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2026年9月27日 (日)

ナイロン100℃「管理人ご夫妻」本多劇場

<2026年9月26日(土)昼>

昭和のころでもかなりぼろいアパート。所有者の夫とその妻が管理人をしているが、妻と住人との不貞に端を発するいざこざで夫は逮捕、妻は住人と一緒になり、新たな管理人夫妻として生活が始まる。実は町の平和を守る平和仮面も兼ねている管理人業務だったが、住人からはさしたる不満も出ずに新しいようなこれまで通りのような生活が続く。

いかにも怪しく重たい前半から一転、不穏続きなのに歌を大量に入れて何となくいい話っぽくなる後半。前半と、後半一部から察するに、もっと鬱屈した話になるはずだったところをKERAの不調でとりあえず最後まで形を付けたらこうなったかと。さらにこじれそうなのにあっさり終わってしまったであろうエピソードが散見されて惜しまれるものの、何となくそれっぽく終わった気分になったのは後半に歌を多用したからで、歌の力すごいと今さら驚いている。「だってだってだってだってだってだってだって」はKERA作詞だろうが、他は一部根本宗子作詞と言われた方が納得しそうな歌もあり。

客演陣は、妙に上手くて誰だこれと休憩時間に確かめた野間口徹が遅い出番ながらも昔ながらのKERA芝居らしい雰囲気をほのかに振りまいて絶賛。長谷川朝晴は役の危ない気配の出始めで、根本宗子と土田英生は後半にもっと予定されていたであろうに、不発で終わる。特に土田英生がいまいちなまま終わってしまったのが惜しまれる。力ある劇団員はいまさらながら、峯村リエのしっとりしたトーンと、珍しく力技を見せる三宅弘城の2人の対比を楽しみつつ、驚く振付のときに周りが驚く演技をする中で腕だけでさぼるみのすけにはやや不満。

2026年6月28日 (日)

ミックスゾーン企画製作「コテンペスト」本多劇場

<2026年6月28日(日)昼>

とある地方の百貨店である天平ストアは、賑わう本館とは別にほとんど客の来ない別館があり、ここに異動となることを従業員間では島流しと呼んでいる。その別館になぜかあるバーに通う中年童貞男性は、三十代の魔法使いを通り越して四十代の妖精だったが、五十歳の誕生日を迎えてさらなる境地に至る。それを見込んだ、別館で働くフロア責任者は、自分を島流しにした本館の部長への復讐を果たすべく男性に協力を申込む。

観たことあるはずの演目でも展開をすっかり忘れているが、これはテンペストを叩き台にした東京軽喜劇とでも呼ぶような展開。断じて真面目な展開ではないが、全員テンション200%で押切ったのはお見事。カーテンコール含めて実測2時間なのに2時間半くらいに感じるクドさてんこ盛りには、小劇場から有名人までこれだけ馬鹿のできる役者をよくぞ幅広く集めたと感嘆。良席で観られたためおそらく感想が2割増しくらいだが、この出来なら別作であらためてパロディをやっても真面目なシェイクスピアをやってもどちらでもよいので、次回作をやるなら役者陣がパワフルにできる体力があるうちに企画を。

2026年5月 5日 (火)

KOKAMI@network「トランス」本多劇場

<2026年5月5日(火)昼>

高校の同級生で友人だった男女3人。精神科医になった女性の元に、患者として男性がやって来る。自分が自分でないように感じる、その間の意識がないという。友人を診察できないという医師のルールに従って他の医師が見つかり次第引継ぐことになったが、2回目の診察にやって来ないのを心配して自宅を訪ねたら、もう1人の友人の男性がいた。ぼったくりのおかまバーで働いていたが、財布ごと巻上げられた友人を助けて自宅まで連れてきたという。久しぶりの再会を祝って3人は飲むが、患者の男性の様子がおかしくなる。

3人芝居として有名な1本。ギャグに多少アレンジを入れてもおそらく原作ほぼそのままと思われる。ゲイの参三役を務めた伊礼彼方が初めから終わりまで飛ばして文句なし、患者役の風間俊介は様子がおかしくなってからの押しの強さが抜群。精神科医役の岡本玲はあと少々のテンションと腹から声を出してくれれば不満の大半は解消されるのにという惜しいところ。ただし登場人物が推定30歳前後のところ、この脚本自体が80年代から90年代の小劇場らしい若さに溢れているので、まだ芸能界で安定したポジションを確立していないような20歳前後の役者が似合いそう。またそれだからこそ伊礼彼方の出来に惜しみない拍手を。

2026年1月13日 (火)

ヨーロッパ企画「インターネ島エクスプローラー」本多劇場

<2026年1月11日(日)昼>

冒険心を胸に抱いた子供のころに話を聞いて以来いつかは行きたかった幻の島、インターネ島。情報を集めているうちに大学の冒険部で同期に差を付けられて、結婚したものの離婚されて、卒業後に破れかぶれで乗りだした航海。ようやく辿り着いたはずの幻の島だったが・・・。

壮大な設定と馬鹿馬鹿しさを真面目にやって期待通りの一本。探検できるような広い島という場面転換の難しい設定を強引に実現してみせるところが最高に好ましい(前方客席だと暗転中に目をこらしてみると楽しい)。劇団員になった金丸慎太郎が少年の冒険心を抱きつつ拗らせた主人公を好演、劇団員とゲストがばっちり固めて隙なし。芝居初めとして笑わせてもらった。

2025年11月16日 (日)

阿佐ヶ谷スパイダース「さらば黄昏」小劇場楽園

<2025年11月15日(土)夜>

過疎に悩む村の駐在所。定年間近の年配の警官は村の女性とこれから結婚して故郷の北海道に間もなく戻るところで、若い警官は村の女性とこれから結婚を控えているものの村の住人から結婚式の前に村を練り歩きをしろと言われて頭が痛い。そんなある日、村の若者が車に引かれそうになって怪我をし、若い警官は石を投げられて怪我をする。物騒な事件が続いたあとで、住人の1人が気になる話を持ってくる。昔、村で事件を起こした男が出所して戻ってくるために準備をしているらしい。

Aキャスト。田舎の村を舞台にそこに暮らす人たちの葛藤と、それで穏やかな日々が揺らぐ危機を描く、昔の映画にありそうなテイストの芝居。最後はすっ飛ばして観客に任せ過ぎではないかと思わないではないものの、描きたいのは葛藤の方だったのだろうなとは察する。

中村まことがちょっと雰囲気を出しすぎで、昔の話を知っている中山祐一郎や長塚圭史や村岡希美との温度差が開きすぎな気もしないでもないけど、そちらのベテラン勢があっさりしすぎな気もして判断に迷う。怪我をした若者の母親の志甫まゆ子が好演。若い巡査を演じた大久保祥太郎と、怪我をした若者の本日Aキャストの宮崎柊太もいい感じだけど、いっそ芝居がうっとうしくなるくらいまでもっとやってもいいのになと思う心がある。稽古で一度芝居を壊すくらいはちゃめちゃに色々試しておいてほしい。

2025年8月16日 (土)

はぶ談戯「JULIO」駅前劇場

<2025年8月15日(金)昼>

鴨川のとある精神病院に軽症で入院した患者を、医者が勝手に実験台にしてひそかに実験が行なわれた。ストレスを掛けた患者に特定のきっかけを与えて凶暴性を発揮させることが出来るかどうかを確かめる実験は、1か月の予定を短く切上げるほどの成果を見せたが、そのあとで治して退院した患者が何らかのきっかけで家族を殺害、警察に射殺される痛ましい結末となったが、実験は隠蔽された。それから4年後、事件の生き残りである犯人の妻が再捜査を願って警察にやってきたまさにその時、同様の手口で被害者が殺された殺人事件が起きる。

脚本が後藤ひろひとと聞いて観劇。こういう展開でもぐいぐい推し進める作風だったなと観ながら思い出しました。初演が1996年らしいので、若干ネタが古いところもそのままのようです。芝居の核心の大ネタに納得すればきれいに嵌まる脚本ですが、演出と演技が追いついていませんでした。

この20年以上で随分と現代口語演劇が広まりました。これは自然な台詞回しが売物ですが、それを実現させるために「客席に背を向けて話す」と言われたような役者の向きもセットで付いてきます。この脚本は、というか後藤ひろひとの脚本は真面目な場面とネタの場面が入り混じる小劇場らしい脚本ですが、どちらの場面かを問わずに客席に正面を切って話す役者、非常に多かったですね。これは正面を向いて伝えた方がいいと思える場面もありましたが、狙ったようには見えません。「絵作り」に頓着しない演出でした。

と言って、ネタの場面で吹っ切れて演技をするわけでもない。1対1でやりやすく、かつ独立性の高い場面だったのはありますが、後半に出てくる音響研究家のアンナの場面くらいですね、上手く振切れたのは。真面目とネタの入り混じった場面は切替の早さと内面のテンションの高さが求められるのですが、そこが上手くいっていなかった。ネタの場面に出ている複数の役者の意識が合せられていないといった技術的な面もあるかと思いますが、その前提として演出がここはネタの場面だと狙いを定めきれていなかった。圭茂木(兄弟)の登場する場面がことごとく外していたのがつらいところです。緩急に頓着しない演出でした。

加えて、演じている側がネタを知らないでやっているのではないかという雰囲気を感じました。時代に関係ないネタだけでなく、時代を感じさせるネタも多数あります。時代を固定した脚本なので時代を感じさせるネタも古いまま固定されたのは致し方ないにしても、ネタの理解は必要です。

あとは白で揃えてカーテンも使った美術はいい感じでしたが、衣装が何か、しっくりきませんでした。ファッションには疎いのですが、2000年ごろっぽい感じと今っぽい感じが混ざっていたような印象を受けました。それとも女優の化粧でしょうか。いっそ今風で揃えた方がよかったかもしれません。

これでも2000年頃なら、小劇場らしい佳作と感想を書いたはずです。が、今ではこの出来では他人に勧めることはできません。端的に言えば出来が古い。小劇場らしい脚本ほどテンションと技術の両方が求められるのだなと再認識しつつ、今時の日本の小劇場は確実に進化しているなと思い知った次第です。

2025年5月25日 (日)

ニッポン放送企画制作「リプリー、あいにくの宇宙ね」本多劇場

<2025年5月24日(土)夜>

100隻の宇宙船を宇宙のあちこちの惑星に派遣して、何らかの鉱物を発見できないかと探すプロジェクト。その1隻の宇宙船が成果も乏しく地球に戻る途中で、アンドロイドが異常事態を発見して船員をコールドスリープから起こす。なんとエイリアンの卵が船内に産みつけられていた。ここから次々と災難に見舞われる宇宙船は、はたして無事に地球に戻れるのか。

ヨーロッパ企画で上演されてまったく不思議ない脚本で、今回はB級スペースコメディで辻褄を合せたながらもでたらめなのはお馴染みの展開。今回は外部出演者に劇団員少々の陣容で上演。全員気を抜かずに演じていましたが、どうでもいい場面でも顔芸で演技をしてくれた伊藤万里華のテンションは目を惹きました。シシド・カフカはでかい、という以上にあっさり目の仕上がり、に見せて割と長台詞を軽くこなして、こなしすぎて、あれは周りがもっとテンションが高くないと良さが半減するからこちら側のテンションを上げる演出プランもあったのではないかとか、なんというかいろいろ惜しい。

よく出来ていて笑いどころ多数も、グルーブ感を感じさせるところまではいかず。前回観たのが同じ劇場で「来てけつかるべき新世界」ですから、やや点が辛くなるのはしょうがない。難しいものです。

<2025年6月1日(日)追記>

少しだけ文章を調整。

2024年12月29日 (日)

ハイバイ「て」本多劇場

<2024年12月27日(金)昼>

祖母、両親、二男二女の家族だが、長男以外はすでに家を出ており、祖母は痴呆が進んでいる。そして祖母が亡くなった葬式の日から数日前、長女の呼掛けで久しぶりに一家が実家に揃った日に起きた家族の話。

これで5演目でしょか。私が過去に観たのは再演と再々演。その時は前半と後半の再現度を極限まで高めて観客側に気付かせることに重きを置いた演出でしたが、今回は前半が次男視点、後半が母視点により寄せた演出になって、見やすさを追及していました。あと、細かいところは少しいじっている模様で、母親が携帯電話で話すエピソードは、前はあったかな、思い出せません。

その中でもこれはネタバレですけど、父親役は後半だけ岩井秀人に入替る形になっています。岩井秀人は以前は母親役を演じていましたけど、何と言うか、脚本演出家の気が済んだから今回は父親役も務めてみたのでしょうか。芝居全体に、以前観たときのようなひりひりした感じは薄れて、それよりは長男以外の3人の拙さと幼さが表に出て、母親の犠牲の大きさと長男の頑張りが認められて、父親はむしろ小さい男として描かれていました。全体に話がはっきりしており、これが今になって思い返したあの時の家族の正体だった、という演出だと受取りました。

その点、今回は母親役に小松和重を得られたのが幸いで、ああいう役にああいう演技をできるのが小劇場出身の達者な役者というもので、生々しさを減らしつつ、切実さを抽出した好演でした。そもそも下手な役者を絶対に連れて来ない岩井秀人ですが、他に長男役の大倉孝二と長女役の伊勢佳世を挙げておきます。あとはシンプルながらも土台のない柱と天井の舞台美術はさすがでした。

ごちゃごちゃ書きましたが、この芝居は小劇場ならではの可能性を体現した芝居として、現代口語演劇のひとつの到達点として、またある家族を描いた普遍的な話として、あらゆる面で完成度が高く、後世に残る1本です。体調不良が無くてチケットパズルが許されれば1週間前に観に行けていたから、年末の見納めにもう1度観に行ったでしょう。さすがに二日続けて観るには余韻が冷めやらなかった。これを書いている時点で東京千秋楽ですが、年明けからツアーがありますから上演される各地方の皆様は是非ともお見逃しのないように。

2024年9月29日 (日)

ヨーロッパ企画「来てけつかるべき新世界」本多劇場

<2024年9月28日(土)夜>

大阪は新世界の片隅の外れにある串揚げ屋。母が亡くなってから引きこもって飲んだくれる父に代わって娘が切盛りする店には、近所のうだつのあがらないおっさんたちが常連客としてやって来る。だが世の中は進む。ドローン技術やロボット技術、AI技術が進み、その波は新世界の片隅の外れにある串揚げ屋にも確実にやって来た。

岸田國士戯曲賞受賞作の再演。技術の進歩を縦軸に、その技術を活用したり翻弄したり受入れたり受入れなかったりする人間模様を横軸に、だけどあくまで新世界の片隅の外れを舞台に庶民の立場で描く舞台。技術に翻弄されてもひるまず、きれいばかりではない駄目人間も馬鹿にせず、技術ネタからこてこてのネタまで笑いをこれでもかと詰込んでダレることなく2時間強を走り抜けた1本。誇張抜きで過去一番笑った芝居だったかもしれない。

はまり役ばかりの役者陣では、主人公の娘を演じて今が見ごろの藤谷理子、憎めない役を精度高く演じたトラやんの永野宗典とラーメン香港の中川晴樹を挙げておく。歌姫の町田マリーと散髪屋の岡田義徳とキンジの金丸慎太郎のゲスト組はもう少し観てみたかったけど文句なし。というか文句をつけるところなし。

技術と人間の関わり方は今ならどんぴしゃま話題なので、全国ツアーをやっているけど海外ツアーを組まれるべきだった。超ローカルにして超グローバルな芝居。岸田國士戯曲賞も納得の、文句なしの傑作。

2024年9月15日 (日)

ロデオ★座★ヘヴン「法王庁の避妊法」「劇」小劇場

<2024年9月14日(土)夜>

大正時代の新潟。産科の荻野は不妊や多産に悩む患者を診察しながら、女性の排卵日を知るための研究を続けている。その産科には堕胎をよろこばないカトリックの助手や、女性解放運動に賛同する看護婦が働く。そんな荻野のところに結婚話が上がり、結婚するなら自分の研究に協力してほしいといきなり相手に申し入れてしまう。

オギノ式で知られる荻野久作がそれを見つけるまでの苦闘を縦軸に、それにまつわる様々な立場の登場人物を上手に配置して横軸に、初演1994年とはまったく思えない脚本は何度も上演されることがよくわかる。その脚本を小劇場らしさを上手に生かした手つきで演出して役者も好演。ここで一度観ておくかと選んだ判断は正しかった。面白かったです。上演期間が短いですけど未見の人は当日券狙いもいかが。

<2024年9月17日(火)追記>

詳細後日で書こうとしましたけど止めておきます。

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