2010年7月20日 (火)

ナイロン100℃「2番目、或いは3番目」下北沢本多劇場(若干ネタばれあり)

<2010年7月17日(土)夜>

なんらかの出来事で国全体が大被害を受けてからしばらく経過したある町に、他所の町からやってきた5人。被害者救済を謳っているが、町の被害が大きい割りに、住人の悩みは少なくて世話になるあり様。しかし微妙におかしい雰囲気は隠されていて・・・。

最近のKERAというより、ちょっと前のナイロン100℃に近い感じ。でも政府の人間がかなり適当な扱いになっていたり、登場人物のひとりの最後がほったらかしにされたり、なんかいまいち。

全登場人物がフラットすぎて、背景を感じさせる場面が少ないのが残念。全体に笑いが少ないならそれでもいいけど、今回は大倉孝二に笑いを頼りすぎでちょっと強引。客演の若者役2人も、あのくらいの出番だったら若い劇団員を抜擢してほしかった。演技力を見て出番を調整した結果あのくらいの出番になってしまったんでしょうか。そんな中で、犬山イヌコと松永玲子の昔の男を巡るやりとりは数少ないスリリングな場面で、ベテラン劇団員主体なのにそういう場面が少なかったことを後から思い返して愕然としたり。

ラストがハッピーエンドっぽいのは、まあ最近幸せでキャスティングもされているしそういう芝居が書きたくなったんだろうかとも思いますが、野田秀樹みたいにちょっときもちのいい長台詞だったのはびっくり。昔は劇中でそれを笑いの対象にしていたのに。でも余韻はいまいちで、KERAでもこれから勉強が必要な分野ってものが芝居の中に残されているのかと思うといろいろ考えさせられる。

すごい悪く書きましたけど、そこらの芝居よりはずっといいですよ。ただ、個人的には「世田谷カフカ」のほうがエネルギーにあふれていたなと思います。

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2010年1月25日 (月)

阿佐ヶ谷スパイダース「アンチクロックワイズ・ワンダーランド(プレビュー公演)」下北沢本多劇場(ネタばれありあり)

<2010年1月24日(日)昼>

作家の男。それまでの路線を変えて、観念的な話に挑戦して2冊目の本が出版されたばかり。だけど書評は酷評ばかりで、読者評でもけなされている。そこで編集者と自棄酒を飲みに行ったところから始まる、現実と観念とが入混じった世界。

留学帰国後第一作ということで注目の高いときに観念路線を投げてくる確信犯。プレビューということもあるけど、ここの場面は面白くて興味深いけど、全体的になんかちぐはぐ感は否めず。本番でどのくらい変わるのかは不明。以下ネタばれ混じりで。


冒頭の話で勘のいい人はわかると思うけど、今回も「失われた時間を求めて」と同様、長塚圭史の葛藤を舞台化した観念路線。そのときにやりつくしたと思ったらまだ葛藤していたのかとびっくり。冒頭の酷評の部分で「観念路線で2作目だが上手くいっていなくて手垢にまみれて云々、元の刺激路線を求む云々」とこの芝居の感想を予告するような構成を取入れてすでにアンチクロックワイズ。イギリスは皮肉と議論の国だっけ、と思ったり思わなかったり。

登場人物は、制作仲間(欲しくもない応援をして作家をがっかりさせる)、作品ファン(刺激路線を強要する、作品の内容より作家の心情に興味を持つ、観念路線を受入れる)、過去の作品の登場人物(「失われた時間を求めて」の登場人物、飛びだして作家にサジェスチョンする)の大きくわけて3種類。

刺激路線を強要するファンは殺したと思いきやしぶとく生残ったのでもっとひどい目にあわせようとしたり、作家に興味をもつファンは消してしまったりして、観念路線を受入れたファンには過去作品の登場人物を救済させる。最後は制作仲間の元に帰る。

まあこんな感じ。観念路線はどちらかというと好きな路線なんですけど、それでもそれなりの物語と人物描写を求めたい性質の私には、今回の芝居には両方とも足りない。ワークショップで作ったせいかどうか、キャラクターに統一感の取れていない登場人物がいたり、場面ごとの雰囲気に統一感が欠けたり、プレビュー公演だとしても仕上がりはイマイチでした。あと、猫とか公園とか、「失われた時間を求めて」を観ているかどうかで理解度に差が出てくるのはいただけない。シリーズ物だとしても単品での仕上がりは担保してほしいので、その点は平田オリザを見習ってほしいです。

あとは提出を忘れたアンケートへの回答を。
・印象に残ったシーン:作家が、ファンの女の家で話す序盤の場面。
・登場人物の印象:そのファンの女を演じた小島聖は、キャラクターが生きていてよかった。馬渕英俚可は、あの役を演じるには今回の役者では一番適任だったとはいえ、結果としてもったいない役になってしまった。
・スタッフワークの印象:モノトーンの舞台に色をつけない照明は渋くて好き。だけどその分は衣装で色の変化を付けてほしかった。小島聖以外は地味な色ばっかりで、意図があるとしても暗すぎる。
・上演時間と休憩時間:観念路線に休憩時間は禁物。2時間に収めて休憩なしにしてほしい。
・客席内の温度:当日券エリアで観たけど、寒いです。眠気覚まし狙いなら勘弁してください。
・料金:こんなもんかと思う。どちらかというと劇場の選定に異議あり。ベニサン・ピットがなくなった今、こういうのはスズナリか、世田谷パブリックシアター/シアタートラムのほうがいいでしょう。本多劇場はエンターテイメント劇場です。
・困ったこと:当日券は椅子が痛い。クッション追加希望。
・色にたとえると:どんよりした灰色。
・感想:さっき書いたとおり、観念路線は好きなほうだけど、刺激路線を求めている客は寝るんですよ。前回も今回も隣の客が寝ていました。そうすると観ていてがっかりするので、この路線を区別するようなユニット名(?)を付けて、間違えた客が混じらないようにしてもらいたいです。「阿佐ヶ谷スパイダース 表現かんねん」みたいな。営業上は嬉しくないかもしれませんけど、これから観念路線を定期的に上演するのであれば、ぜひ検討してください。

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2009年10月 4日 (日)

ナイロン100℃「世田谷カフカ」下北沢本多劇場

<2009年10月3日(土)夜>

カフカの小説の一場面と、それを参考に創作した場面と、おそらく小説とはまったく関係ない場面とを、カフカの小説の主人公を使ってつなげた芝居。

んーチラシの通り確かに区分や説明が難しい。個人的には面白かったんですよ。「トーキョーあたり」とか「犯さん哉」とかとは明らかに違った路線。でも1本の筋が明確に通っているというわけでもないし、こんなのつまらんという人がいても不思議ではない。実際私も粗筋すら説明できませんから。ネタばれ込みで説明してもいいけど、それを書いたところでつまらないだけですから止めておきます。

細かく場面をつなげるので、誉めたい場面はたくさんあったのですが、ここでは冒頭のダンス+映像と、後半の植木夏十の人形劇を誉めておきます。振付は役者としても登場している横町慶子が行なっていますが、単純に大勢を動かしてのインパクトが大きめだっただけでなく、何が理由かはわかりませんが普段の芝居で見かけるダンスよりも違和感が少なくてよかったです。植木夏十の成長も著しい。同じ劇団を長年観て、役者が成長するのを観るのがこんなに楽しいとは思わなかった。

で、芝居の内容を書けないので芝居と関係ない話をすると、今回は大ベテラン役者がほとんど出演していない代わりに、その後継者や中堅や若手をたくさん登場させているんですが、これが個人的には新鮮で、全体にバランスが取れていてよかったです。演出手腕がいいのか素質のある役者を集めているのかはわかりませんが、この癖のある芝居をきっちり仕上げていたので、大ベテラン勢がいなくても全然問題ないな、と思いました。これは劇団の規模(というか上演劇場の規模)を制限しているからこそ可能で、大劇場での芝居は劇団とは別にKERA単独で行なっていることのメリットのひとつです。

で、中堅若手がこのくらい出番の多い芝居を2年で4本くらい行なえればいいんでしょうけど、それをKERAの多忙が許さないのは残念かつもったいない。なにしろ次回は来年6月です。だから自分で劇団を作って発表の場を作っている人たちがいるんですけど、それにしても残念かつもったいない。

あ、それと席について一言。今回当日券で前の端の席になったんですが、それだと角度がつきすぎて、映像が楽しめなかったんですね。通路を全部使うので補助席が出せないのはしょうがないのですが、あれは割引してもよかったと思います。というか割引して売って下さい。

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2009年5月 2日 (土)

ナイロン100℃「神様とその他の変種」下北沢本多劇場

<2009年5月1日(金)夜>

動物園の向いにある少し古い家。小学生の子供のために募集した新しい家庭教師がやってくる。なにやら問題のありそうな一家に、問題のありそうな人たちが集まって起きた出来事の物語。

KERAの芝居は頻繁に上演されているけど、ひょっとしたら久しぶりのナイロン100℃本公演。劇団員少な目、ゲストに舞台ファン好みの3人を迎えて、期待を裏切らない仕上がり。ただし上演時間も予想を裏切らない3時間強。

前半を観終わっていつもと違う雰囲気だったのが、後半で我慢できなくなったのか、いつもに近い雰囲気に。それでいて展開は新鮮です。蒔いた種を(ほとんど)全部刈取るその手際も見事。あと、主人公がいないというか、その場その場で違う登場人物が主人公になってしかも散漫にならないのは、KERAの脚本家の才能は円熟期を迎えています。当日パンフに載っている登場人物名も、細かい仕事ですけど、芝居の内容を考えると適切ですよね。

KERA演出では役者の実力が十二分に引出されるので、誰を誉めればいいのか本当に迷います。長田奈麻の邪魔くささ、植木夏十の貫禄ある老婆、前半と後半の落差を上手に見せる山崎一、嫌味にならない真面目さと正直さを魅せてくれた水野美紀、の4人かな。これまで観た芝居での演技が普通だったのもあるんですけど、特に今回は水野美紀の演技には心打たれるものがありました。

オープニングの映像も、よくも毎回あれだけ思いつくもんだと感心しますが、見易さを考慮しつつ、家の中の檻っぽさを表した美術が一番かな。前方サイドだと見切れるかもしれませんが。

まだ上演期間も残っていてもったいないので、内容は一切触れていない感想にしてみました。

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2008年11月 9日 (日)

ウーマンリブ「七人は僕の恋人」下北沢本多劇場

<2008年11月8日(土)夜>

8本のコント集。とある場所での生についての激論「生きる」 / 某中学校での思春期な生徒のあれこれ「バトルロワイヤル」 / 試合の当日に身体に異常をきたしたビーチバレーの選手「惑星からの物体X」 / なぜかキャラクターに採用された役者の話「夢」 / 歌舞伎町で働く保母の仕事とプライベート「サウンドオブミュージック」 / 映画の宣伝で全国ツアーを行なう主演役者「ブラックレイン」 / 友達の作文を間違えて持ってきてしまった小学生が「友だちのうちはどこ?」 / 箱根の旅館に来た父娘の目的は「ゾンビ」。

諸事情あって初日観劇に。深いところのまったくない、おバカ+若干のお色気+勢いによるコント集。ところどころアドリブの余地を残しているみたい。いろいろできる女優陣をそろえつつ、池田成志と荒川良々の力技を使いすぎなのがもったいなかったり。女優では平岩紙がよかったです。宮藤官九郎が生演奏で参加しているコントのときに、観ながら普通に楽しんで笑っていたのを観て笑ったり。

本当におバカなコントですが、この御時世にこれだけやって笑わせるのはさすがです。それを承知で観に行けば楽しめる舞台です。

当日券には前日/当日の電話予約が必要なので公式サイトでご確認を。初日の補助席は客席前方に全力展開で50席くらい? 後方通路も出るかは不明。

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2008年9月21日 (日)

ナイロン100℃「シャープさんフラットさん(ブラックチーム)(ネタばれ若干あり)」下北沢本多劇場

<2008年9月20日(土)夜>

概要と当日券の話はホワイトチームのエントリー参照。

ダブルキャストを同じ日にハシゴするという、贅沢を通り越してもったいない観劇をしてしまいました。時間が許せば別の週に観たかったのですが、予定が未定だったので観られるうちに観ました。

こちらのチームでは小池栄子が実力全開。「ドライブ・イン・カリフォルニア」以来2度目ですけど、やっぱりこの人はいい女優だ。もっと舞台にたくさん出てほしい。このくらい大柄だと、大倉孝二とペアでも釣合がとれて舞台栄えしますね。こちらは劇団員に渋めの演出だった気がします。研究生とはいえ、登場しているのに劇団のHPに(このエントリー執筆時点で)クレジットされていない水野顕子はかわいそう。

以下、ホワイトチームとブラックチームの違いのメモ。ネタばれは避けますけど、違いを楽しみにしている人は読まないこと。片方しか観られない人は、基本的には観たい役者が出ているチームを観ればよいです。








で、違いですが、ストーリーに関してはほとんどありません。ネタ専用の場面は違うネタになっていますが。はっきり違うのはラストと、そのための伏線の張り方です。役では園田研々(廣川三憲と住田隆)、成瀬南(佐藤江梨子と坂井真紀)が演出が違うかな、という感じ。配役の関係で滞在者の子供(六角慎司と植木夏十)が息子と娘になっていますが、これはそこまで変わらない。全体では、ホワイトチームが周囲をより描こうとしていて、ブラックチームが主人公をより描こうとしていたような印象を受けましたが、そこまではっきりとした違いは私には見つけられませんでした。演出の雰囲気ががらりと変わるということもありません。今後脚本と演出を変化させる可能性はありますが、どちらを観るか迷っているひとは、観たい役者が入っているほうを観ればよいと思われます。

最後にひとつだけうっすらネタばれ。タッチの南ちゃんパロディの場面があったけど、あれはみんな元ネタを知らないのかな。個人的にはこっそり笑っていたのだけど。

<2008年9月21日追記>

映像の話を忘れていた。オープニングの映像はすごいけれども似た映像は以前導入していたのでまあ楽しんでください、と。で今回はそこから一歩進めて、個人的には意表をついた使いかたをしています。ホワイトチームの使い方が結構びっくり。

あと主人公の比較でいうと、大きな違いはつけていないけど、ホワイトチームの三宅弘城のほうが内にこもる、ブラックチームの大倉孝二のほうが外に出るように演出されたのかな。いや、大倉孝二は蹴りとかラストの説明とかあったからそう見えただけかもしれないんですけど。

公演終盤には変化していたりするのかな。気になる。とにかく気になる公演です。

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ナイロン100℃「シャープさんフラットさん(ホワイトチーム)」下北沢本多劇場

<2008年9月20日(土)昼>

バブル絶頂期の頃。主宰する劇団で作・演出を担当していた主人公は、公演稽古中に失踪して伊豆のサナトリウムに引きこもっていた。が、恋人の推測により劇団員に居場所を突きとめられてしまう。劇団員からの復帰要請を断って劇団に戻る意思のない主人公がサナトリウムに滞在している間の、滞在者とその関係者の人間模様。

ダブルキャストの15周年記念公演で、まずはホワイトチームから。雰囲気は前作の「わが闇」に似ていなくもないけど、個人的には「フローズン・ビーチ」と「カラフルメリィでオハヨ」を混ぜたような感覚。ベースのしんみりした話に笑わせる場面をたくさん含めて、時間を感じさせないテンポで仕上げた良品。

笑いに縁のある滞在者たち同士のやり取りと、以前顔に傷を負わせた恋人を含む劇団員とのやり取りに、亡くなった父親との空想上の相談を混ぜた3つを軸に進む話は、チラシで「半自伝的」と書かれている通り、KERA自身がモデルになっているんでしょう。なんというか、笑いを突詰めすぎて「椅子にただ人が座っているのが一番面白い」状態まで行ってしまうというのも因果な話であります。タイトルの意味(劇中で説明あり)が非常に心に染みます。

役者は当然ながら豊作なんですが、ホワイトチームでは松永玲子が出色の出来で、他を圧倒します。そして村岡希美、廣川三憲、新谷真弓、藤田秀世、皆戸麻衣(以下略)など役者の見所は十分です。ゲストには結構渋めの演出だった気がしますけど、それでも十分です。

休憩なし2時間30分といいつつ2時間40分くらいの、見応えのある一品です。当日券はついに前日電話予約が導入されてしまいました。がんばって電話をかけましょう。数が少ない上に補助席メインになってしまいますが、実はメイン通路の補助席が距離、視野の点で非常に見やすいのは本多劇場に行ったことのある人なら知っていること。見切れはおそらくほとんどないですけど、舞台に2階部分があるので椅子席でも最前列のほうが「ひょっとしたら」首が痛くなるかも。

ブラックチームとの差分はブラックチームのエントリーで。

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2008年7月21日 (月)

松竹製作「羊と兵隊」下北沢本多劇場

<2008年7月19日(土)夜>

時代は不明だが戦時下にある日本らしき国の、製靴業者の社長の自宅。軍靴の特需で業績が拡大し、その縁で元舞台女優だった長女が軍の高官の息子の目にとまり、婚約話が持上がる。その挨拶が行なわれるある日の夜、本来同席するはずの長男が遅れて戻る。家族が長男に接する態度がどこかよそよそしい。

あんまり書くとつまらないのでこの辺で。相変わらず情報量が多すぎてしかも情報を見せようともしない岩松了による、家族劇ってことでいいのかな。そのわからなさも含めて楽しめる人にはお勧めの一本。個人的にはそのわからなさをものすごく楽しみました。ラストの(自粛)まで含めて、目が離せません。50代後半突入しているのにこのキャストにこんな芝居を書けるって、若いな岩松了。

小劇場ではあり得ない役者の顔ぶれ。有名無名含めて実力者ばかりですよ。ツボはやはり面白メイド役の田畑智子。あの衣装であのキャラでツンデレって、ぜったい狙っただろ岩松了(笑)。いやメイドやツンデレではなく、キャラに受けたんですが。それと先生役の高橋理恵子の滑舌のよさも楽しんだ。こんな風に書いていますけど、シリアス芝居ですよ念のため。

今回は照明と衣装がよかったな。窓の外の光の色とか、みんな汚しが入っている衣装とか、意味ありげでよいですよね。

で、たぶん観た人みんなが思うであろうお約束の一言ですが、この芝居で空席ありって宣伝下手すぎ、もったいなさ過ぎ。それを無理に埋めようとするから、客席で飲み物飲んだり、開演前にフラッシュ付で写真をとったりする客が集まるんだ。なんか本多劇場では珍しく、客層に統一感のない公演だった。

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2007年12月25日 (火)

ナイロン100℃「わが闇」下北沢本多劇場

<2007年12月24日(月)昼>

叔母からの遺産相続に伴って田舎に移り住んだ一家。小説家である父は執筆に専念できる環境に喜ぶが、環境になじめない母は精神を病み、それが原因で夫婦は別居する。その後も続く複雑な家庭環境で3姉妹が育っていろいろあって、移り住んでから30年後、映画の撮影スタッフが父親の取材に訪れる。

開演前の音楽からしてなんかいつもと違う久しぶりの新作は、いつも通りの笑いもありつつ、3人姉妹に焦点を当てて、タイトルが示すような陰を伴ったウェルメイド芝居。

個々のイベントはありがちと言えばありがちだけど、それをつなげてみると、何がどう違うのかわからないけど他では観ないような、ナイロン100℃の過去の公演でもあまり観た事がない(観た事がある中で強いて言えば「フローズン・ビーチ」が近い)ような仕上がり。最後に「山を(自粛)」という台詞が出るのも、いつもと違う終わり方。これは面白いです。

開演した直後は舞台美術の構造のせいもあって本谷有希子の「偏路」に似ているなと思いましたけど、描き方の深さ、広さともこちらのほうが断然上です。映像の使い方も、序盤でべったりと映すああいう方法をさらっと使うあたり、こちらのほうがこなれています。目指すところが違うし、あちらはあちらで面白いんですけど。

すでにKERA演出経験済の岡田義徳、長谷川朝晴と、舞台経験もあまりないはずの坂井真紀のゲスト3人を含めて、役者は当たりばかり。犬山イヌコと峯村り えはその中でもやっぱりすごく上手。嫌な女を演じることがものすごく上手な松永玲子とか、お前誰だ的に変身する永田奈麻とか、全体にいつもと違う感じの役 が多い。いつもみたいな役回りになってしまった大倉孝二がちょっと残念。

犬山イヌコ、峯村りえ、坂井真紀の3姉妹の性格の違いが非常に上手に描かれているのを観ながら、今まで自分が芝居を観るときは、展開は観てきたけど登場人物はきちんと観たことはなかったなと気がつきました。終盤で坂井真紀が「たまにはね(以下自粛)」という台詞を言ったときに、何かそんな感想が頭の中をぐるぐると。

カーテンコールが終わったら3時間半が経過していて、すでに夜の回の当日券目当ての人たちが並んでいて、そんな長時間の芝居でも観られる時間と体力のある人には絶対お勧めの1本。この後ツアーもあるので、ツアー地近辺の皆さんもぜひどうぞ。

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2007年12月 3日 (月)

グリング「Get Back!」ザ・スズナリ(若干ネタばれあり)

<2007年12月2日(日)昼>

原作と作画にわかれて漫画を描いている女性コンビと、男性アシスタントの3人組。次の連載に向けた構想を練るため原作者の親類が経営する田舎の民宿に宿泊に来た。原作者の能力に心酔する作画家は原作者の提案を待つが、売れっ子の原作者は複数の仕事を抱えているため、このコンビ向けに提供できるアイディアが思いつかない。険悪な雰囲気の中、民宿の関係者が作画家に一目惚れする。

当然それだけでは終わらないグリングで、今回も期待を裏切らない出来でした。善悪とかを持込まず、たぶん折込パンフレットの通り「誠実」を描きたかったんだろうなと思わせる芝居です。いろいろな展開の割には全体ではあっさり目で、お涙頂戴に安易に持っていかないのがまた誠実といえば誠実なんでしょうけど、役者に要求するレベルが高そうな演出でした。

民宿経営夫婦(杉山文雄、高橋理恵子)の名前だけ登場する息子の、本編に絡むような絡まないような話題が何気なくてよいです。

以下、全体の出来がよいだけに気になった点が2点。

原作者役の片桐はいりが難しい表現をものすごくあっさりこなして格好よくて、格好よすぎて、中野英樹とか萩原利映とか遠藤留奈がたまに霞んでみえました。いままでグリングでそんなこと感じたことなかったんですけど。そんな中で高橋理恵子の声を聞くたびに和んでいた私は疲れていますかそうですか。

スクリーンを使った映像もあったのですが、当日券の自由席では観づらかったこともあって、場面転換のためとしか思えなかったです。それは残念。

これらは細かい話で、週明けからは席が余っているそうなので、まだグリングを観たことのない人は、この機会に挑戦してはいかがでしょうか。スズナリのサイズだと俄然はまります。

で、おまけとして、今回の芝居とは直接関係ない点で3つの注文。

その1。席が余っているのはお気の毒なのですが、芝居が終わって余韻が残るカーテンコールでの宣伝はそろそろ止めた方がいいと思います。お笑い系の芝居ならいいのですが、この手の芝居だと冷めてしまいます。

その2。スズナリのサイトには当日券は1時間前から発売と明記されているのですが、グリングのサイトだと「受付は開演の1時間前から」としか書かれていません。自由席も用意しているのだから「全公演とも当日券は開演1時間前から発売」「X日は余裕あり」と明記してもらえると、当日券派としてはありがたいです。カーテンコールで宣伝するよりそのほうが先ではないかと。

その3。今回の芝居でも占いの場面が出てくるのですが、「カリフォルニア」の占い、「虹」の交霊に続いてオカルト(悪い意味ではなく、その手のネタ全般の意)3回目です。作者におかれましては、しばらくはオカルトネタを封印してはいかがでしょうか。単発で観れば面白い場面でも、ちょっとだけ長く観ている客としては「またか」の気分になってしまいます。

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