2016年12月30日 (金)

2016年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)Bunkamura企画製作「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」@Bunkamuraシアターコクーン

(2)On7「ま○この話~あるいはヴァギナ・モノローグス~」@神奈川芸術劇場大スタジオ

(3)パルコ企画製作「母と惑星について、および自転する女たちの記録」@PARCO劇場

(4)パルコ企画製作「ラヴ・レターズ」@PARCO劇場

(5)葛河思潮社「浮標」神奈川芸術劇場大スタジオ

(6)世田谷パブリックシアター/エッチビイ企画制作「遠野物語」世田谷パブリックシアター

(7)劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」シアタートラム

(8)新国立劇場演劇研修所「ロミオとジュリエット」新国立劇場小劇場

(9)KERA・MAP「キネマと恋人」シアタートラム

(10)(11)新国立劇場主催「ヘンリー四世(第一部、第二部)」新国立劇場中劇場

(12)シス・カンパニー企画製作「エノケソ一代記」世田谷パブリックシアター

以上12本(ヘンリー四世は別々でカウント)、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は77040円
  • 1本当たりの単価は6420円

となりました。上半期の11本とあわせると

  • チケット総額は150040円
  • 1本あたりの単価は6523円

です。小劇場から始めてプロデュース公演になった人たちに偏ったラインアップなのは、新規開拓する余裕がなかったからです。そしてプロデュース公演は高い。けど他の予定を優先した時期もあれば都合で観られない時期もある。ならば空いた時間を金で叩くしかないと割切って、上半期よりさらに単価が上がるのはしょうがないと諦めました。意地になって芝居見物を続けているような面もあってこれだけ観ましたが、普通の人はこうなったら芝居の優先順位を下げてそのまま遠ざかっていくんだろうと実感しています。

そして偏ったラインナップの中でも上半期に比べると仕上りにばらつきが多く、こちらの体調不良もあいまって、後半失速気味でした。素直に満足した芝居Aと、不満はあっても最終的には満足した芝居Bと、面白かったけどどこか不満の残る芝居Cの3パターンあって、芝居Bと芝居Cが多かった。数少ない芝居Aは(2)(5)(6)、次点で(4)(10)(11)です。何度も上演された脚本の芝居が多いです。1本だけ選ぶなら(5)。(7)(9)の評判がいいのですけど、自分には芝居Cでした。こんなに自分の感想と世間の評判とがずれるとは思いませんでした。別にずれてもいいのですが、(7)はともかく(9)はこちらの体調以上の理由が突き止められないのが情けないです。

でも通年で一番は上半期の野田地図の「逆鱗」です。あの、雑魚が一番具体的に詳しくてトップは目標も具体的情報も持っていなくて、その情報格差を認められないばかりにトップが適当な判断を出して、その矛盾が下にくる話は今も普通に見かける光景で、私がいろいろ疑問に思っている内容のひとつ。日本社会のよくないところのひとつをあれだけ上手に描いたのは素晴らしい。

下半期のニュースはPARCO劇場が立替のため閉館したこと。思い返せば(3)はやっぱりPARCO PART1-3とセゾンまたは堤清二を模した芝居ですよね。あと、さいたま芸術劇場の蜷川幸雄の後任は予想を外して吉田鋼太郎に決まりましたが、後を追うように平幹二郎がなくなったこと。ある時代で育った世代が確実に亡くなっています。それに出演者インフルエンザによる公演期間中短期上演中止。(9)は当初観に行こうとした日がそれに当たって急遽予定変更しましたが、別のスケジュールにしわ寄せが来ました。他に神奈川芸術劇場の「ルーツ」も、ここなら観られたという日が上演中止に当たって、結局見送りになりました。両方とも公立劇場プロデュースだからできたのかもしれませんが、興行収入直撃を覚悟して上演中止にした制作側の判断は正しいので支持します。が、やはり役者は体が資本なので、公演期間中の体調はぜひとも万全に整えてほしいです。体力が落ちている私にとっては勝手なお願いになりますけど。

キーワードは体力です。2017年は体を鍛えて体力を取戻さないといけない。2016年から4-5年は、後で振返れば教科書に載るくらい時代が動いた年になります。そこを過ごすためにはまず体力。体力がないと芝居も観られない。芝居を楽しめないレベルではなく、そもそも劇場まで行けません。実際に体力切れで見送った芝居が何本かありました。体力が落ちると心も弱って、心が弱ると新しいものへの興味がなくなるどころか拒否反応が出たり、より弱いものへのはけ口を探すようになってしまいます。そこは自分で注意を払わないといけません。そうやって鍛えた体力で観た芝居から、どこまで多様性についての興味と寛容の心を養えるか。今の私に多少なりとも寛容の心があるとすれば、その一部には長年観てきた芝居から受けた影響が間違いなくあります。そんな説教臭い心構えで観たって芝居はつまらないので実際にはただ観に行くだけですが、それを途切れさせるのはもったいない。

そして芝居には、時代に負けない強さ厚さを備えることを期待します。事実は小説より奇なりを地で行くような時代に、繊細すぎる芝居やその場のノリでふざけるような芝居は、観なければよかった気分になります。別に繊細さやノリが悪いのではなくて、それがどれだけのいろいろな蓄積に裏打ちされているか、です。劇団全盛期だと劇団内の活動が一種それを裏打ちしたのでしょうし、蜷川幸雄くらい頻繁に仕事をしていれば少なくともスタックワークに隙はなかったでしょうけど、プロデュース公演ではどうしても脚本、演出、役者という基本構成要素に、その中でも直接客席と接する役者個人個人に求められる比重が高くなります。最近のテレビドラマは視聴率が悪い場合はすべてが出演者の責任にされるので主役を演じる役者のプレッシャーがきついという話をどこかで読みました。裏打ちを作るのに一番必要な「時間」が絶対的に足りない世界では、残念ながらそういう構造になってしまいます。舞台の場合、劇団が最適解なのかどうかは意見が分かれますが、何らかの工夫で乗りきってほしいです。

話がいろいろ飛びましたが今回はこのくらいで。気になる芝居を観るには30本でも足りないのはここ数年の経験で確定になりました。去年の見込み通り、今年は観劇頻度も更新頻度も低調になってしまい、来年もこの傾向は続く予想です。それでも毎年2桁本数は芝居を観続けるつもりなので、引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2016年7月 1日 (金)

2016年上半期決算

恒例の中間決算です。

(1)Bunkamura主催/企画製作「元禄港歌」Bunkamuraシアターコクーン

(2)パルコ企画制作「志の輔らくご in PARCO 2016」PARCO劇場

(3)ハイバイ「夫婦」東京芸術劇場シアターイースト

(4)野田地図「逆鱗」東京芸術劇場プレイハウス

(5)M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」下北沢本多劇場

(6)劇団民藝「二人だけの芝居」東京芸術劇場シアターウエスト

(7)ハイバイ「おとこたち」東京芸術劇場シアターイースト

(8)Bunkamura主催/キューブ企画製作「8月の家族たち」Bunkamuraシアターコクーン

(9)イキウメ「太陽」シアタートラム

(10)DULL-COLORED POP「演劇」王子小劇場

(11)青年団「ニッポン・サポート・センター」吉祥寺シアター

以上11本、隠し観劇はなし、チケットは1本以外すべて公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は73000円
  • 1本当たりの単価は6636円

となりました。本数の割りに何だと自分で計算して一瞬目を疑いましたけど、(1)が思いっきり高かった分です。急用で観られない時期が多くて、6月は目一杯期待できる舞台が揃っていたのにまさかの坊主になるところ、駆込みで(11)を押さえての本数です。これだけ観られたのをむしろよしとしないといけない。

本数が少ない分だけレベルの高い芝居に絞られて、内容が疑問だらけになった(6)以外はどれもかなりのレベルでした。なのにいらない粗探しのようなエントリーが散見しているのは、こちらのハードルも上がったというよりは、疲れていたんでしょう、きっと。

以前のような言葉遊びを駆使したスタイルで今も昔も変わらない日本の問題を描いて容赦なかった(4)には口コミプッシュを出しましたが、半年で新作と再演を上演してどちらも楽しませてくれたハイバイの(3)と(7)、色気と狂気があふれる(5)、活動休止公演に相応しい力作と熱演だった(10)、いつもより手に汗握るスリルも込めて文句なしの(11)など、むしろ(4)よりも一般観客には勧めやすい芝居が多かった。青年団系が多くなったのも今期の特徴ですね。あと、再演がたくさん混じってもいいから半年に2回くらいのペースでやってくれると観るほうはありがたいです。イキウメとか。

2016年上半期のトピックは演出家で2本。まずは何と言っても蜷川幸雄が亡くなったことです。俳優から始めて、時期もよかったんでしょう、いろいろ知識豊富な人たちの薫陶を受けながら、現場の知恵を盗みつつ演出家に転向、ついに世界進出して世界のニナガワになるまるで漫画のようなキャリア。芸術性だけでも娯楽性だけでもなく、両方を含めた演出は観れば何かアンテナにひっかかる仕上がり。あらためて哀悼の意を表します。今後この穴を埋めるところまでたどり着ける人はいるんでしょうか。駆込みで(1)を観られたのはよかったですが、この後に予定されてついに流れた「蜷の繭」はいつか必ず上演してほしい。

そして新国立劇場の次の演劇部門芸術監督に小川絵梨子が決まりました。この抜擢人事という名の博打を認めた関係者には敬意を表します。演出翻訳合せても手がけた芝居はそんなに観られていないですけど、モダンな演出家という印象がある。それは年齢が若いとか、海外の現代ものを手がけていることが多いとかではない。多分、ある種の体系立った演劇教育を受けた、しかも海外で受けたのが理由と推測しますけど、芝居の解釈が行き届いているというか、ローカルなネタに頼らず芝居を立上げているというか、どことなく時事を感じさせるというか。上手く言えないですけど、演劇が観客によい影響を与られる力を持っていること、世界共通の芸術であり世界中に同業者と観客がいること、体系だって教えられる技術があってその上に表現が成立つこと、なにより演劇はいいものであることを信じているような気がします。世間は芸能界でも東京でも日本でもなく世界であり、多様な価値観がある世界に開いている。水商売とか親から絶縁とか芸は盗むものとか、そういうアングラ感がない。

偏見で言えば、芸人は末路哀れは覚悟の上といわれて親から縁を切られる話が珍しくない中、まだ少ない海外の理論をかじって伝統芸能からの独立を目指しながら、古典となる脚本の解釈に四苦八苦して、巡ってきたチャンスをものに出来た人たちだけが生延びた時代との断絶。一言で言えば世代交代ですが、単なる新旧交代ではなく、野良育ちの人たちが活躍する時代から、クラシック音楽や油絵などと同じように小さい頃から教育を受けた人たちの中から活躍する人が出てくる時代に移行している最中であることをうかがわせるような演出家の新旧交代劇です。いやもちろん小川絵梨子が主体的にものすごい努力をしたであろうことやこれからもするであろうことは信じていますが、それより前の段階の環境の違いのことです。芸術監督に就任してどんなラインナップを揃えてどんな演出をしてくるか、興味を持って待ちたいと思います。

ところで時代の移行は私個人の感覚では、良し悪しは半々です。いいところを挙げると、体系化による知識の蓄積と、業界のイメージ改善です。たとえば時代劇は今では作るのが困難で、それは金の問題ではなく、スタッフの後継者不足が最も大きいとのことです。撮影される現場が減ったため、現場の工夫でやってきた殺陣などは付けられる人も減ったり、あるいは着物の着こなしや小道具を使った仕草なども分かる人がどんどん減っているそうです。そういうことが、少なくとも知識として保管継承されていけば、仮に一度全滅してもどこかの段階で復活させられる。あと、今は一部の大学と公立劇場が演劇教育を行なって毎年卒業生がいるはずですが、そういう人たちが大幅に活躍している印象がまだない。むしろ大学でのめり込んで中退してからのし上がってくるのが王道のように思える。これがもっと改善されて、あと平田オリザみたいにワークショップとかで活躍の幅が広がれば、これはよい職業たりえる分野だという認識が広がる可能性がある。何しろ舞台を観ている人は少ない。接点がない人相手なら人は何とでも思える。舞台以外にも舞台関係者に接点がある人が増えれば認識も改まる。

ただ、効率悪い代わりに野良育ちの魅力というのは捨てがたいものがあります。役者だったら伊東四朗、脚本家だったら井上ひさしあたりはストリップ劇場から登りつめました。野田秀樹は賞に落選して「演劇の王道が守られた」と言われました。今になってみれば好き嫌いはあってもこの人たちの実力を認めないわけにはいかないでしょう。そういう人たちのために野良からの道も開かれていないといけない。何より芸能界がGentrificationの対象になってはいけないんじゃないかという感覚があります。それこそが偏見に満ちた考えなのかもしれませんが、社会をRepresentingできない芸術は業界と社会の首を絞めるという視線を忘れてはいけない。

関係者でもないのに勝手に心配して気苦労だけ増えていれば世話はないので、そんな余計な考えは捨てて、自分がどれだけ芝居を観られるかの心配をします。

更新は遅れがちですが、引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2015年12月31日 (木)

2015年下半期決算

恒例の年末決算です。まとめが非常に延びました。

(1)ミナモザ「彼らの敵」こまばアゴラ劇場

(2)劇団☆新感線「五右衛門vs轟天」赤坂ACTシアター

(3)日本の30代「ジャガーの眼2008」駅前劇場

(4)KERA・MAP「グッド・バイ」世田谷パブリックシアター

(5)カタルシツ「語る室」東京芸術劇場シアターイースト

(6)てがみ座「地を渡る舟」東京芸術劇場シアターイースト

(7)FUKAIPRODUCE羽衣「橙色の中古車」こまばアゴラ劇場

(8)大人計画ウーマンリブ「七年ぶりの恋人」下北沢本多劇場

(9)ブス会「お母さんが一緒」ザ・スズナリ

(10)シーエイティプロデュース「スポケーンの左手」シアタートラム

(11)パルコ企画製作「ツインズ」PARCO劇場

(12)劇団チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン「ラインの向こう」東京芸術劇場シアターウエスト

(13)Bunkamura/こまつ座企画製作「ひょっこりひょうたん島」Bunkamuraシアターコクーン

以上13本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は80600円
  • 1本当たりの単価は6200円

となりました。上半期の16本とあわせると

  • チケット総額は159360円
  • 1本あたりの単価は5495円

です。今年は年中バタバタしていて、上期のラインナップを見返したら3年くらい前、下期でも前半は1年以上前の印象があります。芝居を観られない時期もあり、これは当たりだと思っても見逃した芝居が片手に余るようになったので、去年から大幅減少です。観る機会が減ってもなるべく開拓精神は維持したいのですが、相対的に手堅く当たりの期待できる芝居が多くなるのは致し方なく、単価5000円を越えてしまいました。見逃した芝居も、公演期間が4週間未満だったら公演期間が短いほうが悪いと開き直る昨今です。

そんな下期は当たり外れがはっきり分かれる結果となりました。実話を基にした直球社会派の再演モノ(1)と、堅苦しさは脇に置いてスクリューボールコメディの何たるかを見せつけてくれた(4)が甲乙つけがたいのですが、どちらかひとつを選ぶとしたら今回は(4)です。年間トップもこれで。理由は後述。他に、1時間の一人芝居で惹きつけられっぱなしだった(7)と、女同士のエグい話を描かせたらさすがの(9)が、佳作や秀作と呼ぶにはもったいない出来で楽しませてもらいました。

で、非常に重苦しい話題の多かった1年なので、振返ると暗い話になるうえに政治の話題を避けて通れないので気が進まないのですが、できるだけ落着いて振返ってみます。

エントリーを読み返してみると神経質だったりそっけなかったり、いつにも増して書き散らかしています。その中でも年末最後の3本が暗い日本の話題で続いて、まったくもって年おさめに相応しくない芝居ばかりでした。安全保障法案の討議や可決で盛上がったのか、再演の(6)に新作の(12)(13)と戦争絡みの芝居が並びましたが、個人的には労働者派遣法の改正が通ったことに注目します。この法案で、今よりももっと雇用環境が悪化して、生活が不安定で貧しい人が増える、もともと中流が多い構成から少数の裕福な人と多数の貧しい人とに分かれる流れ(長くなるので理由は割愛)が起きていますがこの法案はその流れを加速させる、と考えるからです。

もともと不安定なのが当たり前の演劇関係者には「だからどうした」「安定しているほうがおかしい」「表現したい欲求は安定を求める気持ちより大きい」と考える人もいるかもしれません。が、下り坂の経済で貧しい人が増えれば、短期には観客数の減少(金がない、金があってもより有益な他のことに回す)、中長期には業界の人材不足(そんなことにかまけている余裕はない、そもそも興味が湧く機会もない)、上演環境の悪化(もうからない上演場所の廃止や稽古場所の商業転用による減少、助成側の資金力低下による助成金の減額)で影響がでると予想します。今の日本で芝居が一般的な趣味や共通の話題とは言えませんが、それでも一定数の上演があり、その中からたまにはモノになる団体や役者が出てくるのは、その活動を許容する経済的体力と精神的余裕が社会の側にあればこそです。その土台がぐらついたら、等しく影響はあるわけです。

安全保障法案の可決で徴兵制を心配する言葉もちらほら目にしますが、個人的には徴兵制はないと踏んでいます。貧乏を押しとどめるだけの力が社会になくなったら、学費免除による進学と兵役志願とのバーターが魅力的に見えるようになるからです。昔ローマ今アメリカで市民権や学費と引替に兵役に志願する例があります。何より徴兵制になったら地位や資産に関係なく、自分やその親族が兵役に就くことになります。徴兵逃れなんてやろうものならばれた時のバッシングは想像するにかたくありませんし、大多数の人間は戦場に行くのは真っ平ごめんです。もしそういう事態になったら、金持ちだけでなく、もっと一般人もふくめて賛成します。それに対抗するには思想信条や反骨精神なんて役にはたたなくて、社会全体が豊かさを維持して、お互いが五分五分で対峙できるだけの余裕を持つのが大事で、大金持ち対貧乏人だったら貧乏人の勝ち目はありません(ただし、この方針は人口が増えるないし若者の比率が一定以上維持される前提なので、人口減少中の日本では移民の話が絡みますが、これも割愛します)。

できるだけそういう状態に陥らないように、あるいはそういう状態になるまでの時間を稼いで反転の機会に望みをつなげられるようにするべきだと考える自分には、戦争反対徴兵制反対ばかりを声高に訴える演劇関係者は、一般政策のまずさを隠すための政府の回し者じゃないかと疑われます。あるいは、今の社会のまずさを描いて「ひどいよね」止まりの芝居は、意識的か無意識的かはさておき、そんな分かっていることを言われても困ります。かといって「あいつらが悪い」とそれっぽい悪役をこしらえて糾弾するのはもっと違います。問われるべきは自分たちであり、まずは自分たちが正しく自分の意見を言語化して自分自身を認識すること、叶うものならそこから前に進む勇気を得ること、これができない限り改善への道は遠いです。それを描いて客席を問詰めたのが(1)です。これも再演ですが、楽日に間に合ってよかった。瀬戸山美咲はまだ2本しか観ていないのに非常に惹かれるので、もっとたくさん上演してほしいです。次が1年後(2016年6月)というのはいかにも長い。

それとは別に、そんな世情とはまったく関係ない(4)が傑作コメディとして、久しぶりに声が出るくらい笑わせてくれました。どちらも甲乙つけがたく、もし(1)が年末に上演されたものだったらそちらを年間トップに選んでいました。が、あまりに暗い芝居が年末に3本も続いてしまい、むしろこのご時勢ではコメディのほうが貴重ではないかという意見に傾いたので(4)を年間トップに選びます。こういうコメディを上演できているうちはまだよくて、不謹慎だから止めろという声が挙がってきたらそれが危険事態の一歩手前です。戦争反対もいいですが、全力でコメディというのも演劇関係者の意思表示として覚えていてほしいです。

ここまで書いて読返してみたら政治の話題ということもあって結構恥ずかしい気もしますけど、妄想が過ぎますかね。でも想像力が大事というのは芝居で学んだことのひとつなので恥は恥として残しておきます。そして珍しく政治の話を書いたのでもう少し。

2015年は戦後70年ということで、その時代を体験した人たちがどんどん亡くなってしまい、どうやって語り継ぐかが課題というニュースを見ました。そんなことは当たり前で、ロボットじゃあるまいし、何十年も前から分かっていたことです。もし本当にその戦争が自分たちにとってよくないものだったと考えるのであれば、原因と責任を追究して、そういう事態にならないような社会の体制であったり、組織の人事であったり、意思決定の教育であったり、そういう仕組の部分に反映させるところに努力するべきです。

なんでそういう話題が出ないのか自分なりに考えたのですが、仕組というのは人間が作るものであるという実感のなさ、自分の意見が仕組みに反映される体験の乏しさが理由だと思います。自分の場合は仕事上の経験でそういう考えを持つようになりましたが、それまではそういう発想さえありませんでした。

その仕組作りの最も大きいもので、その割になおざりにされているのが選挙です。ピンポイントで政策に投票できないのでまどろっこしいかもしれませんが、選挙は一般人が自分の意志を社会の仕組に反映させることができる貴重な機会です。変革が常に望ましいものとは限りませんし、数年前に政権交代があったときには被害が思いっきり社会と一般人にも跳ね返ってきました。でも、特定の候補にお灸を据えることができれば他のどの候補でもいいという発想の投票ではなく、自分が期待する社会のあり方に最も近い候補に投票する行為を積重ねていくことが、今より半歩でも期待できる社会に近づくために必要な行動である、そのために先人が用意してくれた仕組と権利を無駄にしないという考えは、そんなに悪くないと思います。2016年からは選挙権が18歳からに引下げられましたが、18歳以上、何歳でも選挙権は持っていますので、ぜひとも有効活用して投票率を上げてほしいです。

いろいろ書きましたが、観るからにはコメディでもシリアスでも、とにかく面白い芝居が観たいのです。来年の目標は去年の目標と同じく30本にしておきますが、気になる芝居を全部観るには年間30本ではいかにも足りない。でもそれは最初にこのブログを始めて以来トップに掲げている「どれだけ舞台を観られるかは時間とお金と運次第」なので如何ともしがたいです。せめて出合った芝居が観た側にも観られた側にも幸せな、人ひとりの一生を超えた大きな命のつながりにつながってほしいと願うばかりです。

今年の様子を見る限り来年の更新頻度は低調な見込みですが、引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2015年7月 1日 (水)

2015年上半期決算

恒例の中間決算です。

(1)TBS企画製作「真田十勇士」赤坂ACTシアター

(2)文学座「リア王 」文学座アトリエ

(3)趣向「奇跡の年 ANNUS MIRABILIS」神奈川芸術劇場大スタジオ

(4)パルコ企画制作「志の輔らくご in PARCO」PARCO劇場

(5)シス・カンパニー企画製作「三人姉妹」Bunkamuraシアターコクーン

(6)青年団若手公演+こまばアゴラ演劇学校"無隣館"「南へ」こまばアゴラ劇場

(7)M&Oplaysプロデュース「結びの庭」下北沢本多劇場

(8)カタルシツ「地下室の手記」赤坂RED/THEATER

(9)サンプル「蒲団と達磨」神奈川芸術劇場大スタジオ

(10)劇団東京ヴォードヴィルショー「田茂神家の一族」紀伊國屋サザンシアター

(11)(12)(13)青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場主催企画制作「高校演劇サミット2014」こまばアゴラ劇場

(14)PARCO Production「幕が上がる」Zeppブルーシアター六本木

(15)イキウメ「聖地 X」シアタートラム

(16)日本総合悲劇協会「不倫探偵」下北沢本多劇場

以上16本(通しで観た高校演劇サミットは単発券も発売していたので3本でカウントしています)、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は78760円
  • 1本当たりの単価は4923円

となりました。

観たい芝居はたくさんあったのでひょっとして今年は年間50本超の記録に挑戦かと思ったのですが、都合でかなわず。それでも、初めてリア王を観た気にさせてくれた(2)は、演出家の言葉とともにこの半期の一番に挙げたいです。あとはキャストとスタッフのレベルアップが好循環に入っている(15)も推します。

記録しておくべきは、再演ものとして日本人の痛々しさを掘当てていた(5)(6)(9)という流れで、これらがほぼ同時のタイミングで上演されるというのは、日本の芝居の業界にある種のセンスがあることを教えてくれます。そして(6)(9)は四半世紀前、(5)にいたっては100年以上前の芝居なのに、嫌な面を描いて古びないあたりに、芝居という表現手段の底力を感じます。

社会も自然も荒れ模様な昨今、なかなか思い通りにいかないことが多い中で、その思い通りのいかなさの中にも楽しみを見出して過ごしたい、それができれば芝居を観てきた甲斐があったと言えると思います。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2014年12月31日 (水)

2014年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)本多劇場プロデュース「志の輔らくごin下北沢 牡丹灯籠 2014」下北沢本多劇場

(2)大人の新感線「ラストフラワーズ」赤坂ACTシアター

(3)OFFICE SHIKA PRODUCE「山犬」座・高円寺1

(4)パルコプロデュース「君となら」PARCO劇場

(5)演劇系大学共同制作「見よ、飛行機の高く飛べるを」東京芸術劇場シアターイースト

(6)葛河思潮社「背信」KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ

(7)SPAC「マハーバーラタ」KAAT神奈川芸術劇場ホール

(8)冨士山アネット/Manos.「醜い男」東京芸術劇場アトリエイースト

(9)こまつ座「きらめく星座」紀伊国屋サザンシアター

(10)パラドックス定数「怪人21面相」spaceEDGE

(11)サンプル「ファーム」東京芸術劇場シアターイースト

(12)世田谷パブリックシアター企画制作「」シアタートラム

(13)東京芸術劇場主催「小指の思い出」東京芸術劇場プレイハウス

(14)ナイロン100℃「社長吸血鬼」下北沢本多劇場

(15)青年団「暗愚小傳」吉祥寺シアター

(16)二兎社「鴎外の怪談」シアターウエスト

(17)新国立劇場主催「ブレス・オブ・ライフ」新国立劇場小劇場

(18)PARCO Production「紫式部ダイアリー」PARCO劇場

(19)東京芸術劇場主催「ポリグラフ」東京芸術劇場シアターイースト

(20)M&O playsプロデュース「水の戯れ」下北沢本多劇場

(21)てがみ座「汽水域」シアタートラム

(22)イキウメ「新しい祝日」東京芸術劇場シアターイースト

(23)ミナモザ「みえない雲」シアタートラム

(24)新国立劇場制作「星ノ数ホド」新国立劇場小劇場

(25)演劇集団キャラメルボックス「ブリザード・ミュージック」サンシャイン劇場

(26)Bunkamura/大人計画 企画製作「キレイ」Bunkamuraシアターコクーン

以上26本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、    

  • チケット総額は148258円
  • 1本あたりの単価は5702円

となりました。上半期の18本とあわせると

  • チケット総額は247358円
  • 1本あたりの単価は5621円

です。上半期ですでにペースオーバーして、例年なら年末で加速するところ、 秋口から加速が始まって44本になりました。記憶では過去最高の年間観劇本数は49本だったので、全盛期同等の勢いです。

見損ねた芝居も多数あるなか、志の輔あり三谷幸喜あり青年団もイキウメもサンプルもこまつ座もありでラインナップだけなら上半期と似ていますけれど、観終わった今から振返れば上半期が地味だったと霞むくらい、下半期の芝居はメリハリの付いた濃い芝居が多かったです。

そんな中で年間を含めて文句なしの1本は(12)で、これで口コミプッシュを出し損ねたから今年はもう出せない、たとえ3年に1回でもこういう芝居が観られるなら芝居を観続けないといけない、と思わせてくれた素晴らしい出来でした。これで久しぶりに目が覚めたので、秋口以降のペースが加速した遠因ともいえます。(12)も上半期に見た「ムサシ」も、相手を許せるかが芝居の問いかけになっていました。 ただし「ムサシ」が強い人物の立場から相手を許せるかを問う描き方になっていたのに対して、(12)は虐げられた人物の立場から相手を許せるかを問う描き方になっていて、描かれた世界の身近さと問いの重さも相まって(12)が圧倒的に濃かったです。この殺伐とした時代に、数年前に書かれた脚本が上演されてぴたりとはまるところは、脚本家がすぐれた時代先取り感覚を持っていたからでしょうか。

他に、芝居でここまで笑ったのは久しぶりという(4)と、出演者を初めとしていろいろな要素が絶妙に組合わさった(23)も、思い返せばなぜ口コミプッシュしなかったのかとこちらに反省を促す出来でした。最近は以前よりも再演の数が増えているようで、その最高の1本が今年は(4)でした。まだまだ掘れば出てくるので各団体ともぜひ積極的に再演演目を増やしてほしいです。そして(23)は初演だけど再演してほしい1本で、かなうのであれば「Caesiumberry Jam」など近い話題の芝居とセットでの上演を企画などいかがでしょうかと期待を込めて書いておきます。

もうひとつ。下半期は久しぶりに噛み付くようなエントリーを書いてしまったのでその補足です(「状況倫理と絶対倫理と説教芝居と芝居の強度について」「一日に二度も永井荷風を観たくない」)。下半期だと(11)(21)(22)(23)は現代の日本人への批判が含まれていますけど、それは大きな目に見える絶対悪を想定しての直接的な批判ではなくて、善であり悪でもある個人や個人の行ないの集積が引起している問題に対して、個人の立場からの苦闘を描いていて、それでいて、というかそれだからこそ、物語が膨らんで大きな存在の方向に観ている側の関心と想像が向かっていました。この、どこまでも個人を立ち位置にした描き方というのが、いいことだと思えるようになってきました。

この話を何でしつこく書いているかというと、鶏が先か卵か先かという話になりますけど、日本語というのは状況倫理に適した表現をたくさん持つ言語なので、意識せずに日本語を使う人の間で日本語を話して育った日本人は、よほど気をつけない限り状況倫理が体にしみこんで行動にも現れるのではないかという乱暴な仮説を立てたからです。今の日本に何か大きな問題があったとしたら、それはそこまで問題を大きくした個人の無自覚の集積で、それを直すとしたら問題ではなく原因を責めるべきで、そのためには自分を含めた個人が、適切な絶対倫理を身につけるのは難しいとしても、日常で「今のは状況倫理だ」と自覚するだけでも、長い目で見れば自分にも周りにも良い効果があるのではないか、と思うようになりました。

閑話休題。この下半期に観た劇場が公立劇場に偏っていました。以前の公立劇場は、失礼な表現を使うならもっとつまらない芝居を細々と上演していましたが、いつの間にか気になる芝居が多数上演されるようになっていました。特に東京芸術劇場のシアターイースト/シアターウエストの人気には目を見張ります。 これは明らかに野田秀樹が芸術監督に就任して以降の話で、フェスティバル/トーキョーの拠点としても根付きそうです。就任から約5年経って、完全に流れを持ってきたように見えます。

他に、シアタートラムはイキウメが、吉祥寺シアターは青年団が毎年上演するようになりましたし、他にも若手中堅の劇団は座・高円寺や三鷹星のホール、少し離れて神奈川芸術劇場の大ホールなど、200人強の規模の劇場を持つ公立劇場の人気が高いです。いつのタイミングからかはわかりませんが、都内の公立劇場が若手中堅支援の企画やらスタッフ研修やらを立てるようになってから、公立劇場間で特色を競うような流れに変わってきたようです。これは別途どこかでまとめたいと思います(ちなみに同じことを2009年末にも書いて放置していました)。合せて、自治体が芸術に金を突っ込むようになった理由を知りたいです。もし何となく金を突っ込んでいるのだとしたら、何となく際限なく金を突っ込む可能性と、何となく金を突っ込むのを止める可能性と、両方がありうるので、その理由を知っておくのは大事だと思います。

その分だけ民間の劇場が細ってきたというか、民間の劇場が細ってきたのを補っているのかわかりませんが、 近年で覚えているところではTHEATER/TOPS、ル・テアトル銀座、相鉄本多劇場など、閉館が目立ちます(公立では青山劇場/青山円形劇場もなくなりますがそれは来年のトピック)。新宿のコマ劇場の跡地ビルも2015年にオープンしますが、映画館のみで劇場は作られないとのことです。本多劇場が下北沢に小さい劇場をたくさん作りましたが、そこらへんの受け皿も考えてのことかもしれません。この話も、公立劇場の話と絡めてどこかでまとめたいです。

今年は明らかに観すぎましたが、(12)のような芝居に出会えたのも事実なので、2015年は年間24本の目安を少し緩めて、30本以内を目標にしたいと思います。

取りとめのない文章になりましたが、引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2014年6月30日 (月)

2014年上半期決算

中間決算です。まとめが遅れて、これを書いている時点で夏が終わりそうです。

(1)パルコ企画製作「志の輔らくご in PARCO 2014」PARCO劇場
(2)Bunkamura企画製作「もっと泣いてよフラッパー」Bunkamuraシアターコクーン
(3)東京芸術劇場主催「おそるべき親たち」東京芸術劇場シアターウエスト
(4)こまつ座/ホリプロ主催「ムサシ」Bunkamuraシアターコクーン
(5)サンプル「シフト」東京芸術劇場シアターイースト
(6)青年団・こまばアゴラ演劇学校「S高原から」こまばアゴラ劇場
(7)日本の30代「十二夜」駅前劇場
(8)ティルト主催「春風亭昇太独演会 オレスタイル」紀伊國屋サザンシアター
(9)Bunkamura企画製作「殺風景」Bunkamuraシアターコクーン
(10)演劇集団円「錬金術師」東京芸術劇場シアターウエスト
(11)イキウメ「関数ドミノ」シアタートラム
(12)青年団「働く私」こまばアゴラ劇場
(13)松竹/Bunkamura主催「三人吉三」Bunkamuraシアターコクーン
(14)青年団「忠臣蔵・OL編」こまばアゴラ劇場
(15)青年団「ヤルタ会談」こまばアゴラ劇場
(16)NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺企画製作「リア」座・高円寺1
(17)青山円形劇場/ネルケプランニング主催「赤鬼」青山円形劇場
(18)シス・カンパニー企画製作「抜け目のない未亡人」新国立劇場中劇場

以上18本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は99100円
  • 1本当たりの単価は5505円

となりました。

本数が多いのは青年団のせいで、それがなければ14本だからほぼ予定の範囲。単価が高いのはシアターコクーンと三谷幸喜のせいで、それがなければ1000円くらい下がる。劇場は渋谷方面に回帰していたのに今気がついた。

前年下半期と比べるとさすがに明るい芝居も増えている。ほぼすべて佳作で、無理に絞ると、笑える面白さなら(10)、今時っぽさなら(11)、これこそ芝居という出来なら(4)になる。でもとびきりの1本はなかった。体が欲した感じがしたのは(4)と(17)か。

野田秀樹演出で何度も観た「赤鬼」はさておき、「ムサシ」とか一度も観ていないのに欲したのかというと、欲した。鼻が利くというのとは別に、よくわからないけど、今観ておけという勘が働いた。食事が偏りすぎて、野菜食っとけと体が欲したような。でもじゃあ何でそれが野菜だとわかったかというと、鼻が利いたとしかいえないので、書いている自分でもわかっていない。

最近は観たあとに感想をアップする時間が遅れてきているけど、読者の皆様にはそれを気にせずに細く長くお付き合いいただきたく。

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2013年12月29日 (日)

2013年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)葛河思潮社「冒した者」神奈川芸術劇場大スタジオ

(2)シス・カンパニー企画製作「かもめ」Bunkamuraシアターコクーン

(3)M&Oplays主催・製作「悪霊-下女の恋-」下北沢本多劇場

(4)芸劇eyes「God save the Queen」東京芸術劇場シアターイースト

(5)青年団「もう風も吹かない」吉祥寺シアター

(6)イキウメ「片鱗」青山円形劇場

(7)パラドックス定数「殺戮十七音」荻窪小劇場

(8)Bunkamura主催「マクベス」Bunkamuraシアターコクーン

(9)DULL-COLORED POP「アクアリウム」シアター風姿花伝

(10)橋爪功企画製作「犯罪」東京芸術劇場シアターウエスト

以上11本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は46900円
  • 1本あたりの単価は4690円

となりました。上半期の11本とあわせると

  • チケット総額は100300円
  • 1本あたりの単価は4776円

です。本数的には予定に収まったけど、下半期は、スケジュール的には行けたのに体調不良で見逃した芝居が多くて損した気分です。

そんな中で観に行った中にはレベルの高いものもあり、よくわからないものもあり、だいたい半々でした。当たりの芝居は甲乙つけがたいのですが、なら満足したかというと、少し違う。そういう点では「もう風も吹かない」は割と近いのだけど、やっぱり少し違う。

橋爪功が朗読したためもあるのだけど、「犯罪」の3本の小説のフォーマット、事件が解決して一件落着になるようなものではなく、その事件が起きるまでの加害者の軌跡を丹念に追って、加害者の理由があることを丁寧に説明するあの流れ、あれがとても今時だった。あれが本国で出てきたのは2009年らしいけど、あれは世の中に出るべくして、というか、世の中が求めて出てきたんじゃないか。

そして今見返してみると、ハッピーエンドの芝居がひとつもない。細かく観れば「God save the Queen」の1本がほのぼのしていた、というくらい暗い話が多い。ネタばれで書くけど、ラスト場面が自殺、自殺、殺人未遂、事件自殺その他、経済破綻、呪い、精神病院入院、討死、出頭、有罪自殺計画的無罪って、揃いすぎだろ。暗い芝居が自分を呼んだのか、自分が暗い芝居を求めたのか。今を伝えるメッセージがほしいのは自分か。とか考えると、年間では「獣の柱」がやっぱり一番だったと思う。あと、橋爪功の朗読はぜひ定番化をお願いします。

もう勢いでついでに書きますけど、仕事が忙しすぎて体調やられて心まで枯れた1年でした。病気にならないのが精一杯で、芝居を観に行く体力もない時期もあった。この決算自体、長年書いてフォーマットもある程度決まっているからいいですけど、ぼーっとしながら書いています。仕事はあとちょっとで切りあげられるので、そこから先はしばらくサボらせてもらわないと体か心が死ぬ。この激動の時代に体調不良とか、二日酔いに迎え酒してフルマラソンを走っているようなものだ。体には休息を、心には潤いを。その一環で2014年も年間24本を目標で。その本数が減っても構わない。

誰に何を宣言しているのかよくわかりませんが、これからも引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2013年7月 7日 (日)

2013年上半期決算

恒例の半期決算です。

(1)PARCO PRESENTS「志の輔らくご in PARCO 2013」PARCO劇場

(2)パルコ企画制作「ホロヴィッツとの対話」PARCO劇場

(3)東京芸術劇場/東京都/東京文化発信プロジェクト室主催「マシーン日記」東京芸術劇場シアターイースト

(4)世田谷シルク「ブラック・サバンナ」アトリエ春風舎

(5)青年団「平田オリザ・演劇展vol.3 銀河鉄道の夜」こまばアゴラ劇場

(6)ハイバイ「」東京芸術劇場シアターイースト

(7)イキウメ「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」シアタートラム

(8)(9)DULL-COLORED POP「プルーフ/証明(前半バージョン)(後半バージョン)」シアター風姿花伝

(10)シスカンパニー企画製作「ドレッサー」世田谷パブリックシアター

(11)ナイロン100℃「わが闇」下北沢本多劇場

以上11本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は53400円
  • 1本あたりの単価は4855円

となりました。

この一覧を観て湧く微妙な思いを言葉にすると、ベテランか小規模芸術寄りかのどちらかで、「ちょうどいい劇団」というものが見当たらない。ちょうどいいと言われても困ると思うけど、公演規模とか年数とかチケット代とかがちょうど中堅な感じというだけでなく、たとえ裏にどれだけ毒が隠れていても、全体に華がある、仕上げはエンターテイメントが前面に出てくる劇団。自分が芝居を観始めた頃はそういう芝居のほうが多かった気がする。メッセージが前面に出るのは別に悪いことではないし、上手に出してもらえばむしろ好みなんだけど、そういう芝居ばかりになるのではなく、選択肢のある状態がいい。

昔も今も単に自分が観ていないだけだと言われればそうかもしれないけど、時代がメッセージを求めている気がする。それも道に迷った人が行先を求めるようなものではなく、助からない事態に直面した人の悲鳴に近いような。大震災と原発事故が起きたからかと思うと、そうではない。自分で自分のブログを読返した感じでは、すでに2010年の段階で兆候は出ていた。

1年前の決算
で「世の中の変化はもっと激しいはずで、あるいはその変化を早めて、あるいはその変化の影響を緩和して、あるいはその変化に立向かうための希望をみせるような、そんな動きを芸術が担えるのかどうかはやっぱり興味がある。」と書いた。これを改めて、人によって複数あるだろう芸術の定義の定義のひとつを「それを体験した人に、人生に立向かうための勇気を与える表現」としてみたい。そしてその具体例がイキウメの(7)だというのが個人的な感想。同じようなことは今まで感じたり本で読んだりしていたはずなのに、生身の人間の演技で観ることでここまで衝撃が強くなるとは思わなかった。

俺は私はそこまで感じなかったから(7)は芸術じゃないとか、他のものは芸術じゃないんだとか、そういうつっこみは無し。芸術というのはとても個人的なものなので、一定数の人が芸術と思えば、場合によっては表現者当人以外にたった一人でも芸術と思えば、芸術になりうる。じゃあ娯楽と芸術の違いは何だよと問われてこれまた定義を考えてみると、「大勢を一体化するものが娯楽、個人を独立させるのが芸術」と言ってみる。

ここまで書いて気がついた。そりゃあ芸術は儲からない。別の言い方をすると、芸術が面と向かって必要とされる世の中は幸せではない。幸せではないというか、幸せの意味が変わる過渡期というか(書いていてダメな日本のポップスの歌詞みたいに読める文章力のなさが嫌だ)。何だけど、社会の成熟と個人の独立には近い関係があるので、面と向かってではないにしても、世の中は少しずつ芸術が必要とされる方向に向かうものだと思う。商業面をいうなら、芸術が毒を隠して娯楽のふりをして悪いことはないし、昔からやっていたのだろう。現代なら、狭い地域の少ない人数に限らず、世界を目指せる。

書くだけなら気楽なもので、これだけ偉そうなことを書いたけれど、本日ただいまから心を入替えて芝居を観る本数を増やすとか、もっとためになるエントリーを書くとか、そんなことはできないし、するつもりもない。ただ、どれだけ観る本数が減っても、観ることを止めることはもったいないな、続く限りは観るべきだな、と考えたわけです。

半年で観たペースは予定通り。例年はだいたい年末に膨れるけれど、それで増えるとか減るとかは、あまり気にしないようにする。読者の皆様もその点はあまり気にせずに細く長くのお付合いをとこれも恒例の挨拶で。

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2012年12月30日 (日)

2012年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)公益財団法人可児市文化芸術振興財団主催「高き彼物」吉祥寺シアター

(2)Bunkamura/大人計画主催「ふくすけ」Bunkamuraシアターコクーン

(3)パルコ企画製作「三谷文楽 其礼成心中」PARCO劇場

(4)劇団、本谷有希子「遭難、」東京芸術劇場シアターイースト

(5)野田地図「エッグ」東京芸術劇場プレイハウス

(6)DULL-COLORED POP「完全版・人間失格(女バージョン)」青山円形劇場

(7)PARCO/キューブPresents「こどもの一生」PARCO劇場

(8)大人計画「生きちゃってどうすんだ」ザ・スズナリ

以上8本、隠し観劇なし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は39900円
  • 1本あたりの単価は4988円

となりました。上半期の10本とあわせると

  • チケット総額は93400円
  • 1本あたりの単価は5189円

です。年末最後に見納めしたかったのだけど、都合がつかなかった。本数的にはこのくらいが狙ったとおりなのでよいのだけど、その陰で見送られた芝居の数々には御縁がなかったとお祈りメールを送り続けるような日々。

今年は「東京原子核クラブ」も観られたけど、やっぱり「百年の秘密」かな、とか思いながら年末を迎えたら、最後の最後に「生きちゃってどうすんだ」が出てきて、これが今年のトップです。単純に面白いというのもあったけど、おっさんの年齢に足を踏入れた人間としては、あのおっさんの不安と肯定と諦めと意地と真面目と不真面目とあといろいろが混ざった微妙な感覚に引きこまれた。今思えば誰が観ても面白いから口コミプッシュを出してもよかったんだけど、観終わった直後は、個人で反芻して反芻して液体になってもまだ反芻しないといけないような気持ちになったので、口コミプッシュにまで考えが及ばなかった。

最近は劇団芝居が減っているので、演出家を劇団名代わりに利用している。つまり、よく知らない演出家の芝居を観ていない。小劇場出身の芝居はたくさん観ても、今の小劇場は全然観られていないのはそれもあって、観る本数を減らすと決めたのだから、それは如何ともし難い。KERA芝居だって見送っているくらい。

そう考えながら演目を見直したら、数え方にもよるけど、だいたい半分が再演モノだった。これは有り。むしろ世の中の劇場の半分くらいは再演モノ限定にして、脚本の段階から全体のレベルを引上げつつ、芝居を観る側に対してもある程度の品質保証ができるようになったほうが、出るほうも観るほうも幸せになれるんじゃないかと思う。そうすれば、新しいモノ限定の劇場なり企画なりも成立って、もうちょっと物事が経済的にも芸術的にも潤いが増すのではないかと夢想する。

個人的には、これも年末に突然気がついた声の話が、非常にポイントが高い。ただ全体では、2011年の反動がきたというか、2012年の不幸を払いのけるエネルギーが足りなかった。もう、そんなことにかかずらっているより、次に行け自分。去年の決算には「この11月、12月の更新頻度と長文とが異常で、今後はもっとそっけないブログに戻るかもしれませんが、むしろそれが本来のこのブログです」と書いていて、その通りになった。ブログはこれでいいのであって、ブログじゃないところで動きたい。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2012年7月 2日 (月)

2012年上半期決算

ちょっと時間が経つのが早すぎやしないかと思うようになってきました。

(1)PARCO PRESENTS「志の輔らくご in PARCO 2012」PARCO劇場

(2)DULL-COLORERD POP「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」アトリエ春風舎

(3)シス・カンパニー企画製作「ガラスの動物園」Bunkamuraシアターコクーン

(4)C.I.C.T./ブッフ・デュ・ノール劇場製作総指揮「魔笛」彩の国さいたま芸術劇場大ホール

(5)森田オフィス/イッセー尾形・ら企画製作「イッセー尾形のこれからの生活2012 GW in クエスト」原宿クエストホール

(6)ロンドン・ヤングヴィック劇場「カフカの猿」シアタートラム

(7)ナイロン100℃「百年の秘密」下北沢本多劇場

(8)パルコ企画製作「三谷版『桜の園』」PARCO劇場

(9)こまつ座/世田谷パブリックシアター 企画製作「藪原検校」世田谷パブリックシアター

(10)俳優座劇場プロデュース「東京原子核クラブ」俳優座劇場

以上10本、隠し観劇なし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は53500円
  • 1本あたりの単価は5350円

となりました。去年と変わらないペースです。もっと減らしてもよかったとも思いますけど(ならばどれを切るのかというと悩ましいですが)、ストレス逃避に5月6月のペースが上がってしまいました。読書感想文も何冊か溜めた上に、積読もある。これは追々すすめていきたいと思います。

読返してみて、観た時期によって感想は違っているにしても満足そうな文章が多い。その割に覚えているものが少ないというのはどういうことなのかというと、嘘が多い。別につまらないものを面白いと書いたわけではなくて、日常の忙しさに芝居どころではない状態に追込まれて、それを無理矢理芝居(とか他の事)で戻そうとして、観るのも書くのも集中力に欠けていた。心身ともに余裕のない時期を久しぶりに経験したけど、余裕がないとさらに余裕がないところに追込まれるこの悪循環には、はまらないように気をつけないといけない。

突然ですけど、10年前と今とで何か芝居が変わったかというと、芝居自体はあんまり変わっていない。でも10年前の劇団(役者、脚本、演出などなど)が見かけなくなり、代わりに新しい劇団が出てきた。演技を習うのなんて海外くらいと思っていたら日本にも習う場所ができた。新作一辺倒から再演も以前よりは増えた気がする。劇団中心からプロデュース制作が増えてきた。いろんな分野をまたいだコラボレーションも進みつつある。芸術監督の肩書きを持つ人が増えた。劇場法も成立した。芝居関係だけでもこのくらいはすぐに思いつくくらい変わっている。それ以上に世の中も変わっている。芝居については、この10年は地ならしで、次の10年で大きく変わっていると思う。地ならしを利用して、ここから10年間の変化を起こした人たちが、20年後の特集で取上げられる人たちになる。別に根拠はないけど、世の中の変化はもっと激しいはずで、あるいはその変化を早めて、あるいはその変化の影響を緩和して、あるいはその変化に立向かうための希望をみせるような、そんな動きを芸術が担えるのかどうかはやっぱり興味がある。そして芝居がその一端を担うのであれば、それは誰なんだろう。今活躍している誰かなのか、これから出てくる誰かなのか。それを遠目で眺められればいいと思っています。

引続き、細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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