2010年9月 5日 (日)

パルコ企画製作「ハーパー・リーガン」PARCO劇場

<2010年9月4日(土)夜>

夫は失業中、娘は高校生で、一人で家計を支えるハーパー・リーガン。父親が危篤との連絡を受けて勤務先に休暇願を出すが、繁忙期のため家庭の事情で足元を見られて、拒否される。思うところがあって、家族や職場にも内緒で実家に戻るハーパーが経験する様々な人たちとの出来事。

長塚圭史の久しぶりの翻訳劇演出、つい初日に観てしまいました。感想を端的に言えば、今の自分には観られてよかった、でも人には勧めるのをためらう、役者と、たまにやりすぎを感じるけど脚本のストレートさには好感、演出もっとがんばれ、って感じです。

小林聡美が、それぞれの場面でそれぞれの登場人物とひたすら対話する、直球ど真ん中の会話劇。血とか暴力は、昔の長塚圭史と比べるとほとんどありません。まあそれは予想通りだからいい。で、登場人物の話が、微妙な話題のときでも、というか、微妙な話題のときほど、すごい会話が明晰。このあたりが良くも悪くも、いかにも英語圏の脚本だなと思う。まったく余韻がないんだけど、こなれた翻訳と達者な役者で味わいが深まるのはいいです。ただ、喧嘩別れしたとはいえ、親の危篤の日以降ののハーパーの行動のぶっ飛び方は、芝居とはいえ、あれはイギリスならありうる展開なんでしょうか。正直どうなんだと思っているうちにハーパーがどんどん格好良くなっていくんで、だんだん気にならなくなるんですけど。

自分の人生に理不尽や疑問を感じたことがある人なら、どこかの場面が必ず心にひっかかるでしょう。そういう脚本です。それで自分は観られてよかったと感じたんですけど、ほかの人の感想、特に30歳から50歳くらいの女性の感想を聞いてみたい。

で、場面転換以外冗談抜きで出ずっぱりのハーパー小林聡美の演技が、なんていえばいいんでしょう、説得力が高いというか存在感が強いというか。失礼ながら決して美人な女優ではないんですけど、すごい凛々しくてきれいに見えて、さすが人気女優は違うと思いました。衣装の着こなしもよかったですね。ほかの役者も実力に異論はないんですけど、若者の多感な感情を表現した2役の美波と、とても馴染んだ雰囲気だった福田転球は、個人的にはかなり好感度が上がりました。

なんですが、芝居全体で観ると、もっさりしたテンポであることは否めず。厚みを出そうとして逆に緩急をつけ損ねた印象。あと、上で小林聡美の演技力を絶賛していますが、その説得力があだになった面もあり。ハーパーは行動や台詞にぶっ飛んだところがありますし、確実なのは確実なんてないことという台詞に象徴されるように、揺れ動いた結果として格好良くなるのがたぶん脚本の狙いだと思うけど、ハーパーが何をやっても正しくて必然で常識を体言しているようになっていた。そこは演出で調整してほしかったし、もし狙ってそうしたんだとしたら、稚拙じゃないかと思う。あと、コンクリートにはもう少し意味を持たせてほしかった。

これからよくなる余地も見て取れたので、血とか暴力とか目当ての人には勧めないけど、人生悩める人で、役者か脚本に興味を持った人にはいいんじゃないでしょうか。

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2010年8月 7日 (土)

ブス会「女の罪」リトルモア地下

<2010年8月6日(金)夜>

場末のスナック。客は常連の女性と飛込みの女性。店を閉めたいがなかなか出て行かない。女性だけの間で交わされるトークが、お互いのよくない秘密にまでつながり・・・。

つい観にいった。小劇場で女が女を書くとなんでこういう殺伐とした芝居になるのかよくわからないけど、面白いのは間違いない。キーワードはギャップでしょうか。みんな上手な70分勝負。でも開演押し。

客席が満員過ぎたので疲れた。詳細は省略。

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2010年7月12日 (月)

モダンスイマーズ「真夏の迷光とサイコ」青山円形劇場

<2010年7月11日(日)昼>

丘の上の屋敷に引きこもる車椅子の女性。役目を与えられて本名と違う名前で呼ばれる使用人。彼女に見えるのは一人の男性の生活。二人の日常が交錯する。

話題になって久しいのに今さら初見のモダンスイマーズ。これをもっと劇団初期に、もっと小さい劇場で観ていれば可能性を感じたのかもしれないけど、ちょっと期待が大きかった分だけ外した感あり。

一番つらかったのは、交錯するのはいいとして、展開が個人的に「だからどうした」になってしまったこと。男性編はそれなりにわかるんだけど、そこに女性編を絡ませる意図がわからない。意味らしい意味があったのは最後の最後だけで、それだけのために引張るには女性編は不可解というか説得力不足。

ただし役者の上手さには目を見張るものがあった。主役の二人とドラム担当以外は二役を演じるんだけど、よかった。特に古川悦史と岡野真那美がよかった。調べてみたら前者の文学座はほほう、って感じだけど、後者は新国立の演劇研修所一期生だった。育っておりますな。反面、YOUはもう少し頑張ってほしかった。一人だけ華やかさが違うし、使用人を使い慣れている雰囲気の上手さはさすがなんだけど、ウマヘタ(ヘタウマではない)だった。もう少し緩急があってもよさそうなもんだけど、演出の間違いなのか演技力の限界なのかどっちなんでしょう。その他でいうと、ドラムをメインに使った音響とすっきりした衣装は好み。

駄目な点は、当日券の席(Cブロック)に背を向けることが多い演出。机を斜めに配置して椅子の位置を工夫すれば回避できるのに、どうしてああなるんでしょう。昔、KAKUTAの青山円形劇場初演でもひどい目にあったことがあって、今回はそこまでひどくないんですけどやっぱり円形を考慮した演出まで気が回らないんでしょうか。

そこしかないって言われたから当日券だししょうがないと納得して買ったのに、開演してみたらいろんなブロックで端の一列+最前列二席が空いているのが円形劇場なだけに芝居中も目に入って、ああこれはきっと有名人向けに備えていた関係者席が目一杯ドタキャンされたのかな(正式な経路で売れ残ったなら引揚げて当日券にまわされるはず)、とか考えながら当日券で外れ席から観る芝居のがっかり感というものをもう少し制作者におかれましては気にしていただきたく。

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2010年5月17日 (月)

劇団、本谷有希子「甘え」青山円形劇場

<2010年5月15日(土)夜>

父と2人暮らしの娘。母は娘を産んですぐに家を出て行った。父は娘になるべく外出しないように強要する。ある日、父が女性と再婚することを決めて、女性を家に連れてくる。

こんな粗筋で申し訳ない。事前の予想ほどエロくはない。役者は全員上手で、面白いかどうかと聞かれれば面白いけど喰い足りないと返事をする。なんか消化不良の2時間弱。

よく言えば登場人物の話に集中した脚本は、舞台や日常などの設定描写を省きすぎてなかなか入り込めず。抽象的で美しい舞台も、入退場のルールの自由度が高すぎて場面を思い描くまでに時間がかかる。

それらは認めるとしても、役者の演技の種類と脚本があまり一致しない。たぶん、広岡由里子のすごいデフォルメした(それでいて妙に台詞が自然なのは役者としての力量だと思われる)演技がこの脚本には求められていて、だけど小池栄子と大河内浩の演技が真面目すぎて、なんかテンポが悪くなったんだと思う。あと、水橋研二の演技にメリハリがなくて、そこでもテンポが悪かった。安藤玉恵はかなり頑張っていて、以前がっかりしていたので、これは収穫。

総じて、本谷有希子の演出もっと頑張れって結論になる。脚本のオチは結構面白かったけど、ここから公演後半にかけてよくなるかは、演出の問題なので、ちょっとわからない。

あと、これから当日券で観る人は、たぶん端のブロックは避けるのが吉。自分はほぼ正面の席で観たけど、前と横への演技が多いかもしれない。最後列でも舞台に近いのが青山円形劇場のいいところなので、極力正面よりの席を選びましょう。

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2010年5月10日 (月)

パルコ企画製作「裏切りの街」PARCO劇場(若干ネタばれあり)

<2010年5月9日(日)昼>

フリーターだがバイトもさぼって同棲する彼女のヒモになっている男が、テレクラでつかまった人妻に会いに行く。一回り以上も年齢差がある二人が、互いの浮気を承知で付合い始め、果てしなくだらしなくなっていく。

三浦大輔は「愛の渦」に続いて2本目の観劇。やっぱりセックス場面が出てくるんですが、それは別にどうでもよい。煮えきらない場面がひたすら続き、それがねっとりと劇場を覆ってなんとも重苦しくなるという不思議な芝居。青年団なら2本分、チェルフィッチュなら3本分の3時間20分でしたが、力作でした。

シアターガイドなんかに書いてある通り、人間のダメな部分を完結させないで描くという試みは成功しています。なんていう固い説明より、あのヒモっぷりの描き方に興味津々。いや、知人にヒモがいなかっもんで、ああいうぐだぐだな生活とか、お金をせびりもしないでもらえるとか、「明日から本気出す」とか、そこらへんの実際がわからないんですが、すばらしい。私には務まらない。あれだけヒモができるなら大抵のことはできるだろうに、やらないところがダメ人間のダメ人間たるところで、全体に卑屈な田中圭がよい。それを受けてずるずるとはまる人妻は秋山菜津子。もっとがつがつした人物描写かと思ったら、卑屈にプライドが絡まったやっぱりダメ人間、だけどいろいろな台詞や仕草がいちいちセクシー。すばらしい。この2人が絡んで、後ろめたさとか背徳感でなく、ダメさを強調しているのがいいところ。

そんな中でやっぱり松尾スズキは特異な役で、ダメ人間には変わりないけど全体になんか狂った雰囲気が漂っている。説教する場面の穏やかな言葉遣いと一緒に出している殺気が怖い。役者松尾スズキはもっと色んなところに出演してもいいと思う。

他の登場人物もそれぞれにダメ人間で、これを脚本演出した三浦大輔は、よほどいろんなダメ人間を知っているんだろうなと推測。後半に出てくる「授業の楽な 先生」とか「顔だけだったら」というのは秀逸な台詞。スタッフワークも抜かりなく、目まぐるしい転換がお疲れな美術もよかったけど、特に衣装がよい。

でも、普通は休憩時間とか終演後のロビーはもっと賑やかなものだけど、全体に静かだったのが普段のパルコ劇場とは違ったな。1人で観に来た人が多かったのか、みんないろいろ自分のことを思い返していたのか。役者の格好よさとか筋書きの面白さについて語り合う芝居ではないのは確かで、これを「あるある」と話されても困るけど(笑)、いつもと客層が違う気がした。若い人が多かった。後ろは空席が残っていたので、ダメ人間に興味がある人は、当日券で挑戦してみては如何でしょうか。2階建ての美術の2階部分もそれなりに使うので、後ろのほうが見やすい場合もあります。

でも3時間20分はなあ。最近の芝居は「長いけど長さを感じさせない」面白さと「情報を圧縮して短い実時間で長い時間を体験させる」面白さの2種類があって、今回の芝居は前者なんだけど、いろいろな都合を考えるとやっぱり後者の芝居のほうが好ましい。そこは脚本演出の課題として挙げておく。

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2010年5月 9日 (日)

チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」ラフォーレミュージアム原宿

<2010年5月8日(金)夜>

契約を切られた派遣社員の送別会を、別の派遣社員たちが幹事となって企画する「ホットペッパー」。その会社の正社員が仕事やオフィス環境についてかみ合わない会話を「クーラー」。そして契約を切られた派遣社員が最後の勤務日に皆の前で「別れの挨拶」。

すごい久しぶりのチェルフィッチュはダンスとか言われていてびっくりした。ドイツの劇場と共同製作したらしいです。外国人が撮影をしていたのもその絡みかな? せりふの繰返しを多用したり、音楽にあわせたり(完全にはあわせていないあたりがまたチェルフィッチュっぽい)していたけど、やっていることはそんなに変わらない。

派遣社員の切迫感と正社員の能天気さを対比させてそれなりに真剣な話を、あの動きと会話による方法で感情的な面を取除くと、かえって深刻さが浮き出しになる。けど、繰返しがきつくて退屈する場面もあって、もともとチェルフィッチュに熱心でない自分には、もうちょっとストーリーがないと観ていてつらかった。

3本を組合せたオムニバスなんだけど、3人、2人、1人と演者の数は減っていて、最後の1本は(細かい演技をほかの人がしていたとはいえ)ほとんど独りで演じきったのはお見事。観ている分には脱力演技なんですけど、終わったらマイクを通じて荒い呼吸が聞こえるので、負荷は相当のものなんでしょう(しかもハイヒールだし)。すっきりした舞台にはっきりした照明も格好良かったです。ただマイクトラブルが残念。

文句としては、配役表を当日パンフに載せておいてほしかった。正社員の男性と、辞める派遣社員の女性がよかったんですけど、誰だかわからん。知っている人教えてください。それと狙っているのか、会場のクーラーが上演中もきいていて、それに直撃する席に座ってしまって寒かった。70分の直撃は寒いです勘弁してください。

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2010年5月 3日 (月)

青年団「革命日記」こまばアゴラ劇場

<2010年5月2日(日)夜>

表向きは政治思想を持って弱者救済活動を行なう団体。裏では本当のテロを計画する「革命」集団。テロ計画の最終打合せのために活動家の家に集まった構成員たちだが、様々な来訪者のためになかなか打合せができない。

まったく見落としていた青年団の芝居をなぜか初日に観るという不思議はさておき、もともと外部に書いた脚本の再演とのこと。大げさなタイトルにふさわしい設定に、似つかわしくない設定と会話(笑)が混ざって、青年団には珍しい怒鳴りあいの場面もあり、「なんとも切ない90分(当日パンフ)」を通り過ぎて、虚しくなりました。

革命を宗教や芸術に置換えてもいいと、これも当日パンフに書かれていましたけど、私は仕事に置換えました。先を考えない計画、議論のすり替え、日常の犠牲、普段とかけ離れて実体を失った言葉遣い。個人が自由意志で集団に参加するはずが、集団が個人の自由意志を無視した上に成立って、その集団の目的を絶対的な善とするごく少数の個人の意見に構成員が振回されるという点では革命も町内会も同じ。集団のあり方という言い方をされていましたが、もっとネタばれっぽく言えば、個人に無理を強いる集団はやがて歪むということ。それを描いて見事すぎるのですが、なんなんでしょうね観終わったあとのこの絶望感。

こんな魅力的な女性陣ばっかりの団体だったら入っちゃうぞーとか最初気楽に思っていたんですけど、近藤強の歪ませた口元を見ながら台詞を聞いていたら殴りたくなってきた。笑えるはずの場面でも笑えない。芝居を観てそんな風に考えることはあんまりないんですけど、ちょっと仕事に忙殺されて神経まいっていたのかな。

客席には小さい子供もいましたが、こんなシニカルな芝居を楽しむにはまだ早いぞ、とか考えたあたりがもうおっさんの証拠ですね。しかしシニカルになってしまった大人にはぜひお勧めしたい。そんな95分。

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Dart's「In The PLAYROOM」Gallery LE DECO 4

<2010年5月1日(土)夜>

リアルな描写と残酷な表現で人気を誇るミステリー小説「ザ・プレイヤー」シリーズ。その最新刊には「次の作品の登場人物になりませんか」という応募用紙が挟まれていた。応募して選ばれたのはいずれも熱心なファン。集合は渋谷駅に近い廃墟ビル。訝る彼ら彼女らの前に現れた作家と編集者は、犯人に追われる立場の登場人物となって逃げきってほしいという依頼をする。ファンが行動を伝え、作家が状況を説明するシミュレーションとして始まったはずの会話が・・・。

なんで芝居を観ていないのにこんなマイナー(失礼)な芝居を見つけたかというとCoRich手塚Blogを読んで気になったから。そこのリンクを辿ってサイトをみたら、未完成のところばかりだけど、その格好よさとチラシ画像とシナリオ説明で、これは観ても損はないという判断に。結果、正しかったです。絶賛とは言いませんが、スリリングな100分を存分に楽しみました。

冒頭に書いたあらすじ、結構説明が面倒なんですけど、芝居ではとても上手かつ格好いい導入部で、すんなり入りこませてくれます。その後の展開は、荒唐無稽といえばその通りなんですが、演技の達者な役者たちがそれを納得させてくれるので、思う存分引きこまれて、スリリングな時間が始まります。探せば名手はいるものだ。そんな役者をまとめて、鬼ごっこをこれだけのドラマに仕立てた脚本演出はすごいです。会場が狭い場所に雑といえば雑な座席を組んでいるのですが、それも設定の一部になっています(劇中の集合場所が今回の会場を想像させる設定)。

反面、オチがきれいに付きすぎてそれまでの緊迫感が若干萎んでしまった、参考のために配られた地図があまり参考にならなかった、会場から出られない場面の演出(設定)が不自然、名手と書いたけどひとりだけ名手でない役者がいた、などのもったいない面もあります。が、それらを差引いても、面白かったことには変わりない。久しぶりに小劇場のよさを堪能しました。

今回は会場の狭さが緊迫感を増していた面もありますが、この脚本は舞台がもう少し大きくてもやりようがあると思うので、新作を3本くらいやってから(ユニットなのでそれがどのくらいかかるかわかりませんけど)、また再演してほしいです。囲み舞台の似合う芝居なので、シアタートラムとか青山円形劇場とかでできるといいですね。

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2010年1月24日 (日)

青年団「カガクするココロ」「北限の猿」こまばアゴラ劇場

<2010年1月23日(土)昼/夜>

とある東京の大学の、生物の進化を研究するためのプロジェクトの研究室。そこに出入りする様々な学科出身の助手や学生が織成すある日の午後の一幕「カガクするココロ」。同じ研究室の10年後、研究は進化して猿を人為的に進化させる試みになっている。以前から残ってプロジェクトに関わっているものもあれば、新しい学生もいて、そんな研究室の午後の一幕「北限の猿」。

これに「バルカン動物園」を加えて平田オリザの科学三部作となるそうですが、今回は2本。時間の都合で同じ日に観ましたけど、いやー面白い。特に前者は、今まで観たどの平田オリザ芝居よりも、人間を生き生きと描いているように思える。

「カガクするココロ」は、惚れた腫れたの真っ只中にいる学生たちが、生物の進化という研究テーマに無自覚に関わったりなんかするあたりの匙加減が絶妙。特に、研究室の男性と付合っている女性が、その妹の友だちに生物への関心を熱心に語るサビの場面のシチュエーションと展開はたまりません。その点「北限の猿」は、10年たって進んだ研究と、10年たっても変わらない研究室のいろいろに、猿と人間の対比を絡めて描いて、もう少しクール。

登場人物は、名前が一部共通している割に、2作間のキャラクターのつながりはあったりなかったりして、しかもキャスティングが違う、それでいて同じ役者が似たような立場の役をやっていたりして、ちょっと2作続けて観たら混乱しました。そういうハンディを差引いても、私は「カガクするココロ」のほうが好みでした。次の日に予定していた芝居が観られなかったら、これだけでももう1回観ようと考えたくらいで、特に兵頭公美演じる山岡さん(前述の、研究室の男性と付合っている女性)は、観ていてうっかり惚れそうになった。危ない危ない。

 

これだけの芝居を上演して、まったく役者に困らない青年団の層の厚さと、平田オリザの演出の力量、再演に足る脚本の蓄積には、ほとほと感服します。もうすぐ終わるし、どうせお客さんは大勢来るでしょうから、口コミプッシュは止めておきますけど、「カガクするココロ」は口コミプッシュしたくなる仕上がりでした。上演時間は1時間半(客入れからならプラス20分)でも、感覚としては2時間以上に感じる。それくらい他の芝居と比べて情報が多い、よくできた脚本です。

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2010年1月11日 (月)

PARCO PRESENTS「志の輔らくご in PARCO」PARCO劇場

<2010年1月10日(日)昼>

村おこしで箱モノを作ろうとしていたら予算が「身代わりポン太」。今夜中に仕上げないといけない仕事の最中に送られてきた間違いファックスが騒動に「踊るファックス二〇一〇」。血筋のない家柄から名代に引立てられるも、同業者の妬みから損な役を割当てられた歌舞伎役者が一世一代の大勝負に「中村仲蔵」。

今年は観られた志の輔らくご。前半は笑いの多い創作噺2本で(たぶん「身代わりポン太」が新作)、後半は締める。満足。

中村仲蔵は以前も聴いたけど、前回よりも解説を多くして、緊張感が強まらなさすぎるようにしている。筋は知っているので、途中からもう涙目。照明の吊り具合から察するに、中村仲蔵は固定演目。

その枕で、ライバルは同業者ではなくて飽き、飽きが一番の大敵という話があって、最近の自分に心当たりがあって思いっきりうなずく。そういう状態で中村仲蔵を聴くと、精進しないといけないよなと思う。それを志の輔も意識しての演目、かどうかはわからないけど。今の自分には、よくできて文句なしに面白い前半の2本よりも、この枕のほうが堪えた。

<2010年1月15日(金)追記>
そういえば2本目の枕に覚えがあって思い出せなかったんですけど、思い出しました。「毎月新聞」に載っていた話でした(おじゃんにできない)。このときの企画会議に出席していたならともかく、アレンジされた内容から推察するとそういうことでもなさそうです。創作噺を2本も聴かせてもらってなんですが、枕はもっとべたなギャグか、オリジナルか、どちらかでやってもらいたいもんです。

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