ポウジュ「リタの教育」シアター風姿花伝
<2025年1月12日(日)夜>
酒手ほしさに初めての社会人講座を引受けた教授。そこにやってきた美容師の女性は、何とか今の生活から抜出したいと願う。無遠慮な様子に断ろうとしたものの女性の熱意に負けて始めた講座も初めは滅茶苦茶だったが、きっかけを掴んだ女性は少しずつ勉強に目覚めていく。
旗揚公演にして2人の役者で2演目同時上演という無茶な企画の、2演目目の初日。昔観たことがあった翻訳物なのでこちらを観劇。出だしは浮ついていたもののマクベスのあたりから少しずつ乗って来て、終わってみれば役者は素直に演じていたなという感じ。
ただ、役者の出来とは別に仕上がりにどうもしっくりこない点があって、なんだろうと考えていた。
ひとつは演出で、なんだか時制が上手く出ていなかった。序盤から中盤に飛ぶところが急だったり、ラストのラストを考えると序盤でもう少し教授側に歩み寄らせるというか引張り回されるところを出してもよかったのでは。変わるリタに教授も揺さぶられて変わるかどうかが見所のひとつなので。スタッフに関するところで言えば、イギリスだから夏でも寒いのはわかるけど、教授のフランクが終始コートを持っていないのは季節感に目が届いていなかった。
もうひとつは翻訳で、教授が元詩人という設定なので、元は駄洒落というか韻を踏むような台詞が多かったように記憶している。だから翻訳で苦労していて不自然な台詞も残っていたのが以前観た時の感想。今回は不自然さを感じなかったかわりに駄洒落感はごっそり間引かれていた(「る韻(?)」だけはわからなかった、検索してもわからない)。とは言え、それで自然になったかというとまだ不自然が残っていて、具体的には序盤のリタの労働者階級らしいがさつさも抜け落ちていた。
この話はアフタートークでも出ていて、日本の訛りは地方の方言を意味することが多いけどイギリスは労働者階級とアッパークラスとで上下の言葉が違う、窮して今回は標準語(共通語)の中で「わたし」を「あたし」にするなど差をつけたと話していた。ただ悪気はなくともがさつで乱暴な言葉遣いというのもあるはずで、それは日本だと武家言葉と町人言葉とか、山の手言葉と下町言葉に該当すると思うので、小説なら銭形平次とか芝居なら歌舞伎とかからエッセンスを抽出して工夫してほしい。
上下の言葉遣いの差は現代口語演劇の発展で取残された分野ではないかとひそかに考えているので、翻訳に力を入れるユニットらしいから期待したい。