしまい、将来の観客が育たない。だから座席を細かく区切って、座席ごとの「価値」を探り、今の大雑把な座席区分をもっと精緻に組めるようにしたい。固定価格にすると値段を外したときに売れないし、実際にはいくらなら売れたのかまでわからないからダイナミックプライシングで探りたい。言葉にすればこんな狙いではないかと推察します。

あとはチケットぴあ側も、おそらく今後増えていくであろうダイナミックプライシングの運用経験を積めるでしょう。それと、少なくとも今はチケットの値段に関わらず固定手数料なので、売れ残って戻すよりは値下げしてでも売れてくれる方がありがたいはずです。そういう運用ができれば、主催者側から販売先として選んでもらうための武器にもなるでしょうし。

なおどの座席がいくらかまでは面倒なので書きません。ただし、S席、A席、B席が、通常公演平日だと18000円、12000円、6000円、土日祝日千秋楽が1000円上乗せであるのに対し、2か月前の現在だとほとんどの座席がそれよりも高い、安くても数百円で設定されているとはメモしておきます。

他に若干のメモを残すと、残席で現在一番高い席が土曜昼のブロックBで58000円、通常日程の定価の3倍です。ブロックAがこれよりも安い31400円で売切れているので、出だしの値段設定を間違えて値上げする間もなく売切れて、慌てて残ったブロックBを値上げしたのかもしれません。金曜昼の公演はブロックAが32200円で売切れて、ブロックBは27700円で二重丸に対して、ブロックCが31200円で三角です。あと両日とも(他の日程もそうですが)3階席は売行き好調です。

ここまでの結果だけなら、高い金を払ってでもかぶり付きのブロックAで観たい観客は曜日を問わず一定数いる、その手の観客は土日祝日の方が多い、ただし若干引いて全景を見られるブロックCの方を好む客も確実にいてそれは平日の方が多い、あと安い料金を真っ先に選ぶ客も確実にいる、そんな感じでしょうか。

一観客である自分の立場を述べるならば、ダイナミックプライシングが導入されると、前売でチケットが買いづらくなります。定価スタートで値下がり限定で導入されるならまだしも、値上がりもあるのがダイナミックプライシングなので、迷いに迷うことは確実です。

ただし売る側の悩みもわからないわけではなく、つい最近、売行きの悪さにおまけ付きなのに大割引したチケットを売出した事例を見かけたばかりです。自分は買っていない公演だったので無傷で済みましたが、あそこまで初期前売購入客を馬鹿にするような値引きをばらまくくらいなら、ダイナミックプライシングで売られていたほうがまだ納得いったとも思います。

そういう悩みはダイナミックプライシングが主流になった時点でまた考えますが、この実験の結果は今後の公演でも参考にされるはずなので、商業芝居をよく観る人は将来影響あるかもしれませんね。

<2026年10月18日(日)追記>

座席の話とダイナミックプライシングの説明が載っているページを見つけました。演目の公式サイトでなく、ぴあの専用ページでした。座席表も載っています。ぴあで直接演目を検索しても表示されず、公式サイトに載っている専用ページから飛ぶと表示されるので見落していました。

<東急シアターオーブ/ぴあ貸切公演 ダイナミックプライシング適用販売のお知らせ>
■販売開始日:7月7日(火) 11:00~

東急シアターオーブ
・11月7日(土)13:00開演公演
・11月13日(金)13:00開演公演 はぴあ貸切公演となります。
ダイナミックプライシング導入に際して

本公演では、主催者の意向により、チケット価格が購入するタイミングによって変動する「ダイナミックプライシング(価格変動制)」を導入いたします。
本販売は、過去の実績や席種・席位置などのデータをもとに需要予測を行い、ダイナミックプラス株式会社の独自価格算出技術およびチケットぴあのシステムを東宝が活用して実施するものです。
なお、価格の変動に伴うチケット代金の増減分は、販売システムを提供する「チケットぴあ」の利益になるものではなく、すべて主催者に帰属いたします。

価格は、販売状況などの要因をAI(人工知能)が分析し、主催者の設定基準に基づき不定期に変更されます(※1日に2回以上の変更は行いません。また、販売期間中に変更が行われない場合もございます)。

【注意事項】
ご購入後に価格が変動した場合でも、差額の請求や返金は一切ございません。
販売状況などの要因を分析し設定するため、初期価格より低い価格設定となる場合もあれば、初期価格より高い価格設定となる場合もございます。必ず購入画面に表示される現在の価格をご確認のうえ、お手続きください。

1日に2回以上の変更は行なわない、というのはたしかにその方がありがたいですね。座席表を眺めた感じでは、F席の中央通路後ろ中央寄り、H席の前方中央寄りが数少ないラッキーチケットっぽいです。L席とP席の2階3階サイドは演目に見切れの多寡と、観客の好み次第でラッキーチケットになる可能性あり。1階と2階の後方はもう少し細かく区切ってもよさそう。個人的にはD席が一番です。

ラッキーチケットなる言葉は今思いついたもので、安い割に高い席と対して見え方が変わらない席の意味で使いましたが、総じてまだ通路に囚われた席種割をしているように見えるので、チケットシステムの設定上許されるのであれば5割増しくらいに席種を区切ってようやくラッキーチケットがなくなるくらいと見受けられました。

2026年8月30日 (日)

ナイロン100℃の公演を一部中止にするくらいKERAが体調不良

手短に。公式サイト「ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演 9月5日(土)~9月9日(水)公演 中止のお知らせ」より。

ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演につきまして、
作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチの体調不良により、誠に勝手ながら下記公演を中止とさせていただきます。

<中止公演>
・9月5日(土)18時30分公演
・9月6日(日) 18時30分公演
・9月8日(火) 18時30分公演
・9月9日(水)13時00分・18時30分公演

8月下旬、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が身体の違和感により、念の為と医療機関を受診したところ循環器の疾患との診断・カテーテル手術を受け、稽古及び公演準備を一時中断せざるを得ない状況となりました。幸いにも早期発見によりKERAの症状は軽症及び術後の経過も良好であり、現在は自宅療養の上体調の回復に努めております。

現在上演に向けてできる限りの準備を進めておりますが、残された準備期間や稽古の進捗状況等を総合的に判断した結果、予定通りの上演は困難であると判断し、誠に残念ではございますが、一部公演を中止させていただきます。ご観劇を楽しみにお待ち頂いておりましたお客様には多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしますこと、深くお詫び申し上げます。

該当チケットの払い戻しにつきましては、後日キューブHP(https://www.cubeinc.co.jp/)にてご案内いたします。払い戻し対応の際にチケットが必要となりますので、お手元にて保管くださいますようお願い申し上げます。

9月10日(木)18時30分公演以降の公演につきましては、9月4日(金)を目処に改めてご案内いたします。

最新情報はキューブHP及びナイロン100℃公式X(@NYLON100C_info)にて随時お知らせいたします。
重ねてお詫び申し上げるとともに、何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

株式会社キューブ

ここまで中止にするくらいだからプライベートな話とは言え理由についてもはっきり書かざるを得なかったのでしょう。循環器でカテーテルなら心臓でしょうか。経過良好なのは何よりです。

以前、ケムリ研究室の公演では「舞台機構に発生した予期せぬ深刻なトラブル」で公演中止になったことはありましたが、あれは世田谷パブリックシアターの劇場都合です(メモしておいたつもりが見つからず)。今回の公演がどうなるか、すでにチケットを買っている人は公式サイトを要確認です。

<2026年9月4日(金)追記>

続報が出ていました。中止ステージが増えています。旧告知を上書きする形で発表されているのでURLは省略します。

ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演
9月5日(土)~9月12日(土)公演中止のお知らせ・払い戻しのご案内

2026年9月4日

ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演につきまして、
先日、作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチの体調不良により、9月5日(土)~9月9日(水)5公演の中止を発表いたしましたが、開幕の準備にさらに時間を要しており、誠に勝手ながら下記4公演を追加で中止とさせていただきます。

<中止公演>
・9月 5日(土)18時30分公演(発表済み)
・9月 6日(日)18時30分公演(発表済み)
・9月 8日(火)18時30分公演(発表済み)
・9月 9日(水)13時00分・18時30分公演(発表済み)
・9月10日(木)18時30分公演
・9月11日(金)13時00分公演
・9月12日(土)13時00分・18時30分公演

ご観劇を楽しみにお待ち頂いておりましたお客様にさらなるご迷惑とご心配をお掛けいたしますこと、深くお詫び申し上げます。

9月5日(土)~12日(土)公演の払い戻しにつきましてはキューブHPにてご案内いたします。
該当公演のチケットをお持ちのお客様は下記より詳細をご確認いただき、お手数ですがお手続きをお願い致します。
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/nylon50th

9月13日(日)13時公演以降の公演につきましては、9月8日(火)を目処に改めてご案内いたします。
度々お待たせする形となり大変申し訳ございません。

最新情報はキューブHP及びナイロン100℃公式X(@NYLON100C_info)にて随時お知らせいたします。
重ねてお詫び申し上げるとともに、何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

株式会社キューブ

9月13日の日曜日のステージまで中止すれば、翌月曜日は元々休演日なのでまとまった時間が取れるはずなのですが、保留になっています。費用もさることながら、日曜日1ステージをプレビュー公演的に扱えるものなら扱いたいのかもと外野は予想するのですが、真意は不明です。さらなる続報を待ちましょう。

<2026年9月8日(火)追記>

続報が出ていました。開幕日決定です。やはり同じURLで上書きして公開されているのでURL掲載は省略で。

ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演
9月13日13時公演中止 及び 9月15日(火)18時30分公演より開幕決定・追加席販売のお知らせ
2026年9月8日

ナイロン100℃ 50th SESSION『管理人ご夫妻』東京公演につきまして、
先日、作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチの体調不良により、9月5日(土)~9月12日(土)9公演の中止を発表いたしましたが、開幕の準備に時間を要し誠に勝手ながら9月13日(日)13時公演を中止、9月15日(火)18時30分公演にて東京公演を開幕いたします。

1日でも早い開幕を目指し調整を重ねましたが、さらに中止のご案内となりますこと及び発表が直前となりましたことをお詫び申し上げます。13日(日)13時公演を含む中止10公演のチケットの払い戻し方法につきましては、キューブHPにてご案内いたします。該当公演のチケットをお持ちのお客様は詳細をご確認いただき、大変お手数ですがお手続きをお願い致します。

<中止公演>
・9月5日(土)~12日(土)の全9公演(発表済み)
・9月13日(日)13時00分公演

払い戻しのご案内 https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/nylon50th
※13日(日)13時00分公演の払い戻し受付は9月9日(水)より順次開始いたします。

中止に伴う追加公演の実施はございません。
ご観劇予定でしたお客様に代替の公演をご用意できないことを深くお詫び申し上げます。
なお、出来うる限り多くの皆様にご観劇いただけるよう以下のご用意をいたします。

・前売券追加販売
美術プラン確定に伴う東京公演本席の追加販売を【9月11日10時~】チケットぴあにて実施いたします。
チケットぴあ販売ページ:  https://w.pia.jp/t/nylon50th/

・当日引換券
開演3時間前までご購入いただける当日引換券の販売準備を進めております。整い次第ご案内致します。

・当日券
毎公演若干枚数ではございますが当日券を開演1時間前より劇場前受付にて販売いたします。
当日券情報につきましては随時ナイロン100℃公式X(@NYLON100C_info)をご確認ください。

また、より多くのお客様にご鑑賞頂けるよう配信の実施も調整しております。
詳細は決定次第、キューブHPにてお知らせいたします。

この度の公演中止により、公演を楽しみにお待ちくださっていたお客様に、多大なるご迷惑とご心配をお掛けしましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。
開幕に向け、カンパニー一同準備を進めておりますので、何卒ご理解を賜りますよう
よろしくお願い申し上げます。

株式会社キューブ

結局日曜日の公演も中止にして時間を確保の上で開幕日決定となりました。とりあえずKERAは無事っぽいですね。よかったです。

<20206年9月16日(水)追記>

初日が無事に開いたようで、KERAのコメントがステージナタリーに載っていました。

このコメントは13日、ゲネプロを終え、ひとまずホッとした状態で記している。明日一日オフを挟んで、いよいよ明後日15日、予定より10日遅れの初日を迎える。
湿っぽいコメントにしたくなくて困っているのだ。
「管理人ご夫妻」は私が入院と自宅療養のため、8月21日以降稽古に参加できず、通常の分量の台本を書き上げる余力もなく、病院に入った夜は正直途方に暮れ、今こうして書こうとしているコメントが湿っぽくなるのは避けられないような状況だった。
それでも私はなんとかこのコメントを湿っぽくしたくない。
一度は前半(第一幕)のみの上演も考えたものの、観た人はさぞかし煮え切らない気分になるだろう。なんとかして作品として完結させる手立てはないかと模索しながら、劇団員、客演の皆さん、全スタッフ、関係者の皆さん、さらには猫を含む私の家族の尽力によって仕上げられた「管理人ご夫妻」。尽力を強いてしまうことになった元凶であるところの私としては、ひたすら感謝しかなく、そりゃもう湿っぽいコメントになるのも仕方ないが、どうしても湿っぽいコメントにしたくないのは、出来上がった作品が湿っぽくなんかないからだ。
いつもよりずっと、私以外の創作力が集結して、こんな舞台が出来上がった。なかなか、こんなことはないと思う。あってもほしくないが。劇団史に残る珍作があなたを劇場で、配信で、お待ちしている。
最後に、私のために中止になった東京公演10公演をご観劇予定だったお客様に深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

このコメントから察せられることはいろいろあります。

まず、当初9月5日が初日の公演について、8月21日から稽古に参加できない状態になって、脚本がまだ完成していなかった、しかも二幕のかなり中途半端なところまでしか完成していなかったっぽい。これについては同じステージナタリーに今回の公演にあたってのKERAのインタビューが載っていて、それも裏付けです。

──今回は映像を使わない予定だそうですね。

はい、もうしばらく使わないつもりです。“大オープニング”と身内で呼んでいる、冒頭マッピングを使ったステージングは、どうしてもあるパターンに陥ってしまうし、しばらく映像から離れてみてお客さんがどう感じるのかも見てみたいなと思って。また僕のような台本の進行状況だと映像は本当にギリギリの作業になって、僕自身もですがスタッフもみんなもストレスが大きかったので、しばらく離れてみようかなと。

ほぼ毎回、ギリギリにならないと脚本が仕上がらないっぽいです。私自身、夏休みの宿題をギリギリに仕上げていた人で、それはこの歳になっても仕事や暮らしのあちこちに残ってしまっているのであまり他人のことは言えないのですが、1か月を超えてツアーもあるような公演もしょっちゅうなのに、毎回それで進めていたのはもう、関係者一同の狂気の賜物としか思えません。

もっとも、先日はもっと小さな規模の公演ですがやはり脚本家兼演出家の体調不良で公演前半を中止にした出来事があったばかりです。他にも昔、松尾スズキが自分の本の中で、半分くらい書いておいて稽古に臨んで残りは役者の顔を見ながら書くことが好き(大意)というほどのことを書いていました。小劇場だと脚本未完で稽古に突入することはよくあることなのでしょう。それが許されるかどうかは、自分の劇団かどうか、そしてそれまでの公演実績で関係者を納得させられるかどうかに掛かっているということです。

他にも、制作陣のタイムスケジュールもなかなかです。入院が8月21日で、初日延期が表に出たのは8月30日です。普通ならこの間、KERAの回復を願いつつ、前半のみを上演する案と、何ステージか潰してでもフル上演完成に漕ぎつける案の両方を、公演中止の損失計算や手続確認と並行して行なうところです。ただし先に発表されている内容から、KERAの具合は順調だったので、おそらくフル上演完成に早い段階で舵を切っていたのではないかと思われます。

その上で、完成の目途が立ったのが2回目の発表、9月4日でしょう。この時点では9月13日はやはりプレビュー公演にしたかったのだと思われますが、ゲネプロになりました。一昔前なら上演していたと思うのですが、近頃この手のスケジュールは無理をしませんよね。あるいはこのゲネプロも実はギリギリだったのかもしれません。

「いつもよりずっと、私以外の創作力が集結して、こんな舞台が出来上がった」というコメントも味わい深いです。これまでのKERA芝居、他人の脚本を演出していたこともありましたが、そこを除けば上演のかなりの部分にKERA1人のセンスを貫徹させていたことが伺えます。

もちろん、実力と実績と人気を備えていないと誰も付いてきてくれないのですが、大勢で作るのに今時そういうことが通る分野ってあまりないですよね。芝居でもドラマツルギーとかいろいろな肩書で演出の一部を肩代わりするような公演が増えてきているのに。おそらくこれが、日本の小劇場で後から後から挑戦者が湧いてくる理由の1つではないでしょうか。創作性が商業性を上回れる分野というか、スポンサー主の意向よりも現場の意向が強く出せる分野は、芸能界の中でもかなり珍しい気がします。

あとは「猫を含む私の家族」。緒川たまきですね。昨今はこういう時にストレートに妻に感謝すると書くことが多く、あれはあれで悪くないのですが、洋書に載っている献辞の影響ではないか、和風っぽさは駆逐されたかなと考えていたのですが、こういう遠回しで照れが隠れているような表現は、個人的には好きです。

2026年8月 4日 (火)

脚本の執筆遅延という王道の公演中止理由と上演形態を変更しての上演

王道もへったくれもないのですが、そんな話を見かけました。「終のすみか」という団体の上演ですが、タイトルが「it's too late.」という演目なのがまた狙った訳でもあるまいに、というぴったり具合です。

前提知識として、2026年7月18日から7月31日まで、2度の休演日(22日と28日)を挟んでの公演予定でした。ステージナタリー「終のすみか『it's too late.』脚本遅延のため、本日7月19日から23日まで公演中止」より。

終のすみか「it's too late.」の本日7月19日から23日までの公演が、脚本の執筆遅延のため中止されることが発表された。

本作は当初、昨日18日に初日を迎える予定だったが、脚本の執筆遅延のため、初日公演の中止が発表されていた。制作部より本日新たに発表された書面によると、協議の結果、本日19日から23日までの5公演についても中止が決定した。なお、24日以降の公演については実施される予定。中止となった公演の予約者には、振替などの案内が個別に届く。

初日の時点では初日のみ中止、その後で23日まで中止決定となっており、割とドタバタしていた様子が伺われます。

ここからは公式サイトの引用です。発表日が入っていませんので発表時期は不明です。URLがあとで変更になりそうですので注意。

説明は2段階に分かれていて、まず初めのお詫びから。

【7月18日(土)~7月23日(木)の公演中止のお知らせとお詫び】

平素より終のすみかを応援いただき、誠にありがとうございます。

7月18日(土)より上演を予定しておりました『it's too late.』につきまして、脚本の執筆遅延により、7月18日(土)~7月23日(木)の5公演を中止とさせていただくことを決定いたしました。

公演を心待ちにしてくださっていた皆さま、公演に関わってくださった皆さまには、再度このような判断をお伝えすることとなりましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
7月24日(金)以降の公演は、実施予定でございます。ご予約の振替等については個別にご連絡を差し上げます。また、7月24日(金)以降の公演をご予約のお客様につきまして、キャンセルをご希望の場合は、下記お問い合わせ先までご連絡ください。

重ねまして、このたびは7月18日(土)から7月23日(木)までの公演中止につきまして、心より深くお詫び申し上げます。
再度このような判断をお伝えする結果となってしまい、誠に申し訳ございません。何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

終のすみか 制作部

この時点で脚本遅延は公表しています。終わった後で読んでみれば、1週間で幕を開ける見込みを立てて延期したというよりは、とりあえず見通しを立てるために1週間確保したということだったのでしょう。

そして2回目のお詫びです。

【7月24日(金)~7月31日(金)公演についてのお知らせとお詫び】

平素より終のすみかを応援してくださり、誠にありがとうございます。

7月18日(土)より上演を予定しておりました『it's too late.』につきまして、脚本の執筆遅延により、7月18日(土)から7月23日(木)までの公演を中止とさせていただくことを決定し、皆さまにお知らせいたしました。
このたびの判断により、公演を心待ちにしてくださっていた皆さま、公演に関わってくださった皆さまには、ご心配とご迷惑をおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます。

延期後も作品の完成を目指して創作を続けてまいりましたが、先日よりお知らせしておりますとおり、脚本の執筆は現在も完了しておりません。
そのため、当初予定していた内容で作品をお届けすることは困難であると判断し、上演形態を変更して実施することといたしました。これに伴い、上演内容の再構成および最終調整の期間とするため、誠に勝手ながら7月24日(金)~27日(月)の公演は中止とし、7月29日(水)~31日(金)の3公演を実施いたします。
また、7月29日(水)~31日(金)の上演につきましては、上演内容の変更を踏まえ、チケット料金は無料とし、恐れ入りますがドリンク代のみご負担いただきます。

創作に参加する全員が健康で創作を続けられることを第一に考えながら、団体内での協議を重ねるとともに、関係者の皆さまへのご説明や話し合いを続けてまいりました。また、公演を支えてくださった出演者・スタッフ・関係者の皆さまには、最後まで多大なるご尽力をいただきました。

その結果、現在の『it's too late.』を、現時点でお届けできるかたちで上演するという判断に至りました。

ご予約いただいていたお客様には、上演内容の変更について個別にご案内申し上げます。内容をご確認いただいたうえで、ご来場をご判断ください。当公演は当日精算のみでの販売のため、キャンセル料等は一切発生いたしません。

また、新たにご観劇をご希望の方につきましては、末尾記載のメールアドレスまでお問い合わせください。上演内容の変更についてご説明したうえで、ご予約をご検討いただければ幸いです。恐れ入りますが、ご予約につきましては現時点でのご予約者様や振替希望者様を優先させていただきます。

初日延期という判断をしながら、結果として当初予定していた作品を完全な形でお届けすることができず、ご来場を予定し、お時間を空けてくださっていた皆さまのご期待に沿うことができませんでしたことを、深くお詫び申し上げます。

今回上演する『it's too late.』は、多くの関係者の皆さまのご協力によって実現するものですが、作品に関する責任は終のすみかが負い、最後まで創作に向き合ってまいります。

皆さまには重ねて心よりお詫び申し上げます。ご理解を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

終のすみか 制作部

ここで「創作に参加する全員が健康で創作を続けられることを第一に考えながら、団体内での協議を重ねるとともに、関係者の皆さまへのご説明や話し合いを続けてまいりました」という説明が出てきました。スランプで脚本未完になった結果追詰められたのか、健康その他の理由で脚本未完になったのかは不明ですが、脚本家兼演出家が割とテンパっていたのでしょう。

それでも上演は目指しています。座組を見ると役者4人が全員客演なので、さすがに全ステージ中止は勘弁してほしいと考えてもおかしくありません。

こうして当初より縮小されましたが、3日間3ステージの上演に漕ぎつけたようです。公式Xにポストがありました。

最終日を迎えました。

ご来場いただいたみなさま、ご予約いただいた皆さま、関係者の皆さま、誠にありがとうございました。
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tsui no sumika
12:46 ・ 2026年7月31日

公演本番を何とか中止させない作り話なら「ショウ・マスト・ゴー・オン」がありますし、主催の不調を基にした半自伝の物語「シャープさんフラットさん」もありますが、具体的に何があったかは外野からは想像するだけです。

舞台は上演しないことには始まらないので、関係各位のトラブル対応スキルと人間の器は育ったことでしょう。何はともあれ上演出来てよかったですね、という話でした。

2026年5月31日 (日)

1950年代で楽しんだ2026年の1日

昨日の昼に観た「エンドゲーム」は初演が1957年、夜に観た「十二人の怒れる男」は舞台版初演が1955年(オリジナルテレビドラマは1954年)。この2本重なったのは予定と体調と相談しての偶然ですが、両方とも初演が1950年代です。どちらも古典と呼ばれて今に残る傑作ですが、それが現代でも楽しめました。

ギリシャ悲劇だって今でも上演されるのだから、1950年代なんて芝居の世界ではついこの前だと言われればその通りです。ただ「十二人の怒れる男」を上演したCEDARは主宰が演出家で、脚本は名作の上演が方針らしいです。そういうことが出来るくらい優れた芝居の脚本も世の中にはたくさんあります。観る方はありがたいですが、脚本を書く方は大変ですね。過去の名作を押しのけて上演を勝ち取らないといけませんから。

似たような話は音楽でも聞いたことがあります。レコードやCDなど物理メディアとその購入(レンタル)費用に縛られている間は新作優勢だったのが、サブスクが解禁されるとその縛りがなくなって、過去の名作、名演奏と真っ向勝負して聴き手の時間を勝ち取らないといけない。

個人的にはサブスク全盛になったおかげでむしろ音楽からは縁遠くなりました。膨大すぎるので、丹精込めて作られたパッケージを少数選んで、繰返し聞く方が性に合っていました。映画もそうですね。結果、サブスクやっていません。

芝居は生身の人間がやるものですから、まずこれが完全にネットワークで配信できるようになるためにどのくらいの技術の進歩が必要か。それに役者と観客の、その日その日の具合で笑い所も泣き所も変わって、そのセッションが芝居の拠り所というか最後の砦というか。NTLiveとかよくできていますけど、あれは客席の反応も入っているのが良し悪しです。ないと困るのはわかりましたが、あったらあったで反応も生ものですから、初見のときはいいとして繰返し観る時に同じ反応というのも困ります。

何が言いたいのかよくわかりませんが、久しぶりの暇ネタでした。

2026年2月24日 (火)

駅前劇場とOFF・OFFシアターも改修でしばらく休館

こちらはビルの改修に伴うもので5か月です。公式サイトより。

駅前劇場/OFF・OFFシアター

TAROビル改修工事に伴う休館について

この度、当劇場が入居しているTAROビルの改修工事に伴い、下記の期間について、駅前劇場、OFF・OFFシアター共に休館とさせていただきます。
劇場をご利用いただいている団体様、劇場へお越しいただいているお客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます

休館期間
2026年3月2日(月)~7月31日(金)

何でもメンテナンスは必要なのでしょうがない。ここでしっかりメンテナンスを済ませて安心して観られるようになってほしいです。

世田谷パブリックシアターが改装で一時休館

1年以上前に発表されていたのにすっかり見落としていました。公式サイトより。

2024年11月15日

世田谷パブリックシアター(主劇場)一時休館のお知らせ

世田谷パブリックシアター(主劇場)は天井および舞台設備等の改修工事のため以下のとおり休館いたします。
ご利用の皆様には大変ご不便をおかけいたしますが、ご理解いただきますようお願い申し上げます。

【休館期間】令和8年4月1日~令和9年3月31日(予定)

【対象施設】世田谷パブリックシアター

※シアタートラムは通常通り営業いたします。
※休館明けの劇場使用申込みの受付時期につきましてはあらためてお知らせいたします。

ここで休館期間が明けて2027年4月1日となると、ちょうど芸術監督の交代期になります。なるほど、それに合せて必要な改修は済ませておこうということと思われます。

そして野田秀樹。東京芸術劇場の芸術監督は3月いっぱいで終わりますし、今年の野田地図は4月に幕を開けて海外公演を挟んで8月に終わります。何となく来年の野田地図公演も4月から始めるとちょうど収まりがよさそうですね。改修後のオープニングを新芸術監督就任記念として自作で飾るとか、ありそうですね。次期芸術監督、誰になるでしょうか。答え合せはおそらく今年の12月。

国内芝居「お梅は呪いたい」の上演延期の話

小説原作の舞台化が上演延期になりました、という話です。公式サイト「舞台『お梅は呪いたい』上演に関するお知らせ」より。日付はファイル名の通り、2026年1月23日発表です。

このたび、2026年2月に上演を予定しておりました舞台『お梅は呪いたい』につきまして、関係各所・出演者・スタッフと慎重に協議を重ねた結果、誠に残念ではございますが、公演を延期させていただく判断に至りました。

お客様に安心して作品をお楽しみいただくため、また関係者が十分な環境のもとで作品づくりに向き合えるよう、
主催・制作側として整えるべき準備と体制を見直す必要があると判断し、今回の決断に至りました。

本公演にご尽力くださっている藤崎先生、祥伝社の皆様、スタッフ・出演者・マネージメント各社、劇場関係者の皆様、
そして、なにより、クラウドファンディングを通じて応援してくださった皆様、
すでにチケットをお買い求めいただいている皆様、
本作にお心を寄せてくださったすべての皆様に、
多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます。

延期後の公演時期、出演者等の詳細につきましては、改めて準備が整い次第、公式に発表させていただきます。
なお、チケットの払い戻しやクラウドファンディングに関する対応につきましては、下記よりご確認ください。
(中略)
本来であれば、このような判断に至らぬよう進めるべきところ、主催・制作側の至らなさにより、
多くの皆様にご迷惑をおかけする結果となりましたことを、重ねて深くお詫び申し上げます。
何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

舞台『お梅は呪いたい』製作委員会

「主催・制作側として整えるべき準備と体制を見直す必要があると判断し、今回の決断に至りました」と書いているくらいなので主催・制作側に責任があるのでしょうが、それならどのような判断があったのか。それは普通、表に出る話ではないのでわかりません。ただ、主催・制作がどこなのかというと、「『お梅は呪いたい』製作委員会」とだけあって具体的な体制がさっぱりわかりません。

この製作委員会という体制は映画やアニメでよく見かけますが、私の中途半端な知識によれば、作る側にかなりの責任がかかり、金を出すのは製作委員会ですが損をしても出した金以上の損は払わず、儲けは製作委員会側が大半を取って、出来上がった製作物の権利も製作委員会が持って行くという、あまり評判のよくない体制という偏見があります。もちろん金を出すのは大事ですし、作り手がどのように関わるかの実際は契約次第でしょうし、宣伝や運営も製作委員会側が持ちます。

ただ、この芝居はクラウドファンディングで費用を集めているのですよね。300万円目標に対して1回目が不発で、2回目がほぼ95%で、合せるとほぼ100%まで集めています。別にクラウドファンドで資金を集めていけないことはありませんし、実際に上演に際してクラウドファンドで費用を集めている芝居を見かけたこともありますが、製作委員会の体制にはあまり馴染まないものです。ちなみに集まった金額に関わらず払われるAll-in形式ですが、返金は2月いっぱいまで受付けており、冒頭のお知らせの中略部分にURLがあります。

支援金の使い道には以下が挙げられていました。

設備費
人件費
広報/宣伝費
リターン仕入れ費
人形をはじめとする小道具製作費、英語字幕製作費などを含む公演制作費
※目標金額を超えた場合はプロジェクトの運営費に充てさせていただきます。

実際、今時の物価で300万円では上演費用には足りないことは、一度真面目に計算したことがあるのではっきりしています。しかもクラウドファンドなら手数料も2割くらい持って行かれます。だからチケットを買ってくれるお客様探しの面が大きいと思います。

これがやらかし上等で費用を集めていたのかというと、そうとも言い切れません。というのも、上演台本と演出に松村武を、主演に高田聖子を呼んでいるからです。別にこの2人と個人的な接点は皆無なのですが、少なくとも詐欺の片棒を担ぐような人たちとは思えません。

ここであらためてクラウドファンドのリターンを見てみます。原作者のアフタートークが入っているくらいなので、それなりに信用できる体制で進める予定だったはずです。

3,000円 公演パンフレット+非売品手ぬぐい
5,000円 稽古場見学参加権利+公演パンフレット+非売品手ぬぐい
15,000円 バックステージツアー+公演チケット+稽古場見学参加権利+公演パンフレット+非売品手ぬぐい
30,000円 藤崎翔さんも参加の特別アフタートーク参加券+特別アフタートーク回公演チケット
+バックステージツアー+公演チケット+稽古場見学参加権利+公演パンフレット+非売品手ぬぐい
100,000円 クレジット入り 非売品カンパニーウェア+公演パンフレットにクレジットを記載※映像化されるの際にはエンドロールにもクレジットを記載+全部セット(30,000円リターンと同様の内容)

そこでもう一度「主催・制作側として整えるべき準備と体制を見直す必要があると判断し、今回の決断に至りました」に戻ります。

本当に当てずっぽうの予断でしかないのですが、原作者が元芸人ということで、原作者に近い芸能関係者で、かつ舞台業界に詳しくない人がいたとします。舞台化したら面白そうとノリで始めて周りに声をかけたら、それなりに人が見つかったので上演しようと製作に入ります。ところが舞台を1本作るにも様々な苦労があり、次々と出てくる問題を解決するにはそれなりに各分野に通じていないといけません。しかも勢いで借りた劇場がまだ新しいキャパ508席の飛行船シアター(東京)で10日間13ステージと、346席の西文化小劇場(愛知)で2日間2ステージ、もちろん仕込みは別。赤字を出さないためにチケット代を13800円で設定してみたものの、お前は「ハリー・ポッター」と勝負するのかという値段では客入りが覚束ないのは想像に難くありません。あれこれやってみたものの、このまま進むと赤字で死ぬとギブアップした。そんな物語が浮かびました。

当てずっぽうは当てずっぽうでしかないのですが、延期と言い丈、このまま中止になっても驚きません。そんな舞台の上演計画があった、という話です。

海外ミュージカル「バーレスク」の上演中止

1月に発表されて、続報があるかと待っているうちに書きそびれた話です。公式サイト「ミュージカル『バーレスク』公演中止のお知らせ」より。日付が入っていませんがたしか2026年1月9日発表で、上演予定が2026年5月から8月まで東京大阪福岡でした。

 弊社梅田芸術劇場では、ミュージカル『バーレスク』日本版公演の上演権を取得し、実現に向けて入念に制作における準備を進めてまいりました。しかしながら、誠に遺憾ではございますが、本公演の実施を断念せざるを得ない状況となりました。

 本公演を心待ちにしてくださっていたお客様には、このようなご報告となりましたこと、心より深くお詫び申し上げます。あわせて、公演の実現に向けてご尽力いただきました日本キャストならびにスタッフの皆様に対しましても、多大なるご迷惑をお掛けいたしましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

 このたびの事態を重く受け止め、今後はこれまで以上に真摯に舞台制作に取り組み、皆様に信頼していただける舞台エンタテインメントをお届けできるよう、誠心誠意努めてまいります。

 何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。

 株式会社梅田芸術劇場

補足でステージナタリーから記事を拾っておきます。

本作は2010年に公開された、クリスティーナ・アギレラ主演のミュージカル映画「バーレスク」をもとにしたミュージカル。ミュージカル版は昨年7月から9月にかけてイギリス・ロンドンのウエストエンドで上演され、映画版の脚本・監督も務めたスティーヴン・アンティンが脚本、歌手・ラッパー・振付家のトドリック・ホールが演出を担当。またエグゼクティブプロデューサーとして、アギレラもクレジットされている。日本キャスト版では、元宝塚歌劇団星組トップスターの礼真琴がアリ役を務めることが発表されていた。

理由については推測するしかないのですが、たっぷり吹っ掛けられていた上演料を為替の手当てをせずに後日決裁としていたら、円安で限界を突破して、違約金を払ったとしても中止にしたほうがまし、と判断するくらいに追込まれたのではないかと想像します。

というのも、1月に発表になったということは、その前に1か月くらいはかけて関係者にごめんなさい行脚をしていたはずです。ということは中止の決定をしたのはさらにその前の10月か11月。そのころちょうど為替が一本調子で円安になったころで、ドルでもポンドでも傾向は同じ。商業芝居は上演準備が約3年とどこかで読んだことがありますけど、2023年の円高なときと比べるとドルで2割、ポンドで3割も為替が変わっています。

海外公演の上演料が国際的なドル決済なのか、現地通貨としてポンド決裁なのかはわかりませんが、これだけ変わったら算盤も弾き直さないといけません。

推測は推測でしかありませんが、なぜこのように推測したかというと、役者の責任なら意地でも代役を探してきたでしょうし、何より今回の中止の発表文章からあまり責任が感じられなかったのですよね。やらかしたのではなく、不可抗力な状況に負けたからしょうがないという雰囲気を読取りました。円安も物価の値上がりの理由1つだと全国的に膾炙しているところなので関係者も諦めがついたというべきか。本来は為替も商売のリスクの1つなので、本当に為替が理由ならやらかしたことには変わりないのですが。

ともかく、中止になったミュージカルの上演計画があった、という話です。

2026年1月26日 (月)

松本白鸚休演のまま終わった1月歌舞伎

これ、復帰したときにまとめてブログに書こうと待っていたのですが、公式にアナウンスがなかったのでどうも復帰しなかったっぽいです。「歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』松本白鸚 休演のお詫びと配役変更のお知らせ」より。

 平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」夜の部(※Aプロ)『女殺油地獄』の小栗錦左衛門に出演の松本白鸚ですが、体調不良のため、1月6日(火)(※Aプロ)の公演を休演しました。本日1月8日(木)以降について、Aプロ、Bプロともに、下記にて上演いたします。

 なにとぞご諒承を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 松竹株式会社

▼

■歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」
【夜の部】 ※Aプロ、Bプロ
 『女殺油地獄』

 小栗錦左衛門   中村 東蔵

2026/01/08

1月2日にAプロで開演のあと、4日に出て、6日から交代して、そのままお終いです。自分も観ましたが、小栗錦左衛門は登場1場面だけの役だったはずだから、せめて千秋楽くらいは復活するのではないかと期待していました。なのに休演続きということは相当に体調が悪かったのだと思われます。

古典歌舞伎だとその前は去年9月の「菅原伝授手習鑑 夜の部(Aプロ)」に出ていて、この時も1場面だけでしたけど藤原時平をいかにも悪人らしくやってくれていました。その後に11月の「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)」に出て、これは半分耄碌した大物役者という扱いだったのでよぼよぼに見えるところが演技か体調かわからない、でも楽屋の場面でセリで出てまったく動かないで引っ込む役を三谷幸喜が当ててきたのでひょっとして体調悪いのかも、と考えるような出番でした。2か月間隔で出演なら次の3月公演ですが、そちらにはクレジットされていません。元気になってほしいです。

2025年12月29日 (月)

劇中劇の芝居を本当に上演して撮影するNetflixの宮藤官九郎脚本ドラマ

ややこしいのでまずは制作会社っぽいところのサイトより。

[NEWS] 大人計画×Netflix「俺のこと、なんか言ってた?」 宮藤官九郎作・演出の舞台が、 宮藤官九郎オリジナル脚本のNetflixシリーズとコラボ!! 下北沢ザ・スズナリにて上演決定!!

この度、2026年1月28日(水)~2月1日(日)、ザ・スズナリにて、劇団ウイスキーボンボン第7回公演『誰も知らない大物俳優』の上演が決定いたしました!

本作品は、宮藤官九郎が完全オリジナルの脚本を手掛けるNetflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」(2026年/Netflixにて世界独占配信)の劇中公演です。主演は、まさに“誰も知らない大物俳優”田中卓。共演は、無頼タケルノミコト、二萬田久子。その内容が事前に明かされることは無く、秘密裏に上演されるこの舞台は、ご観劇いただくお客様も内容や感想を一切劇場外に漏らしてはならない極秘プロジェクトです。お客様もこのプロジェクトの一員として秘密を共有することになります!口外不可でよろしくお願いします!!そして乞うご期待!!!

作・演出:宮藤官九郎コメント

これは僕の作品であって僕の作品ではない、駆け出しの劇作家が書いたテイの劇中劇です。
主演は役所広司に見えるけど役所広司ではないテイの男、田中卓。
共演の2人もおそらく誰かなのでしょうが、誰も知らないテイでご覧下さい。

2026年配信予定のNetflixのドラマが宮藤官九郎の脚本であり、その撮影中である。ドラマの中で劇中劇があるが、それを実際に公演をやって撮影する。そのドラマの主人公が役所広司で、ドラマ中に出てくる劇団名が「劇団ウイスキーボンボン」である。ということまでまずはわかりました。

次。大人計画の公式サイトに、ドラマ中の設定に則りつつもギリギリそうでないメタな公演サイトが載っています。宮藤官九郎が脚本演出を行なう3人芝居である。公演期間は水木金の前半3日間と日曜日に分かれている。水木金は有料で販売する。そのうち金曜日は公演収録日である。ここまでは普通です。チケット料金が13000円ですけど、宮藤官九郎の脚本演出で、3人の役者のうち少なくとも1人は役所広司ですから、まあ妥当でしょう。お土産付きらしいですが、ドラマの販促グッズか何かでしょうか。

そして日曜日は抽選ですが完全無料の回。システム利用料は負担するようですが495円ならただみたいなものです(チケットぴあでの申込にクレジットカード必須となっています)。代わりにドラマのエキストラとしても撮影に参加してもらうことが条件です。

〇特別無料招待券

2月1日(日)13:00公演は、事前抽選にお申し込みいただき、当選されたお客様のみご覧いただける特別無料招待公演です!
客席内にカメラが入り本番を全編収録すると共に、終演後にドラマ収録を行います。
ご観劇のお客様には終演後のドラマ収録もエキストラとしてご参加いただきます。
(中略)
【料金】
招待のため無料
※ただし、当選時にはぴあシステム利用料330円+チケット発行料165円をお客様にご負担いただきます。

いろいろ条件も書いてありますが、そのチケットの抽選と販売を管理するチケットぴあのサイトの方が若干詳しいみたいなので申込ボタンからそちらを見てみましょう。

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演 特別無料招待券受付
注意事項-必ずご確認ください

※本受付は、「チケットぴあ」の販売方法とは異なる特別受付となります。チケットぴあサイトでご利用いただけるサービスは適用されませんので、ご了承ください。

※本受付は、引取方法「購入後あとから選ぶ」をご選択いただきます。ご当選・お支払い後に、チケットぴあ「Myチケット」ページにて発券場所をお選びください。ご登録の氏名/電話番号がぴあ会員登録情報と一致しない場合、お申し込みができません。予めご注意ください。

受付/結果発表日程

● 受付期間
2025年12月25日(木) 10:00 ~ 2026年01月08日(木) 23:59

● 結果発表
2026年01月16日(金) 18:00頃(予定)
結果発表後は早急に、申込状況照会はこちらより、当落結果をご確認ください。

● 結果確認方法

※申込状況照会には、受付完了画面にて表示される『申込受付番号』/お申し込み時にご登録の『申込状況照会用パスワード』が必要です。
※サポート情報として、当落結果通知メールを上記の結果発表日時に配信いたしますが、メールが未着の際は必ず、お客様ご自身で [申込状況照会] の結果発表をご確認ください。
※@pia.co.jpからのメールを受信可能な状態に設定してください。メールの再送はできません。
※インターネットの途中経路の障害や、お客様のご利用されているメールサーバ、端末の設定の問題等による遅配・未配につきましては、弊社はその責任を一切負いません。
※毎週火曜・水曜の午前2:30から午前5:30まではシステムメンテナンスとなります。

受付公演詳細

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演
2026年02月01日(日) 13:00
【B】
会場:東京・ザ・スズナリ
席種: 特別無料招待券 ※整理番号付き当日引換券/公演当日要身分証明書

注意事項

【チケット】
※公演当日、お引き換えの際に券面に記載の氏名確認を行います。身分証明書(ご本人と分かるもの〈免許証、保険証、マイナンバーカードなど〉)の原本を必ずお持ちください。確認後、指定席券と引き換えてご入場いただきます。
※お席はお選びいただけません。ベンチシートや、開演直前に客席にご案内する注釈付き指定席となる可能性もございます。
※指定席券とお引換後、ドラマ収録の都合でお座席の変更をご相談させていただく場合がございます。

【ご注意】
※2月1日(日)13:00開演の無料公演をご観劇のお客様には、ご観劇内容・収録内容を第三者に開示・漏洩しないことをお約束いただき、 撮影した肖像の利用に関してご同意いただくため、【秘密保持に関する誓約及び肖像権の利用等に関する同意書】をチケットお申し込み時にご確認いただき、ご観劇当日のご入場時にご署名いただく必要がございます。
また、知り得た情報はインターネットなどあらゆる媒体に書き込まない、口外しないようお願いします。
※エキストラとしてもご参加いただきますので、収録に映り込むことを前提にお申し込みください。
※終演後のドラマ収録は最大4時間位を予定しております。19時まで劇場に居られる方のみを対象にしております。
※早い整理番号から良席にお座りいただけるという訳ではございません。
※ご入場は整理番号順ではございません。
※撮影されたすべての映像の著作権は、Netflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」の権利者に帰属いたします。無料公演に応募され出演された方の、映像に関するいかなる権利も主張されない事に同意されるものとしてご応募ください。
※撮影中に、スタッフの指示に従っていただけない場合は、退場をお願いすることがあります。
※ご記入いただきました個人情報は本公演(エキストラ参加)以外では使用いたしません。
※開演の5分前を過ぎますとご自身のお席にご着席いただけない場合がございますので、予めご了承ください。
※本公演のチケットは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されております。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※車イスでご来場予定のお客様は、チケットご購入前に大人計画(03-3327-4312)までお問い合わせください。
※営利目的でのチケットのご購入ならびに転売は固くお断りいたします。
※チケット券面に購入者氏名が印字されます。

【お問い合わせ】
(後略)

この後のページでもこまごまとした注意事項が続きますが、とりあえずここまで。普通に見るなら13000円払う芝居を無料で観られる代わりに、エキストラとしてこれだけの条件に同意するようチケット申込みの時点で権利関係についてはしっかり釘を刺しています。そりゃアメリカ発の会社が法律関係を押さえないわけがない。内容を漏らさないことについて秘密保持契約をするとありますが、申込時にメールアドレスは伝わることになっていると後のページに書かれていますし、申込みもクレジットカード限定です。署名と合せていろいろ追及する手段は向こうも把握して備えていますから、ばらして知らんぷりの炎上狙いは止めたほうがよいです。

最大4時間くらい、19時まで居られる人、という条件が明記されているのはいいですね。ドラマの撮影は時間があってないようなものと昔から言われていますが、次の日が仕事の人も、遠方から応募する人もいるでしょうから。

無料で観られるのだから座席が選べないのはそりゃそうだろうと思いますが、面白いのは座席変更を後で相談する件です。座高の高い人とか服装が派手な人とか頭髪がお歳を召している人とか、画面上の絵作りを考えないといけないんでしょうね。個人的な予想ではエキストラの一般客だけでなく本業の役者も客席に混じってあれこれやるんだと思いますが、それに舞い上がらないような人をなるべく真ん中に持ってくるとか。

とは言え、13000円を取ったとしても公演だけなら大赤字でしょうから、その分は撮影費用に組込まれているのでしょう。Netflixは全世界相手にするだけテレビドラマと比べて予算が文字通り桁が違うという記事を読んだことがありますから、こういうこともできるのでしょう。いい予算の使い方だと思います。反面、視聴数のノルマが厳しくて達成できないと次がない、だから初めて参加した仕事が成功せずに2回目の機会なくお払い箱になる人も後を絶たない、とも記事には書かれていました。芸能界に向いた仕組みだと思いますから別世界の話です。

次の公演の予定を立てるために調べていたら見つけた公演だったものの謎だったので、あらためて調べてどういうものなのかようやくわかったので一段落です。

ちなみにこれを書いているのは抽選の応募期間中なので応募しようと思えばできるのですが、いろいろと面倒そうなので止めておきます。それなら平日公演に応募するかというと、当たれば都合の付く日が1日だけあるのですが、それでもいろいろ面倒そうな予感がするので止めておきます。面倒そうだけど役所広司が観られるかもしれない、よりは、役所広司が観られるとしても面倒そう、と考えてしまう私はおっさんです。面倒が起きてから文句も言えませんしね。

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