2017年10月 7日 (土)

ワタナベエンターテイメント企画製作「関数ドミノ」下北沢本多劇場

自動車が歩行者をはねたはずなのに、歩行者は無傷で自動車が大破、助手席の同乗者が瀕死の重傷となる。状況が不可解なため、再調査を依頼された保険調査員に集められた関係者たち。だが関係者の証言を再確認しても原因は不明のまま。話が行き詰ったところで、目撃者の一人が仮説を提案する。願いが何でもかなう人間が存在する「ドミノ理論」、その中でも思った瞬間に願いが叶う「ドミノ1枚」の人間がいたのではないか。提案した目撃者はこの仮説を確かめるためにある手段で調査を開始する。

自分が以前観たイキウメ本家はリライト版で、今回が初演版とのこと。演出の違いがあるにしても、印象が全然違ってもっとシリアスに。もともと面白い脚本が、全体にハズレのない役者陣でさらに面白く上演。その中でも目立ってよかったのは瀬戸康史と柄本時生だったけど、久しぶりに見た勝村政信ともっと久しぶりに見た千葉雅子の信頼感はさすがだった。いままで気がつかなかったけど、ひょっとして寺十吾っていい演出家なのかも。

勧められる仕上がりだった、といいたいけど、前回に続いて今回も前列端席を引いてしまい減点。しゃべっている役者の顔が見えないどころかその陰になって奥の役者まで見えない場面が多数。主なアクティングエリアは上手手前、下手手前、奥を含めた舞台全部の3パターンだったけど、席に近いエリアを使われたときのほうがむしろ見切れが激しい。端席より中央補助席のほうがいいのでそこは注意。

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2017年2月25日 (土)

M&Oplays製作「皆、シンデレラがやりたい」下北沢本多劇場

<2017年2月24日(金)夜>

メジャーデビュー前の男性アイドルの追っかけで知り合った女性3人。中の一人が経営するスナックに集まっては男性アイドルの話題で盛上がる。ある日、男性アイドルの寝顔を付きあっている女性アイドルがTwitterに投稿したことで炎上する。相手の女性アイドルが許せない3人は、貶める情報の検索や拡散に努めるが・・・。

役者の根本宗子は観たことがあったけど、脚本演出作品は初見。追っかけ以外は趣味も境遇も異なる3人の違いを、結構ひどいこと言葉でカラッとした笑いに紛れ込ませつつ、追っかけ側の思い込みや妄想論理を明快に描いた1本。今まで見逃していたのがもったいないと思わせる仕上がり。

途中ものすごい早口でまくしたてるのも含めて、いまどき珍しい1時間45分でお腹いっぱいの満足感。このスピード感と誇張感は最近細っていた小劇場のノリと笑いを使いこなしている。小劇場から大きくなった代表的な劇団から腕利き女優を3人集めるキャスティングからして趣味がはっきりしていて、よくぞ集めたという感じ。美術や衣装や音楽が芝居のトーンに揃っていて、目が行き届いていた。最後はあれだけのために人を集めたという思い切りのよさも魅力。

これで出演もやってかなり上手だから、できる人はできるんだなと思い知らされる。チラシに挟まっていたインタビューを読んだら学生時代に年間100本観てメモを残していたのもすごいけど、コメントのいちいちがはっきりしている。この前スズナリでやっていたと思ったらすでに本多劇場2回目だったのも納得の出来。観て損はしない。

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2016年3月17日 (木)

M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」下北沢本多劇場

<2016年3月11日(金)夜>

定年の男と、再婚した年下の妻。二人暮らしの家に、前妻との間の娘が戻ってくる。夫が気に入らないための別居だという。夫は会社の部下を週末ごとに様子見によこして、今では一家が夕食の用意を考えるくらい来るのが当たり前になっているが、本人は一向に来ない。

初日観劇。「蒲団と達磨」の後日談、らしいが、これだけ単発で観ても大丈夫。台詞と真意との乖離が激しいのはいつもの岩松了脚本だけど、そこをいつもより匂わす親切演出。妻への好意がこじれて不信な行動に出る夫たちに対して、そんなことは百も承知であきれているが表面上は合せている妻たちとのすれ違いを何組も描いて、タイトルに相応しい怪しさ満載。登場しない人物を使って話の奥行きを見せるあたりは安定の脚本術。

部下を誘惑する再婚妻を演じる小泉今日子も、出戻った小野ゆり子も色っぽくて、出てくる女優みんなをいつもどうやって色っぽくさせるのか、岩松了に訊いてみたい。その分男性陣は情けない役ばかり。その中でも本当に失踪して見せた不審な男を演じる岩松了は楽しそう。ただ、登場人物全員が何かしら情けない人たちのはずだけど、風間杜夫と小泉今日子の2人はもともと貫禄がありすぎて、その分だけ芝居が立派になりすぎた感もあり。贅沢な悩み。

「蒲団と達磨」よりもさらに間接的な芝居で展開するので、派手でスカッとする芝居を求めている人には向かないけれど、このくらいネチネチして観客に積極的に想像力を要求する芝居は珍しいし、それで質が高いものはさらに貴重なので、ぜひ挑戦してみては如何。

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2015年11月20日 (金)

ブス会「お母さんが一緒」ザ・スズナリ

<2015年11月19日(木)夜>

3姉妹が母の慰労のために温泉旅館に宿泊している。文句の多い母に辟易しつつ、お互いも揉める姉妹。夕食に用意するサプライズで追加のプレゼントをあげるあげないで長女と次女が揉める中、三女が用意していた追加のプレゼントは・・・。

初日観劇。女同士というだけでなく姉妹という身内の関係も絡めた話は、昔話まで遡って傷口を暴きにかかる言葉のボクシング。ここまで言葉で殴りあうかという脚本だけど、役者が立上げに成功して眠気もふっ飛ぶ2時間。

筋も演出も面白いけど、話が微妙にいまどきの家族問題に触れていて、笑うに笑えない場面も多数あり。「人生は間近で見ると悲劇だが俯瞰で見ると喜劇である」を体現した芝居だった。笑える者は幸いなるかな。

キャスティングに加えて劇場の狭さがこの行詰まり感に寄与しているので、仮に再演されてもどこまで面白さが再現されるかは不明。結構よい値段だけど初日時点ですでにクオリティが値段にまさっている当日券は毎公演発売とのことなので観られる人は今回ぜひ挑戦を。

<2015年11月20日(金)追記>

内田慈の歌が上手かった、って書くのを忘れていたので追記。

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2015年11月 2日 (月)

大人計画ウーマンリブ「七年ぶりの恋人」下北沢本多劇場

<2015年10月31日(土)夜>

昭和の懐かしのアイドルが、余りに姿が変わりすぎて出られないと生放送の出演を拒否する、という話を通しつつ、まったく関係ない話も含むコント集。

多目のアドリブ、自分も出演中の宮藤官九郎がそれを観て笑うところ、伊勢志摩をキャラクターに採用したコントまで。何か既視感がと思ったらタイトルからして「七人は僕の恋人」の路線だ。どちらかというと笑わせるより笑われる方面を目指したか。あまり深いことを考えてはいけない。楽しんだものの勝ち。

じっとしていられないグループが歌って踊る場面が妙に全員上手なあたりにアホな大人の馬鹿騒ぎ感が漂ってよいけど、出演者に投げっぱなしで各自が力技だろうが何だろうが笑わせないといけないところに丸投げで追い込んで責任を取らないあたりは、昼に観た芝居よりもある意味で大人のコント。

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2015年9月 9日 (水)

日本の30代「ジャガーの眼2008」駅前劇場

<2015年9月5日(土)夜>

かつての事務所から独立した探偵。路地に転がした林檎の行く先を見届けてほしいと頼んだ依頼主は、自ら探偵の秘書になり探索に勤しむ。その先で見つけたのは、依頼主がかつて愛した男の眼を移植した男。

絶滅寸前のものすごく懐かしい小劇場の香りが漂う芝居。せまい駅前劇場で、力の入った美術と衣装のビジュアルを支えに、飛ぶ唾まで見えるような勢いを2時間最後まで押し通す。

言葉遊びとか登場人物とか、全体にふざけた要素は満載なのだけど、劇団の趣味か演出の方針か、真っ向勝負で役を立ち上げてくる役者のエネルギーがすごい。けど延増静美がほんの少しだけ外してくる場面が2回くらいあったのを観て、もっと遊び心を増やしてもよかったんじゃないかと思う。そうすると2時間では終わらないけど。それはそれとしてこの脚本を演出できる木野花の演出手腕はすごい。

舞台上で、メインで話している登場人物を他の役が取囲んで待機する場面が多くあったけど、男性陣は気配を殺すのに対して、女性陣は眼で演技を続けていて、女性陣のエネルギーに軍配。

何年かぶりの桟敷席で帰りから次の日まで腰が痛くなって、それだけで評価はマイナス200%。次からはぜひ全席椅子席で上演してほしい。

以下余談。エネルギーにあふれて、技術と経験が噛み合ってさらに伸びる贅沢な時期の役者がこれだけ集まっているのだけど、それがいま何で唐十郎なんだろう。小劇場らしい芝居ならそれぞれのホームで出来るだろうに。じゃあどんな芝居がいいかというとそれも思いつかない。古典は次は10年後でもいいと思うし、青年団系の芝居はそちらに任せておけばいいし、ウェルメイドのコメディも違う。新作をやる必要はないけど、せっかくこの年代の役者が揃っているなら、もう少し現代に添った芝居を選ぶか、現代との共通点のある芝居を選んでほしい。30代なんてあっという間に終わってしまうけど、この後どういう路線で行くんだろう。

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2015年6月30日 (火)

日本総合悲劇協会「不倫探偵」下北沢本多劇場

<2015年6月25日(木)夜>

ビルの一角に事務所を構える探偵。不倫の調査で依頼主を口説いて関係を持つ。が、翌日に隣の空き部屋で殺人事件が見つかり、被害者は依頼主の夫。その調査に来たのがかつての相棒である女刑事。刑事だったころのコンビで事件を追う。

ずいぶん豪華なキャスティングだと思ったけど、びっくりするほどB級に徹したギャグ舞台。部分的に切れのある台詞もあるけど、ほぼ全編にわたってB級ハードボイルドで、さらに途中でB級であることをさらに揶揄するようなコメントもはさむ。きっちりオチはつけたけど、雰囲気しか残らないというチラシのコメントに嘘はない。

松尾スズキや平岩紙や二階堂ふみが漫画っぽさを出していたけど、それを完全に漫画にしたのが片桐はいり。その割りに出番が少ないというか物足りない。もっと片桐はいりが観たかった。

今回はプロジェクションマッピングも使っていて、松尾スズキは初利用かも。芝居ではKERAが最初に使って、それからほぼずっと使っていると思うけど、それがここまで広がっている。そろそろこなれてきたのかな。

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2015年3月10日 (火)

M&Oplaysプロデュース「結びの庭」下北沢本多劇場

<2015年3月7日(土)昼>

財界の大物の一人令嬢と、企業買収案件を主に手がける弁護士。かつて令嬢が被告になった事件で無罪を勝取ったことを縁として2人が結婚して1年が経った。家政婦とアシスタントの弁護士とからサポートを受けて順調に暮らしているように見えた2人だが、過去の事件を蒸返すような恐喝が弁護士の夫に届く。

岩松了の新作に、「アイドル、かくの如し」以来2回目となる宮藤官九朗を主演に招いての5人芝居。面白かったのだけど、今まで観た岩松了の芝居より、さらに全体に親切な印象。若干説明台詞が多かったか。

いつも台詞が身についた雰囲気になる宮藤官九朗だけど、役どころが普段と違うからか、初日からまだ間がないせいか、一生懸命正しい雰囲気で台詞を話そうとしている感じがして、すごい新鮮だった。他のメンバーは馴染んでいて、岩松了の芝居ではやっぱり女優が怪しい雰囲気を生き生きと演じている。芝居中でもネタにしていたけど、舞台が転換するので軽くなるように作ったのだろう舞台美術が、立付けの悪さで雰囲気を損ねていたのは残念。序盤で異音がしたのは何かのトラブルか?

あと、ちょっとだけネタばれになるけど、岩松了の芝居は前向きな設定で開始して後向きな展開で終わることが多かったけど、これはその逆に思えた。あんな展開になって前向きかと言われると困るけど、今どきの前向きだと思う。

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2014年11月 4日 (火)

M&O playsプロデュース「水の戯れ」下北沢本多劇場

<2014年11月2日(日)昼>

ある仕立て屋。3人兄弟のうち、仕立て屋の家業は独身の次男が継いでいる。長男は仕事で飛びまわり、三男は亡くなって13年になる。三男の住んでいた近所のマンションには妻がまだ独りで暮らしているが、マンションの取壊し計画をきっかけに、彼女に心を寄せているがなかなか打明けられない次男はこの機会に自宅に来ないかと遠まわしなプロポーズをしている。そこへ長男が中国人の彼女を連れて帰宅。うやむやになっていた家の権利を次男に譲りたいと持ちかける。

じりじりと進む話の中に、男の面倒と女の面倒を詰めこんだ1本。脚本演出に加えてキャスティングもはまった傑作。前半の最後から後半に飛んだ直後からのスリリング。やっぱり岩松了芝居はもっと観ないと損だと思い知らされる。

この脚本を成立させるには次男と三男の妻の配役が鍵だと思うけど、そこに光石研と菊池亜希子を連れてきたのが大当たり。特に菊池亜希子は役どころもあるけど、観ていてくらくらした。他に誰を挙げてもいいけど、みんないいので挙げられない。

これまで観た岩松了の芝居は役の内心に委ねることが多くて、よく言えば観る側の想像にまかせる悪く言えば煙に巻かれることもあったけど、今回は所々ではっきりとした台詞が何度かあって、かなり親切なほうだった。当日券でも良席が残っていたので、これからでもこの面倒の行方をぜひ見届けてほしい。お勧め。

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2014年10月13日 (月)

ナイロン100℃「社長吸血鬼」下北沢本多劇場

<2014年10月12日(日)夜>

社長が失踪して3ヶ月経つある会社。入居するビルの屋上で社員たちは休憩したり愚痴をこぼしたりする。社長の失踪を調べる探偵がいたり、自殺したという社員の真相を追う家族がいたり、向かいのマンションから会話を交わす住人がいたり。

社長の失踪と会社の行方、あと後日談みたいな話はあるけれども、個々の場面は「別役実のコント教室」みたいな展開で進む。個人的に「あり」と「苦手」との微妙なラインだったけど、ちょっと苦手要素が強かった。

全体に暗い話のせいか観た日が悪かったのか、時間がたつほど笑いはどんどん減っていった。出ていたのは詐欺会社(客をだまして稼ぐ)だったけど、今時だったらブラック会社(社員をだまして稼ぐ)のほうがよかったか。悪人役をいきいきと演じるベテラン勢が印象を残すなか、当たり外れの激しい鈴木杏が客演でいい感じ。KERAは女優を演出するのが本当に上手い。

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