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2024年7月14日 (日)

ルックアップ企画製作「虹のかけら」有楽町よみうりホール

<2024年7月14日(日)昼>

映画に歌手にと大活躍したジュディ・ガーランド。「オズの魔法使い」のオーディションで出会って以来、その付人を務めた同い年のジュディ・シルバーマン。世間に知られざる彼女の物語と、そんな彼女の目から見たジュディ・ガーランドの物語。

三谷幸喜による戸田恵子の一人芝居第2弾。ジュディ・ガーランドに目を付けて、その付人を切口にここまでの話を仕上げて、戸田恵子に歌って朗読させて演技させる三谷幸喜はやはり第一人者です。

そしてそれに見事に応える戸田恵子もやはり、第一人者です。歌の伸びやかな声、朗読での声の使い分け、そしてこの芝居を最後までやり遂げる演技、どれをとっても一級品で、実に耳を楽しませてくれました。役者は声だとこれだけはっきり教えてくれる芝居も役者もなかなかいないでしょう。

戸田恵子本人がコンパクトにしたバージョンだと冒頭で話していた通り、途中がどうも端折りすぎではないかと思えたのですが、これはこれで話がすっきりしてよかったという声も聞こえたので、そこは人によるようです。ただ、今回のコンパクトなバージョンでも物語は通じていました。オチもだいたい予想は付きましたけど、しっかり前振りしているからフェアでしたし、いいですね。

上演していることに気が付かないで、たまたま見つけてうっかりチケットが買えてしまったのですが、何の心配もなく舞台に集中して楽しんだ1本でした。

2024年7月 8日 (月)

東宝製作「ムーラン・ルージュ!」帝国劇場

<2024年7月6日(土)夜>

20世紀初めのパリのショー劇場、ムーラン・ルージュ。経営不振のオーナーが公爵をパトロンにするべく看板歌手をあてがおうとするが、歌手は別の若い青年のことを公爵だと勘違いしてしまう。アメリカからパリにやって来て間もない青年は作詞作曲が達者で、歌手の貧乏時代の仲間がその上演で一旗揚げようと歌手に頼むためにムーラン・ルージュまで連れてきたところだった。勘違いは間もなく発覚するが、公爵への言い訳をしているうちに2人は恋に落ち、公爵の目を盗んで逢瀬を繰返す。

せっかくなのでヒーローに井上芳雄、オーナーに橋本さとしの出る回を狙ってやろうと様子を見ていたら無事にチケットが取れました。ヒロインは平原綾香、公爵が伊礼彼方、青年の仲間はロートレックに上野哲也、サンティアゴに中河内雅貴、その恋人ニニが藤森蓮華。

時代を跨いだ名曲で構成されているらしいですが、1曲しかわかりませんでした。が、べたな展開も役者の熱演で目を逸らさせません。平原綾香と井上芳雄の歌の上手さには惹かれますが、やはり個人的には橋本さとしの胡散臭さです。ショー劇場のオーナーにぴったりです。煽りどころ、笑わせどころ、締めるところ、間違いがありません。主要メンバーみんな割とよかったのですが、公爵の伊礼彼方が端正でいい感じの公爵でした。

この日の客席は何と言うか、仕上がっていました。出だしから手拍子の強さと揃い具合がすごい。初めに井上芳雄が台詞を言う場面で戸惑っていたくらい。予習ばっちり感が強すぎやしないかと思わないでもありませんでしたが、ミュージカル初心者には手を叩くタイミングがわかりやすいのは助かりました。

出だしから派手な歌と踊りがいいですね。チケット代も派手でしたけど、たまにはこういうのを観るのもいいもんだと素直に楽しんできました。

2024年6月23日 (日)

東京喜劇熱海五郎一座「スマイル フォーエバー」新橋演舞場

<2024年6月23日(土)昼>

実は魔法使いが秘密で暮らしている現代社会。さる年老いた魔法使いの男性は銀行強盗が押入った場面に遭遇する。犯人が拳銃を撃ったところで時間を止めて弾を逸らしたのはいいが、その後で跳ね返って自分の足をかすめてしまう。しかもその場には都知事の母と娘が来店していたが、弾が当たって痛がる老人の苦しむ顔を見た恐ろしさのあまり、娘は笑うことを忘れてしまう。この娘に何としてももう一度笑ってもらおうと、人の心を動かす魔法を覚えなおすべく魔法学校に入りなおした老人だったが、生徒も先生も曲者揃いというか何というか。

あらすじは書きましたし、それなりに最後まで筋は通っていますけど、それよりは喜劇を転がすための設定の意味合いが強いです。開演前から言われた通り、気楽に観る芝居です。この日は客のノリもよく、釣られて気楽に笑いました。

観たのは伊東四郎が気になったのが第一ですけど、初めは観ていてどきどきしました。声に張りがないのと歩くのがゆっくりだったのが、振りなのかどうなのかわからなかったんですよね。最後に魔法で元気になる場面を披露するつもりじゃないかと。そうではありませんでした。動きが激しくなる場面では補助のように役者が付いたりもします。あれを観ると役者は足腰だと仲代達也が言った理由もわかります。

ただしそれを早い段階からネタにして、伊東四郎が年寄であることもたくさんネタにしていました。これが年齢層高めの客席に大うけで、あれだけできればまだまだ元気といわんばかりにからっと客席が笑っていたので、しばらくしたら年齢のことは気にならなくなりました。

で、芝居に沿ったネタだけでなく、伊東四郎の経歴を大いに生かしたネタも大いにありました。一瞬刑事のふりをして「お前は刑事か!」と突っ込まれるとか、そういうやつですね。「魔法が長すぎるからもっと短くしたらいいんだよ」「短く」「そうだよ」「ニン!」とか、ずるいですよね(笑)。そのへんはもう、楽しんだ人の勝ちです。

あとは動きや台詞回しがゆっくりでも、芝居が丁寧です。初めの銀行強盗の場面で弾筋を追う動きとか、しっかりまっすぐ線を引いていました。台詞も、年寄という設定が前提にあるものの、ゆっくりなりに芝居する。あれは周りが台詞を聴ける達者な役者ばかりなのも大きいと思います。

その周りですが、芝居の筋では都知事に松下由樹を持ってきましたけど、それは本物にサービスが過ぎる(笑)。来月の選挙云々とか、時事ネタもばっちりです。そしてレギュラーメンバーは、こちらも開演前に高齢化をネタにしていました。が、さすがに足腰は平気だし、芝居はこちらも達者です。三宅裕司や春風亭昇太や深沢邦之もいいですが、渡辺正行の軽さや、小倉久寛の変な役のこなし振りが、いいですよね。

ラサール石井だけ、滑舌が怪しくなっているところに年が出ていましたが、大過なく務めていました。「この議論の続きはX、旧Twitterで」「お前はそうやって議論するのがよくないんだよ!」と突っ込んでいたのは脚本家に拍手したい。熱海五郎一座の前身である伊東四郎一座の旗揚げ公演で、突っ込みができないことを悩む患者のラサール石井に医者の伊東四郎が「まずはそのままのことを言えばいいんだ」と言われて、聴診器を当てられて「お腹、胸、口、鼻、頭(適当)」となってしまうコントは私の芝居人生の中でも大好きな場面なので、いらん議論よりも役者に邁進してほしいです。

総じて、楽しんだもの勝ちの芝居であり、そのあたりが軽演劇なのかなと会得しました。そして年齢が高いにも関わらず軽い芝居を続けられる役者陣、すごいですよね。歳をとっても軽くいられるのって本当に見事です。

2024年3月 7日 (木)

劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター(エルサレム・バージョン)」自由劇場

<2024年3月6日(水)昼>

奇跡を起こして人を助け、庶民からは神の子と崇められていたジーザス・クライスト。だがその人気を恐れた為政者と既存宗教の司祭によって捕えられ、庶民からも石を投げられて処刑されるまでの日を描く。

崇めるためにやってくる庶民にうんざりするキリストと、キリストを想うあまり裏切るユダが話の中心。いいも悪いもあるけれど、自分にはいまいちでした。

悪いところで言うと、曲も編曲も古い。どうも昔のロックに聴こえると思って調べたら初演は1971年です。ああ、庶民から人気のキリストを当時のロックスターの人気になぞらえた芝居だからスーパースターなんだ、と家に帰ってから腑に落ちました。そしてロックスターに例える発想がやはり古い。古典と言うにはもう少し時間がほしいところです。

いいところで言うと、荒野の美術と襤褸の衣装を使ったエルサレム・バージョンの演出。浅利慶太の演出を踏襲しているそうですが、ロックスターになぞらえるところを無視すればありです。ダンスらしいダンスはなくて、代わりにアンサンブルで見せるのはどうよと思わないでもありませんが、それも含めての演出です。庶民がキリストを崇めるために囲む出だしなんかは非常にいい掴みでした。古びていません。

そうは言ってもミュージカルなんだから踊ってくれよとも思いました。自分は台詞なしのオペラ形式というのが苦手なんだと思います。それならそれでキャッツくらい踊ってもらえるとよかったんですけど、そうするとエルサレム・バージョンの演出になりません。かれこれ含めて自分には相性の悪い一本でした。

2024年2月27日 (火)

KERA CROSS「骨と軽蔑」シアタークリエ

<2024年2月25日(夜)>

どこか西洋風の国。東西に分かれて戦争が続いており、男手はすでに足りなくて女子供まで徴兵されている。その西側で兵器工場を経営する一家。兵器工場の社長である主人は病気で寝たきりとなって女性秘書が何くれとなく世話を焼いている。その妻は完全に夫のことを諦めている。二人の娘は姉が売れない小説家だが徴兵されそうになった夫が行方不明になる。独身の妹は家の手伝いをしながら夫から姉に届く手紙を母と女中と相談して処分している。

どことなく暗い雰囲気の一家と関係者を描く女優ばかり7人の芝居。女中役の犬山イヌコがたまに客席に語り掛けたりして自分がこれまで観たKERA芝居とはやや違う。ただ、気が付いたら終わっていた。それはのめり込んで時間を忘れたのではなく、もうふた波乱くらい来るかなと考えていたところで巻きに入ると宣言されて、さらにそこからが微妙に時間が掛かる。女性秘書が起点になってもう少し一家を引っ掻き回すかなと思っていたけれどそちらの話が少な目。

何となくだけれど、もう少し用意していた話があったのを上演時間の都合で削ったような気がする。休憩を挟んで3時間に収めていたのは観る側としては助かるけれど、「フローズン・ビーチ」なんかは休憩なしの2時間だったからあれと比べるとどうも話の密度が薄く、食い足りなく感じた。

役者で言うと、頭から芝居のリズムをわからせてくれる犬山イヌコがやっぱり得難いところで、峯村リエが後半もう少し出番がほしくて、宮沢りえが出番の割りにもったいなくて、鈴木杏が後半に向かってどんどんよくなって、堀内敬子が地味ながらもおいしいところもある役をきっちりこなして、水川あさみは役どころの割りに出番が少ない。

小池栄子が難しい。かなりいい役を持ち場以上にいい役に仕上げていた。でもあの役はもう少しとんちんかんで不穏な役にもできたんじゃないか、明るく前向きな役に仕上げたばかりに食い足りなさの原因のひとつになっていないか、と疑っている。演出かもしれないけど。

文句なしにすごかったのは舞台で、庭と屋敷の中をプロジェクションマッピングと照明で切替えるけど、どう見ても無茶な美術のはずなのにまったく違和感がない。違和感がなさすぎて芝居中でネタにしていたくらい違和感がない。それはもうさすがとしか言いようがない。これを見たらミュージカルのスクリーンやプロジェクションマッピングですら野暮ったく見える。場面転換の極致みたいなことをやっているのでこれは見てのお楽しみで。

2023年12月24日 (日)

松竹主催「十二月大歌舞伎 第一部」歌舞伎座

<2023年12月17日(日)昼>

生まれた子供を妻の母に見せようとやってきた夫婦だったが、母はすでに病気で亡くなっていた。旅の途中、近所の娘の世話で寺に一夜の宿を求めることになったが、寺を預かる老婆は亡くなった妻の母とそっくりだった。甦ったのだというのだが「旅噂岡崎猫」。千本桜の咲く神代の時代に、異国からの青龍の精の襲撃を受ける。千本桜の守護である白狐や美玖姫は辛くも難を逃れるが、千本桜は花を散らした。それから千年後に再開した白狐と美玖姫は「今昔饗宴千本桜」。

旅噂岡崎猫は坂東巳之助が始めからわかりやすい格好で出てきてやっぱり悪い化け猫という話。その坂東巳之助もよかったのだけど、夫婦に寺の宿を世話する近所の娘のおくらを演じた坂東やゑ亮が本当によかった。怪しげな術に操られて飛んで跳ねての大忙しだった後半も見どころたっぷりでよかったけど、それより前の普通の役のところであまり女形女形せずに快活に演じていて、だけどこういう女性は今でも周りに見かけるし昔もいただろうというモダンな女形、生きた娘役だった。ずるかったり親切だったり怖がったりと忙しい変化も納得できた。大立ち回りに影を使ったり障子が血でべっとりしたりと外連味たっぷり。初歌舞伎でも満足できること間違いなしでしょう。

で、本命の今昔饗宴千本桜。初めに挨拶で獅童が出てきて説明からお約束からペンライトの使い方から屋号の声掛け練習までしてくれる親切仕様。初音ミクまで出して準備万端といったところで開始。おとなしく観るつもりだったけど休憩時間にロビーを歩いていたら安いペンライトも売っていて、人生で一度くらいスチャッ! とやってみてもいいかなと思い直して買っておいたのがよかった。この日はうっかり良席で観られたのだけど、屋号は呼ばなくてもペンライトくらい持っていないと格好がつかない。隣の真面目そうなお姉様が気が付いたらペンライトを持って待機していたし、立派な着物をお召の奥様が終盤の場面でまっ先に立上がってペンライトを振っていたし、人は見た目だけではわからないものです。

それで派手な映像あり宙乗りあり桜吹雪砲もあり小川夏幹陽喜ありと会場が一体になって盛上がって終わったあとの感想ですけど、残念ながら出来がよくなくて気に入りませんでした。

ひとつは初音ミクの間の悪さ。録っておいた声をオペで流したのか、裏方がいてボイスチェンジャーでリアルタイムで台詞を言っていたのかはわかりませんけど、もたつきます。音が出るまでに時間差があるならそれも含めてここはこの間だろうと突き詰めてほしい。

ひとつはスクリーン頼みの映像。そりゃあ二次元の映像をどこかに映さないといけないのですけど、ちかごろのプロジェクションマッピングの進歩は目覚ましいのにスクリーンだけしか使わないのは古い。たまたま今年はミュージカルを多く観ていて「アナスタシア」とか「アナと雪の女王」とか観ていますけど、後ろのスクリーン+サイドの美術+たまにセンターの美術で話に合せた映像の使い方はあちらさんのほうが上手です。なんなら野田秀樹ですら「兎、波を走る」で高橋一生を飛ばしていた。

初音ミクが二次元文化から出てきたものだからパソコンやスマホを考えてスクリーンに引っ張られるのかもしれませんけど、スクリーン以外も使えればもっと自由度を広げて初音ミクを左右だけでなく前後にも動かせます。スクリーンを使うなというのではなく、スクリーン以外も活用したものを観たいなという希望です。

そして最後は脚本の薄さ。説明やら会場を巻込んだ一体感やらのために1時間25分の短さからさらに20分は削られていると思いますけど、スーパー歌舞伎は言うに及ばず、昔話にもなっていなかった。桃太郎が桃から生まれたら次にはもう鬼が島で鬼退治くらい、起承転結ではなく起結くらいの薄さだった。その分だけ派手な映像や立回りが多かったのですけど、それが芝居かと言われると自分の考える芝居ではない。

凱旋は結構、ここで息子のお目見えが出来たのも結構。ただし超歌舞伎としてはもっと作りこまないと派手だねの一言で終わってしまう。自分が感じた3つの不満を解決するためには、初音ミクありきでない脚本を作ってから初音ミクを組込むようにアレンジして、舞台美術と照明と映像を創りこんで、会場も歌舞伎座以外の劇場で昼夜2公演1か月以上の体制を組んだ方がいい。歌舞伎座で他に混ざっての一本だと技術の仕込みに限界がある。

初音ミク目当てでやってきた客を飽きさせないためにもう一本として旅噂岡崎猫が選ばれたと思いますけど、あれは肉体を駆使してのアクロバットだからアナログな美術でもしっくりきます。客の感想としては旅噂岡崎猫のほうがよくできていました。

ところで第三部と合せて四本の演目を観たのですけど、全部の演目で人ならぬ身のものが出てきました。どの演目も最後はなんとなくごまかされて終わってしまったところも含めて、今月は化け物尽くしだぜと中の人が狙ったような気がします。

松竹主催「十二月大歌舞伎 第三部」歌舞伎座

<2023年12月16日(土)夜>

酒売りに勧められて酒を飲んだ猩々二匹が踊りだす「猩々」。人間たちが近づくことのない白鷺城の天守閣の最上階に住む、人ならぬ身の存在である美しく気高い富姫と異形の者たちだが、遊びに来た亀姫への土産として殿様の鷹を捕まえてしまったため、鷹を探しに姫川図書之助が遣わされる「天守物語」。

猩々は何かと思ったら霊獣なんですね。酔って足を前後させる動きの面白い舞踏です。

天守物語は七之助の富姫が美しいのですが、玉三郎の亀姫はそれよりずっと年下の娘に見えるのがすごくて、もはや玉三郎が人ならぬ身ではないかと思わせてくれます。ただ、中村虎之介の演じた姫川図書之助が凛々しいの一言で、あれは男が見ても格好いいですね。そして追手の片岡亀蔵もくっきりはっきりしていい印象です。話良し、演出良し、役者良し。抜けのいい空の照明も含めて、いま観られてよかった、いま観なくていつ観るんだという1本です。

ちなみに勘九郎が猩々の片方だけでなく、亀姫についてきた舌長姥と獅子の彫刻を彫った近江之丞桃六の二役を務めているんですけど、どちらも初めは勘九郎だとわかりませんでした。いつももっと、出てきただけで勘九郎とわかるような役作りしか観たことがなかったのでいまさら気がつきましたけど、真面目に役に徹しても上手いんですね。

2023年12月11日 (月)

劇団四季「アナと雪の女王」四季劇場[春]

<2023年12月2日(土)夜>

北国アレンデール王国の王女である姉のエルサと妹のアナ。姉のエルサは雪や氷を操る魔法の力を持つが、幼いころにアナを凍らせてしまう。この時は国の隠れびとを呼んで助けてもらったが、アナからは姉が魔法を使える記憶を取除かれる。エルサを助けようと出かけた国王と王妃は嵐で亡くなり、自分の魔法を恐れたエルサは魔法を使うことがないように城に隠れて過ごす。やがてエルサが成人に達して国の女王に就く戴冠式の日、はしゃぐアナと言い争いになったエルサは来客のいる広間で魔法を使ってしまう。怪物呼ばわりされたエルサは山の奥に逃げてしまい、アナは後を追う。

れりごーで有名なディズニーアニメですけど、れりごー以外に何も知らずに観ました。雪の女王の名前がエルサでアナと姉妹なのね、くらい何も知りませんでした。最後は無事に収まってめでたしめでたしなのですが、ディズニーとしてはアップダウンが多い印象です。やっぱり昔の話よりは新しい話のほうがアップダウンを激しく作るものなのでしょう。ミュージカルとしては全体に急で、前半も後半も、アニメを観ているからお前ら付いてこられるだろうと当てにしている印象がなきにしもあらずでした。

で、こういう話なんだと思いながら観ていたら、無造作にれりごーが始まりました。一番の売りの有名曲をもったいない使い方するなと思ったら、そこで映像効果満点の見せ場を披露して、ドレス替えの特殊効果も見せつけて、一幕終了。最高の引きを見せつけられてさすがメリケンさんとシャッポを脱ぎました。終わって客席がどよめくくらいのインパクトです。話だけならエルサは悲しく開き直る展開ですけど、あれを観たらそら女の子は女王の格好を着たくなりますわ、でなければ母親が娘に着せたくなりますわ、って出来でした。子供をミュージカルに引付ける撒餌の入口としてはよい一本だと思います。

翻訳が脚本も訳詞も高橋知伽江のクレジットになっていて調べたら、もともとれりごーの訳詞がこの人で、しかも劇団四季出身なんですね。劇団四季からすれば天の配剤で、脚本も含めてこの人に頼むしかないだろうという話です。それで翻訳のことを調べていたら、悲しく開きなおる展開に翻訳の苦労があったようです。それでさらに調べていたら、アニメの翻訳はいずみつかさでこの人はテアトル・エコー出身でした。舞台とディズニーは縁があるな考えていたら、アニメの雪の女王ことエルサの声は松たか子なのは歌で知っていましたけど、アナの声が神田沙也加と目にして、永遠というものの悲しみと生きることのはかなさを知りました。れりごーはそうじゃない。

劇団四季「ウィキッド」四季劇場[秋]

<2023年12月2日(土)昼>

大学に通うため寮にやってきた少女。ひとりは美しく人気者だが勉強はさっぱりのグリンダ。ひとりは父に疎まれるも妹の付添いとして入学が許された緑色の肌のエルファバ。手違いで同室となった二人は仲が悪かったが、隣国のフィエロが転校してきたときに起きたある事件をきっかけに仲良くなる。エルファバは魔法の力を持っていたため、魔法使いでもある学長に認められてオズの国を治めるオズの魔法使いに会えることになった。付添いとしてグリンダも一緒にエメラルドシティに行くが、そこで出会ったオズ大王は魔法を使えなかった。

オズの魔法使いの前日譚だと思ったら違いましたね。元がどんな話だったか思い出せないので観終わったあとに文庫本を買って読みましたけど。オズの魔法使いの設定と登場人物を使った二次創作でした。

で、後でウィキッドど呼ばれるエルファバは初めは学校で肌の色による差別を受けるとか、言葉を話せる動物がどんどん減っているのは実は誰それさんが黒幕でとか、人種差別と外国人差別の見立てですよね。オズの魔法使いからこういう話を仕立てるあたり、良くも悪くもアメリカ的です。元ネタは子供向けでも、仕上がりは大人向けの話です。

そういうミュージカルでしたが、歌だけならタイトルロールのエルファバを演じた小林美沙希が圧巻でした。ただ、この日のディラモンド教授を演じた平良交一とか、学長のマダム・モリブルを演じた秋本みな子とか、脇にもいい役者が揃っているあたり、劇団四季は人材が厚いですよね。

好きになる人が多い演目なのも頷ける仕上がりでした。

2023年11月 5日 (日)

松竹主催「吉例顔見世大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

<2023年11月4日(土)夜>

赤穂浪人大高源吾の不忠が気に入らぬと出入禁止にした殿様松浦鎮信を宥める俳人其角が会ったばかりの大高源吾の俳句を伝えると「松浦の太鼓」。源頼家に仕える三浦之助は、北條時政の娘である時姫を許嫁に持つが、源頼家と北條時政が戦になり、頼家劣勢のなかを抜出して病床の母へ見舞と別れにやってきたところ時姫が母の看病に来てくれていたが時姫の忠義が時政にあるのではないかと信じ切れない「鎌倉三代記」。春調娘七種、三社祭、教草吉原雀の踊り3本を並べる「顔見世季花姿繪」。

一幕見席を取損ねて夜の部を通して観劇。「松浦の太鼓」は前に観たことがあって、そのときは殿様が歌六で女中のお縫が米吉、今回は殿様が仁左衛門、其角に歌六が回って、お縫は米吉が引続き、大高源吾が松緑。この辺りは全員いい感じでした。仁左衛門の殿様が台詞から思わされる武張った感じよりは忠義の道に憧れる殿様のように見えてややくだけすぎと思わないでもないけど、これはこれでありでしょう。仁左衛門らしい華やかさも出していたので許す。

「鎌倉三代記」は太夫が語るこういう上演形式は何て言うんでしょう。駄目でした。語りの言葉が分からない。粗筋は公式サイトを見ながら書きました。文楽みたいに字幕がほしい。その前提で、よさげに見えたのは時姫の梅枝。藤三郎実は、の芝翫は勢いはよくても台詞がわからない。字幕がほしい。

踊りを3本並べた「顔見世季花姿繪」。これも唄がわかると踊りの意味が見えてくるのは文楽で経験済みなので、字幕がほしい。その前提で、目を引いたのは2本目の「三社祭」の善玉を踊った尾上右近。丸い動きの踊りに色気があるし、飛ぶときも少し長くて動きに余裕がある。

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