東宝製作「ミス・サイゴン」東急シアターオーブ(プレビュー公演)
<2026年10月17日(土)夜>
ベトナム戦争下のサイゴン。親の決めた相手と結婚する直前だった少女キムは、村が戦争に巻込まれて家族も家も一切を失ったところを、女衒に見つかりナイトクラブに売り飛ばされる。フランス人とベトナム人のハーフである経営者エンジニアによって店は米兵を相手に大繁盛。エンジニアはキムを「ミス・サイゴン」に仕立てて、上官のジョンに連れてこられたクリスに高く売り付け、二人は一夜を過ごす。互いに恋に落ちて結婚を誓ったところに、キムの婚約者だったトゥイが現れて自分と結婚するように迫るが、キムはクリスを選ぶ。だがベトナム戦争での米軍撤退に伴い二人は離れ離れになり、米国に戻ってエレンと結婚した後もキムを想って夢でうなされる。ベトナム軍で出世したトゥイはキムを諦めきれず、収容所にいたエンジニアにキムを探し出すように命じるが、見つかったキムはクリスの子供を産んで育てていた。子供に手を掛けようとするトゥイをキムは殺害、それを知ったエンジニアはタイのバンコクから米国への渡航を狙いキム親子を連れて逃げる。
有名だが初見。自分の理解のために粗筋を長めに書いたものの、これで前半部。観たことはないが蝶々夫人がこんな話ではなかったか、そういえば「マダム」バタフライに対して「ミス」サイゴンだな、とエンディングも含めて思ったり思わなかったり。古典を種にミュージカルを作るのはロミオとジュリエットからのウェスト・サイド・ストーリーを思い出す。今回だとベトナム戦争というアメリカ人にとっての圧倒的事実は、本国での観客への説得力に一役も二役も買っただろうと推測。
本編感想。役者全員熱演だったし、何度も上演されるだけあってアナログながらも舞台効果が存分に計算されてよくできていた。チラシや公式サイトの掲載順からエンジニアとキムが主役と思っていたが、キムとクリスの物語をトリックスターのエンジニアが食うような構成だったのが意外。ただ、キムとクリスだけだとあっさり終わってしまう芝居に毒っ気の強い華を添えるとともに、この胡散臭さもあってこそ兵士から見たベトナム戦争なのだろうなという役どころだったので、主役級を当てる理由もわかる。
ただし音響がいまいちすぎて入り込めない。錯覚かもしれないが役者の場所によって位置が微妙に調整されて聞こえたのは感心。ただしよほど声を張った場面でないと声が引っ込んで聞こえたし、ソロはまだしも2人以上が歌うと音が濁って歌詞がわからないのがストレス。団体で歌う場面は本当に歌詞がまったくわからなくて字幕を切に望む。2階正面でこれかと観ながら内心ぼやくレベル。
詳しくない音響について想像するに、無線マイクの接続先が1チャンネルしかなくて役者別に調整できず、全出演者からほどほどのところで音のバランスを取ったところ、誰にも向いていないバランスで仕上がったのではないか。その割にオーケストラの音楽は迫力たっぷりだったがあれは有線マイクで拾って個別調整したのか。プレビュー2日目かつ主要役者陣は全員初日だから調整中だった可能性もあるものの、ミュージカル初心者からは役者の熱演も台無しだったと酷評しておく。
主要役者メモ。エンジニアが駒田一、キムが屋比久知奈、クリスが小林唯、上官ジョンがチェ・ウヒョク、妻エレンが加藤梨里香、トゥイが吉田広大、ナイトクラブの女性などを演じたジジが藤森蓮華、キムの子供が原田奈央。粗筋で役名を挙げた主要役者陣もよいのだけど、個人的にはオープニングに近いところで歌ったジジ役の藤森蓮華の歌の演技成分との塩梅が良い感じ。
